鍵ものがたり vol.7

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スパイが開けたらすぐわかる

軍用金庫

陸軍の暗号解読表を保管した
軍用金庫はだれかが勝手に開けたら、すぐにわかる仕組みになっていました。
Photo:Naoto Shoji Text:Ena Sato Illustration:Naomi Masuda

昭和12年ごろに造られた陸軍専用の金庫。
純日本製で当時30台ほど造られましたが、現在残るのは「金庫と鍵の博物館」にある1台のみ。
世界に1台の金庫なのです。

スパイ防止のための純日本製金庫

火事でも焼けないこと。壊れないこと。開けられないこと。これが金庫の役割ですが、軍用金庫にはもうひとつ大事な役目がありました。スパイを見張ることです。
軍用金庫は鍵の仕組みが外国に知られないよう純日本製です。扉にある「機械式押しボタン錠」のボタンは50個もあります。一般的な押しボタン錠はせいぜい10個だったそうですから、それだけ金庫破りも大変だったはずです。
スパイ防止策は、金庫の分厚い扉の中にある円盤に仕組まれています。
扉の内側に直径2㎝ほどの小窓があり、そこから赤い針が、円盤上のある数字を差しているのが見えます。この数字は金庫を開けた回数です。金庫を開けるたびに円盤がカチッと回って、小窓から見える数字が1つ増えるのです。

軍用金庫の構造

4枚の円盤にキリカキと「つく」と呼ばれる突起が1つずつ。ダイヤルを1回転すると、(1)の円盤が連動して回る。2回転目で(1)のつくが(2)のつくと当たって(2)の円盤が回り出す。同じように3回転目で(3)の円盤が、4回転目で(4)の円盤が動き出す。

4枚のキリカキの位置をそろえてから鍵を回す。閂がキリカキに収まって扉が開く。

金庫を勝手に開けたヤツはだれだ?

たとえば金庫係が毎日1回扉を開けるとします。昨日は赤い針は20を差していました。今日開ければ21を差しているはず。ところが22を差していたとしたら?勝手に開けたヤツがいるぞ!と、スパイの存在がわかるのです。
軍の情報が敵に知られると作戦上とても不利になります。だからこの金庫には、軍の作戦に使う文書の「暗号解読表」が保管されていました。「このように保管する物の機密性が高いほど、金庫は複雑な仕組みになります」と金庫と鍵の博物館館長の杉山泰史さんは言います。

取材協力

金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]

金庫と鍵の博物館

東京都墨田区千歳3-4-1 03-3633-9151

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