都市におけるハトやカラス・ハクビシンなどの鳥獣被害の実情と対策

2018.11.28

鳥獣被害は地方・農耕地だけでなく、都市部や住宅地などにおいても深刻化しています。特に問題となっているのが、カラスやムクドリなどの鳥、ハクビシン・アライグマといった外来動物による被害。個人住宅から共同住宅、公共の施設、法人が管理する建物・施設まで、さまざまな場所において被害が発生しています。鳥や外来動物による被害の実情から対策について紹介していきます。

都市部で鳥・外来動物による被害が深刻化

鳥による問題

鳥害の原因となっている鳥の種類は、カラス、ハト、ムクドリ、ウミネコ、スズメなど。どの鳥も比較的身近な存在ですが、場合によっては大きな被害をもたらし、その数の多さや鳥類ならではの性質から有効な対策が打てず、頭を悩ませている人が多くいます。

鳥の種類によって被害の内容に違いはありますが、糞害などが主な問題。衛生・健康に害を与える可能性もあるため注意が必要です。都市部ではこういった鳥害が深刻化している一方で、農耕地では同じ鳥たちに作物を荒らされるケースも少なくありません。年間約172億円に上る野生鳥獣による農作物被害額のうち、約35億円は鳥類による被害。鳥は行動範囲が広いため、都市部での問題と切り離して考えることはできないのです。

具体的な鳥害対策の例として、東京都では増えすぎたカラスによる被害を防止する対策を行なっています。ゴミ対策などの環境管理をするとともに、トラップによる捕獲を実施。対策開始の2001年から2017年までの間に、生息数は約36,400羽から4分の1程度 の8,600羽まで減少し、都庁に寄せられる相談等も大幅に減りました。このように、近年は都市部においても鳥害が大きな問題となっており、鳥の生態などを理解したうえで対策を行なっていかなければなりません。

出典

農林水産省「野生鳥獣による農作物被害の推移(鳥獣種類別)」(平成28年度)
東京都環境局「カラス対策 生息数等の推移(取り組み状況)」

外来動物による問題

外来動物による被害を及ぼしているのは、ハクビシンやアライグマといった動物。生息数や分布が拡大しており、農耕地から東京都心部に至るまでさまざまな場所において被害をもたらしています。

ハクビシンは東南アジア・台湾などを原産とする動物。以前より外来種・在来種どちらかという議論がありましたが、最近の遺伝子解析などによって台湾などから持ち込まれた外来種と結論づけられました。アライグマのように特定外来生物には指定されていませんが、似た生態を持ち、同じような被害が報告されています。

2015年にハクビシンは環境省・農林水産省の「生態系被害防止外来種リスト」において、甚大な被害が予想されるため対策の必要性が高い重点対策外来種に指定。農作物への被害も年間4億円以上と甚大な被害をもたらしています。アライグマ・ハクビシンともに、野生動物であるためみだりに捕獲はできませんが、有害鳥獣(要申請)や狩猟制度にもとづく狩猟対象として捕獲が可能で、被害を防除するとともに環境の管理などの対策が求められています。

一方、アライグマは北アメリカを原産とし、日本においては、海外起源の外来種で生態系や人・農林水産業に被害を及ぼす恐れのある「特定外来生物」に指定。原則として、輸入・譲渡・飼養・移動などが禁止されています。生活環境への被害や建築物破損のほか、生態系に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。農業被害も大きく、被害額は年間で3億円以上。

さまざまな被害を防止する観点から、アライグマは生息数の減少・分布拡大を抑止する対策が取られています。完全な駆除を目指すほど問題視されており、実際に北海道では2003年に「アライグマ対策基本方針」を策定し、野外からの排除を最終目的としています。

出典

農林水産省「野生鳥獣による農作物被害の推移(鳥獣種類別)」(平成28年度)

鳥・外来動物による被害が増えている背景

鳥について

なぜ鳥による被害が増えるかというと、繁殖力の高さが要因のひとつとして挙げられます。例えば、カラスは1年で2倍ほどに増え、ムクドリやスズメは複数回の営巣を繰り返すため1年で5倍ほどに増える繁殖能力を持ちます。ハト(ドバト)は1度に2個しか卵を産みませんが、年に3〜4回繁殖し、餌が十分な環境ではさらに多く繁殖することが可能です。

また、野生の鳥類は鳥獣保護法によって保護されており、駆除のために捕獲したり卵を捨てたりすることは禁止。カラスやムクドリなどは狩猟制度による狩猟対象にはなっているものの、都市部などで個人が捕獲する行為などはできないため、被害を減らすのが困難になっているのです。

鳥の居場所がほかにない、都市部は住み心地がよいといったことも、害が増える要因です。例えば、ムクドリはもともと里山の樹林地などをねぐらとしていましたが、宅地開発などでそういった場所は減少。天敵の猛禽類などから身を守れる市街地に寄りつき、樹木の多い駅前の広場などに集まるようになったのです。ほかの鳥に関しても、都市部などは安全に巣を作れる場所や休憩場所、餌場などが多く、鳥にとって住み良い環境となっているようです。

