企業で守るべき機密文書の適切な廃棄方法

2024.01.31更新(2017.06.16公開)

機密文書の取り扱いに日ごろから気を配っている方は多いと思いますが、機密文書の廃棄には、保管・管理を行うとき以上の危険が伴います。機密文書の廃棄は企業外に持ち出して行うことも多いために、情報の漏えいが発生しないよう、安全で完全な廃棄を実施しなくてはなりません。では、どのようにしてそれを実現するのか、企業が行うべき機密文書の適切な廃棄方法について解説します。

機密文書を適切に廃棄する必要性

一般的に機密文書とは、「機密保全の必要性が極めて高く、社内外に対して漏えいさせることのできない情報が記載された文書」を言います。なかでも近年、特に注目されているのが、マイナンバーを含む個人情報です。これらは厳重に保管・管理することが必要であると同時に、必要がなくなったときには完全な廃棄を行わなければなりません。

仮にこういった機密文書の適切な処分を怠ると、重要な情報の流出・漏えいのリスクが発生し、従業員や顧客に被害が及ぶおそれがあります。個人情報保護法やマイナンバー法に関連した部分では、ガイドラインなどにおいてこれらの情報に関する資料やデータは「復元できない手段で削除または破棄すること」と示されています。これを守らず実際に情報漏えいなどが起きてしまえば、マイナンバー法により処罰を受けるだけではなく、企業価値は急落し、企業としての信頼を失うことにもなり得るので注意が必要です。

機密文書の種類

企業等にとって非常に重要な機密文書は、一般的に機密レベルや性質によって大きく以下の3種類に分けられます。どれも秘密保持の必要性がある文書ですが、機密性の高い文書はより慎重に扱わなければなりません。

極秘文書

極秘文書は、企業を経営するうえで極めて重要な情報を記載した文書。企業内において最高レベルの機密性を持ち、漏えいした場合には経営や利益に大きな損害を与えるおそれがあります。社内でも限られた人間しか閲覧できず、コピーなどが制限されることもあるでしょう。
<例>重大なプロジェクト資料や未発表研究データ、未公開の情報、経理文書など。

秘文書

秘文書は、極秘文書に次いで重要度の高い文書。社内でも関係者等でなければ見ることができません。企業の重要な戦略や人事・経理などの機密情報、個人のプライバシーに関するものなどが秘文書に該当します。
<例>重要契約書、人事や経理関連のデータ、個人情報など。

社外秘文書

社外秘文書は、社内のみで共有されるべき情報を扱った文書。社外に漏らすと不利益を被る可能性があるものや、公表することが適切でないものが社外秘とされます。社内の人間であれば比較的容易に閲覧やコピーが可能であるため、思わぬところで情報漏えいが起こる可能性もあります。
<例>顧客リスト、営業企画書、調査・統計資料など。

過去に起きた機密文書流出の事例

ITの発展した現代では、重要な情報をPCや電子媒体で扱ったり、インターネットを通じてやりとりを行ったりすることが多くなっています。しかしながら、依然として紙媒体による情報流出が多数発生しているのが事実。日本ネットワークセキュリティ協会の調べによると(*1)、2017年に発生した個人情報漏えいインシデント386件のうちの150件は紙媒体を媒体・経路とするものです。割合としては全体の約38.9%を占めており、インターネットや電子メールを上回って最大の漏えい経路となっています。

このように漏えいの危険性が高いことが明らかになっている紙媒体ですが、実際にはどのようにして機密文書が流出しているのでしょうか。

事例(1)管理ミス・紛失等による流出

情報漏えいの原因は、誤操作や紛失・置き忘れ、管理ミスといった内部的なヒューマンエラーが半数以上を占めます(*1)。紙媒体は使い勝手が良く手軽に扱えるため、必要な書類を印刷して持ち運んだり、打ち合わせの資料などに使ったりする機会も多いでしょう。

しかし、それゆえに機密文書に該当する印刷物をプリンタから取り忘れ・取り違えたり、外出時にうっかり置き忘れたりするといった事態も起こりやすくなっています。また、管理の甘さが原因となり、機密文書がほかの書類に紛れ込んだり、裁断して捨てるべきものをそのまま捨てたりして情報漏えいにつながるケースも発生しています。

事例(2)不正な持ち出し・窃取等による流出

不意に機密文書が流出するケースが多い一方で、内部の人間が故意に情報を持ち出すといった流出経路もあります。社員が転職や独立などを優位に進めるために企業の営業秘密を不正に持ち出す、人のいない休日を狙って機密情報を印刷して社外へ持ち出すといった事例が実際に発生しています。

第三者が情報を得るために機密文書を窃取する可能性もないとは言い切れません。情報を狙う人間は訪問者や他支店の社員、清掃業者などを装ってオフィスに侵入し、デスクなどに置いてある書類を盗みます。また、管理が行き届いていない廃棄書類が狙われることもあります。

機密文書の流出によって企業が被る損失

機密文書の管理の重要性や流出の事例などを見てきましたが、こういった情報漏えいが発生すると、企業はどのような損失を被ることになるのでしょうか。

情報は今や企業にとって非常に重要な資源の一部。顧客リストや製造法といった営業秘密が外部に流れてしまえば、これまで築いてきた貴重なノウハウの価値や競合力が下がり、不利益を生じるでしょう。さらに、個人情報などが流出すれば被害者への損害賠償が発生。2017年の個人情報漏えいインシデント1件あたりの平均損害賠償額は5億円を超えています(*1)。また、情報漏えいの調査・報告や外部への謝罪などにもコストが必要です。

