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海外出張時における安全対策と必要な管理体制とは

海外出張時における安全対策と必要な管理体制とは
2021.03.29

業務における海外出張・滞在に関して気になる点として、安全に関することを挙げる方は多いと思います。海外出張時にはどのようなリスクがともない、それらに対しどのような対策をとる必要があるのでしょうか。
この記事では、海外出張で想定されるさまざまなリスクや、それらを回避・防止するための対策、企業に必要な管理の実施についても取りあげます。

海外出張における安全対策の重要性

現在の海外進出の状況

外務省の「海外進出日系企業拠点数調査」によると、2019年10月1日現在で海外進出している日系企業の拠点数は「74,072拠点」。おもな地域別の内訳は、アジアが50,171拠点、北米が9,866拠点、欧州が7,959拠点、中南米が2,908拠点となっています。
日本の企業のグローバル化が長らく提唱されてきましたが、現在では大企業にとどまらず、中堅企業や中小企業も他国に拠点を設けることが珍しくなくなっています。

企業と従業員間の労働契約「安全配慮義務」とは

日本では、企業と労働者が労働契約を結ぶ際の「安全配慮義務」が定められています。労働契約法第5条における「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」という条文がそれにあたります。
海外で勤務する労働者についても、安全配慮義務に基づく最大限の配慮が必要とされています。これに関しては2015年、海外勤務者の労災適用に関する裁判において「出張か駐在かに関わらず、海外勤務者が現地で安全で健康に働けるように企業は安全配慮義務(労働契約法第5条)を負う」という判決文が出ています。
これらにより、社員が海外出張中に安全上・健康上リスクを負うような事態が発生すれば、企業の責任が問われることも十二分にあり得ると言えます。

しかしながら、海外における安全面でのリスクに関して日本国内から具体的な対策を行うことは難しいのが実情ではないでしょうか?

外交白書から見る邦人援護の件数

以下は外務省の「外交青書2020」による、2018年の邦人援護件数の事件別および地域別の内訳をグラフ化したものです。

2018年の邦人援護件数の事件別グラフ
2018年の邦人援護件数の地域別グラフ

合計にして20,630件もの邦人援護の事案が海外で発生しており、そのうち犯罪被害においては「窃盗」がもっとも多いことが確認できます。また地域別のグラフでは、北米とアジアでの援護件数が他地域と比較し格段に多くなっています。
一見平和に感じられる国においてもさまざまなリスクが潜んでいることを意識し、つねに安全を守るための取り組みが必要であることが分かります。

海外出張を行う企業に求められる対策

海外出張を行う企業に求められる対策

実際に社員を海外へ送り出す企業として、社員の安全を最大限に守るためどのような対策を採る必要があるのでしょうか。ここでは、社員の海外出張を行っている(または検討している)企業がとるべき対策についてご紹介します。

渡航先の情報収集を行う

出張する社員本人だけでなく、企業側も社員を渡航させる出張先の基本情報を集めて現地の状況を把握しましょう。
現時点での渡航先に関する情報を知るには、外務省の海外安全ホームページが役立ちます。

出張期間に応じて必要な手続き

出張期間により「オンライン在留届」の提出または「たびレジ」の登録を行う必要があります。
「たびレジ」とは、「在留届」提出義務の対象ではない3か月未満の短期海外出張者が、旅行日程、滞在先、連絡先などを登録することで、滞在先の最新安全情報や緊急事態発生時のメールなどを受け取れるシステムです。あらかじめ登録が必要なため、出張の詳細が決まり次第登録しておくと良いでしょう。

【3か月以上滞在する場合】

在留届を現地の大使館または総領事館に提出します。電子届出システムがあるため、それを活用しましょう。

【3か月未満の出張の場合】

外務省海外旅行登録(たびレジ)に登録を行いましょう。

現地トラブル回避のために行っておくこと

海外出張時の代表的なトラブルには一般犯罪のほか、テロや自然災害、予期せぬ緊急事態に見舞われる可能性などが挙げられます。
渡航先でトラブルに巻き込まれることを防ぐために、渡航前には従業員に対して教育を行っておきましょう。事前に現地の情報収集しておくことはもちろんですが、過去の事例を踏まえた対策を講じておくことも大切です。
海外拠点を持っている企業は、定期的に現地の状況に合わせたリスクを把握し、従業員には海外出張時における安全対策研修を実施することが必須です。

安全のための三原則

  1. 目立たない
  2. 行動を予知されない
  3. 用心を怠らない

海外渡航・赴任先での行動は「安全のための三原則」を守ることが、危険を避け自分の身を守ることにつながります。
慣れない海外生活の中で、自分の行動が「安全のための三原則」を守れているかどうか意識して確認するようにしましょう。

