サーマルカメラとは?サーマルカメラの仕組みと活用事例

サーマルカメラとは?サーマルカメラの仕組みと活用事例
2023.02.28

近年、商業施設・飲食店・オフィスビルなど、多くの場所でサーマルカメラが活用されています。「検温のために使うもの」という印象が強いかもしれませんが、実はサーマルカメラの活用方法はさまざまです。
しかし、サーマルカメラの導入を検討している方のなかには、そもそもサーマルカメラとは何なのか、その仕組みがどうなっているのか分からない方も多いかもしれません。

この記事では、サーマルカメラの仕組みや具体的な活用事例と併せてご紹介します。

目次

サーマルカメラとは?

サーマルとは、「thermal:熱の」という意味の英語です。つまり、サーマルカメラとは「熱を感知するカメラ」を意味します。

サーマルカメラを用いることで、対象物に直接触れることなく、カメラに映るものの温度を測ることが可能です。衛生的かつ効率良く対象物の温度を測ることができるため、最近は感染症対策の一環としてさまざまな場面で活用されていますが、その用途は感染症対策に限りません。サーマルカメラをどのように活用できるのかを知るには、サーマルカメラの仕組みについても把握しておくと良いでしょう。

サーモグラフィー

サーマルカメラとともによく聞く言葉に、サーモグラフィーがあります。

サーモグラフィーとは、サーマルカメラで撮影した対象物の表面温度を、色別に表示して視覚化する装置のことです。

サーモグラフィーは感知した温度を赤~青のグラデーションで表示でき、赤は温度が高い・青は温度が低いことを表しています。不特定多数の人が行き交う場所でも、一人ひとりの温度を映像で捉えることができるため、感染症対策が重要視される空港・医療機関など、幅広い場面で活躍しています。

サーマルカメラの仕組み

サーマルカメラの仕組み

人やものなど、熱を持っているあらゆる物体・物質は、遠赤外線という電磁波の一種を放っています。
遠赤外線は温度が高いところではエネルギーが強まり、温度が低いところでは弱まるという性質を持っています。サーマルカメラには、この遠赤外線を検出できるセンサーが搭載されているため、遠赤外線の強弱を反映した映像を映し出すことができるのです。

この機能のおかげで、温度が高いところ・低いところを、映像を通して容易に判断できる点がサーマルカメラの大きな特徴でしょう。

また、一般的な温度計は直接物体に触れて温度を計測しますが、サーマルカメラでは物体が放つ目に見えない赤外線を検知して計測するため、直接物体に触れることなくこと計測が可能です。

なお、近年の技術の発達により、AIを駆使した計測データの管理・保存、顔認証システムなどを搭載しているサーマルカメラもあります。その他にもサーマルカメラには多くの機能が搭載されたものもあり、さまざまな場面で活用されています。

赤外線について

赤外線は780㎚~100µmの波長域を持つ光で、19世紀前半に発見された電磁波の一種です。人間の目に光として感じる可視光線の波長域は380~780nmなので、赤外線は目には見えない光だといえます。

また、赤外線は強い熱作用を持つことから、熱線と呼ばれることもあります。先述のように、サーマルカメラはこの赤外線(遠赤外線)の熱を感知し可視化することで、撮影した映像に温度の違いを反映させています。

なお、赤外線は近赤外線・中間赤外線・遠赤外線の3種類に分類されます。それぞれ、以下のように波長の長さが異なります。

  • 近赤外線:0.7~2.5µm
  • 中間赤外線:2.5~4µm
  • 遠赤外線:4~1,000µm

※µm:マイクロメートル

サーマルカメラの特徴

遠赤外線を検出して映像化できるサーマルカメラの特徴を、より具体的に見ていきましょう。

非接触で体表面温度を計測できる

サーマルカメラはカメラに映った物体の体表面温度を非接触で計測できるだけでなく、対象の温度変化をリアルタイムで検知できるので、より正確な体表面温度を把握できます。

暗所でも撮影可能

一般的なカメラでは光源がない暗所などでは対象を捉えられず、うまく撮影できないこともあります。しかし、サーマルカメラは対象自体を捉えるのではなく、赤外線を感知して温度を計測するため暗闇でも撮影可能です。設置場所を問わず、また明るさに関係なく撮影することができます。

視界が悪い状況でも撮影可能

サーマルカメラが捉える遠赤外線は、物体をすり抜ける透過性能が高い性質を持っています。物体をすり抜けやすいということは、遠赤外線を遮るものがサーマルカメラとの間にあっても対象を検知しやすいということです。そのため、暗所だけではなく、煙や霧が発生しているなど視界が悪い環境でも撮影に支障はありません。

