企業がやるべき避難訓練の流れ

2017.08.08

マンネリ化した避難訓練を見直そう!従業員に当事者意識を持たせるためのアイデアとは

消防法に基づく行政や消防署からの指導により、多くの企業や組織で行われている避難訓練。緊急時にも適切な判断を取るための訓練として、非常に重要な意義を担っています。近年の自然災害等による大きな被害状況や、将来的に起こると言われる大規模地震などを考えれば、企業における防災対策がいかに重要かうかがえるでしょう。

しかし一方で、避難訓練を実施することだけを重要視するあまり、毎年同じような流れで形式的に訓練を行っているという企業も少なくないはず。実際に緊急事態が発生した場合、想像もしなかったようなことが次から次へと起こります。形骸化した避難訓練では従業員の対応力が身につかず、本当の非常時に役立つとは言えません。

今回は、そういったマンネリ化しがちな避難訓練を一新し、参加者の関心・防災意識を引き出すアイデアや効果的な訓練を行うポイントをご紹介。改めて避難訓練の内容を見直すことで、緊急時に適切な対応ができるような体制を整えておきましょう。

避難訓練の重要性

企業における避難訓練は、単に従業員がそれぞれの身を守るために役立つだけで十分とは言い切れません。非常時の行動指針や役割分担を明確にしておく防災マニュアルや、被害を最小限にとどめ事業を早期復旧するためのBCP(事業継続計画)といった視点を取り入れ、企業全体の防災力を高めるものであることが求められます。

一方で、防災マニュアルやBCPだけを準備していても、従業員にその内容が浸透していなければ、いざという場面で適切な判断をすることは困難。避難訓練は、そういった非常時の対応を従業員に習熟させるための貴重な機会となります。

ニュースなどで取り上げられることも多いように、さまざまな組織や団体の日頃の訓練や防災意識の高さが災害時に功を奏したケースが確かに存在しています。東日本大震災においては「釜石の奇跡」と言われる小中学校の事例があったことを記憶している人も多いでしょう。

企業にとって避難訓練は、通常時であれば事業には直接関係がなく、多忙な日常のなかで人員・時間を確保して実施するのは骨が折れることも事実。しかし企業の社会的責任が増大し、従業員の安全配慮義務が強く求められる近年においては、どんな企業においても災害への備えは必要不可欠です。避難訓練は万が一の非常時に従業員を守り、ひいては会社を守るためにも大切なものと言えるでしょう。

これまでの避難訓練における問題点

従来の避難訓練といえば、プログラムに沿って行うのが一般的です。まず参加者にプログラムの説明を行ったあと、シナリオ通りの予定配置につき、シナリオ通りの放送を待ち……という企業が多いのではないでしょうか。予定通りに訓練が進むため、必ずその場に責任者がいて指揮をとり、必要な資機材などもすでに用意されています。

しかし、そういったシナリオ通りの避難訓練では、基本的な避難行動や担当毎の役割など最低限の確認はできても、想定外の対応力を向上させることはできません。また、参加者の固定化やマンネリ化によって、緊張感・当事者意識のない避難訓練になってしまいます。

ほかに避難訓練において起こりがちな問題点としては、訓練のねらいが明確になっていないことや、訓練と防災マニュアル等の内容が合致していないことなどが挙げられます。防災マニュアルはいざというときに機能しなければ意味がありませんので、訓練ではその内容が実際に機能するのかテストしたり、従業員に習熟させたりすることが求められます。

避難訓練は、限られた業務時間を使って実施するもの。参加者に飽きられてしまったり、専門性が低かったりと、さまざまな問題が生じたまま見直しを行わないのは、大変もったいないことです。さまざまな想定で従業員が適切な判断をできるようにならなければ、訓練の意義は薄いと言わざるをえません。

企業で起こりうる訓練・準備不足によるトラブル事例

意義の薄れた訓練しかしていなかった場合、想定外の事態が起こることの多い実際の災害には対応しきれなくなる恐れがあります。

例えば、非常時の連絡手段の一部として安否確認システムを導入している企業もあるでしょう。こういったシステムを導入して登録だけは済ませていても、いざ使おうと思うと操作方法がわからなかったり、メールアドレス変更等によってきちんと届かなかったりと、実用化できていなければ非常時には役立ちません。ほかにも訓練で稼働させたことのない防災関連の機器やシステムについては要チェックです。

また、企業での訓練は従業員がそろっている時間帯に行われるのが一般的ですが、災害はいつどこで起きるかわからないもの。就業時間ではなく、通勤・帰宅時間帯や夜間に災害等が発生する想定でマニュアル作成や訓練を行っていなければ、統率が取れずにかえって従業員を危険にさらすことにつながる可能性もあります。

これらはほんの一例に過ぎませんが、こういった状況に陥らないためにも企業での避難訓練は当事者意識を引き出しつつ、本当に役立つ対応力を身につけられるような内容であることが大切です。では、続いて実際に意義のある訓練にするためのアイデアをご紹介します。

消防署で行われる防災訓練を取り入れる

参加者から避難訓練に対する興味を引き出すためには、印象に残る避難訓練を行うことが重要です。しかし、自分たちで考える避難訓練にはアイデアにも限界があるもの。そんなときは、専門知識のある方々から直接教えてもらうというのがひとつの手です。

地域によっては、消防署や自治体が資器材の貸出しや職員の派遣、講習会の実施に応じてくれることをご存知でしょうか。さまざまな地域で講義や訓練の支援などを行っていますので、以下で例を紹介します。

