ガードマンの制服物語 vol.3

  • 次号
  • バックナンバー
  • 前号
ガードマンの制服物語
東ローマ帝国

ワリヤギ親衛隊

(9世紀~15世紀)

この連載では、世界の「ガードマン」の制服をご紹介します。第3回は、東ローマ帝国に仕えた「海のガードマン」の登場です!

遠くギリシャの地で奮戦したバイキングの戦士たち

北欧の海の民バイキング。彼らの一部はロシアに達し、また一部は地中海を越えてギリシャに渡り、東ローマ帝国皇帝に仕えるワリヤギ(ヴァリャーギ)親衛隊として有名になりました。ワリヤギとは「ワリヤーグ(「バイキング」のスラブ語読み)の部隊」という意味で、ギリシャ語ではバロンゴン親衛隊とも言います。11世紀のノルウェー王ハーラル3世も若き日々、この部隊に所属して武者修行し、武名を上げました。
統一された制服はなかったのですが、両手斧と円盾を用い、円錐形の兜を着用しました。また、中世の欧州では珍しく、ストライプ柄の長ズボンを穿く姿も見られました。キリスト教文化においては異教的な模様で、非常にエキゾチックな風俗でした。諸説ありますが、15世紀の東ローマ帝国滅亡の時期にも、彼らは最後まで奮戦したと言われています。

1. 円錐形の兜に角はない

バイキングが好んで被ったのが、敵の攻撃を受け流す円錐形の兜で、本図のように、目を防護する眼鏡型ガードが付属する場合もあった。バイキングの兜には角が付いていた、という説があるが、あれは復元の間違いで、実際にはそのような形式は存在しなかった。

2. 海の民らしい両手斧

海の民であるバイキングらしく、両手握りの斧が好まれ、高い破壊力で敵から恐れられた。船材用の木を切り倒したり、帆綱を切ったりするための斧が転用されたものだ。

3. 異教的なストライプ柄のズボン

中世中期までの欧州では、ストライプは悪魔的として忌避されたが、バイキングは魔除けの意味でよく使用した。親衛隊のストライプは紫だったとか、レッグガードにZの文字を入れていたとの通説があったが、今では根拠はないとされる。本図の兵士は東ローマ様式の胴鎧を着ている。礼装の場合、皇帝直属の者は赤、皇后付きは青い上着を着たという説がある。

4. 船上で扱いやすい円盾

円盾は携帯に便利で、船上で扱いやすい形状とサイズだった。盾の図柄は様々だったが、本図では東方教会で用いるXP(キーロー)が描かれている。ギリシャ語で「キリスト」を示す文字だ。

辻元よしふみ 文
辻元玲子 絵

辻元よしふみは服飾史・軍装史研究家、陸上自衛隊需品学校外部講師。辻元玲子は歴史復元画家。いずれも防衛省の外部有識者を務め、陸自の新型制服制定に関わり、陸上幕僚長感謝状を授与された。テレビや新聞、雑誌等のメディアで幅広く活躍し、夫婦の共著も多数ある。

ガードマンの制服物語 vol.3

  • 次号
  • バックナンバー
  • 前号