直接的な経済損失だけでなく、情報漏えい発生の事実は企業の信用を下げる要因にもなります。顧客の信頼を喪失すれば売り上げは減少し、社会的にも企業の信頼・ブランドが低下するでしょう。影響は外部のみならず、社内のモチベーション低下や優秀な人材の流出につながるおそれもあります。このように、機密文書の扱いについては、小さなミスや管理の甘さが企業にとって大きな損失を招くことをしっかりと認識しておかなければなりません。

機密文書廃棄方法の種類

機密文書を廃棄する方法は複数あります。代表的な3種類について、特徴やメリット・デメリットを確認しましょう。

シュレッダー

シュレッダーは最も一般的な機密文書の廃棄方法。オフィス用のものを使ってその場で処理する方法のほか、業者に依頼して大型シュレッダーで処理する方法があります。オフィス用シュレッダーは、少量の書類であれば自分たちの手で手軽に処分できることが利点。また、料金が比較的安く抑えられることも、広く利用されている要因でしょう。

一方で、シュレッダーはステープラーの針やクリップ・とじ紐などを取り外す作業が必要となるため、大量の文書を廃棄するには手間と時間がかかってしまいます。業者に依頼する場合は、文書が作業員の目に触れるリスクも。また、シュレッダーは紙を細かく切り刻むもので完全に文書が消えるわけではありませんので、自分たちの手できちんと処分したつもりでも情報が流出する可能性がないとは言い切れません。

焼却処分

焼却処理は、箱に詰めた文書を業者が回収して箱ごと焼却する方法が主流です。燃やしてしまうため、機密文書を完全に抹消できるという点が最大のメリット。また、紙だけでなくデータの入ったCD-ROMなどの媒体、ステープラーの針なども一緒に処理することが可能です。

しかしこの方法で問題とされるのは、書類等を焼却するとCO2などが発生し、環境に悪影響を及ぼすという点です。企業が独自に焼却炉などで処分することはもちろんできませんし、さらに焼却処分を行っている業者は比較的少なく、専門ではない産業廃棄物処理業者などに依頼すると情報漏えいが懸念されます。

溶解処理

溶解処理は製紙メーカーの紙をリサイクルする工程で生まれた技術を応用し、文書を溶解釜内で水と混ぜて鋭い刃で粉砕し、液状化して処理する方法。近年、セキュリティ性の高い文書の廃棄方法として普及しています。最近の方式ではステープラーの針などを外したり、文書をバインダーから取り出したりする必要もないので、余分な作業が発生しないことも嬉しい点です。

業者によって回収や運搬時の対応が異なるため、信頼性の高い業者を選ぶことが重要。万全な対策をしている専門業者であれば、安全性の高い専用箱や輸送車で運搬して箱ごと溶解するため、高いセキュリティ性が保待されます。また、溶解処理はCO2を排出せず、溶解後は紙としてリサイクルされるため、環境に優しいこともポイント。ただし、料金は比較的高くなります。

ALSOKの「機密文書集荷・再生処理サービス」サービスも箱ごと溶解処理する、環境にも優しいエコサービスです。ALSOKの高いセキュリティ性を活用し、回収から溶解処理までワンストップで対応する廃棄方法の導入をぜひご検討ください。

機密文書廃棄のルールについて

機密文書の管理を徹底するには、廃棄方法を適切なものにすると同時に、社内で機密文書廃棄に関するルールを作って明文化しておくことも重要です。

まず、第三者の目に触れさせてはいけない機密文書を明確にし、重要度に応じて極秘等の位置づけを行います。そして、その管理者や管理方法・保管期間、廃棄する際の条件、廃棄方法などを検討し、それぞれの担当者を決めておきましょう。また、全従業員に対して機密文書の扱いにはリスクが伴うことを意識づけ、協力を促すことも大切です。

機密文書の廃棄に伴う危険を回避するには、社内での管理体制の強化とルール作りを行い、企業全体で機密文書管理についての意識を高めておくことが大切です。安全・確実に廃棄まで行えるよう、機密文書廃棄の方法と手順をしっかり確立しておきましょう。

(*1)出典:JNSA「2017年 情報セキュリティに関する調査報告書【速報版】」(2018年6月13日)

機密文書の扱い次第で営業秘密が保護されない可能性も

「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法や販売方法など、事業に欠かせない技術・営業にまつわる情報で、公に知られていないもの。不正競争防止法において定められており、企業の知的財産権として保護される情報です。

具体的には、顧客リストや販売・接客マニュアル、設計図や製造方法、技術情報、研究のデータなどが営業秘密に該当します。さらに、営業秘密には紙媒体の文書はもちろんのこと、PCや記憶メディアなど電子媒体のデータ、媒体を持たない情報なども含まれます。こういった情報を窃取など不正な手段で取得したり、不正に利益を得る目的や加害目的で使用・開示したりすることは営業秘密の侵害とされ、営業秘密保有者は不正行為の停止・予防をはじめとする措置を請求することが可能です。

特許等とは異なり、営業秘密は手続きなしで強力な保護が受けられますが、秘密として管理されていること(秘密管理性)・事業に有用な情報であること(有用性)・世間一般に知られていないこと(非公知性)の3つの要件を確実に満たさなければなりません。秘・極秘などの区分やマル秘表示などによって、ほかの情報と客観的な区別で管理されていることも重要です。

営業秘密が記載された文書はもちろん機密文書のひとつ。営業秘密を法的に保護するためにも機密文書は正しい知識で管理し、廃棄に至るまで適切に扱うことが求められます。