病院のセキュリティリスクとは?防犯(監視)カメラなどの防犯対策まとめ

病院のセキュリティリスクとは?防犯(監視)カメラなどの防犯対策まとめ
2023.11.21更新(2020.10.30公開)

病院は、年代や属性を問わず不特定多数が訪問する場所です。治療など正当な目的で来院する方がほとんどですが、開院中は誰もが入館できるため、窃盗等が目的の悪意を持った訪問者が紛れ込む可能性があります。実際に、病院荒しや薬剤の盗難、カルテの改ざんや異物の混入など深刻な事態が少なからず発生しているため、万全な不審者対策が求められています。
今回は、病院におけるセキュリティリスクをご説明しながら、防犯カメラ・監視カメラの設置など具体的な防犯対策についてご紹介します。

目次

病院に関する犯罪統計

病院に関する犯罪統計

病院に関する犯罪のうち「病院荒し」に関しては、以下のようなデータがあります。
以下のグラフは警察庁の「犯罪統計書 令和4年の犯罪」による、侵入犯(病院荒し)の認知・検挙状況です。

侵入犯(病院荒し)の発生状況
出典:[警察庁]年間の犯罪 - 犯罪統計書 令和4年の犯罪「5 年次別 都道府県別 窃盗 手口別 認知・検挙件数及び検挙人員 (つづき)」

上記グラフのとおり2013年から2022年までのデータを見ると、病院荒しの認知・検挙件数は年ごとに減っており、2022年で検挙件数は再び増加しましたが、この10年で認知・検挙件数ともに大きく減少しています。
しかし、最新の2022年のデータにおいても認知件数は500件以上あり、また認知件数に対する検挙件数も194件と決して少ないとは言えません。病院荒らしの発生を予防するためには、さらなる防犯対策の徹底が必要であることが分かります。

病院で起こるセキュリティリスク

病院で起こるセキュリティリスク

病院には地域の医療連携を担う役割や災害時の医療拠点の役割があることから、「しっかり管理されていて安全」というイメージが定着していると思われます。しかしながら、不審者の侵入やカルテの改ざんなどの問題が発生している病院もあるようです。
ここでは、病院で起こりやすいセキュリティリスクの一部をご紹介します。これだけ数多くのリスクがあると考えると、様々な対策が必要であることが分かります。

夜間の侵入者や窃盗

先の項目でご紹介した通り、病院荒しなど犯罪目的の侵入者による窃盗事件などのリスクが挙げられます。

薬剤の紛失・盗難

病院内に保管されている薬剤の紛失や盗難にあうケースも想定できます。毒物や劇薬など悪用されると多大な危険が想定される薬剤も病院内には保管されている場合があり、厳しいリスク管理が求められます。

院内の盗難・いたずら

病院内の設備や備品の盗難、いたずらなどで破損や汚損被害に遭う事案です。こちらも院内外双方の者によって、故意に行われる可能性があります。

個人情報漏えい

病院内にはカルテなど、重要な個人情報および機密情報が多数保管されています。紙の文書のほか、電子データの取り扱いや管理も厳重に行う必要があります。

乳幼児の連れ去り

入院中の乳幼児が連れ去られるケースのほか、来院している患者の乳幼児が標的となるケースです。

異物混入

病院食や薬剤などに故意に異物が混入される事案です。このケースは院外からの人物のほか、院内関係者による事案も想定できます。

無断退院や徘徊

入院患者や来院患者が無断で病院を抜け出すことや、勝手に外へ出て周囲を徘徊するなどの事案のリスクも想定できます。

火事や自然災害

病院も建物設備である以上、火災や地震・台風・噴火などの自然災害に巻き込まれるリスクが存在します。特に入院患者などは災害弱者と呼ばれることもあり、適切なリスク管理で被害を最小限に食い止める取り組みが必要となります。