海外出張を実施する企業が具体的に行うこと

現地での緊急時における連絡先の確認と周知

警察や現地大使館など、何かあったときの連絡先を出張する従業員に必ず通知し、当該時はすぐに連絡を入れるよう認知を図っておきましょう。

海外出張マニュアルの作成

海外出張する従業員向けに、企業内の海外出張マニュアルを作成しましょう。海外出張マニュアルのなかでは、何かあった際の対応基準についても策定を行っておきます。(例:危険情報レベル3になったら退避の準備を始める、など)

現地警備会社との連携

出張先でのトラブル時、確実に動いてもらえるように現地の警備会社と連携を図っておきましょう。

安否確認サービスの導入

警備会社などが提供している安否確認サービスを取り入れ、企業側が従業員の状況をすぐ把握できるよう取り計らっておきましょう。

現地での所在を明確にし、時差などを考慮した連絡体制を準備する

出張中の従業員の所在を把握できる手段を確保し、時間帯に応じた緊急連絡手段の確保を行いましょう。

日本人が海外でおもに受ける犯罪被害

日本人が海外で遭うおもな犯罪被害には、以下のような事例が挙げられます。

盗難

スリや置き引きなど、街頭で発生する窃盗被害です。スリによる被害の発生場所は、駅や繁華街などの人込み(雑踏に紛れて財布などを盗まれる)が中心です。また、置き引きが発生するおもな場所は飲食店(手荷物を置いて目を離したタイミングで盗まれるケース)や空港(諸手続き時に手荷物を置いたタイミングで盗まれる)となっています。なるべく貴重品は身につけて体から離さない、そもそも貴重品は外へ持ち出さないなどの対策を行って被害を防ぎましょう。

ひったくり

歩いているとき、通りすがりの人にバッグなどの手荷物を奪われるケースです。発生する場所は街頭が中心で、なかでも裏道など人通りの少ない場所は注意が必要です。

ぼったくり

いわゆる詐欺ですが、なかでも飲食店で不当に高額な料金を請求されるケースが多くあります。名前を知らない飲食店にはなるべく入らない、カジノなどには足を運ばないといった対策をとりましょう。

スキミング

クレジットカードの情報を特殊な機器で読み取り、その後不正使用を図るケースです。空港や街頭などで直接カードを狙う方法から、店舗のカードリーダーにスキミング専用の機器を取り付けるなどの悪質な手口もあります。スキミングが困難なICカードを持つ、盗難や不正利用に関する保証が付いたカードを選ぶなどの対策をとりましょう。

空き巣

出張滞在している現地のホテルを狙い、留守中に金品を盗むケースです。対策としては留守中の戸締まりはもちろん、貴重品の管理には細心の注意を払いましょう。

誘拐

連れ去りを目的とした誘拐のほか、出張中の企業社員であることを知って身柄を拘束し、企業側に身代金を要求するケースなどもあります。治安が良くないとされる場所では出歩かないよう、自分の身を守るようにしましょう。

上記でご紹介した代表的な犯罪被害のほか、感染症や麻薬による被害、テロなどのトラブルに見舞われる可能性はどの地域においてもゼロではありません。可能な限りとり得る対策をとり、安全の確保に努めましょう。

もし海外出張中に犯罪に巻き込まれたら

海外出張時に犯罪に巻き込まれた場合、本人や企業はどのような対処を行うことが望ましいのでしょうか。ここでは、海外出張中に犯罪被害に遭った際の適切な対処についてご紹介します。

抵抗しない

万が一誘拐などの被害にあった際は、抵抗しないことが重要です。有事に直面した場合に携帯電話で連絡し、助けを求めることはほぼ不可能といえます。抵抗せず犯人の指示に従い、犯人を刺激しないようにしましょう。

現地の警察に届け出

実際に被害に遭った場合はすぐ現地の警察へ被害に遭った旨を届け出てください。

日本大使館への連絡

被害の届け出が済んだら、次に現地の日本大使館へ連絡を行います。日本大使館において対応できる範囲は、以下のURLをご参照ください。

海外旅行の事前の安全対策とトラブルの際に在外公館がお手伝いできること

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201108/1.html

会社への報告

事前の取り決めに沿って、会社へ被害に関する報告を行います。ここまでの対処をスムーズに行うためにも、社内で海外出張マニュアルの作成を行って出張者へ周知を図ることは大切と言えます。

無差別テロに巻き込まれないためには

海外出張・滞在者が現地での無差別テロに巻き込まれ、被害を受けた事例は過去にも報告されています。企業が直接テロの標的になるケースはきわめて少ないものですが、出張者が街頭などで発生する無差別テロに偶然巻き込まれる可能性は十分あり得ます。
テロによる被害を防ぐため、海外出張時には以下のことに十分気を配りましょう。

