鍵ものがたり vol.6

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合い鍵いらずの完全な鍵

ダイヤル錠

金庫でおなじみのダイヤル錠。
住宅の郵便箱にもよく使われています。
どんな仕組みになっているのかな?
Photo:Shoji Naoto Text:Ena Sato Illustration:Naomi Masuda

(上)金庫の扉。ダイヤル錠の番号を合わせてから、左にある鍵を回して閂を開ける仕組み。
(下)ダイヤル錠の全体。目盛りは0から99。根元に4枚の円盤がついている。

回す方向は必ず右、左、右、左のわけ

下の写真のダイヤル錠の解錠番号は、右回りに4回転させて45番→左回りに3回転させて70番→右回りに2回転させて90番→左回りに1回転させて50番です。
特徴が2つあります。回す方向が左右交互であること。回転数が4,3,2,1とひとつずつ減っていくこと。
仕掛けは「つく」です。(1)の円盤を4回転させると(4)の円盤が動きます。「45番」とは、ダイヤルを45に合わせると、(4)の円盤のキリカキが閂の入る位置(写真では右側)に来るということです。
次に(3)の円盤のキリカキを合わせますが、今度は3回転で済みます。ただしダイヤルを左方向に回さないと、4のつくにまた当たってしまいます。だからダイヤルの回転方向は常に右、左と交互です。

ダイヤル鍵の構造

4枚の円盤にキリカキと「つく」と呼ばれる突起が1つずつ。ダイヤルを1回転すると、(1)の円盤が連動して回る。2回転目で(1)のつくが(2)のつくと当たって(2)の円盤が回り出す。同じように3回転目で(3)の円盤が、4回転目で(4)の円盤が動き出す。

4枚のキリカキの位置をそろえてから鍵を回す。閂がキリカキに収まって扉が開く。

番号を忘れたら永遠に開かない

ダイヤル錠の優れたところは、合い鍵がないことです。防犯上、番号をメモに残さない人も多く、番号は持ち主の頭の中にしかありません。もしその人が忘れてしまったら?二度と開きません。番号の組み合わせは100万通りあるので、探し当てるのは、たぶん不可能でしょう。
ところで、テレビドラマで泥棒が扉に耳を当てながらダイヤルを回しているシーンがあります。たしかに、つくが当たる音は発生しますが、「あれはテレビの演出。音で開けられるほどダイヤル錠は甘くありません」(金庫と鍵の博物館の杉山泰史さん)

取材協力

金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]

金庫と鍵の博物館

東京都墨田区千歳3-4-1 03-3633-9151

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