防災マニュアルの作り方とは?企業の備えと対策を分かりやすく解説

防災マニュアルの作り方とは?企業の備えと対策を分かりやすく解説
2026.08.19更新(2021.03.15公開)

本記事では、企業における防災マニュアルの基本的な考え方から必要性、具体的な作成手順、災害シナリオ別に押さえたいポイントまでを体系的に解説します。

災害は予測不能なことが多く、とっさに適切な判断ができるか否かで被害の程度が大きく異なる場合があります。人命を守って被害を最小限に抑え、事業の継続や早期再開を図るには、防災マニュアルを作成しておき、万一においてもすべての従業員が適切な行動をとれるようにすることが何より重要です。

【この記事で分かること】

  • 防災マニュアルの目的とBCPとの違い
  • 防災マニュアルを作成する5つのステップ
  • 災害シナリオ別に押さえる対応ポイント
  • 防災マニュアルと併せて実施したい対策

目次

防災マニュアルとは?目的やBCPとの違い

防災マニュアルとは、災害発生時に従業員や顧客の安全を確保し、組織として迅速かつ適切に対応するための行動手順や役割分担をまとめた文書です。災害をはじめとする予期せぬトラブルが発生した際には冷静な判断が難しくなり、適切な対処を行えず二次災害を招くおそれもあります。そのような事態を回避するためにも、地震、津波、浸水、火災など災害の発生時に、人命と財産、企業を守るためにどのように対応するかを記した「防災マニュアル」を事前に作成しておくことは重要です。

防災マニュアルの目的(人命保護・被害抑制)

防災マニュアルを策定する第一の目的は、人命の保護です。第二に、二次災害への被害拡大防止が挙げられます。災害発生時における各人員の行動指針や役割分担を明記しておくことで、従業員一人ひとりが「自身が何をすべきか」を理解することができ、パニックによる二次被害を防ぐ効果も期待できます。

企業に防災マニュアルが必要な理由

以下のグラフは、大企業・中堅企業に対して実施したアンケートで得られた「災害対応で今後新たに取り組みたいこと」について回答をまとめたものです。

災害対応で今後新たに取り組みたいこと
出典:内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」

災害発生に備え、大企業では訓練の見直しやBCPの見直しへの関心が高いことが分かります。一方、中堅企業では備蓄品の購入や社内リスクの認識・業務への影響の分析に取り組みたいという回答が多いです。

BCPとの違い

防災マニュアルは、災害発生時に従業員の安全を確保し、被害を最小限に抑えるための具体的な対応を定めた手引書です。これは、災害を含むさまざまな事業停止リスクに備え、事業の継続や早期復旧を図るBCPを構成する重要な要素の一つです。
BCPでは、従業員の安全確保や初動対応に加え、重要業務の選定、代替手段の確保、復旧手順などを総合的に定めます。そのため、防災マニュアルをBCPとは別のものとして捉えるのではなく、BCPのうち、災害発生時の安全確保や初動対応を具体化したものと位置付けることができます。

BCP対策

防災マニュアルの作り方【5ステップ】

自社で防災マニュアルを作成する際は、災害時の組織体制、情報収集の内容と手段、安否確認方法、初期対応・避難ルール、平時の備えに関する内容を盛り込むことが重要です。
防災マニュアルといっても、他社のマニュアルをそのまま写したような形式で薄い内容では、何が起こるか分からない災害時に適切に機能しない可能性があります。自社の業務内容や体制に応じて作成しましょう。

STEP1:災害時の組織体制(役割分担)を決める

災害発生直後に迅速かつ適切な対応をとるためには、平時から災害対策本部の体制や各メンバーの役割などを詳細に定めておくことが重要です。
防災マニュアルには、災害対策本部の設置基準や構成メンバー、担当の役割などをあらかじめ記載し、従業員全員が把握できるようにしましょう。災害発生時には、定めたマニュアルに基づいて災害対策本部を立ち上げ、各担当者が自分の役割を実行できる体制を整えておくことが必要です。
たとえば、以下のような人員を想定し役割を分担するといった体制構築が有効です。

