
雄大な大海原に三方を囲まれた和歌山。古より海が暮らしをつくり、歴史を動かしてきました。夏の和歌山で潮風を感じる旅へ。
Photo: Kentaro Oshio Text: Reiko Furuya
本丸跡から白亜の天守閣を望む。
大・小天守・櫓・門を多門櫓によって繋げた連立式天守が優美な姿を見せる。1935年に旧国宝に指定されるが、戦火で焼失し、多くの市民の願いで1958年に再建された。復興のシンボルでもある。

和歌山
和歌山市の中心部、緑茂る虎伏山の頂上に町を見下ろすようにそびえ立っている和歌山市のシンボル「和歌山城」。大・小天守・櫓・門が渡り廊下で連結された「連立式天守」が独特の美しい外観を生み出しています。1585年、豊臣秀吉による紀州攻めの後、秀吉が弟の秀長に命じて築城させて以来、江戸時代初期から明治維新まで徳川御三家のひとつ紀州徳川家の居城として時を刻んできました。
裏坂からつづら折りの石段を登り、天守閣のある本丸を目指します。道中、注目すべきは今もなお良好な状態で残る多様な石垣。城主ごとに石材や工法が異なり、和歌山城の時代の変遷を物語っています。
「ここは高野山や四国攻めの中継地点として重要な場所でした。紀の川などの水上交通を掌握する思惑もあったのでしょう」と、学芸員の古川周平さん。城の周囲には紀の川から水を引き込んだ堀がめぐらされ、特に北側には二重の堀を構築して防御を固めていたといいます。
天守閣から穏やかな現在の紀の川を眺めながら、戦略や権力をめぐる思惑が渦巻いていた往時との隔たりに、深い感慨を覚えました。
昭和39年創業の和歌山名物「オロチョンちゃんぽん」発祥の店へ。辛みの効いたスープのちゃんぽんは、九州出身の創業者が“麺好きな和歌山の人たちに新たな麺文化を”と挑んだひと品です。徹底的に下処理した豚ゲンコツや鶏ガラなどを20時間以上煮出した雑味のないスープと、秘伝の辛味噌が相まって、深みのある絶妙な味わいに仕上がっています。創業以来の伝統の味は食べ進むうちにクセになっていく一杯でした。
和歌山城
1585年、豊臣秀吉の命により弟の秀長が虎伏山の峰に築城したのが始まり。江戸時代には徳川御三家のひとつ、紀州藩の政治と文化の中心となり、八代将軍吉宗と十四代将軍家茂を輩出した。優美な天守閣の他、時代変遷を物語る多種多様な石垣や起伏のある地形を生かして作られた庭園や御橋廊下、江戸時代初期に建てられた岡口門など見どころも多い。和歌山城の南側に位置する岡公園は和歌山城の石垣に使う石材の切り出し場。

073-422-8979(和歌山城天守閣)
- 住所
- 和歌山市一番丁3
- 利用時間
- 9:00~17:30(入場は17:00まで)
- 入場料
- 大人410円、小人200円(小・中学生)
※団体割引、障害者ほか割引有
- 休
- 12月29日~12月31日




紀州の名城 史跡 和歌山城
さらしな
昭和39年創業の和歌山名物「オロチョンちゃんぽん」発祥の店。豆板醤やスパイスなどを使った辛味の効いたスープに、野菜や肉、海鮮など具だくさんのちゃんぽんを提供する。和歌山をはじめ国内各地から取り寄せた新鮮な野菜を使用。注文時、具材の種類→スープの種類(辛さの表示あり)→好みのトッピングの順に選ぶ。
073-444-9246
- 住所
- 和歌山市毛見65-5
- 営業時間
- 11:00~15:00(L.O.14:30)
17:30~22:00(L.O.21:30) - 休
- 無休