  • 現地で過去に起こったテロ事件があれば、その発生時間や発生状況などを調べておき、今後の発生の可能性について把握しておく
  • 爆破テロが発生すると爆風でガラスが割れて怪我をすることもあるため、窓ガラスが多いビルの下の通行は避ける
  • 過去にテロ事件が発生した区域へは可能な限り立ち入らない
  • どうしても立ち入る必要があれば、被害が危ぶまれる場所へはなるべく立ち入らず、テロ発生の可能性のある時間帯を回避する
  • 近くで爆発事件の発生が疑われる場合、ふたたび爆発を起こす可能性を鑑みてその現場からなるべく遠くへ立ち去る
  • 爆発音などの大きな音が聞こえた際にはすぐに伏せる

海外で発生するその他のトラブル(リスク)

海外出張時のリスクは、犯罪被害だけではありません。さまざまなトラブルの可能性を未然に防ぐための対策を講じましょう。ここでは、海外で見舞われる可能性のある犯罪以外のリスクについてもご紹介します。

パスポートや財布などの紛失

実は海外で日本人が遭うトラブルで多く発生しているのが手持ちの金品やパスポートなどの紛失です。代表的な原因には置き忘れや、気づかずスリ被害に遭ったケースなどが挙げられます。これらのトラブルを防ぐには、以下の対策を行うなどして備えましょう。

  • 財布は2つに分け、不要な現金やカードを持ち出さないようにする
  • 渡航の際は貴重品をスーツケースに入れず、手荷物として携行する

病気や怪我

海外出張時は必ず直前に健康診断を実施すると思われますので、健康リスクがあると判断された場合は出張しないことになるでしょう。ただし、現地で万一急病に見舞われる可能性はありますし、怪我をしてしまうこともあり得ます。また渡航する国や地域によっては事前に予防接種が必要な場合もあり、現地で感染症に罹るリスクも想定しておく必要があります。
そのようなケースに備え、日本語が通じる病院が現地近くにあるかを事前に必ず調べておきましょう。日本語が通じない場合、多くの国で病院内の会話は英語が中心です。英会話ができれば問題ありませんが、そうでなければ病院で使う英単語や会話を事前に身につけておくと良いでしょう。受診の際には辞書や電子辞書を携行し、メモ用紙などもあれば安心です。

ストライキ

日本でもストライキの事例が稀に報じられますが、海外では頻繁にストライキが行われている国や地域があります。その際には交通機関や物流が停まってしまうリスクがあるため、業務上支障が生じた場合はすぐその場で会社へ連絡を入れる必要があります。また、その混乱に乗じた犯罪などの二次被害に遭わないよう、適した対策をとりましょう。

自然災害

地震や水害、噴火などの自然災害に遭うリスクは、海外でも日本と同様にあります。日ごろから被害を最小限に抑えるための備えに努めるとともに、万一災害に遭った際は命を守ることを最優先に行動しましょう。

交通事故

日本と海外では、道路での交通事情もかなり異なる場合があります。自動車を運転する場合現地の法規に則ることはもちろん、歩行者として行動する際も現地の交通事情を把握し、標識や信号の指示を覚えておきそれに従いましょう。

海外旅行傷害保険への加入を

出張時の突然のリスクに備えるには、海外旅行傷害保険へ加入しておくことも有用です。保険会社によって出張時にも加入できる海外旅行保険が用意されている場合や、海外長期滞在向けの保険商品が展開されていることがあります。

海外出張に役立つALSOKのサービスについて

国内で警備会社として安全に関するノウハウを培ってきたALSOKでは、海外出張時の安全を守るために役立つサービスも多数展開しています。

安否確認サービス

海外拠点でも日本と同様に、出張・駐在している従業員の安否について即時確認できます。

感染症対策アイテム

世界的に感染症対策が求められる昨今において、現地での入手が難しいことも予測できるフェイスガードや消毒用アルコール製剤などの感染症対策商品を提供します。

まとめ

海外出張時には、日本で求められる安全意識を前提にすると想定が困難な状況に見舞われることもあり得ます。出張者が個々で万一に備え自衛を図っておくことは何より重要ですが、企業としても現地のセキュリティ管理を高い水準で実施することを考える必要があるでしょう。
ALSOKでは、企業の海外拠点向けに防犯・防災に加え設備管理までひとまとめにした安全安心ソリューションを展開しています。海外拠点を持つ企業や進出を検討中の企業で、セキュリティ管理に関するお悩みがあればぜひお気軽にお問い合わせください。