外壁調査は義務?ドローン調査のメリット・デメリットを解説

外壁調査は義務?ドローン調査のメリット・デメリットを解説
2026.10.30更新(2020.01.28公開)

本記事では、外壁調査の義務や調査方法の違い、ドローンを活用した調査のメリット・デメリット、依頼から報告までの流れについてご紹介します。

建築基準法に基づく定期報告の対象となる特定建築物等では、竣工後または外壁改修等からおおむね10年ごとに外壁調査の実施が義務付けられています。従来は打診調査が一般的でしたが、近年はドローンを活用した調査も普及しており、効率的な調査方法として注目されています。

【この記事で分かること】

  • 外壁調査はどのような建物に義務があるのか
  • ドローン調査と従来の調査方法は何が違うのか
  • ドローンを活用した調査のメリット・デメリット
  • 依頼から報告までどのように進むのか

目次

外壁調査とは?ドローンを使った調査の仕組み

外壁調査とは?ドローンを使った調査の仕組み

外壁調査とは、建物の外壁に生じたひび割れやタイルの浮きなど、劣化・損傷の状況を調べる調査です。近年は、赤外線カメラを搭載したドローンで外壁を撮影し、表面温度の差から浮きなどを見つける方法も広がっています。

外壁調査とは

外壁調査とは、すでにある建物の劣化診断における一部の調査を指しています。日光や雨、風などで建物の外壁は次第に劣化していきますが、その度合いが現状どの程度であるかを定期的に調べるのが外壁調査です。2022年の告示改正により、外壁の調査方法としてドローンによる赤外線調査が認められました。

外壁トラブルにも、ひび割れや白華(はっか)現象(外壁表面に白い粉のようなものが浮き出ること)、表面のタイルの浮きなどいくつかの種類があります。それらが発生していないか、発生している場合どの程度修繕が必要かなどを、打診調査・赤外線調査などの方法で調べます。

ドローンによる外壁調査(赤外線調査)とは

ドローンによる外壁調査とは、赤外線カメラを搭載したドローンを外壁に沿って飛行させ、外壁の表面温度を撮影する調査方法です。空撮や物流、農業分野での活用のほか、近年では外壁調査などの点検業務においてもドローンを活用する方法が普及しつつあります。

タイルやモルタルが浮いている部分は、下地との間にすき間(空気層)があるため熱が伝わりにくく、日射などを受けたときに健全な部分と温度差が生じやすくなります。赤外線画像でこの温度差を読み取ることで、浮きのおそれがある箇所を見つけます。高所の調査であっても、ドローンを活用すれば足場やはしごをかける必要がありません。そのため、従来の方法よりコスト削減や効率化、安全性の向上を図るなどの特徴があり、今後もさらなる普及が期待されています。

外壁調査の義務とドローンによる赤外線調査が認められる要件

外壁調査は、建物利用者の安全確保や、外壁の落下による事故を防ぐために行われます。不特定多数の人が利用する特定建築物等では、建築基準法第12条に基づく定期報告制度により、所有者・管理者に建物の状態を資格者に調査させ、特定行政庁へ報告することが義務付けられています。

定期報告制度第12条に基づく外壁調査の義務と実施時期

定期報告制度は、不特定多数の人が利用する特定建築物等の安全を確保するための制度です。対象となる建物や報告の時期は、政令や特定行政庁が定めています。外壁のタイルやモルタル等の調査は、平成20年国土交通省告示第282号で次のように定められています。

  • 手の届く範囲の打診等:おおむね6カ月から3年以内に一度
  • 落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等調査:おおむね10年に一度

定期報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、建築基準法第101条に基づく罰則の対象となります。

2022年の告示改正でドローンによる赤外線調査が認められた

2022年1月の告示改正により、ドローンによる赤外線調査が、打診以外の調査方法として明確化されました。ただし、単に撮影するだけでは不十分です。適切な撮影条件や解析方法を満たし、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を確保する必要があります。