1250年以上の歴史を誇る由緒ある寺院「紀三井寺」へ。朱塗りの楼門をくぐると231段の石段からなる急峻な参道が続きます。登り切った先を右に進むと高さ約12mの木造立像「大千手十一面観世音菩薩像」が安置される仏殿が現れました。建物の西側に目を移すと和歌浦をはじめ淡路島や四国まで見渡せます。万葉集にも歌われた和歌浦の絶景を前に疲れも消えていきました。
寺には数々の伝説も残ります。そのうちのひとつ「乙姫伝説」にちなんで、龍宮城の灯明を持って本堂へ納める「乙姫行脚の儀」が行なわれます。乙姫役は一般公募者から選ばれるそう。石段を駆け上がり一番福を競う「福開き速駈参り」と合わせ、広く市民に開かれた紀三井寺。遠い昔から海を見守り人々の暮らしを照らしてきたのだと実感しました。
市内から車で約20分、和歌山県の中部西岸の港町、湯浅町は日本の醤油発祥の地といわれています。
この地で木樽を使った伝統の醤油づくりにこだわる「湯浅醤油」を訪ねました。醤油蔵に一歩足を踏み入れると100年以上の年季の入った木樽が並び、旨み豊かな醸造の香りに包まれます。
「蔵に棲み着いた微生物たちが個性ある風味を生み出します。これこそが湯浅醤油の唯一無二の魅力です」と、現場統括の塩谷正人さん。麹づくりから始まり、「発酵・熟成」を経てようやく完成する醤油の長い旅路…。蔵の見学を通じて醤油づくりの真髄に触れることができました。
「世界の一滴」を目指して、伝統を尊重しながら、進化を続ける湯浅醤油。次は醤油の麹を宇宙に飛ばす“宇宙醤油”に挑戦するそうです。
海に開かれた和歌山らしい“進取の気性”を感じました。
紀三井寺
770年、唐の僧・為光上人によって開基された古刹。標高228.7mの名草山の⻄の山腹、標高約50mの場所に建つ。寺の名称の由来は境内の三つの井戸から。ご本尊・十一面観世音菩薩は50年に一度開扉される秘仏。西国三十三所観音霊場の第2番札所で古より多くの巡礼者が訪れ、早咲き桜の名所でもある。日本遺産「絶景の宝庫 和歌の浦」の構成文化財にも登録され、石段の先にある「天空かふぇ」からは絶景を眺めながら井戸の水で淹れたコーヒーが味わえる。

073-444-1002
- 住所
- 和歌山市紀三井寺1201
- 拝観時間
- 【本堂受付所での納経(御朱印)】8:00~17:00
【仏殿での3階展望回廊登楼】8:30~16:30
【ケーブル運行時間】8:30~16:30 - 参拝料
- 【徒歩参拝】無料
- 休
- 無休





湯浅醤油
明治14年、金山寺味噌を代表とする味噌醤油醸造業として創業。現在の5代目当主・新古敏朗氏が「世界一の醤油を作りたい」との強い想いで2002年に設立した。国産の厳選素材と伝統の木樽醸造にこだわりつつ、“ホンモノの醤油”を広めるべく、革新を続ける。フランスボルドーのワイナリーでの醤油づくりやボルドー市内でのレストランの開業など、ユニークなアイディアにチャレンジしながら、驚きと感動の一滴を届ける。

※団体様要予約

0737-63-2267
- 住所
- 有田郡湯浅町湯浅1464
- 営業時間
- 【売店】9:00~17:30
【自由見学・蔵カフェ】9:00~16:00 - 休
- 年末年始




