AIカメラとは?導入メリットや活用事例、選び方について解説

AIカメラとは?導入メリットや活用事例、選び方について解説
2025.10.10更新(2023.05.12公開)

近年、AI技術の進化により、さまざまな用途に活用できるAIカメラが注目されています。AIカメラは映像を自動で解析し、人物や物体の検知から行動の予測まで、従来の監視カメラにはない高度な機能を備えています。

この記事では、AIカメラの仕組みや導入のメリット・デメリット、活用事例や選び方をご紹介します。

目次

AIカメラとは?

AIカメラとは、画像解析機能を内蔵または連携するカメラ全般を指します。近年のディープラーニング技術による画像認識精度の飛躍的向上と、アルゴリズムや開発環境の一般化により、比較的容易に実装可能となったことが、AIカメラの普及を後押ししています。
現在では、ディープラーニングを活用した高度な解析機能を持つカメラに加え、機械学習やルールベースの画像解析技術を用いた製品も含めて、広義に「AIカメラ」として市場で認識・商品化されています。

監視カメラの国内市場規模

国内の監視カメラ市場規模は増加傾向にあり、2021年には593億円でしたが、2024年には619億円にまで伸びると予想されています。また、監視カメラ市場を上回るペースで画像認識ソリューションの市場規模も伸びており、2024年度は440億円(前年比120.5%)でしたが、年率15.6%で成長を続け、2029年度には920億円に達すると予測されています。

出典:公益社団法人 日本防犯設備協会 映像セキュリティ委員会「画像解析とAIを活用した防犯カメラシステム
デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社「AI(ディープラーニング)活用の画像認識ソリューション市場の現状と展望 2025年度版【第8版】

AIカメラと従来の防犯・監視カメラの違い

従来の防犯カメラは、映像の記録やモニター表示を主な機能としていました。これに対し、AIカメラは、映像から人物や車両などの物体検出、個人特定のための顔認証、動作や行動パターンの分析(行動認識)、不審行動や異常の自動検知など、多様な画像解析技術を組み合わせて、防犯対策だけでなく、現場の業務効率化や安全性向上にも貢献しています。

AIカメラで実現できること

AIカメラで実現できること

AIカメラによる画像処理のプロセスは、画像から処理の対象となる物体や状態を検出し、それらに対して認証や推論を行うことで、適切な結果を導き出します。例えば、映像内から「人」や「動き」といった注目すべき対象を見つけた場合、その人物が誰であるか、どのような状況なのかを判断し、「ドアを開ける」「警報を鳴らす」といった対応を実行します。

このような複数の処理を組み合わせることで、画像処理はさまざまな課題の解決手段として活用可能です。以下の表は、AIカメラによって実現できる主な処理内容を簡潔にまとめたものです。

分類 処理内容 対象例
検出 対象を検出 人物、顔、車両、物体
セグメンテーション 画像領域の意味付け 画像内の意味付け(背景と前景の分離)
分類 対象の種類を判定 動物の種別、製品の分類
認証 対象を識別・照合 顔認証、ナンバープレート認証
追跡 時間的変化の把握 人物の移動、車両の軌跡
推論 対象の状態・行動・属性を予測 姿勢、行動、感情

AIカメラ導入のメリット・デメリット

AIカメラは、高度な画像解析を通じて業務効率化や対策強化を支援する一方、導入にはコストや運用面での課題も伴います。ここでは、メリットとデメリットをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

AIカメラ導入のメリット

リアルタイム解析

AIカメラの最大の特長は、24時間365日でのリアルタイム映像解析を行える点です。従来のカメラが「記録」に主眼を置いていたのに対し、AIカメラは人の目や判断を介さずに即座に異常を検知することで、初動判断と迅速な対応をサポートします。

認識・分析機能

AIカメラは、顔認証、ナンバープレート認証、行動分析、モーション検知など多様な認識・分析機能を備えています。対象の属性(年齢・性別)や人数のカウントも可能である。マーケティング領域での顧客行動分析や、業務改善に向けたデータ収集手段としても有効です。

業務効率化と自動化

AIカメラは、勤怠管理、入退室管理、品質検査、混雑状況の可視化など、幅広い業務領域において自動化をサポートします。これにより作業負荷を軽減でき、24時間稼働が求められる現場でも高い効果を発揮します。これにより、人手不足の解消や作業の省力化にも貢献します。

セキュリティ強化

AIカメラは、不審者の自動検知、不審行動のリアルタイム通知、担当者や警備員との迅速な連携、録画保存による証拠保全など、防犯・監視体制を多層的に強化できるのも大きな強みです。リスク軽減と安全性向上を実現しつつ、人手による監視業務を補完・支援します。

AIカメラ導入のデメリット

初期導入コストの高さ

信頼性の高い高性能なAIカメラは、従来の監視カメラと比較して高額です。さらに、ネットワーク環境やサーバー、ストレージなどのインフラ整備にも費用がかかります。

誤検知・未検知のリスク

AIカメラの認識精度は日々向上していますが、依然として完全ではありません。設置環境によっては対象を正しく検知できない場合や、正常な状態にもかかわらず異常と判断してしまうケースがあります。導入にあたっては、誤検知や検知漏れといったリスクを理解した上で、適切な運用体制を整える必要があります。

