長時間労働とは?過労死基準や主な原因・企業が取るべき対策

長時間労働のイメージ
2026.06.23

本記事では、長時間労働の法律上の定義から過労死基準、発生原因、企業が抱えるリスク、そして企業が取るべき具体的な対策までを網羅的に解説します。

「残業が常態化している」「業務過多のため、働き方改革に取り組む余力が確保できていない」——こうした悩みを抱える企業は少なくありません。長時間労働の課題を解決するためには、根本的な原因とリスクを理解したうえで、自社の実態に合った改善策を段階的に進めることが重要です。

【この記事で分かること】

  • 長時間労働の法律上の定義と、過労死基準の目安
  • 長時間労働が生じやすい6つの背景・原因
  • 長時間労働を放置した場合に企業が抱える4つのリスク
  • 企業が取り組むべき長時間労働の是正・削減のための6つの具体的方法

目次

長時間労働とは?法律上の定義と一般的な過労死基準の目安

長時間労働とは、労働基準法が定める法定労働時間を超えて働く状態を指します。法律上、「○時間以上だと長時間労働になる」という明確な定義はありません。しかし、過度な残業は従業員の健康に悪影響を及ぼすとし、厚生労働省により時間外労働の上限規制や労災認定の基準が設けられています。

法定労働時間とは

法定労働時間とは、労働基準法に基づき、使用者が労働者に課すことができる労働時間の上限です。原則として「1日8時間、1週40時間」が上限とされており、休憩時間は労働時間に含まれません。
この基準を超えて働かせる場合には、割増賃金の支払いと所定の手続きが必要となります。
なお、業種や事業場ごとの規模によっては、特例措置として1週44時間まで認められている場合もあります。

参考:厚生労働省 労働時間・休日

36(サブロク)協定と時間外労働の上限規制(原則)

法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合、労働基準法第36条に基づく「時間外・休日労働に関する協定届」、いわゆる36協定を締結する必要があります。36協定は、法定労働時間を超えて従業員に残業や休日出勤をさせる場合、企業と従業員代表が結ぶ労使協定のことです。この協定を結んで労働基準監督署へ届け出ることで、時間外労働が法的に認められる仕組みです。

36協定を締結した場合でも、2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されている上限規制により、時間外労働は原則として月45時間・年360時間が上限となっています。繁忙期など特別な事情がある場合でも遵守しなければならない上限が設けられており、これらの上限規制に違反した場合、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

過労死基準(過労死ライン)とは

「過労死基準(過労死ライン)」とは、長時間労働により、脳梗塞や心筋梗塞などの脳・心臓疾患を引き起こす危険性が高まるとされる時間外労働の目安です。厚生労働省が定める労災認定の判断基準では、発症前1カ月間に100時間超、または発症前2~6カ月間のいずれかの月で平均80時間を超える時間外労働が、過労死との関連性の高い水準とされています。

参考:厚生労働省 脳・心臓疾患の労災認定 過労死等の労災補償 Ⅰ

なぜ長時間労働は起きるのか?発生しやすい6つの背景

大量の仕事を抱えているビジネスマン

長時間労働は、「働きすぎ」の一言で片付けられる問題ではありません。その背景には、人手不足やデジタル化の遅れ、マネジメント不足、企業風土、外部要因、テレワークの普及など多岐にわたる要因が絡み合っています。根本的な解決のためには、発生原因を正確に理解したうえで対策を講じることが不可欠です。

①慢性的な人手不足と業務量の偏り

少子高齢化による人手不足が深刻化している中、採用難や退職者補充の遅れにより、特定の部門や従業員に業務量が集中しているケースが多くみられます。一人ひとりの負担が増大すれば必然的に労働時間も長くなり、組織全体で残業が常態化しやすくなります。

②非効率な業務プロセス(デジタル化の遅れなど)

業務プロセスが整理されていない、またはデジタル化・自動化が遅れている職場では、本来短時間で終わる作業に多くの時間を要します。紙ベースや属人化した業務は無駄な残業を生みやすく、特に中小企業ではDX推進による業務効率化が課題となっています。

③管理職によるマネジメントの不足

管理職のマネジメント不足は、長時間労働が慢性化する要因の一つです。部下の労働時間を適切に把握・管理できていないほか、業務配分の偏りや残業の常態化を見過ごしているケースもあります。