日本の醤油発祥の地・湯浅 湯浅醤油
和歌山県の南部、「南紀」は温暖な気候と風光明媚な地域。東側に位置する那智勝浦町は、熊野古道や那智の滝などの玄関口として有名ですが、実は生のまま水揚げされるまぐろの取引高で日本一を誇ります。
「勝浦漁港にぎわい市場」は、近海の延縄漁で獲れた新鮮な生まぐろを堪能できる施設です。ウッドデッキで潮風を感じながらいただく生まぐろは、もちっとした食感と甘い香りが口いっぱいに広がり、舌だけでなく五感を満足させてくれました。黒潮が運んだ豊かな恵みとこの地で培われた“生まぐろ文化”の魅力を存分に味わってみてください。
那智勝浦町から海沿いを西方面へ約100㎞。海のリゾート地、白浜町には全国から新鮮な海産物が入荷される西日本最大級の海鮮マーケット「とれとれ市場南紀白浜」があります。市場コーナーには多種多様な海の幸が並び、海に囲まれた“日本”を実感する壮観な光景が広がります。
名物はまぐろの解体ショー。職人が威勢の良い声を響かせながら巨大まぐろを手際よくさばいていく姿に目が釘付けになりました。
市場には豊富な食材が揃っているので、自分好みの食材で海鮮丼を作ったり、BBQコーナーに持ち込んだりと、多様な楽しみ方ができるのも魅力です。
雄大な太平洋に突き出した本州最南端の町、串本町へ。サンゴ礁の美しい海、奇岩・怪石の自然美に恵まれています。2021年にこの地に誕生したのが日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」。安全に発射できる環境が揃っています。
「宇宙ふれあいホールSora-Miru」は、宇宙やロケットの魅力を届ける施設。体験型の展示を通じて宇宙を身近に感じることができます。なかでもスペースシアターの映像は、串本町の美しい自然を背景にロケットが大空に打ち上がる瞬間を捉え、この地が「地球と宇宙を繋ぐ玄関口」になっていることを実感しました。かつては黒潮を通じて、そして次は宇宙を通じて、新たな世界を見せてくれることでしょう。
勝浦漁港にぎわい市場
天然の良港として栄えた勝浦漁港内にある観光市場。生のまま水揚げされるまぐろとしては日本一の取引高を誇る勝浦漁港ならではの新鮮な生まぐろを堪能できる。施設内には複数の飲食店が入り、丼、寿司、カツ、カマ焼きなどでまぐろを堪能できる他、海産加工品や勝浦特産のお土産品も購入できる。漁港では生まぐろの競りを地元ガイド付で見学し、生まぐろ一本を自分で解体するツアーも。問い合わせ・申し込みは那智勝浦観光機構事務局まで。

0735-29-3500
- 住所
- 東牟婁郡那智勝浦町築地7-12
- 営業時間
- 8:00~16:00(飲食ブースL.O.15:30)
- 休
- 火曜日
(年末年始は不定休のためHPでご確認ください)



(一社)那智勝浦観光機構

とれとれ市場
地元や日本全国から毎日新鮮な海産物を入荷する西日本最大級の海鮮マーケット。海産物や肉、野菜などが購入できる市場コーナー、海鮮丼・寿司・海鮮焼きが楽しめる食事・軽食コーナー、和歌山の名産が揃う土産コーナー、購入した食材でBBQが楽しめるBBQコーナーなど一日中過ごせる観光スポットになっている。


0739-42-1010
- 住所
- 西牟婁郡白浜町堅田2521
- 営業時間
- 8:30~18:30(食事オーダーストップ17:30)
- 休
- 不定休
※とれとれ横丁の海鮮焼きは土日祝日のみ営業




宇宙ふれあいホール Sora-Miru
日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」がある串本町に2025年4月にオープンした宇宙体験型ミュージアム。
インタラクティブな体験型の展示や8Kシアターなどの最新技術などを使って、宇宙やロケットについて楽しく学べる。ミュージアムショップでは宇宙やロケット関連グッズの他、和歌山の名産品なども揃う。地元高校生が開発した宇宙グッズも。季節毎にイベントも開催する。

050-8881-7897
- 住所
- 東牟婁郡串本町西向359
- 営業時間
- 9:00~17:00(最終入館16:00)
- 入館料
- 大人・中学生・高校生1,000円
4歳~小学生700円
3歳以下無料 - 休
- 第三水曜日(祝日の場合は翌日)
12月31日~1月3日




南紀【勝浦・串本・白浜】

円月島(えんげつとう)の夕日
南紀白浜のシンボル「円月島」。長い年月をかけて波に削られてできた海蝕洞(かいしょくどう)の造形美と沈みゆく夕陽が海に溶け込む光景は極上の美しさを放つ。





















