台風対策|台風に備えて企業・会社が事業継続のためにすべきこと

台風対策|台風に備えて企業・会社が事業継続のためにすべきこと
2023.10.24更新(2020.12.21公開)

近年、日本では毎年のように台風による被害が発生しており、年に複数回の大規模な被害が報告されることも稀ではなくなりました。地球規模で起こっていると考えられる気候変動などの影響で、記録的な集中豪雨や竜巻など過去には珍しかった異常気象の頻発が各地で見られています。
この記事では、台風災害が想定される際に企業が従業員の安全を守りながら、事業を継続するための備えと対策についてご紹介します。

目次

日本における台風・風害のリスク

日本における台風・風害のリスク

台風災害は、日本で起こり得る自然災害のなかでも発生頻度の高いものとして知られています。加えて近年では、台風が強い勢力を保って上陸することで被害が拡大する傾向にあり、その恐さを認識する機会が増えています。ここでは台風の上陸数や風害の種類、台風・風害のリスクについてご紹介します。

近年における台風の接近と上陸

国土交通省気象庁の資料を基に、2012年~2022年の11年間における日本での台風上陸数を以下のグラフにまとめました。

日本における台風上陸数の推移(個)
出典:国土交通省気象庁「台風の上陸数(2022年までの確定値と2023年の速報値*1)」
*1こちらのグラフは2022年までの確定値のみになり、速報値は含まれておりません。

過去11年では2016年の台風上陸数(6個)が最多となっています。また、地球温暖化が要因と疑われる海水温の上昇にともない、強い勢力のまま上陸する台風の数が増えているのも近年の顕著な特徴です。

台風以外の原因による風害

強風・暴風による災害、いわゆる「風害」は、台風以外の原因でも起こり得ます。

1.ダウンバースト

急速に発達した積乱雲の真下で起こる、上から下へと急に強く吹く風です。この風は地表にぶつかることにより水平方向の風に変わり、大きな被害をもたらします。積乱雲が原因で突然暴風に見舞われる点は竜巻と似ていますが、激しい風が上空から下に強く吹き付けるところが竜巻と異なる点です。風速は20mほどから50mに迫ることもあり、建物の損壊や航空機事故の原因となることが指摘されています。

2.旋風

「せんぷう」「つむじかぜ」の2通りの読み方があり、おもに好天の日に地表で温められた空気によって起こる上昇気流をともなった渦状の強風を指します。巻き上がるように上昇する強風という点では竜巻と似ていますが、雲の下で発生せず、竜巻よりやや規模が小さいところが竜巻と異なります。竜巻ほどの暴風にはなりませんが、雲の発達をともなわないため発生の予測が困難になります。晴れた日に突然起こることで、野外イベントでのテント倒壊といった強風被害の原因になりやすい風害です。

3.竜巻

発達した積乱雲の下で起こる暴風で、強い上昇気流により漏斗状の雲をともなう点が大きな特徴です。風速100mを超える巨大規模の風害となる場合もあり、家屋や建物が上空に巻き上げられるなどの大災害となるケースも報告されています。日本では、大気の状態が不安定になりやすい7月から11月にかけて発生が目立つ風害です。

3つの風害のいずれも、基本的な予防や対処法は台風による強風対策と共通しています。事前に予測可能なものであれば気象情報などを参照のうえ、万一の事態に備えてあらかじめでき得る対策を講じておきましょう。また、竜巻やダウンバーストは積乱雲の急発達で起こるため、発生が喫緊に迫った段階での目視予測が可能です。発生の可能性を察知した場合はすぐ安全な場所に退避するなど、身を守るための行動も重要です。予測が難しいとされる旋風の発生に際しても、屋外活動の際は緊急避難の体制を整えるなどして確実に身も守るための行動ができるようにしておきましょう。

台風接近時の企業や従業員のリスク

台風接近時の企業や従業員のリスク

台風接近により被害発生の可能性がある場合、企業にとっては事業の継続にかかわる大きなリスクとなり得ます。企業そのものとその従業員に関して想定し得る、おもなリスクを見ていきましょう。

従業員の出退勤に関するリスク

台風接近時の出退勤は従業員に危険が及ぶだけでなく、場合によっては出退勤が不可能になる可能性があります。従業員が出勤できない場合は通常通りの業務が行えなくなりますし、従業員が帰宅困難者となる可能性もあります。

事業所の建物内外が被害を受けるリスク

オフィスの浸水や強風被害による損壊によって、業務に使用する各機器・書類にも被害が生じます。また、従業員がオフィスへ立ち入ることが困難となる状況が発生した場合も、事業の継続の障壁となるでしょう。