④長く働くことを評価しがちな企業風土

「残業している人は頑張っている」「早く帰る人は仕事が少ない」といった意識が強い職場では、業務が早く終わっても帰りにくい雰囲気が生まれます。こういった企業文化や評価制度が根付いている場合、生産性よりも労働時間が重視される傾向があり、結果として不要な残業が慢性化しやすくなります。

⑤外部要因(取引先等)による急な業務発生

取引先からの急な仕様変更や納期の前倒し、顧客対応などによる突発的な業務増加は、長時間労働の原因となります。特にBtoBでは取引先対応を優先しやすく、無理な働き方につながるため、バッファを持った業務計画や適切な調整体制が重要です。

⑥テレワークによる見えない残業

テレワークの普及に伴い、業務時間外のメール・チャット対応といった「隠れ残業」が増加しています。労働時間と私生活の境界が曖昧になりがちで、退勤後も業務を続けるサービス残業が発生しやすいため、管理者が労働実態を把握しにくい点が課題となっています。

長時間労働を放置するとどうなるのか?企業が抱えうる4つのリスク

長時間労働の問題を放置すると、従業員・企業・社会のさまざまな面に深刻な影響が生じます。リスクを正確に理解することで、対策の優先順位を明確にすることができます。

①従業員への影響(健康被害)

長時間労働の最大の被害者は従業員本人です。過度の疲労は身体的な不調を招くだけでなく、精神面にも深刻な影響を与え、メンタルヘルス不調や休職・退職につながることもあります。さらに過労死ラインを超える残業が続くと、脳・心臓疾患を引き起こし、最悪の場合命に関わる危険もあります。企業には安全配慮義務があり、長時間労働による健康障害が生じた場合は損害賠償や労災認定の対象となる可能性があります。

②企業の生産性低下のリスク(モチベーション低下や離職リスクの増加など)

疲弊した状態での業務は、集中力や判断力の低下を招き、ミスが増えることで生産性を下げます。また、慢性的な長時間労働は従業員エンゲージメントの低下につながり、「会社から大切にされていない」という不満が蓄積されます。結果として離職率が高まり、優秀な人材が流出するという悪循環に陥ります。長時間労働→モチベーション低下→離職→さらに人手不足→残業増加という負のサイクルを断ち切ることが重要です。

③企業ブランド毀損のリスク(イメージ悪化による売り上げ低下や採用活動の難航など)

長時間労働が表面化すると、企業の評判は大きく損なわれます。SNSや口コミで実態が拡散されれば採用難や人材流出を招き、「ブラック企業」とみなされることで売り上げや取引機会の減少につながるおそれもあります。近年、保育士や介護士、看護師など、過酷な労働環境を理由に現場を離れる「潜在有資格者」の増加が社会問題となっています。このように長時間労働の常態化は、企業や業界全体の社会的イメージを損ない、人材不足の深刻化や持続的な組織運営にも悪影響を及ぼします。

④労働基準法違反に問われる可能性(罰則等)

36協定で定められた時間外労働の上限規制に違反した場合、労働基準法第119条に基づき「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。長時間労働に関する基準は同法第32条・第36条で定められており、違反した場合は罰則に加え、労働基準監督署による是正勧告・行政指導を受ける場合もあります。是正勧告に応じなければ、さらに重い行政処分へ発展するおそれがあり、企業の社会的信用や採用活動にも悪影響を及ぼします。

企業が取り組みたい長時間労働の是正・削減のための6つの方法

勤務時間について考えるビジネスマン

長時間労働の解消には、労働時間の可視化、業務の棚卸し、ツール・システムの導入、社内ルールの整備、評価制度の見直し、経営トップからのメッセージ発信など、多方面からのアプローチが必要です。自社の状況に合わせて優先順位を付け、段階的に実施していくことが重要です。

①客観的な労働時間と実態の把握

まず、現在の労働時間の実態を正確に把握することが重要です。勤怠管理システムを活用し、出退勤時刻を記録・集計することで、部門別・個人別の残業時間を可視化できます。そのデータをもとに、過重労働に陥るリスクのある従業員を早期に発見し、管理職が迅速に対処できる体制を整えます。

②業務の棚卸しと優先順位の見直し

日常業務の内容を洗い出し、「本当に必要な業務」「削減・廃止できる業務」「アウトソーシングできる業務」に分類する棚卸しが効果的です。属人化した業務を可視化・標準化することで、担当者が不在でも業務が回る体制を構築できます。また、不要な会議の削減や報告書の簡素化なども、日々の業務時間の削減に直結します。

