
英国近衛
アイリッシュ
連隊ガーズマン
(20世紀~現代)
この連載では、世界の「ガードマン」の制服をご紹介します。第2回は、無敵のナポレオン軍を破った赤き鉄壁の兵士「英国近衛 アイリッシュ連隊ガーズマン」の登場です!
無敵のナポレオン軍を破った赤き鉄壁の兵士
イギリスのバッキンガム宮殿を守る近衛兵は「ガーズマン(Guardsman)」と呼ばれます。赤い制服は1645年に色が定まり、1856年からほとんどデザインが変わっていません。
近衛歩兵連隊は5つあり、それぞれボタンの数や装飾が異なります。
その中の1つである「アイリッシュ連隊」は、1900年にヴィクトリア女王の勅命で創設されました。4番目の連隊なので、袖ボタンは4個、正面のボタンも4個×2の8個です。熊毛帽の右側には青い羽根飾りを付け、襟にアイルランドを象徴する三つ葉のクローバー、肩章にはアイルランドの最高勲章「聖パトリック勲章」の紋章が輝きます。現在の名誉連隊長は、ウィリアム王子が務めています。

1. 熊毛帽
高さ46センチもある熊毛帽。1815年の「ワーテルローの戦い」でナポレオン軍に勝利した記念として、フランス軍皇帝親衛隊の帽子を真似たものを採用した。カナダ産の熊毛を用いるが、近年は人工毛を使用するようになっている。
2. アイルランドの象徴
襟章に使用されている「三つ葉のクローバー」はアイルランドの国花で、5世紀に同地で布教を行なった守護聖人、聖パトリックのシンボルに由来し、キリスト教の三位一体説を象徴している。
制服ボタンの配置で所属連隊が見分けられる
5つある近衛歩兵連隊は、正面のボタン配置で所属部隊を見分けることができる。例えば8個のボタンが等間隔に並んでいれば、「グレナディアガーズ」連隊の制服だ。ボタンも連隊ごとに異なり、アイリッシュ連隊ではケルト・ハープの紋章が刻印される。肩章に付く徽章も連隊ごとに異なるほか、階級が肩章や袖章で示される(本図は一般兵士)。
辻元よしふみ 文
辻元玲子 絵
辻元よしふみは服飾史・軍装史研究家、陸上自衛隊需品学校外部講師。辻元玲子は歴史復元画家。いずれも防衛省の外部有識者を務め、陸自の新型制服制定に関わり、陸上幕僚長感謝状を授与された。テレビや新聞、雑誌等のメディアで幅広く活躍し、夫婦の共著も多数ある。