ガードマンの制服物語 vol.7

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ガードマンの制服物語
ローマ帝国 皇帝親衛隊

プラエトリアニ

(紀元前27~395年)

この連載では、世界の「ガードマン」の制服をご紹介します。第7回は、勇壮で華やかなローマ帝国精鋭部隊の登場です!

歴代皇帝の命運を左右した絶大な権力集団

「賽(さい)は投げられた」。かのユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)はこう叫んで、ルビコン川を渡りました。ローマ首都圏に軍隊を入れることは禁じられている中、カエサルは自分が指揮する第13軍団を率いてローマに入城し、元老院を抑えて天下を取ったのです。
カエサルの後継者で初代皇帝のアウグストゥスは皇帝親衛隊プラエトリアニを整備し、ローマ市内唯一の兵力としました。語源は法務官親衛隊の意味です。法務官は軍事権を持つ要職で、この時期には皇帝の異称でもありました。その後、親衛隊は増長し、皇帝カリギュラの暗殺やネロの打倒に関わり、帝位を左右する存在となります。彼らは3世紀にわたって横暴を重ね、312年のミルティウス川の戦いで敗北した後、コンスタンティヌス帝により事実上、解体されました。

1. 極めて珍しかった高級なマント

サグム(マント)などを用いる場合、一般の軍団では赤色を基調としたのに対し、紫色を使用したという説がある。紫色を出すのは非常に難しく、フェニキアで開発された製法を皇帝が独占した。また、高級将校はライオン皮を使用できたが、これも皇帝に準ずるものだった。

2. 高価で特権的な筋肉型胸甲

筋骨たくましい肉体を表す筋肉型胸甲を着用した。これは古代ギリシャ以来、将軍や高官が用いる形式で、価格も高く、一般兵士がこれを身に着けるのは異例だった。野戦用の足を守る脛当てもなく、独特のブーツ形式のカリガ(軍用サンダル)を用いた。また、儀仗などの式典では、彼らは甲冑ではなくトーガ(礼服)を着用した。

3. 破格の待遇を象徴する豪華な兜

一般兵士と異なる古典的なアッティカ式兜は非常に豪華。羽根飾りの正確な色は不明だ(本図では軍神にちなみ赤色を採用)。装備だけでなく、プラエトリアニの待遇は破格で、給与は一般兵士の3~4倍に及び、皇帝クラウディウスは即位後、年収の5倍に及ぶボーナスを支給して彼らを手なずけた。ベテラン隊員は一般軍団に移籍すると百人隊長に就任できた。

4. 神話に由来する派手な盾

ローマ市内に駐屯するプラエトリアニの場合、野戦ではなく市街戦を想定したので、一般の兵士の盾より小ぶりで、槍も短いものだった。今に残るレリーフによれば、彼らの盾には部隊ごとに紋章が描かれ、神話に由来する鷲の翼や雷などの図柄が描かれたようだ。

辻元よしふみ 文
辻元玲子 絵

辻元よしふみは服飾史・軍装史研究家、陸上自衛隊需品学校外部講師。辻元玲子は歴史復元画家。いずれも防衛省の外部有識者を務め、陸自の新型制服制定に関わり、陸上幕僚長感謝状を授与された。テレビや新聞、雑誌等のメディアで幅広く活躍し、夫婦の共著も多数ある。

ガードマンの制服物語 vol.7

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