  • リーダー(現場指揮担当)
  • 総務担当(対策本部の設置・運営、各部の支援)
  • 情報担当(災害関連情報を集め、連絡を行う)
  • 消火担当(火が出た際に延焼防止措置を行う)
  • 救護担当(負傷者の救護を行う)
  • 社員ケア担当(安否確認及び物資の配給や困っている社員への支援を行う)

STEP2:情報収集の内容と手段を決める

災害発生時、どのように現場や社内外の情報を収集すべきか、またその情報を活用する判断基準や方法についてもマニュアルに明確に定め、誰が確認しても内容が分かるように記載しておきましょう。
通常、企業における情報収集手段としてテレビ、ラジオ、新聞、電話、FAX、インターネット、Eメールなどが利用されます。これに加え、災害発生時は防災行政無線や災害用伝言サービスなどを活用しましょう。

STEP3:緊急連絡網(安否確認方法)の作成

いつ、どこで発生するか分からない災害に備え、設置した災害対策本部にて正確かつ迅速に従業員の安否情報を収集できるよう、連絡手段をあらかじめマニュアルに明記しておきます。電話による従来の連絡手段は、大規模災害時に通信障害や混乱が発生しやすく、連絡網の運用が十分に機能しない可能性があります。そのため、通信障害時にも自動的に安否情報を収集できる安否確認サービスなどの電子システムを活用するなど、複数の連絡手段を用意しておくことが有効です。定期的に連絡訓練やシステムの動作確認も行いましょう。

STEP4:初期対応・避難のルールを決める

災害が発生した際に真っ先にとるべき行動は、すべての従業員の安全な避難です。災害が起きたとき、各従業員が最初にとるべき避難行動を把握しておかなければなりません。マニュアルには、想定される災害に対応できる避難場所を記載し、従業員全員が迷わず行動できるよう、誰が見ても分かりやすい内容にしておきましょう。たとえば、以下のような対応方法を記しておくと良いでしょう。

  • 避難経路や避難場所、避難時の判断基準
  • 消防や警察への連絡手順(必要な場合)
  • 重要な書類やデータの保護方法
  • 負傷者の応急処置や出火した際の初期消火と延焼防止の対応
  • 事業所内に危険が予測される場合の緊急避難対応(津波・土砂災害・毒物の漏出・火災など)

STEP5:平時の備え(備蓄品・教育・訓練)を定め実施する

災害発生時に適切な対応を行うために、防災マニュアルには平時からの備蓄品の準備、従業員への教育、避難訓練などの基準を定めておくことが重要です。必要な備蓄品の管理方法や、従業員への防災教育・訓練の実施計画を記載し、定期的に運用・見直しを行いましょう。平時の備えを事前に定め実施することで、災害時にもマニュアルに沿って落ち着いた行動をとれる体制を維持できます。

防災マニュアル作成のポイント

実効性のある防災マニュアルを作成するには、内容の正確さだけでなく、緊急時に使いやすい形式に整えることが重要です。以下に、防災マニュアル作成時に押さえたい4点を解説します。

5W2Hで考える

防災マニュアル作成時には「5W2H」の手法を取り入れると良いでしょう。実施の目的(WHY)、具体的な実施事項(WHAT)、実施順序・タイミング(WHEN)、実施する人(WHO)、実施場所(WHERE)、実施の手引き(HOW TO)、実施すべき数量・分量(HOW MUCH)=5つのWと2つのHです。

一目で分かる簡潔な表現にする

長い文章ではなく、図や表、写真や動画を活用することで「じっくり読ませないこと」を意識した表現を心がけましょう。一瞬で判断を迫られる場面も想定し、「一目見れば理解・把握が可能な内容」にすることが大切です。

チェックリスト・様式・用語集の3部構成

「防災マニュアルの作り方」で解説した組織体制・情報収集・緊急連絡網・初期対応などは、防災マニュアルの中核となる内容です。ただし、項目が多く煩雑になると、とっさの行動が必要な局面で役立たなくなる可能性があります。そこで、こうした基本の内容を誰もが使いやすい形に整理する工夫として、以下の3部構成を取り入れるとよいでしょう。

1.チェックリスト

何を用意できていて、どこを点検・確認できているか各人がチェックできる表を設けましょう。

2.様式に沿った報告事項

比較的長い文章を用いることが必要となる報告事項には、決まった様式を設けて必要な内容をその様式に沿って記載しましょう。できるだけ、視覚的に単純な形式をベースにすると、誰でも楽な視線移動で見進めることができます。