③RPAの導入などによる業務の効率化

RPAを活用することで、データ入力や集計などのルーティン業務を自動化し、担当者の作業時間を大幅に削減できます。また、チャットツールやプロジェクト管理ツールの導入により、メールのやり取りを減らし、情報共有の効率化も図れます。RPAなどのITツールへの初期投資が必要ですが、長期的な人件費削減や生産性向上が期待できるため、費用対効果を踏まえて導入を検討すると良いでしょう。

④柔軟な働き方や社内ルールの導入検討

フレックスタイム制の導入やノー残業デーの制定、時差出勤制度など、柔軟な勤務形態を取り入れることで、従業員が自分のペースで業務をしやすくなります。また、残業には上長の承認を必須とする「残業申請制度」の導入も効果的です。社内ルールとして明文化し、全従業員に周知することで、長時間労働を抑制するための共通認識が生まれます。

⑤評価制度の見直し

長時間働く人が評価される文化を変えるには、評価制度そのものの見直しが必要です。労働時間ではなく、時間あたりの生産性や成果を重視する評価基準へのシフトが求められます。MBO(目標管理制度)やOKR(目標と主要な成果)などのフレームワークを活用し、個人・チームの成果を定量的に評価する仕組みを整えることで、「定時で帰りづらい」という意識を改善し、生産性向上への意欲も高められます。

⑥経営トップからのメッセージ発信と意識改革

長時間労働の是正において、もっとも重要なのが経営トップからの発信です。「長時間労働を良しとしない」という方針を社内報や会議などで継続的に伝え、残業削減目標や進捗を共有することで、組織全体の意識改革につながります。あわせて管理職向けのマネジメント研修を実施し、部下の労働時間管理と生産性向上を評価項目に含めることも、風土改革を後押しします。

長時間労働の是正に役立つALSOKのサービス

長時間労働の是正を進めるには、労働時間の可視化だけでなく、突発的な設備・ITトラブルによる夜間・休日対応の負担軽減、従業員の健康管理、安全管理などを含めて体制を見直すことも有効です。以下では、その一助となり得るALSOKの関連サービスをご紹介します。

労働時間の可視化に役立つサービス

機械警備

ALSOKの機械警備に付帯されるICカードによる出退勤管理機能により、従業員一人ひとりの勤務状況を可視化し、残業時間の把握を支援します。これにより、長時間労働の早期是正に役立ちます。

入退室管理システム

ALSOKの入退室管理システムは、オフィスや施設の出入・入退室から警備までを一元管理するシステムです。1扉から設置可能で、誰がいつどの部屋に入退室したかを可視化できるため、深夜・休日の実態把握や長時間労働対策にも役立ちます。

業務効率化を支援するアウトソーシングサービス

ALSOK設備レスキュー

ALSOK設備レスキューは、設備のトラブル発生時にALSOKの警備員が24時間365日駆けつけ、事前に定めた応急措置・復旧操作を行うサービスです。ALSOKガードシステムに付加できるオプションとして提供されており、突発的な設備トラブルへの対応に追われがちな担当者の業務負荷を削減します。

ALSOK ITレスキュー

ALSOK ITレスキューは、パソコンやインターネットなどIT機器関連のトラブルにALSOKが24時間365日駆けつけて対応するサービスです。ALSOK ITレスキューを活用することで、トラブル対応をアウトソーシングし、担当者がコア業務に集中できる環境を整えることができます。

入金機・入出金機オンラインシステム

ALSOKの入金機・入出金機オンラインシステムは、売上金の入金や現金管理を自動化・効率化するサービスです。レジ締め・集計・入金といった現金管理業務の負担を大幅に削減でき、従業員が本来の業務に集中できる体制を整えられます。

従業員の健康管理をサポート

産業医サービスALSOKオフィスドクターパック

ALSOKでは専門企業と提携し、小規模事業場向けの産業医サービス「オフィスドクターパック」を提供しております。産業医による就業判断や電話相談などを通じて、従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見・対処し、健康被害の予防につなげます。
また、経営者・人事担当者だけでは対応が難しいメンタルヘルス関連のトラブルについても、労働衛生の専門スタッフがサポートします。

まとめ

長時間労働は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を常態的に超える働き方を指します。放置すれば健康被害や生産性低下、法令違反、ブランド毀損など企業に多大なリスクをもたらしますが、多面的な対策を講じることで是正が可能です。必要に応じて外部サービスや専門家の知見も活用しながら、労働環境を継続的に改善できる仕組みを整えましょう。