渋谷消防署 応急手当講習

渋谷消防署を会場に、東京防災救急協会が主体となって救命講習を実施。団体での申し込みもでき、普通救命講習のほか、上級救命講習や普通救命ステップアップ講習なども行っています。また、消防職員が訪問して実施する講習なども受け付けています。
※出典:東京消防庁「講習案内

新宿区 自主防災訓練

新宿区では防災区民組織やマンション管理組合などが企画して行う訓練を自主防災訓練として、資機材の貸出しやアルファ化米の提供などを実施。小型消防ポンプ操法訓練や初期消火訓練、炊き出し訓練といった訓練を支援しています。
※出典:新宿区「自主防災訓練

大田区 訓練・講話

大田区ではマンション等の集合住宅や企業、グループ単位での防災訓練や防災講話を受け付けています。地震体験車や煙体験ハウスを使用し、より災害に対する関心を深める訓練が可能です。
※出典:大田区「訓練・講話

こういった消防署や自治体が実施・指導する訓練は、専門的な講義や体験ができる貴重な機会となりますので、会社等がある地域の市役所や消防署の実施内容を確認してみてはいかがでしょうか。詳しい依頼方法等については各市役所・消防署等にお問い合わせください。

各地域にある防災関連施設を活用する

印象に残る避難訓練を行うためのもうひとつの手段としては、各地域にある防災関連施設を活用することが挙げられます。

例えば、2015年に東京都江東区にオープンした無料防災体験施設「そなエリア東京」が挙げられます。“首都直下型地震発生から72時間を生き抜く”をテーマにした体験学習ツアー「東京直下72h TOUR」では、音響・照明・映像によりマグニチュード7.3、最大深度7の地震が発生した街のなか、参加者は避難所まで向かいます。

実際に大地震が発生した際の状況を、身をもって学べるだけでなく、タブレット端末を使ったクイズに答えながら進んでいくので、避難方法について主体的に学ぶことができます。ほかにも映像や壁面グラフィックで津波の特徴がわかる「津波避難体験コーナー」など、地震以外の災害について知識を得ることが可能です。

全国各地にこういった防災関連施設があるので、それぞれの地域にある施設に足を運んでみるのもひとつの手です。

全国各地の防災体験館データ

釧路市民防災センター

地震体験や、実際に水を噴射する水消火器と、簡易的な赤外線式を使った消火体験が可能。
※出典:釧路市「釧路市民防災センターのご利用案内

大阪市立阿倍野防災センター

地震で崩れ落ちた街中を、地震発生から火災発生、消火、救出、応急救護まで一連の流れを体験しながら学べる。
※出典:「大阪市立阿倍野防災センター

福岡市民防災センター

大画面で防災について学べるガイダンスシアターをはじめ、地震、強風、火災等の体験コーナーがある。
※出典:福岡市消防局「福岡市民防災センター

その他全国各地の防災体験館は、「日本全国の防災体験館データ(市民防災ラボ)」をご参照ください。

企業の避難訓練で確認しておくべきポイント

訓練の目標を明確に

訓練は、限られた時間のなかで最大限の効果を得るものでなければなりません。実際の非常時に役立つような対応力を身につけるために、まずは訓練の目標を明確にすることが大切です。形式的に訓練を行わず、設定した目標に対してどのような訓練が効果的かをしっかり考慮しましょう。

BCPや防災マニュアルに沿った訓練

先にも触れた通り、企業での避難訓練は単なる身を守る方法の確認だけに収まらず、BCPや防災マニュアルに基づいて適切な判断や行動をする訓練や、被害を最小限にとどめ、早期に業務再開する方法などを確認することが重要。そして訓練を踏まえ、適宜BCPや防災マニュアルの見直しをすることも求められます。

周辺地域との連携も重要

避難訓練は社内のみで行われることが多いかもしれませんが、災害時には周辺地域との連携が必要になる場合があります。実際に、周辺地域・消防署と合同で訓練を行っている企業や、過去の災害時に帰宅困難者のためにロビー等のスペースを提供した企業などもあります。自社を守るだけでなく周辺との関わりも考えた訓練を行うことで、企業としての価値をより向上させていくことができるでしょう。

当事者意識を持たせるALSOKの教育・訓練支援とは

今回ご紹介したアイディアは、実働型の訓練になるため、形骸化した避難訓練よりも当事者意識を持って取り組むことが可能になります。なおALSOKでも、警備のプロによる以下のような教育・訓練支援を提供しています。

防災講習会

地震の基礎知識や、周辺地域の特性・被害予測、地震の際のとるべき行動などを講習で学んでいただきます。従業員の皆様に防災意識を持っていただくことで、震災への対策の必要性、防災マニュアルの作成など、震災対策を実施、浸透させる雰囲気作りを行います。

防災訓練実施支援

地震など災害が発生した際の訓練をお手伝いします。火災発生時の「避難訓練」(避難場所への移動や消火訓練等)や、防災意識を高めるための様々な「防災訓練」に対応します。さらに、建物の図面と地図を活用して災害時の対応についてイメージトレーニングをする「災害図上訓練」も行っています。訓練を行なうことで、震災への備えの必要性、現在実施している対策やマニュアルの周知、現状の不足部分などを発見、改善に役立つことも期待できます。

救急トレーニング(AED)

救急処置用の医療機器AEDの販売・レンタル・管理だけでなく、実用的な使い方まで講習を行います。詳しくはこちらから。

このように、ALSOKで展開する教育・訓練支援は実際に動いてもらったり、意見を出し合ったり、実用的な情報を講習したりと「主体性をもたせること」を目的に行っています。

形骸化している避難訓練を続けるだけでは、実際の災害発生時に役立ちません。実施する内容を見直し、参加者にとって「印象に残る避難訓練」を行うことで、実際の緊急事態時に対応できる力を身につけていきましょう。