3.用語集を設けて知識を共有する

防災に関する用語の中には、日常的にあまり用いない単語や言い回しも頻出します。それらがすぐに理解できないと、判断や行動に迷ってしまう可能性もあるでしょう。マニュアル内にはピンポイント用語集を設け、事前に目を通しておくことでマニュアルに記載された用語を理解できる状態にしておきます。

内容を定期的に見直す

防災マニュアルは一度作成して終わりではなく、定期的な防災訓練の結果に基づき、不足や修正事項が見つかればマニュアルの見直しを図ることも必要です。
また、社内における組織変更などの変化にも即時対応しなければなりません。実際に災害が発生しマニュアルが活用された際にも、その後のフィードバックを反映し内容を充実させていくことが求められます。

災害シナリオ別に押さえる対応ポイント

災害の種類によって、想定すべきリスクや対応手順は異なります。地震・津波、風水害、火災といった代表的な災害シナリオごとの対応ポイントを押さえておくことが、実践的なマニュアル作りにつながります。

地震・津波対策のポイント

地震発生時は、まず従業員の身の安全確保を最優先とし、揺れが収まった後に避難経路の確認や避難行動を開始します。また、沿岸部や河川近くの拠点では、津波を想定した高台への避難ルートや避難場所をあらかじめ定めておく必要があります。

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風水害(台風・洪水・土砂災害)対策のポイント

風水害は地震と異なり、事前に発生を予測しやすいという特徴があります。気象情報をもとに早めの避難判断を行い、浸水想定区域や土砂災害警戒区域の確認、設備の防水対策などを講じておくことが重要です。

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火災・その他(感染症・火山の噴火など)対策のポイント

火災対策は、消火設備の点検や避難経路の確保に加え、初期消火や緊急通報の訓練が重要です。
感染症発生時には、出社制限やテレワークへの移行基準、感染者発生時の対応手順をあらかじめ定め、事業継続への影響を最小限に抑えるための体制を整備しておきましょう。
また、火山噴火の可能性がある地域では、降灰対策や移動の制限など、地域特性に応じた対応方針を事前に整備しておく必要があります。

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防災マニュアルの整備と併せて実施したい対策

防災マニュアルは、単独で機能するものではありません。災害発生時に迅速かつ適切な対応を行うためには、安否確認体制や備蓄、防災訓練などの各種対策と組み合わせて整備・運用することが重要です。他の防災対策と相互に補完することで、防災マニュアルの実効性がより高まります。

BCP(事業継続計画)の策定

企業や組織にとって災害発生時に従業員の命を守り、損失を最小限に抑え、その後の事業継続や早期復旧を図ることは非常に重要です。そのためには、事前にBCP(事業継続計画書)を策定しておく必要があります。BCPを策定しておくと、緊急事態でも企業全体で適切に対応でき、信用度や生産性の向上といったメリットが期待できます。BCPはただ策定するだけではなく、定期的に見直し・改善を行うことが大切です。

避難訓練・図上訓練の実施

防災マニュアルに沿って従業員が適切な行動を取れるよう、実際に災害を想定した避難訓練や図上訓練を実施することも重要です。防火管理が必要な一定規模以上の事業所では、消防法に基づき避難訓練などの実施が求められています。従業員が安全に、かつ素早く避難するためには、実際に災害が発生したときを想定しながら、正しい知識の習得と避難経路を把握していなければなりません。
避難訓練に関して確認しておきたい問題点やポイントについては以下の記事を参考にしてください。

ALSOKでは、災害発生時を想定して自分たちで災害対応や避難行動を考える「災害図上訓練」をご提供しています。周辺地図や建物の図面を用いて、判断力や思考力を養えるため、より実践的な訓練をイメージすることが可能です。

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防災備蓄品の準備

地震や津波など大規模な災害が発生すると、ガスや水道、電気などライフラインが停止してしまう可能性があります。また、物流が止まると簡単に食料や水が手に入らなくなるかもしれません。そのような事態を想定し、被災後の生活に必要な防災備蓄品を事前に準備しておくことが重要です。

