安否確認とは?企業における重要性や確認方法、実施のポイントを解説

安否確認とは?企業における重要性や確認方法、実施のポイントを解説
2025.08.27更新(2023.09.08公開)

地震や台風などの災害、テロやパンデミックなどの緊急事態が発生した際、企業には全従業員の安否の確認が求められます。しかし、緊急事態に対応できる体制が整っていない、安否確認システムを導入済みだが確認方法が分からない、どの安否確認システムを選べば良いか分からないという担当者の方もいるでしょう。

この記事では、緊急時の安否確認の必要性や安否確認の方法、安否確認システムの選び方までご説明します。企業のBCP対策として安否確認システムの導入を検討している場合は、ぜひご参考にしてください。

目次

安否確認とは?

安否確認とは、災害や緊急事態の際に、従業員とその家族の無事・安全を確認することです。また、サプライチェーンの観点から、事業継続に向けて緊急の対応・復旧作業が可能な人員を把握することも安否確認の大きな目的です。

安否確認の確認事項には、以下のようなものが挙げられます。

  • 生存状況(本人及び家族)
  • 負傷の有無とその程度
  • 現在地と周辺の状況(災害の影響、交通状況など)
  • 出社・業務対応の可否

最優先すべきは、生存確認や負傷の程度といった人命に直結する事項です。また、従業員ごとの現在地を確認することで災害の影響なども把握しやすくなります。負傷の有無や程度などと併せて周辺の交通状況も聞き取り、出社や業務が可能な状態かを確認することも大切です。営業などの外勤者と事務職などの内勤者がいる場合は、従業員によって現在地が異なることもあり、人によっては大きな被害を受けている可能性もあります。

なお、企業における安否確認では、従業員自身だけではなく、その家族の安否も併せて確認することも重要です。

企業における安否確認の重要性

内閣府の調査によると「被害を受けた際に有効であった取り組み」について、全体では「社員とその家族の安全確保」(42.8%)、「安否確認や相互連絡のための電子システム(災害用アプリ等含む)導入」(37.9%)、「リスクに対する貴社の基本的な対応方針の策定」(35.9%)、「備蓄品(水、食料、災害用品)の購入・買増し」(35.3%)、「訓練(安否確認、帰宅、参集等)の開始・見直し」(34.3%)でした。有効な取り組みとして安否確認と回答した企業が多くなっています。
また、「被害後も実施している取り組み、及び被害後に新たに実施した取り組み等」について、全体では「安否確認や相互連絡のための電子システム(災害用アプリ等含む)導入」が3番目に多い結果となっており、企業規模に限らず安否確認の必要性を感じている企業が多いことが分かります。
そもそも、なぜ安否確認が企業にとって必要なのでしょうか。

安否確認や相互連絡のための電子システム(含む災害用アプリ等)導入
出典:内閣府「令和5年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査

従業員とその家族の安全確保

災害や緊急事態が発生した際、従業員本人だけでなく、従業員の家族の安否も含めて迅速に把握することが重要です。早期に状況を確認することで、企業として適切な支援や対応を実施できます。

事業継続のための状況把握(BCP対策)

緊急時の安否確認を通じ、どの従業員が出勤可能で、どの部門に支障が生じているかを迅速に把握することで、代替要員の配置や業務の優先順位付けを適切に行えます。従業員の安全が確保されてこそ事業の継続が可能となるため、企業にとって安否確認はBCP対策(事業継続計画)の一環といえます。BCP対策とは、災害やテロ、サイバー攻撃、感染症など緊急を要する事態が発生した際に、事業を停止させないための対策やその計画を指す言葉です。安否確認等のBCP対策を講じることで、企業の核となる事業を早急に復旧させ、企業としての損害を最小限に抑えられます。

法的義務の遵守

労働安全衛生法第3条では、事業者は従業員の安全と健康を確保する義務が明記されており、緊急時の安否確認もこの義務の一環として位置づけられています。企業は社会的な責任として、大切な従業員の命と健康を守り、安全に働ける環境を整えるために安全配慮義務を遵守することが求められます。企業にとって、安否確認は安全配慮義務の一環として取り組むべき施策といえるでしょう。

安否確認を実施する際のポイント

緊急時に円滑な安否確認を行うには、事前準備が欠かせません。ここでは、安否確認を効果的に実施するためのポイントを解説します。

連絡手段や報告内容を明確化しておく

緊急事態が発生した際の連絡手段や報告内容は、事前に明確化しておきましょう。電話やメール、SMS、専用アプリなど複数の連絡手段を準備し、通信障害に備えた優先順位を設定します。また、報告内容は「無事・軽傷・重症」などの安否状況や現在地、帰宅・出勤の可否など、事業継続判断に必要な項目を決めておきます。