取引先が被害を受けたことによる自社へのリスク

自社に被害がなかった場合でも、取引先や協力会社が被害を受けたことで自社の事業継続に間接的な影響を及ぼす場合があります。

被害にともなう安全配慮に関するリスク

建物などへの物理的な被害により事業が止まってしまうリスクの他にも、企業側の安全配慮に関する問題が起こったことにより、後々業務へ支障をきたす可能性もあります。
たとえば台風による暴風が発生しているタイミングで出社した従業員が死傷する事態が発生した場合は、企業側は安全配慮義務違反に問われる可能性があります。その結果、巨額の損害賠償が生じて企業の存続にかかわる問題にまで発展することも想定されます。
さらに、企業が事業継続を怠ったことで取引先に損害を与え、信用を失うなどの可能性もあります。

台風発生時に向けて企業が備えておくべき対策

台風発生時に向けて企業が備えておくべき対策

台風被害は恐ろしい災害ですが、気象予報技術の向上によって緻密な予測も可能となりました。一定の範囲内で予測可能である点は、地震や噴火などの予測が困難な災害とは異なります。
いざ台風の接近が予報された際に、企業はどのような備えが必要なのでしょうか。

事業継続に備えた準備

  1. 災害発生時に適切な行動をとれるようにするため、従業員の出社判断や行動基準をあらかじめ決めておき、定めた行動基準に即して就業規則にも事項を追加しておく
  2. 緊急時における従業員間の連絡手段を確立し、すべての従業員へ事前に周知しておく(緊急連絡をスムーズかつ確実にするため、事前にテストおよび訓練を済ませること)
  3. 社内データをクラウド管理に切り替えたり、事業所の被害が及ばない遠隔地への定期的なバックアップを実施する
  4. 社内におけるBCP(事業継続計画)を策定しておく
  5. テレワークを導入するなど、台風が接近していても柔軟に事業継続を図れる体制を構築する

特に4のBCPを策定する際には、全項目をその内容に含めるとともに「誰が、どこで、何を、どこまで、どのように実施するか」までを詳細に制定しておくことが重要です。次の項目では、事業継続計画の中でも防災面で重要なポイントについて説明します。

台風被害に備えた防災準備

  1. 事業所が被害に遭う可能性のある災害発生を想定した災害対策を立案し、全従業員に周知するためマニュアル化を図っておく
  2. 従業員および来社の可能性がある顧客の人数を想定し、人数×3日分の食糧・飲料、必要十分な量の医薬品の備蓄を図っておく
  3. 事業所建物における、必要な耐風補強策を事前に実施しておく
  4. 出火防止、看板の落下防止、および窓ガラスの飛散防止といった、直接被害の後に起こり得る二次災害の防止策を講じておく
  5. 自社内で策定した防災計画を全従業員へ周知・啓発し、万一に備えた訓練を実施しておく
  6. 自治体と災害時の支援協定を締結することや地域の防災訓練に参加する

上記はおもに社内での活動ですが、この他に企業ホームページなどで自社の防災への取り組みに関する内容を外部へ積極的に発信するなどの啓発活動も行いましょう。

企業による防災への取り組み事例

企業で積極的な防災対策に取り組んだ結果、災害時に円滑な業務の再開や継続を果たすことができた事例も数多く報告されています。ここでは、それらの事例の一部についてご紹介します。

【複数の店舗を経営する地域密着型スーパーマーケットチェーン企業の例】

2004年に発生した新潟県中越地震(最大震度7、M6.8)で県内の22店舗が被災し、うち3店舗は壊滅的な被害を受け店舗閉鎖を余儀なくされました。
この苦い経験を今後に生かすため、業務再開後に被災地で需要の高い商品の洗い出しと調達品の整備を実施。また第二物流センターを設置し、地震計に連動した緊急停止装置を設置するなど、地震被害に強い店舗を作るためのさまざまな取り組みを実施しています。
その後、2007年7月に発生した新潟県中越沖地震(最大震度6強、M6.8)では計7店舗が被災しましたが、うち4店舗が当日中に営業を再開。その翌日にはさらに2店舗の営業を再開、翌々日には残りの1店舗も営業再開し、完全復旧を果たしています。地域社会のライフラインとして、二次的な損害を最小限にくい止めることができました。

資料:企業の事業継続への取組事例(内閣府)