運用ノウハウの習得が必要

AIカメラの性能を最大限に引き出すためには、適切な設定やデータ活用に関する専門的な知識やスキルが求められる場合があります。導入後は、担当者の教育や外部専門家との連携を通じて、運用チーム全体のスキル向上を図る必要があります。

法令対応の課題

顔認証や行動分析などを行う場合、プライバシー保護や個人情報保護法への対応が不可欠です。AIカメラが取得した情報をもとに個人を識別できる場合、その情報は個人情報としえ扱われ、法令に則った管理が求められます。具体的には、プライバシーポリシーの整備、対象者への通知、必要に応じた同意取得などが必要となる点に留意しましょう。

システムの拡張や保守

AIカメラは高性能である一方、システムの拡張や保守においては、機器の互換性や運用の複雑さが課題となります。将来的な機能拡張を見据える場合、柔軟性と拡張性を備えた設計が必要となります。そのため、導入から保守・運用までを一貫して支援できる技術力を持つシステムインテグレーターとの契約は、安定した運用を実現する上で重要な要素となります。

AIカメラの方式

AIカメラは、「AI処理をどこで実行するか」によって大きく以下の3種類に分かれます。

種別 推論場所 通信速度依存 ※ セキュリティ ※ 処理速度 拡張性 AIモデル更新
エッジ カメラ内(専用装置) 高速 限定的 原則現地
クラウド クラウドサーバー 中~低 遅延あり クラウド上
サーバー オンプレサーバー(専用装置) 原則現地

※エッジカメラは、ローカルで完結する場合を示します。
※製品により、外部NWに接続し、推論結果、映像閲覧、AIモデル更新を行うものもあり、通信依存による性能やセキュリティへの影響が生ずることに留意が必要です。

それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

エッジ型

エッジ型は、カメラ本体に搭載されたGPUなどの専用チップ、または映像の発生源近傍に設置された端末でAI処理を直接実行する方式です。サーバーやクラウドを介さず現地でリアルタイムに推論処理を実行するため、低遅延での即時の解析が可能です。また、外部ネットワークと切り離したオフライン運用にも対応できます。セキュリティ性が高いため、情報漏えいリスクを最小限に抑えられるのが大きな強みです。一方で、処理能力や拡張性には限界があり、高度な分析や大規模運用には不向きな場合もあります。なお、判断処理はエッジ側で行い、学習データの蓄積やモデルの更新はクラウドと連携して実施する「ハイブリッド型エッジAI」もあります。

クラウド型

クラウド型は、カメラで撮影し取得したデータをインターネット経由でクラウドに送り、AWS、Azure、Google Cloudなどの高性能AIエンジンで解析する方式です。自社で大規模なサーバーやストレージを用意する必要がなく、高度なAIモデルを常に利用できる上、大規模なデータ分析や複数拠点の一括管理にも適しています。ただし、一般的にはインターネット経由でクラウドに接続されますが、閉域網やVPNを利用しセキュアな接続形態を選択する必要があるでしょう。また、ネットワーク遅延や通信障害の影響を受けやすく、映像を外部に送信する特性上、プライバシー保護や個人情報保護への対応が欠かせません。

サーバー型

サーバー型は、カメラとAIサーバーを接続し、サーバー側でAI処理を実行する方式です。サーバーの代わりにAI処理専用装置も存在します。映像はローカルネットワーク内で転送されるため、セキュリティの確保と通信コストの削減というメリットがあります。一方で、サーバーの設置・運用には初期投資や保守費用が発生し、クラウド型と比較した場合、拡張性や柔軟性に制約がある点がデメリットとなります。

AIカメラの活用事例

AIカメラの活用事例

AIカメラは、一般的に以下のようなシチュエーションで活用されています。

分類 主な機能 活用例
防犯 入退室管理 顔認証による、本人確認と出入管理
侵入検知 人物検知や領域認識による、立入禁止区域への侵入検知
不審行動検知 長時間滞留、逆走、徘徊などの通常と異なる行動パターン検知
置き去り・持ち去り検知 物体検知による、盗難や置き去り(不審物や忘れ物)
車両識別 ナンバープレート認識による駐車場管理
業務効率化 勤怠管理 オフィスの出退勤記録、非接触認証
動作解析・姿勢検出 作業現場での危険区域への侵入検知、接触事故防止、業務のOJT支援
設備異常検知 計器の自動読み取り、温度監視
マーケティング 人の属性や人流を解析し、購買促進施策に活用

画像解析の業種別トレンド

こまで紹介してきたAIカメラは、画像解析技術により業界ごとの課題に応じたソリューションを提供しています。安全性の確保、業務の効率化、顧客体験の向上など、さまざまな目的で導入が進んでおり、実用化のフェーズに入っています。
以下では、オフィス商業ビル、小売業界、交通インフラの3分野における代表的な活用事例をご紹介します。