離れた場所からでも撮影可能

サーマルカメラは人の体表面温度を測定する用途では短い距離にしか対応していませんが、離れた場所にいる対象も撮影可能です。どれほどの距離まで撮影できるかは種類によって異なりますが、監視用などの高精度なサーマルカメラだと200m~20km程度先まで撮影できるものもあります。

短時間で複数人の温度計測が可能

施設内やイベントなどでスタッフが来場者の検温を行う場合、一人ひとりの検温に時間がかかり、スムーズな入場の妨げになります。また、スタッフの業務量が増える、検温専属のスタッフを用意するなど、人的リソースもかかるでしょう。

サーマルカメラは効率的に複数人の体表面温度が計測できるため、人的コストの削減につながります。

機種によってはマスク検知も可能

サーマルカメラの種類によっては、マスクを着用しているかどうかの検知も可能です。マスクの未着用者を検知した場合に、着用するように注意を促す機能が付いているものもあります。病院や介護施設などの感染症予防が特に求められる場所、大人数が集まるイベントなどマスク着用が必要とされる場面では役立つでしょう。

サーマルカメラの活用事例

サーマルカメラの活用事例

ここからは、サーマルカメラが実際にどのように活用されているのか、具体的な事例を見ていきましょう。

海上や国境、産業施設でのセキュリティ監視

先述のとおりサーマルカメラの本質的な機能は「物体から放たれる遠赤外線を検知すること」です。
つまり、サーマルカメラは熱を帯びた物体の存在を感知できるほか、物体の異常な温度上昇なども把握できるため、セキュリティ監視の目的でも活用されています。

具体的に活用されているシーンとしては、不審な船・物体・人物などがいないかを常に監視する海上警備や国境警備、機械や設備の適切な温度管理が求められる産業施設などです。

暗闇や視界が悪い状況でも撮影可能である点も、セキュリティ監視に向いている特徴といえるでしょう。

高速道路での保守・保全作業

セキュリティ監視に近い活用方法として、高速道路での保守・保全作業が挙げられます。
具体的な内容は以下のとおりです。

  • 一定時間停止している車両を発見すると、外部にその情報を伝達する
  • 交通データの取得と交通量の監視を行い、渋滞状況を把握する
  • トンネル内で発生した火災を検知する

サーマルカメラでは、光源の少ない夜間やトンネル内、また肉眼では確認できない火災時の火元なども検知できます。

企業等の受付などでの検温

オフィスビルや企業等の受付では来館者の検温が欠かせません。しかし、訪れる人に対して逐一検温していたら、時間もかかるうえ受付スタッフの業務の負担にもなってしまいます。サーマルカメラで来館者の検温ができれば、発熱者の早期発見に役立つだけではなく、スムーズな受付対応ができるでしょう。

公共施設や商業施設での検温

病院や学校などの公共施設、ショッピングモールやテーマパークなどの商業施設のように、不特定多数の人が出入りする場所での検温にもサーマルカメラは活用されています。検温専属の人員を割く必要がなく、感染症拡大防止につなげられます。

美容院・理容院・スポーツジムなど

大規模施設やオフィス以外でも、従業員が近い距離で接客する必要のある場所でサーマルカメラは活用されています。美容院・理容院では、どうしてもお客様と近い距離で仕事をしなければなりません。また、スポーツジムなど多くの人が1ヵ所に集まって運動する場所では、感染症対策にデリケートになるうえ、インストラクターが密な距離で指導することもあるでしょう。