【清涼飲料水を生産・供給する事業者による連合会の例】

2011年3月の東日本大震災による被害を受け、復旧に向け清涼飲料水の容器として多く供給されているペットボトルのキャップを、すべて白色に統一しました。この取り組みで、一部地域が災害によって事業に支障をきたした場合にも安定供給を図れる体制の構築を図っています。

資料:「清涼飲料の歴史」(一般社団法人全国清涼飲料連合会)

台風接近時に備えた事前の行動基準

台風接近時に備えた事前の行動基準

台風災害が予測されると分かった場合、まずは従業員を勤務にあたらせるかどうかを検討する必要が出てきます。その際おもな基準とすべきものは、以下の2点です。

  • 公共交通機関の運行状況
  • 警報の発令など該当する地域の気象情報

事前に「始業時刻の1時間前までに暴風警報が発令し、公共交通機関の運行が停止している場合は休業/在宅勤務とする」などの判断基準を設けておきます。そのうえで上記の基準から、当日どのように業務へ反映させるかすぐ判断できる状態にしましょう。
また上記の判断によって、台風接近が見込まれる当日の出勤時間までには、以下の事項を全従業員に伝達しましょう。

  • 出社の可否
  • 自宅待機の場合は在宅勤務とするか休業とするかなどの勤務形態

さらに、当日の状況に応じて従業員の遅刻・早退に関するルールを以下のように定めておきましょう。

(例)

  • 勤務時間中に公共交通機関への影響が想定される状況となった場合、ただちに帰宅し在宅勤務に切り替える
  • 勤務時間中に暴風警報が発令される恐れがある場合、出社時刻や終業時刻の繰上げや繰下げなど柔軟な対応をおこなう
  • 災害の影響により急な遅刻・早退となった場合は免責とする(有給扱いにするべきかの検討) など

台風時に休業や業務停止の措置が難しく、業務を継続する必要がある企業については、以下の取り組みも実施しておく必要があります。

  • 災害時においても安全に出社するための基準や環境の整備
  • 公共交通機関の運休や警報発令の可能性がある場合、従業員の待機対応を可能とするための準備(安全な出社や社内での寝泊まりなど)
  • 非常時においても継続すべき業務の厳選およびその継続に必要な従業員数の算出(出社させる人、させない人の両方の管理を想定すること)

台風の接近に備えた就業規則の整備

台風の接近に備えた就業規則の整備

台風災害への対応に関して、未だ就業規則での規定がない企業もあることでしょう。台風接近を想定し、企業の就業規則を見直し再整備することも大切です。その際は、以下の項目を必ず検討しましょう。

初動対応マニュアルの作成

災害が予測されると分かった時点からどう行動すべきか、初動対応に関する詳細な規定を設けることが必要です。その際、以下については必ず検討し盛り込みましょう。

  • 災害に関する情報収集を行う担当者について
  • 情報を集約する方法と場所について
  • 意思決定を行う担当者と、その人員の配置基準

従業員への情報や決定事項の伝達

緊急時は現状把握や最新情報の収集、今後の行動について、ただちに従業員への伝達が必要です。確実に対応できるよう緊急連絡手段を整えておきましょう。緊急連絡に関しては以下のような方法を講じておくと、万一の際にもスムーズな対応が可能です。

  • メールによる一斉送信を活用する
  • 安否確認システムなどを導入して、緊急時の迅速かつ確実な連絡対応を図る

企業向け安否確認システムでは、多くの場合Eメールやインターネット回線によるアプリのプッシュ通知によりリアルタイムでの連絡が可能となっています。全従業員に今現在の状況を漏らすことなく伝え、迅速な行動を促すために未導入の場合は早期の導入を検討すると良いでしょう。

行動基準に合わせた給料や勤務形態

台風接近時の行動基準に合わせた各従業員の勤怠に関する規定や給料規定を決定しておきましょう。

テレワークの導入と運用

テレワークの導入と運用

2020年以降、新型コロナウイルス感染症が世界的流行したことを契機に、日本でも多くの企業がテレワークの導入を図っています。このテレワークが、台風災害の際にメリットをもたらす点にも注目しましょう。
台風接近時などの非常時においても、従業員がテレワークで就業可能な環境が整っていれば、一部の業務では休業を強いられず自宅待機しながら業務を行えます。また従業員同士のリアルタイムな意思疎通や情報の伝達・共有もより容易となり得ます。