個人情報に注意する

安否確認では、従業員の居場所や家族構成、健康状態など機密性の高い個人情報を取り扱うため、厳格な管理体制が必要です。情報の保存期間や削除方法など、情報の取り扱いに関するルールを事前に定めておきましょう。

安否確認方法を定期的に周知する

安否確認は、企業側の体制整備だけでなく、従業員の協力があって初めて機能します。
そのため、緊急時でも従業員が迅速に対応できるよう、日常的に安否確認に対する理解度を高める必要があります。社内勉強会や模擬訓練を定期的に実施し、安否確認の重要性や具体的な手順を周知しておくことで、非常時の混乱を防ぐことができます。

安否確認の方法

安否確認の方法

安否確認の方法には、以下のようにいくつか方法があります。それぞれの特徴や注意点を理解し、自社の状況に合った方法を組み合わせることが重要です。

安否確認の方法 自動一斉送信機能 不随サービスの有無 集計のしやすさ 回線の繋がりやすさ
安否確認システム
チャット
SNS ×
電話 ×
災害伝言ダイヤル171 ×(現実的ではない)

従来型の安否確認手段

長年、多くの企業で使われてきた安否確認の方法をご紹介します。手軽に始められる一方、災害時特有の課題もあります。

電話

従業員に会社用携帯・スマートフォンを貸与している場合、電話での安否確認を採用している企業も多いでしょう。簡単な操作で連絡が取れるため利用しやすく、実際に相手の声を聞ける安心感もあります。
しかし、災害時には電話回線が混雑し、つながりにくくなる可能性があるため、電話のみでの安否確認はリスクが高いといえます。

災害伝言ダイヤル171

災害伝言ダイヤル171とは、災害時に被災地への通信が増加し、回線がつながりにくい状況になった場合に利用できる、NTTの無料伝言サービスです。携帯電話や固定電話などから171に電話をかけることで、時間や場所を問わず伝言を残すことができます。ただし、残せる伝言の数には限りがあるため注意が必要です。また、誰が伝言の内容を確認・集計するのかも課題となります。

近年トレンドの安否確認手段

大きな災害を経験してきた現在では、従来の手段だけでは不十分とされ、新たな安否確認方法が導入されています。

チャット

社内連絡用の手段として導入されているチャットツールで安否確認を行うケースもあります。普段から業務で使用している、使い慣れたツールで連絡を取れることはメリットです。また、特定のメンバーのみが参加しているグループを作成できるため、全社だけではなくチームや部署ごとの安否確認も行いやすいでしょう。
ただし、メールと同様にサーバにアクセスが集中すると円滑に連絡が取れず、回答の集計に手間と時間がかかるなどのデメリットがあります。

SNS

X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSで安否確認を行う方法があります。従業員がSNSを更新し、自分の無事を報告していれば、現在の状況などが把握可能です。また、SNS上のメッセージ機能を活用して、メールのように直接連絡を取ることもできます。

しかし、企業がSNSで従業員の安否を確認するには、従業員全員のSNSアカウントを把握していなければなりません。プライベートのアカウントを会社に教えたくないという従業員への連絡には使用できず、回答の集計にも手間と時間がかかるため、あまり現実的ではない方法といえます。

安否確認システム

安否確認システムは、災害時における従業員の安否確認を支援するサービスで、企業が安否確認を行う際に必要な機能が豊富に搭載されています。企業向けサービスのため、ある程度のコスト(100名の規模で、1名あたり150円~400円ほど)はかかりますが、効率性の面で大きなメリットがあります。中には、地震だけでなく台風や豪雪など、ある程度予測できる災害の注意喚起や、感染症による従業員の健康管理にも活用できるサービスもあります。

電話・メール・チャットなどでは、手動で安否確認・回答の集計を行わなければなりませんが、安否確認システムではメールの自動一斉送信や自動集計が可能です。手動で行うよりも効率的に安否確認を行うことができます。

安否確認システムの選び方

安否確認システムの選び方

現在、さまざまな種類の安否確認システムが提供されており、何を基準にして選べば良いのか分からないこともあるでしょう。安否確認システムを導入する際は、以下の点に注目して比較・検討することをおすすめします。

緊急時のスムーズな起動

安否確認システムは、災害などの緊急時に使用するものです。そのため、いざというときにシステムが機能しないと意味がありません。
例えば、サーバが1ヵ所にしかない場合、その拠点が被災するとシステム全体が停止する恐れがあります。サービスを選ぶ際は、サーバを複数拠点に置いているなど、緊急時にも安定した利用が可能なサービスを選びましょう。