外来動物について

ハクビシンはアライグマよりも古くから日本にいましたが、正式に生息が確認されたのは1943(昭和18)年・静岡県でのこと。当初は東北・東海・四国に不連続に分布していましたが、確実に生息数・生息域は拡大し、現在では北海道や九州など10県を除く各地で生息が確認されています。

ハクビシンは夜行性(アライグマも夜行性)で、知らない間に家の屋根裏などに侵入して活動し、いつのまにか大きな被害を及ぼすケースが多発。ハクビシンもまた雑食性で繁殖力が高く、農作物や庭の果樹、ゴミ漁りなどで餌を得ます。行動範囲が非常に広く、なわばりを持たずに複数のねぐらを転々と移動することも被害が増える要因です。また、アライグマは天敵であるものの、都市部には猛禽類などの敵はいないため、都市部はハクビシンにとって住みやすい環境と言えるのです。

アライグマはもともと一部の動物園にしかいませんでしたが、1962(昭和37)年に愛知県の動物園から脱走した12匹が自然界で繁殖したのが最初と言われます。また、1970年代に放映されたテレビアニメの影響から、ペットとして多くのアライグマが輸入されました。しかし、アライグマの成獣は凶暴で人に懐かず、飼育を放棄して逃したり、学習能力が高く器用であるためにゲージから脱走したりするケースが多発しました。

アライグマは雑食性で何でも食べるうえ、寒冷・温暖な気候から、森林や農耕地、人間の生活圏まで、幅広い環境に適応できる動物。繁殖力も高く、日本にはオオカミなどの天敵となる肉食哺乳類がいないため、生息数・分布域が拡大しやすいのです。90年代半ばまでは北海道・愛知県周辺のみに分布していましたが、2006年頃から2017年のおよそ10年間で分布域は約3倍に広がっており、生息が確認されなかったのは全国で3県のみとなっています。

出典

環境省「アライグマ、ハクビシン、ヌートリアの生息分布調査の結果について」

鳥・外来動物による被害の例

鳥による被害の例

鳥の種類によって被害内容は少々異なるものの、鳥害はその数の多さや飛翔能力によって引き起こされます。先にも述べた通り、都市部などで大きな問題となっているのは糞害。マンションやオフィスのベランダから駅舎、商店街、公園などの公共施設、工場・倉庫、橋梁まであらゆる場所が鳥のフンで汚染され、悪臭や不快感・美観への悪影響を及ぼしています。また、フンだけでなく羽の飛散も問題のひとつです。

さらにフンや羽による汚染は、衛生や健康に被害を与える恐れも。乾燥したフンの中に含まれる細菌やウイルスなどが大気中を漂い、それが原因となってオウム病やクリプトコックス病などになる場合があります。軽症なら風邪のような症状や皮膚炎程度で済みますが、重症になると肺炎状態になったり、脳に入って死亡に至ったりするケースもあるほど。また、ダニ被害、喘息・アトピーなどのアレルギーが発生する可能性もあるので注意が必要です。

糞害のほか、鳴き声や羽音による騒音、ゴミ漁りなども鳥による代表的な被害。農耕地では農作物が大きな被害を受けますが、都市部では庭の果樹などが食べられてしまうという被害も起こっています。またカラスについては、3〜7月頃の繁殖期に巣や巣から落ちたヒナのそばを通った人を威嚇・攻撃したり、ビニールの買い物袋を突いたりと、人間に危害を与える場合もあり、鳥による被害は多岐にわたっています。

外来動物による被害の例

ハクビシン・アライグマは生態が似ているため、同じような被害が多発しており、都市部では生活環境被害を始めとするさまざまな問題をもたらしています。特に多いのが、屋根裏や床下、物置などに住み着くという被害。鳴き声や物音による騒音のほか、糞尿で汚染されるケースが多く、悪臭や天井のシミ・腐食といった実害を受けることになります。特にハクビシンは同じ場所に糞尿をする習性があり、屋根裏の断熱材を破ってねぐら・子育て場所とする事例が発生しています。

屋根裏などが住処となると、二次被害としてダニ・ノミが発生して刺されたり、喘息やアトピーといったアレルギーの原因となったりする恐れも。また、ハクビシンは疥癬など、アライグマはアライグマ回虫や狂犬病といった人獣共通感染症の病原菌や寄生虫などを媒介する場合もあるため注意が必要。間接的な感染だけでなく、野生動物特有の凶暴性によって噛まれたり引っ掻かれたりして、直接病気をもらうこともありうるので気をつけましょう。

そのほかの被害としては、庭の果樹が荒らされる、池の観賞魚が捕食される、ペットへの危害・餌の横取りといった事例が報告されています。さらに、鎌倉や京都などにおいて神社仏閣の歴史的建造物・文化財を破損させるというケースも。ハクビシンやアライグマは小さな隙間があれば侵入できますが、侵入する際に部分的に破壊する場合があるのです。