【テレワークの導入に必要な環境とは?】

テレワークの開始に際しては、以下の準備を整え導入時からスムーズで安全に業務を運用する必要があります。

  • 業務に必要なパソコンや携帯電話を貸与する、もしくは従業員が所持するパソコンやスマートフォンをBYODにより業務に利用可能とする
  • 社内情報の持ち出し、個々人の管理不足などによる情報漏洩対策
  • zoom、Microsoft Teams等のコミュニケーションツールを活用し連絡を円滑にする
  • 端末および回線のセキュリティ強化を図り、サイバー攻撃やウイルスへ対処する

上記の環境整備のなかで特に懸案となるポイントは、個人端末使用に際し情報の流出・漏洩を回避するための対策ではないでしょうか。ALSOKでは、この課題への対処が可能なテレワークシステム「ソリトン セキュアデスクトップサービス」をご提供しています。
デジタル証明書による確実な端末認証や、従業員の私用パソコン上にはデータを保存せずに業務が可能なため、データ持ち出しなどのリスクが低減します。また、ツールをインストールするだけで簡単に導入できるため、テレワークの早期導入をお考えであれば、ぜひ活用をご検討ください。

テレワークの注意点

柔軟な対応が可能な就業手段として注目されているテレワークですが、問題点もあります。
まず、災害時には「テレワーク勤務そのものが困難となる」ケースを想定しておく必要もあります。「従業員が被災する」だけでなく「家屋や建物の損害」「インターネットに接続できない」「電源がない」などの不具合によって、テレワーク自体が難しくなることも考えなければなりません。
また、昨日導入を決めて明日運用を始めるなど急な導入は難しいという点も注意が必要です。万一の事態が起こってしまってからでは遅いため、事前に導入を検討・決定しておくことが必要です。

テレワークのルールと運用について

あらかじめ決めておいたルールに基づいて、平常時から実践しておき、非常時でも可能な限りスムーズな運用開始を図れるよう準備しておきましょう。
またテレワークを実施することで勤怠管理が複雑になるため、勤怠に関するルールも事前に明確にしておき共有・周知を済ませておきましょう。出退勤をログで管理できるシステムや、勤怠管理システムなどを導入して活用することも効果的です。

台風接近など非常時に備えたいシステム・備品

台風接近など非常時に備えたいシステム・備品

万一の事態発生に備え、企業として取り組んでおきたいことをご説明してきました。ここでは台風の接近をはじめとする非常時に備え、社内に準備しておきたいシステムや備品をご紹介します。

安否確認システム

安否確認システムの導入を全社的に図っておくことで、災害が発生した際にも多数の社員およびその家族に対し、迅速な安否の確認が可能となります。
自動配信による一斉配信機能や安否情報への回答機能、利用者が投稿できる掲示板機能が備えられているとなお良いでしょう。それらの機能を備えた安否確認システムを導入しておくことで災害時にとるべき行動に関しても、的確な指示や伝達がスムーズに行えます。

発電機・蓄電池

災害が発生した際には、長時間にわたって電源の喪失を招く事態も想定できます。パソコンや電話交換機、精密機械装置、医療機器など継続的な電源供給が必要な機器のバックアップ手段は事業継続や連絡手段確保の観点でとても重要です。非常時にも発電・給電ができるよう、発電機や蓄電池の準備も行いましょう。

災害備蓄品・防災用品

災害時には従業員の帰宅が困難になり、社屋に長時間とどまるケースもあり得ます。万一全従業員が帰宅困難となった場合を想定し、人数×3日分の飲料水・食糧、十分な数量の非常用トイレ・毛布などを備蓄しておきましょう。

ALSOK BCPソリューションサービス

ALSOK BCPソリューションサービス

ALSOKでは、警備会社ならではのノウハウを活かした災害対策に関するサービスや製品をご提供しています。「ALSOK BCPソリューションサービス」は災害などの非常時における事業継続に関するBCP対策全般をサポートするサービスです。

ALSOK BCPソリューションサービスでは、リスクアセスメント、対策の実施、災害発生に備えた講習や訓練を通じてBCP対策が全社的に定着化するまで、一貫した支援をご提供します。またさまざまな災害の被災地で実際に活動を行ってきたALSOKの経験を活かし、万一の事態においても現実的に活用可能なBCPのご提案を行っています。

まとめ

今回は日本における台風被害についてご説明するとともに、企業が行っておくべき備えや災害時のルール策定についてご紹介しました。自然災害をはじめとする不測の事態が発生した際には、被害を最小限に抑えながら事業継続や喫緊の復旧が可能となるよう、平常時から対策をとっておくことが重要です。
企業が災害への備えと行動のルールを確立しておくことは、非常時における生命や資産、社会的信用などを守ることにもつながります。

ALSOKの安否確認サービス(アプリ版)

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