出典:国土交通省 定期報告制度における外壁のタイル等の調査について

外壁調査の方法とそれぞれの違い

外壁調査の方法とそれぞれの違い

ここでは、外壁調査で一般的に実施されている「打診調査」と「赤外線調査」についてご紹介します。

打診調査(足場・高所作業車・ロープアクセス)

打診調査とは、専用の道具(テストハンマー、打診棒など)を用いて、壁を叩いてその音を聴くことで状況を調査する方法を指します。仮設足場や高所作業車を使用する以外に、屋上からロープを使って降下しながら調査を行う「ロープアクセス工法」があります。
道具で壁を叩くと、叩いた箇所によってさまざまな音質を聴き取れます。その音の高低により、壁が浮いている箇所や壁の内部に損傷が発生している場所を発見できます。
打診調査を行う際には、目視による確認や触診も並行して実施されるため、調査員の腕前次第では非常に的確に外壁の状況を確かめることも可能です。ただし、調査員の技量に調査の精度が左右されるというデメリットもあります。

赤外線調査(地上・ドローン)

赤外線調査とは、赤外線カメラによってサーモグラフィー画像を撮影し、温度の違いから外壁の状況を確認する非破壊検査です。非破壊検査のため、外壁を傷つけることなく広範囲を調査できる点が特長です。また、足場を組む必要がないため安全性が高く、低コスト、さらに短時間で調査ができるというメリットがあります。
赤外線調査には、地上に設置したカメラから撮影する方法と、ドローンにカメラを搭載して外壁に近づいて撮影する方法の2パターンがあります。ただし、地上から撮影し調査する場合は高層部分の精度が落ちることから、打診調査と併用する必要があります。また、外壁が乾いていなければ調査が難しく、天候などの条件によってはスケジュール通りに調査が行えない場合もあります。

それぞれの調査方法にはメリットとデメリットがあるため、これら2つの調査方法を組み合わせて調査するのが一般的です。

ドローンを使った赤外線点検と従来の点検方法の比較

建築基準法第12条に基づく全面打診等調査では、ドローンによる赤外線調査を基本に、赤外線で判別しにくい箇所を部分的な打診で補う進め方があります。ここでは、従来の「打診・赤外線」の点検方法と、「ドローンを使った赤外線」の点検方法で、一般的な価格、精度、期間の相場を比較します。

足場を組んでの打診調査 ゴンドラ・高所作業車による打診調査 ロープによる打診調査 地上からの赤外線調査 ドローンを使った赤外線調査
価格 × △ △ ○ ○
精度 ○ ○ ○ △ ○
期間 × △ △ ○ ○

1.価格の比較

もっとも価格が高くなるのは、「足場を設置しての打診調査」です。危険が伴う作業を依頼することや、足場の設置コストそのものが高いため、その分コストがかかります。
次に「ゴンドラ・高所作業車による打診調査」、「ロープによる打診調査」の順でコストがかかり、一番コストを抑えられるのが「地上からの赤外線調査」や「ドローンを使った赤外線調査」です。

2.精度の比較

「足場を組んでの打診調査」「ゴンドラ・高所作業車による打診調査」「ロープによる打診調査」は、いずれも打診調査のため、それぞれに精度の差は生じにくいとされています。
赤外線調査は画像情報のみでの確認となるものの、「ドローンを使った赤外線調査」は壁面に沿って移動しながら一定の距離で撮影できるため高精度での調査が可能です。一方、「地上からの赤外線調査」は、高層部分の精度が低下してしまうため、精度面での信頼がやや劣ります。

3.期間の比較

短期間の調査が可能となるのは、建物の規模によっては1日程度で撮影を終えられる「ドローンを使った赤外線調査」です。次に、「地上からの赤外線調査」も1日から数日で終わります。
「ロープによる打診調査」や「ゴンドラ・高所作業車による打診調査」は、最短でも数日かかります。「足場を組んでの打診調査」は、最短でも数週間、場合によっては数カ月かかることもあります。