ハクビシン・アライグマといった外来動物は、生活環境だけでなく、自然界の生態系に悪影響を与えるという危険性もあります。ハクビシンは重点対策外来種、アライグマは特定外来生物に指定されていることは先にも述べた通り。実際に、アライグマが希少な在来種であるサンショウウオやニホンイシガメを捕食したり、サギ類の繁殖地を破壊したりという被害が出ています。

鳥・外来動物による被害をなくすための対策

鳥による被害の対策

鳥は行動範囲が広いうえ、学習能力が高く対策は難しいとされます。また、しつこいという性質も持っているため、一時的に被害が減ってもいずれ元に戻る場合も。基本的にはほかの野生鳥獣と同様に、被害を防除するとともに、生息環境の管理や個体数管理を行なっていくことが求められます。

鳥はフンが残っていると再びやってくる傾向があり、汚れた場所をそのままにしておかないことが大切。また、マンションなどにおいて、最初は一部にしか被害がなくても、それを放置しているとやがて被害が拡大していく可能性があります。そのため、被害のある場所周辺で協力して、継続的に対策を行うと効果的です。

一般の方が許可なく鳥を捕獲したりすることはできませんので、対策としては被害防除や寄せ付けないようにする対策がメインとなります。防鳥ネットなどによる直接遮断、テグスや鳥よけシートなどによる物理的飛来妨害、音や防鳥テープ・CDなどによる追い払い、鳥が嫌う物質を忌避剤として使用するなどの方法があります。飛来妨害や追い払いにはさまざまなグッズが使われますが、効果は場合によって異なり、絶対的な対策が難しいのも事実。設置当初は効果があっても、高い学習能力によって効果が失われてしまうことも十分にあります。

確実に被害を減らすためには、餌を減らすことが非常に重要です。鳥は餌が多い場所に住み着いて繁殖するため、餌の量を減らすことでその土地で生存できる鳥の絶対数を制限することができます。安易な餌やりをしないのはもちろんのこと、ゴミの管理や庭の果樹を食べさせないといった対策を周辺地域で長期的に行なわなければなりません。

外来動物による被害の対策

ハクビシン・アライグマなどの外来動物の対策についても、同じく被害の防除、生息環境の管理、個体数管理を同時並行でバランスよく行うことが求められます。鳥と比べると、ハクビシンやアライグマは生息数・分布の拡大を防止する方針が明確になっており、屋根裏に住み着くなどの実害を受けた場合は捕獲・駆除することが可能。申請をすれば個人で捕獲することもできますが、衛生上の心配、ペットが誤って捕獲されてしまうケースなどもありますので、基本的には業者などに依頼するとよいでしょう。

個人でできる対策としては、侵入する可能性のある隙間をなくす・丈夫な材質のものに変更するなど。特にハクビシンは運動能力が高いため、侵入する手段となる建物に近い木などにも注意。廃屋・空家なども動物の住処となる可能性が高いため、なるべくそういった場所を作らないという対策も必要です。

そして、餌のある環境を作らないということがやはり重要。生ゴミや野菜クズなどは外に置かないようにしましょう。ハクビシンやアライグマは夜行性であるため、知らぬ間に荒らされてしまう恐れがあります。また、家庭菜園や庭の果樹、ペットの餌なども餌を提供する要因となりますので注意してください。

ALSOKの「有害鳥獣対策」で被害を軽減・効果的な対処

これまで見てきたように、鳥獣による被害は単なる迷惑に収まらず、人の健康・安全や自然界の生態系にまで悪影響を及ぼしています。そういった鳥獣問題に対してALSOKの「有害鳥獣対策」では、対策に必要な機器の販売や設置・管理・駆除などをトータルサポートし、鳥獣問題の解決に貢献します。

ALSOKグループでは、平成30年10月時点で東京・神奈川・千葉・宮城・福島・秋田において「認定鳥獣捕獲等事業者」の認定を取得。すでに周辺地域において実績があり、ハクビシン等の捕獲や駅舎の鳥の追払い装置の販売などを行なっています。

※認定鳥獣捕獲等事業者
鳥獣の捕獲等にかかわる安全管理体制、適正かつ効率的な鳥獣の捕獲等をするための技能・知識が一定の基準に適合している法人を認定するもの。

一般の方では対処が難しい問題だからこそ、警備業界最大級のネットワークを持つALSOKグループ内の鳥獣対策のプロが知識・経験を活かして、さまざまな状況に対応します。鳥や外来動物による被害にお悩みの方はぜひご相談ください。

都市部における鳥やアライグマ・ハクビシンといった外来動物による被害を減らしていくためには、相手の生態をしっかりと理解し、周辺地域全体で長期的に対策を講じていくことが効果的。鳥獣被害に対する問題意識をしっかりと持ち、できることから対策を行なっていきましょう。