なお、近年はセキュリティ監視や検温だけではなく、さまざまなサービスが非接触で提供されるようになりました。

以下のコラムでは、非接触サービスのメリットについて詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

サーマルカメラのタイプ別の特徴

サーマルカメラはタイプによって特徴がそれぞれ異なります。ここではサーマルカメラの各タイプの特徴を紹介します。

サーマルカメラにはいくつかのタイプがありますが、ここでは「タブレット型・パレット型・ハンディ型・ドーム型」の4つの特徴について表にまとめました。

タイプ タブレット型 ハンディ型 パレット型 ドーム型
タイプ
別画像
タブレット型 ハンディ型 パレット型 ドーム型
特徴 カメラとモニター(液晶画面)が一体型のカメラであり、サーマルカメラ本体とパソコンをLANケーブルで接続することで情報が閲覧できる。
カメラで撮影した人物の温度をリアルタイムで目の前の画面に表示させることができる。
最も手軽に設置・運用できる。
手持ちのサーマルカメラで、対象者にカメラを向けて計測する。持ち運びがしやすく、スピーディーな検温が可能。複数を一度に検温することはできず、1人ずつ検温する必要がある。他のタイプと比べて導入コストを抑えることができる。 防犯カメラとしても利用可能な、長細い箱のような形をしたサーマルカメラ。
複数の人物を同時に検知できるほか、対象者を追跡する機能を備えた高性能タイプもある。
イベント会場など不特定多数が出入りする施設などに向いている。
防犯カメラとしても利用可能な、半円状のドームのような形のサーマルカメラ。
基本的な性能はパレットタイプと同様だが、対象者に威圧感を与えないことが特徴。
オフィスビルの出入口など、人の出入りを監視したいがデザイン意匠を損ねたくない、威圧感を与えたくない場合の利用に適している。

検温のためにサーマルカメラを運用する際の注意点

では、具体的に検温のためにサーマルカメラを運用する際の注意点について見ていきましょう。

測定環境を安定させる

体表面温度は計測時、計測前の環境温度、被測定者の状態等によって変動します。収集するデータの公平性を保つため、測定の条件が変化しないよう、測定環境にも配慮することが大事です。

測定対象者の肌が見えるようにすること

帽子やサングラスなどを装着している状態では、サーマルカメラは身に着けている服飾品の表面温度を計測してしまいます。正確に体表面温度を計測するには、サーマルカメラの設置場所付近では帽子やサングラスを外してもらうなどの対策が必要です。

室内設置が望ましい

サーマルカメラは気温の影響を受けやすく、「動作環境15℃~30℃」のように屋内での使用に限定されているものもあります。正確な検温を行うためにも、サーマルカメラは室内に設置し、推奨される気温のもとで運用することが望ましいでしょう。

検温の目的・用途によってサーマルカメラを選ぶ

サーマルカメラにはさまざまな種類があります。目的や用途によって最適なサーマルカメラを選択しましょう。

ALSOKでは、「1名測定・各施設用カメラ」「複数同時測定・イベント用カメラ」の2タイプのサーマルカメラをご用意しています。検査の目的や用途に応じて、適切なものをお選びいただけます。各サーマルカメラの特徴は以下のとおりです。

1名測定・各施設用カメラ

体表面温度の測定だけではなく、マスクを着用しているかの検知も同時に行えます。発熱の可能性がある人や、マスク未着用者を検出することで、感染症拡大防止の一助になるでしょう。

また、顔認証機能と連携して、電子錠の制御が行える点も大きな特徴です。
例えば、発熱の可能性がある人やマスク未着用者がオフィスに入室することを制限するため、一定温度以上の場合にはドアを開けられないようにするなど出入りをコントロールすることができます。

おすすめの導入先

  • 小売・飲食店
  • スポーツジム
  • レジャー施設
  • 福祉・介護施設

上記のほかにも、さまざまな施設で活用されています。

ALSOKの商品例

表面温度測定機能付カメラ FACE FOUR

赤外線センサーで測定した体表面温度をリアルタイムで表示します。AIが搭載されており、顔認証システム・マスク検知などの機能も充実しているサーマルカメラです。

表面温度認証リーダー SECURE-HEAT【wrist】

手首をかざして検温するタイプのサーマルカメラです。より高精度な検温ができるほか、顔認証システム・マスク検知機能も搭載されています。

複数同時測定・イベント用カメラ

1名測定用のサーマルカメラとは異なり、複数人の体表面温度の測定が同時に行えます。また、サーモグラフィー画像で検知結果を即座に確認できたり、モバイルゲートを組み合わせて発熱者の入場を抑制したりもできます。

効率的に活用することで、検温に必要な人的リソースや時間的コストの大幅な削減につながるでしょう。

おすすめの導入先

  • オフィス・工場
  • エントランス・入場ゲート
  • 大規模イベント会場
  • 福祉・介護施設

上記のほかにも、さまざまな施設で活用されています。

ALSOKの商品例

サーマルカメラ IPD-TG3211R

複数人を同時に検知し、体表面温度を測定するサーマルカメラです。映像確認用モニターと連携することで、検知結果をすぐにサーモグラフィー画像で確認できます。

まとめ

サーマルカメラは、熱作用の強い遠赤外線を検知し、対象物の体表面温度を測定できるカメラです。近年では、検温など感染症拡大防止策のために活用されることが多いですが、セキュリティ監視や高速道路での保守作業などにも活用されています。
また、サーマルカメラのなかには、顔認証システムやマスクの着用検知機能が付いたものもあります。目的や用途に合わせて最適なサーマルカメラを選ぶことで、感染症拡大防止策になるだけではなく、さまざまなコストの削減にもつながるでしょう。