設備不良などによるトラブル

病院内には入院患者や外来患者の安全を守るため、さまざまな設備が導入されています。それらがトラブルを起こすと、患者さんの安全がおびやかされる可能性もあります。

様々なリスクに対する対策

様々なリスクに対する対策

病院には年代や属性を問わず不特定多数が訪問すること、また建物設備ならではのさまざまなリスクがあり、適切な安全管理が必要です。
ここでは、先の項目内で挙げたさまざまな病院内リスクに対する防犯対策についてご紹介します。

防犯カメラ・監視カメラ

防犯カメラはビルやマンションだけでなく、病院にも必要な設備です。夜間の侵入による盗難や不審者による連れ去りなどへの抑止効果や早期発見、証拠の記録が可能となります。
病院に防犯カメラ・監視カメラを設置する場合は、以下の場所に設置すると良いでしょう。

不特定多数の人が利用する場所

受付や外来ロビー、待合室やエントランスなどの共用スペースは基本的に誰でも立ち入れるため、防犯カメラ・監視カメラの設置が有効です。子供が滞在するキッズスペースや保育室、また駐車場などの外構にも設置することがおすすめです。

特定の人が利用する場所

関係者など特定の人しか立ち入らない場所にも、内部の人物が要因となる事案の発生を未然に防ぐため、防犯カメラ・監視カメラを設置すると良いでしょう。また、出入口に電気錠を設置して出入管理することもおすすめです。

サーバルーム

情報漏えいなどのリスクが高いためサーバ管理者など許可された人しか立ち入れないように人の出入りを厳重に管理する必要があります。防犯カメラ・監視カメラの設置に加え、出入管理システムの導入や鍵保管庫による鍵管理で出入可能な人を限定的にするなどの対策が必要です。

ナースステーション・事務所

病棟には入院患者だけでなく、患者さんのご家族や見舞客、福祉関係者などさまざまな不特定多数の人がいますので、ナースステーションには出入管理システムの導入等で院内関係者しか入室できないような仕組みを構築しなければなりません。また、重要な個人情報を管理する場所でもあるため、出入口付近に防犯カメラ・監視カメラを設置するなどセキュリティを強化しましょう。
事務所にも患者さんや職員の個人情報、病院の運営に関わる重要情報が保管されています。ナースステーションと同様にセキュリティ強化しましょう。職員が個人のスマートフォンを充電するなどの安易な目的でパソコンに接続することで思わぬ情報流出に繋がる可能性があるため、スマートフォンをパソコンに接続できないようにする対策も必要です。

調剤室・薬剤の保管室

薬剤を取り扱う人しか出入りしない場所ですが、紛失・盗難などが発生すると大きなインシデントにつながるため管理体制の強化が必須です。防犯カメラ・監視カメラを各室の出入口および薬剤の保管場所付近に設置し、持ち出しなどを防止しましょう。

更衣室・ロッカールーム

更衣室やロッカールームは職員のプライバシーに関わる場所なので防犯カメラ・監視カメラの設置を戸惑うかもしれませんが、実は盗撮や盗難などの犯罪や職員間のトラブルが起こり得る場所でもあります。犯罪やトラブルを防止し、万一トラブルが発生してしまった際の証拠としても活用できるため、出入口に防犯カメラ・監視カメラを設置することをおすすめします。設置する際は、更衣室やロッカールームの外側に入退室する人の顔が映る角度で取り付け、更衣室内が映りこまないよう注意しましょう。
また、定期的に盗撮目的で設置された機器がないか組織的に点検することもおすすめします。

これらのほか、個人開業医の方などの自宅兼クリニックの場合は、ご自宅と病院の境界部分に防犯カメラ・監視カメラを設置することも有効です。

出入管理システム

出入管理システムの図

病院関係者の出入りを管理できる「出入管理システム」を導入することは効果的な院内セキュリティ対策です。機密書類がある事務所や、薬剤の盗難リスクへの対策として薬剤保管庫に設置するとともに、夜間入り口にも設置することで鍵の閉め忘れがなくなり不審者の侵入を防ぐことができます。
予算の都合で「出入管理システム」導入できない場合、重要な書類や薬剤の保管場所には、鍵管理装置を設ける方法も一案です。各々の鍵の使用制限を設けたり使用履歴を残せるため、使用者の特定が容易になります。