ドローンによる外壁調査のメリット

ドローンによる外壁調査の主なメリットは、次の4つです。

  • 短期間で調査できる
  • 品質の高い調査が可能
  • 安全面でのリスクを抑えられる
  • 調査コストを抑えやすい

短期間で調査できる

ドローンを外壁に沿って飛行させて撮影するため、工期を短縮できます。広範囲を短時間で調査でき、建物全体の状態を把握しやすい点も特長です。

品質の高い調査が可能

高解像度の赤外線カメラを搭載し、精度の高いデータを取得することができます。外壁の浮きや剥離の兆候を効率的に把握できるほか、漏水・含水を検知するなど高品質な調査が可能です。

安全面でのリスクを抑えられる

ドローンで調査する場合、足場やゴンドラ等を設置する必要がありません。調査員が高所で作業する必要がなくなるため、安全面でのリスクを抑えることができます。

調査コストを抑えやすい

ドローン調査では仮設足場を組む必要がなく、高所作業車を準備する必要もないため、コストの低減が期待できます。

ドローンによる外壁調査のデメリット

ドローンによる外壁調査には、次のようなデメリットや向かないケースがあります。

  • 天候・気象条件に左右されやすい
  • ドローンを飛ばせない場所・空域がある
  • 隠れた損傷や微細な劣化は検知しにくい

天候・気象条件に左右されやすい

外壁調査は、天候の影響を受けます。特にドローンによる赤外線調査では、外壁が乾いていることや安全な飛行環境の確保が必要となるため、雨天や強風時には調査日を変更する場合があります。

ドローンを飛ばせない場所・空域がある

ドローンによる外壁調査は、建物の立地によって実施できない、または事前の手続きが必要になる場合があります。主なケースは次の2つです。

  • 隣接する建物との距離が近い場合
  • 人口集中地区や重要施設の周辺など、許可・承認が必要な場合

隣接建物との距離が近いと、安全な飛行空間や適切な撮影距離・角度を確保できず、調査精度に影響する場合があります。また、人口集中地区を飛行させる場合は航空法に基づく許可・承認が必要であり、国の重要施設などの周辺では、小型無人機等飛行禁止法により飛行が制限されている場合もあります。

隠れた損傷や微細な劣化は検知しにくい

ドローン調査では赤外線や高精細カメラを使用した視覚的なデータを収集できますが、外観から確認できないような隠れた損傷や微細な劣化は温度変化がわずかなため、赤外線での検知が難しい場合があります。そのため、ドローン調査だけでは不十分な場合は、音で異常を検知する打診調査と併用するのが望ましいです。

ドローンによる外壁調査を依頼してから報告までの流れ

ドローンによる外壁調査は、依頼から報告書の受け取りまで、おおむね1~2カ月程度が目安です。ただし、建物の規模や立地、飛行の許可・承認、天候などによって前後します。

  1. 問い合わせ・現地確認と見積もり(1~2週間)
  2. 事前調査と調査計画の作成(1週間程度)
  3. 飛行の許可・承認の申請と近隣への周知(申請は飛行開始予定日の10開庁日前まで)
  4. ドローンによる撮影・必要に応じた打診の併用(1日~数日)
  5. 解析と調査報告書の作成(2~4週間)
  6. 特定行政庁への定期報告(自治体が定める報告時期に提出)

見積もりは、隣接建物との距離や飛行できる空域かなど、現地の状況を確認したうえで提示されます。また、飛行に必要な申請から許可・承認までには日数がかかるため、天候による延期も考慮し、報告期限から逆算して余裕を持った計画が重要です。
撮影自体は1日で終わる場合でも、赤外線画像の解析と報告書作成に時間を要するため、自治体ごとの定期報告の提出時期を確認してから調査時期を決めましょう。