安否確認システムの導入

防災マニュアルの整備と併せて、災害発生時の情報収集・連絡体制を強化するために、安否確認システムの導入を進めることが重要です。緊急連絡網を電子化した安否確認システムを導入することで、災害発生時に従業員やその家族の安否状況を迅速に確認・集約できます。管理者は回答状況をリアルタイムで把握できるため、従業員の安全確認や初動対応、事業継続に向けた人員配置の判断に役立ちます。手動での連絡確認に比べて負担が少なく、大規模災害時にも機能しやすい点が大きなメリットです。

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防災マニュアルのテンプレート・参考資料

自社でゼロから作成するのが難しい場合は、官公庁や自治体が公開している資料を参考にすると良いでしょう。

官公庁・自治体の参考サイト

中小企業庁では、中小企業へのBCPの普及を促進することを目的として、中小企業の特性や実状に基づいたBCPの策定及び継続的な運用の具体的方法を示したガイドラインを公開しています。BCPの基本的な考え方から、自社で策定・運用できるよう分かりやすく構成されています。以下中小企業庁のリンクからテンプレートをダウンロードできます。
中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針

愛知労働局の「防災マニュアル作成の手引き」は、事業所が地震などの災害に備えて、防災マニュアルを作成・運用するための実践的な手引きです。単なる方針や解説にとどまらず、マニュアルの作成例や各種様式例も掲載されています。そのため、自社の実情に合わせて内容を取り入れやすく、実務に活用しやすい点が特徴です。
愛知労働局 防災マニュアル作成の手引き

東京都の「東京事業所防災 実践マニュアル」は、事業所防災リーダーを主な対象とし、事業所における防災対策を実践的に進めるために作成されたマニュアルです。平常時の備えから災害発生時の初動対応など、チェックリストや具体例を交えて分かりやすく解説しています。
東京都 東京事業所防災 実践マニュアル

テンプレート活用時の注意点

公的機関のテンプレートは汎用的に作られているため、自社の業種や拠点の立地条件、組織体制に合わせて調整する必要があります。テンプレートをそのまま流用するのではなく、実情に即した内容へ修正したうえで、専門家に内容を確認してもらうとより安心です。

ALSOKの防災マニュアル策定・運用支援サービス

ALSOKでは、BCPソリューションサービスの一環として、防災マニュアル策定支援を提供しています。
お客様が既に作成されている防災マニュアルの内容を検証し、より実効性の高いマニュアルとなるよう改善提案や見直しのアドバイスを行います。
また従業員が携帯できるよう、ポケットマニュアルの作成も可能です。ALSOKでは、ただ優れた防災マニュアルの策定をサポートすることだけではなく、全従業員に意識付けを図るところまでお手伝いします。

まとめ

防災装備や食料などの備蓄、クラウド上への事業データバックアップを行うなど、万一に備えて対策している企業は多いでしょう。同時に、防災マニュアルの作成とともに、それをベースとしたBCPの策定や避難訓練計画書の作成なども並行することが重要です。
BCPの策定や運用を支援するサービスや、災害時に備えた安否確認システムなどを適宜取り入れ、万一の際も人命を守り、二次被害の拡大抑止と事業継続に取り組める防災体制の構築を図っておきましょう。

防災マニュアルに関するよくある質問(FAQ)

Q:マニュアルが形骸化しないためにはどうすればいいですか?

A:防災マニュアルは作成して終わりにするのではなく、定期的な訓練を通じて内容を検証し、状況の変化に応じて更新を続けることが必要です。

Q:更新頻度の目安は?

A:平時であっても、年に1回は内容を見直すことが望ましいです。組織変更や拠点の増減があった場合には、その都度更新しましょう。

Q:テレワーク中の従業員はどうすればいいですか?

A:オフィス勤務を前提としたマニュアルだけでは対応できないため、テレワーク勤務者向けのマニュアルを別途用意する必要があります。自宅での安全確保や安否報告の手順を定めておきましょう。

Q:中小企業でも防災マニュアルは必要ですか?

A:必要です。企業規模にかかわらず、災害時の初動対応や安否確認の手順を定めておくことで、緊急時における混乱の抑制や従業員の安全確保につながります。