オフィス・商業ビル

(1)セキュリティ

AIカメラにより、共用部における不審物の長時間の置き去り、備品や調度品の持ち去り、立ち入り制限区域への侵入検知などをリアルタイム検知し、異常発生時に即座に警備員と連携することで、被害拡大防止に繋げることができます。複数のカメラ映像の常時監視や、警備員による巡回や立哨を常時行うことは困難であっても、AIカメラを適切に組み合わせることで、大幅なセキュリティの向上と効率化を行うことができます。

(2)顔認証による入退室管理と勤怠連携

顔認証AIカメラを用いた入退室管理と勤怠管理システムとの連携によって、業務効率化に貢献しています。登録済みの顔画像に基づく自動認識と通知機能により、セキュリティ強化と業務効率化の両立が可能となっています。

(3)リアルタイム混雑状況の可視化と対応

AIカメラを活用して、ビル内の混雑状況をリアルタイムで把握し、Webブラウザなどを通じて共有する仕組みが導入されています。これにより、来訪者が混雑を避けて移動できるようになり、エレベーターや受付の待ち時間短縮にもつながっています。

(4)空間利用の最適化設計

AIカメラによる空間利用状況の可視化を通じて、食堂や共用スペースの設計改善が行われています。利用者の行動パターンを分析し、時間帯やエリアごとの混雑傾向を把握することで、柔軟なワークスタイルに対応した空間設計が可能になります。

小売業界

(1)顧客行動分析と店舗レイアウトの最適化

AIカメラを活用することで、来店客の動線や滞在時間を可視化し、売場配置やPOP(販促物)の効果を定量的に測定できます。これにより、売上の向上や顧客満足度の改善につながるレイアウト設計が可能になります。

(2)在庫管理と自動値下げ

棚の充足率や欠品状況をAIがリアルタイムで認識し、売れ残り商品に対して自動で値下げを行う仕組みが導入されています。これにより、廃棄ロスの削減と収益の最適化が実現されつつあります。

(3)防犯・セキュリティ強化

AIによる不審行動の検知や顔認証をベースとした万引き防止システムの導入が進められており、リアルタイムでスタッフにアラートを送信することで、店舗の安全性向上と人手による監視の補完が期待されています。

(4)無人店舗・接客支援

AIカメラと生成AIを組み合わせた無人店舗では、来店客の質問に対して自然な対話で応答、省人化と顧客体験の両立を目指す新たな店舗運営モデルとして注目されています。

交通インフラ業界

(1)安全性の強化と異常検知

駅や空港などの公共空間では、AIカメラによるリアルタイム映像解析の導入に向けた取組が進んでいます。転倒や迷惑行為、不審物などを即座に検知し、係員の迅速な対応を支援。事故やトラブルの未然防止に貢献しています。

(2)歩行弱者への配慮

AIが車いす利用者や高齢者などを自動認識し、係員が適切なタイミングでサポートできるよう実証実験が進められるなど、バリアフリー対応の質が向上し、公共交通のアクセシビリティ強化が期待されています。

(3)保守・点検の省力化

鉄道では線路や設備の異常検知、航空では滑走路や機体周辺の監視にAIカメラが活用され、保安体制の強化と作業効率の向上が図られています。

(4)顧客対応の自動化

AIカメラと生成AIを組み合わせたチャットボットや案内ロボットが導入され、空港や駅での問い合わせ対応を自動化。非対面でも高い接客品質を維持できる環境が整っています。

AIカメラの選び方

AIカメラの導入を成功させるためには、目的に応じた適切な選定プロセスが欠かせません。

課題を明確にする

まずは、自社が抱える課題を整理しましょう。防犯対策の強化、業務の効率化、マーケティングにおけるデータ収集など、導入目的によって求められる機能は異なります。たとえば、防犯目的であれば、侵入検知や不審行動の検知機能が重視されます。課題を明確にすることで、必要な機能が絞り込まれ、無駄なコストを抑えながら、効果的な製品選定につながります。

カメラやシステムベンダーの選定

限定的な機能を備えたAIエッジカメラを活用するケースでは、導入のハードルは比較的低く、容易に運用を開始できるものもあります。
一方で、先に紹介した各業界の事例のように、AIを活用して新たな課題解決策を見出すような取り組みでは、システム設計や運用体制を含めた検討が不可欠です。こうした場合には、専門的な知見を持つ事業者に相談し、自社の目的や環境に合った提案を受けることが重要です。

まとめ

ALSOKでは、セキュリティ分野で培った豊富な実績と専門知識を活かし、AIカメラの導入に関するご提案から、運用後のサポートまで一貫したサービスをご提供しています。たとえば、従来は警備員が映像を目視して判断していた事象も、AIによる自動検知を活用することで、より迅速かつ的確な対応が可能になります。また、AIカメラと警備員の連携に加え、警備ロボットやドローンなどを組み合わせた運用設計にも取り組んでおり、現場のニーズに応じた柔軟な警備体制の構築が可能です。

ここまでご紹介してきたとおり、防犯対策や業務効率化など、企業のさまざまなDX推進においてもAIカメラの活用は有効な手段のひとつです。導入をご検討の際は、ぜひALSOKへご相談ください。

ALSOKの関連商品