蓄電池・災害時の安否確認・防災訓練

犯罪などのリスクと同様に、災害のリスクにも十二分な備えをしておくことが必要です。停電などで電源が失われた際に、予備として活用できる蓄電池を用意しておくことは基本とも言えます。
また、災害時に安否確認をスムーズに行える仕組みも取り入れておきましょう。メールや職場内SNSなどですぐに安否情報を共有できるようにしておくと有用です。
先にも述べましたが、病院には入院患者など「災害弱者」と呼ばれる人が多いという特徴があります。地震や台風での被害はもちろんですが、火災が発生した際に重大な被害となる可能性も高いことが想定できます。防災訓練などを積極的に導入し、職員と患者さんの双方が備える意識を高く持てるよう取り組みを図りましょう。

ファシリティマネジメント

病院も建物設備ですから、一般的なビルと同様に設備の不具合に対して備えておく必要があります。特に病棟を備えた病院の場合は、24時間建物内が適正に維持管理されていなければなりません。
日常的な施設管理も、万一の際の対策になると考えてさらなる強化を検討すると良いでしょう。

病院の防犯カメラ設置で注意するポイント

病院の防犯カメラ設置で注意するポイント

先の項目で、防犯カメラ・監視カメラの設置について説明してきました。ここでは、病院内の防犯カメラ設置に関するポイント・注意点をご紹介します。

プライバシーに配慮する

入院患者がいる病棟にカメラを設置する際には、患者さんや職員のプライバシーを侵害するリスクもあるため、それらにも配慮する必要があります。録画映像の保存期間や録画時間、映像の取り扱いや管理など、録画した情報に関する管理を徹底することも重要です。

威圧感・存在感があまりないカメラを選ぶ

病院に防犯カメラ・監視カメラを設置する場合、利用者の方への配慮も考える必要があります。設置する場所によっては利用者の方に監視している印象を与えないよう、存在感や威圧感がないカメラを選定することがおすすめです。防犯カメラの具体的な形状としては、サイズがコンパクトで目立ちにくいドーム型の防犯カメラなどが良いでしょう。
また、カメラ設置に関する説明を従業員や利用者にきちんと行い、設置に対する同意を得ておくことも必要です。

病院・クリニック向けのALSOKの防犯サービス

総合セキュリティのALSOKでは、病院・クリニックへ向けた防犯サービスの提供も行っております。

災害時などの停電対策として使える「可搬型蓄電システム」や、安心感の高い非接触型の顔認証による「出入管理システム」など、病院向けの防犯対策がお選びいただけます。
また、防犯カメラ・監視カメラの設置や機密文書の安全な集荷・廃棄、災害時の安否確認システムの構築などさまざまなサービスを提供しています。

上記でご紹介した各種サービスを、病院の特徴や性質に合わせてコンサルティングしながら導入・維持をサポートする「病院・クリニック 防犯コンサルティング」のソリューションもご用意。貴院に最適な防犯対策を、プロのアドバイスで導入することができます。

また、ALSOKではその他にもいつ起こるかわからない情報漏えいを防ぐために、ネットワークセキュリティやIT資産管理などさまざまな対策サービスをご提供しています。

まとめ

今回は、数多くのセキュリティリスクが存在する病院における防犯対策についてご紹介しました。
病院内では不審者による病院荒しや乳幼児の連れ去り、カルテの改ざんや薬剤の盗難、入院患者によるトラブルや院内暴力など、不特定多数の人が集まる場所特有のリスクがあります。大規模病院にとどまらず個人経営のクリニックなどにも特有のリスクがあるため、各病院に合った対策を選定の上、導入すると良いでしょう。
ALSOKでは病院に合わせた防犯・防災対策をコンサルティングするサービスも行っていますので、対策の選定に迷った際にはぜひご相談ください。