ドローンによる外壁調査の依頼先を選ぶときに確認したいポイント

ドローンによる外壁調査の依頼先を選ぶ際は、次の3つのポイントを踏まえて依頼しましょう。

  • 建築基準法第12条の調査資格者が関与しているか
  • ドローンによる外壁調査の実績とサポート体制
  • 飛行の許可・承認や保険への対応

建築基準法第12条の調査資格者が関与しているか

定期報告に使う調査報告書は、一級建築士・二級建築士や特定建築物調査員などの資格者が調査を行うことが前提です。ドローンの操縦を担当する人とは別に、資格者が関与するのかを確認しましょう。

ドローンによる外壁調査の実績とサポート体制

外壁調査は専門的な知識や技術が必要な作業のため、調査員の技術力に精度が左右される面があります。また、外壁調査の方法や流れなどが複雑な場合もあり、専門的な説明が必要な場面も多くあります。ドローン調査の実績件数や解析体制、手厚いサポート体制が整っているかもチェックしておくことが大切です。

飛行の許可・承認や保険への対応

人口集中地区などでの飛行には、航空法に基づく許可・承認が必要です。申請を依頼先が担うのか、申請にかかる期間を含めたスケジュールを提示してもらえるかを確認しましょう。あわせて、万が一の事故に備えて賠償責任保険に加入しているかも確認しておくと、トラブルの予防につながります。

なお、費用は建物の規模や調査方法によって差があるため、複数社から見積もりを取って比較すると判断しやすくなります。また、雨や強風で延期になることがあるため、予備日の設定や延期時の対応も事前に確認しておきましょう。

ALSOKドローン外壁調査

ALSOKでは、赤外線カメラを搭載したドローンで建物の外壁を撮影し、効率的な調査・解析を行います。さらに、調査結果に基づく修繕工事から、その後の建物・ビル管理業務までワンストップで対応しています。

ドローン外壁調査を社内で検討するときの稟議書テンプレート

(件名)ドローンを使用した外壁調査の実施について

(主旨)建築基準法の定めにより、当該施設の外壁調査を実施する必要があるが、安全面や調査期間、調査費用を考慮し、ドローンによる調査を実施したく、下記についてご決裁をよろしくお願いいたします。

記

1.サービス名
ALSOKドローン外壁調査

2.価格
〇〇〇〇円(別添見積書参照)

3.実施期間
〇〇日(別添見積書参照)

4.実施対象施設
〇〇

5.理由
ドローンによる外壁調査は、ドローンに搭載した赤外線カメラで撮影する調査手法であり、高所作業や足場の設置が不要なことから、従来のゴンドラやロープを使用した調査、足場を設置しての調査と比較して、安全面や調査期間のメリットが大きいほか、低価格で実施可能なため。

外壁調査とドローン調査に関するよくある質問

Q:ドローンによる赤外線調査だけで全面打診等調査に代えられますか?

A:ドローンによる赤外線調査は、打診と同等以上の精度があれば全面打診等調査の方法として認められています。ただし、条件によって赤外線で判別しにくい箇所もあるため、部分的な打診を併用するケースもあります。

Q:外壁調査の報告を行わなかった場合はどうなりますか?

A:定期報告をしない、または虚偽の報告をすると、建築基準法第101条により罰則の対象となります。報告時期は自治体ごとに異なるため、事前に確認しましょう。

Q:調査から報告までどのくらいの期間がかかりますか?

A:依頼から報告書の受け取りまでは、おおむね1~2カ月程度が目安です。飛行の許可・承認の申請や画像解析、報告書作成に時間を要するため、報告期限から逆算して早めに依頼することが大切です。

まとめ

今回は、外壁調査の義務やさまざまな手法、その特徴を説明しながら、近年普及しつつあるドローンによる外壁調査の有用性についてご紹介しました。
ドローンによる調査のメリットは、調査期間が短く済むことと精度の高さ、安全面を両立できる点です。一方で、天候や立地によっては実施できない場合もあるため、打診調査との組み合わせも含めて検討することが大切です。まずは定期報告の提出時期を確認し、余裕をもって依頼先に相談しましょう。ドローンによる外壁調査を検討している場合は、ぜひALSOKにご相談ください。