また、災害発生時に自動起動するかも重要なポイントです。過去の実績や導入事例を確認し、サービスの信頼性を判断してください。

連絡手段の多様性

災害時は、通信インフラが不安定になります。連絡手段が1つだけだと、安否確認が滞る可能性があるため、電話やメールに加えて専用アプリなど、複数の連絡手段を備えているサービスを選ぶと安心です。インターネット回線や電話回線など異なる通信方式を組み合わせることで、安否状況の収集スピードが速くなり、迅速な確認が可能になります。

セキュリティ対策

企業が安否確認システムを利用する際は、企業の情報や従業員の個人情報などをサービス側に登録します。サービスのセキュリティが強固でないと、情報漏えいの恐れもあるため、セキュリティ対策が万全なサービスを選びましょう。

操作性

災害発生時は誰もがパニックになり、冷静な対処が難しくなります。そのため、使いやすいシステム設計になっているかどうかは重要なポイントです。画面の見やすさやメッセージのプッシュ通知の有無、直感的な操作が可能かなどをチェックしてください。

従業員の家族まで安否確認ができるか

従業員は企業にとって大切な家族であり、従業員の家族もまた大切な存在です。従業員自身が無事であっても、家族の行方が分からない、連絡が取れないといった状況では従業員の精神的負担はとても大きく、正常な判断ができないこともあるでしょう。本人に安心して働いてもらうためにも、従業員の家族まで安否確認を行うことが必要です。従業員とその家族がお互いに安否を確認できるサービスであれば、迅速に家族の状況を把握でき、次の行動に移りやすくなるでしょう。

GPS機能の有無

位置情報送信機能を有した安否確認システムであれば、従業員の位置情報をすぐに把握できます。災害発生時の位置情報を確認できれば、従業員の現在地だけでなく、従業員からの情報や報道情報などから地域の被災状況を把握しやすくなります。

集計・レポート機能

回答状況をリアルタイムで集計し、可視化できる機能があると、速やかに全体の状況を把握でき、管理者の負担軽減につながります。状況把握から意思決定までの時間を短縮できる点も大きなメリットです。

サポート体制

安否確認システムを導入する際は、サービスのサポート体制が十分かどうかも確認しましょう。緊急事態でもすぐに対応できるよう、24時間365日対応のサポートがあると安心です。また、システムの操作研修や定期的な訓練支援サービス、無料トライアルなど導入前後でサポートがあるかどうかも重要です。

オプション機能

安否確認システムには、従業員の安否を確認するメールの一斉配信だけでなく、多くの従業員を抱える企業が必要とするさまざま機能が搭載されています。安否確認情報を従業員の家族に共有できる機能や、SNSとの連携、さまざまな企業・団体が集めた安否情報を一括で確認できるサイトと連携が可能なものもあります。
他にも、項目を選択するだけで回答できるアンケート機能や、情報漏えいを防ぐ二段階認証、関連契約先の安否共有機能などもあります。多くの機能があるため、自社にとってどの機能が必要なのか整理することで、安否確認システムを最大限に有効活用できます。

  • プッシュ通知
  • 掲示板機能
  • GPS連携
  • 一斉メール配信
  • 自動集計機能
  • 家族の安否確認
  • アンケート機能
  • BCP対応の機能
  • 人事マスタ連携
  • 二段階認証
  • 関連契約先の安否共有 など多数

ALSOKの安否確認サービス

ALSOKでは、災害時に社員の状態を迅速に把握できる「安否確認サービス」を提供しています。地震・防災気象情報を元に、災害発生時に自動で安否確認メッセージを送信します。直感的で分かりやすい画面で、緊急時でも簡単に安否状況を登録できます。
災害発生時には通信回線の故障や混雑などによって、メールによる通知やWebページでの安否状況の登録が困難なことがあります。
メールのほか、専用アプリでの通知と状況登録が可能なため、いざという時も従業員の安否確認をサポートします。
また、二段階認証やGPS連携、関連契約先の安否共有など、便利な機能を豊富に搭載しており、緊急時だけでなく平常時の社内連絡や訓練にも使いやすい安否確認システムです。効率的かつ確実なシステムをお探しの場合は、ぜひこの機会に導入をご検討ください。

まとめ

地震・台風といった災害や、テロやパンデミックなどの緊急事態が発生した際、企業には従業員の安全を守り、緊急時でも事業を継続できる体制を整えることが求められます。緊急時に従業員の状況を確認するために役立つのが安否確認システムです。従業員やその家族の安否や状況を速やかに把握し、出社や業務対応が可能かなどを確認できます。自社に適した安否確認システムをお探しの際は、ぜひALSOKにご相談ください。