BCP(事業継続計画)の必要性

2018.02.13

緊急事態時に会社が生き残るために必要な「BCP(事業継続計画)」

自然災害や大火災、テロなど、いつどこで起きるのかわからない緊急事態。発生直後は誰もが思考停止してしまい、一瞬にして大混乱へと陥ります。しかし、そんな緊急事態に見舞われたときこそ企業が果たすべき役割は重要なもの。従業員の身の安全や雇用を守り、顧客との信頼を保つためには緊急時でも事業を継続する必要があります。

昨今の自然災害等の甚大な被害を踏まえ、そのような事態に陥っても冷静な対処が行えるよう、事前に計画を定めておこうという動きがあります。それが「BCP(事業継続計画)」です。防災対策は人命や企業の存続に直接関わる非常に重要な課題。「どうにかなるだろう」と高を括らず、早速BCPの策定に取り組みましょう。

BCP(事業継続計画)とは

「BCP」とはBusiness Continuity Planningの略で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。企業が緊急事態に直面した際、損害を最小限に抑えるとともに、中核となる事業の継続・早期復旧のために、緊急時における事業継続の方法や平常時から行っておくべき対策などを取り決めておく計画のことです。

BCPにおける緊急事態とは、大地震や洪水等の自然災害をはじめ、大火災、テロ攻撃、感染症の蔓延といった外的リスクと、それに伴うシステム・情報通信等の障害、材料・部品の供給停止などを指します。また、個人情報流出や不祥事、食中毒などの内的リスクもBCPにおける緊急事態に含まれます。

BCPを策定していない場合、緊急時に対応が遅れて従業員の安全が確保できない状況や、事業を縮小せざるをえない事態などに陥る可能性があります。また、緊急時の対応が不十分で業績が悪化すれば、社員の解雇や倒産につながる場合もあるでしょう。実際、東日本大震災では多くの企業が倒産・事業縮小を余儀なくされましたが、直接被災していなくても、得意先・仕入先が被災したり、社会インフラ機能が低下したりといった間接的な要因で倒産したケースもありました。

そんなBCPは決して大企業だけのものではありません。大企業では非常時にも多くの従業員を統制するためにもBCPを策定する必要がありますが、中小企業は限られた資本を確実に守らなければ企業の存続そのものが脅かされる恐れがあります。このように、BCPはどんな企業においても重要なものであり、現在さまざまな企業において対応が進められています。

防災マニュアルとBCPの違い

「BCPが必要ということは理解したが、防災マニュアルとはどんな違いがあるのか?」と戸惑う方がいるかもしれません。確かにどちらも緊急事態発生時に適切な対応を行うための計画ではありますが、それぞれ目指す方向が異なります。

防災マニュアルとは、災害発生時の初動や事前対策を定めるもの。人命の安全や資産の保全を最優先とする対策になります。一方、災害をはじめとするさまざまな緊急事態発生時の初動や事前対策を含め、人命や資産を保護しつつ事業の継続・復旧を目指すのがBCP。防災マニュアルは主に社内や拠点単位で考えられているのに対して、BCPのカバー範囲は全社よりも広く、取引先企業などとの関係まで視野に入れる必要があります。

BCPが求められる背景

BCPを策定しなければいけない、という法律や規則は今のところありません。それにもかかわらず、現在BCPを策定する動きが活発になっている理由としては、以下のような背景が挙げられます。

大規模災害の発生、予測困難なリスクの顕在化

地震・津波・台風といった大規模な災害や、大火災、テロ攻撃、感染症の蔓延など、予測困難なリスクが増大している現代。特に自然災害の恐ろしさはここ数年で浮き彫りとなり、東日本大震災の発生を機に、災害対策の重要性を多くの人たちが再認識したことは言うまでもありません。加えて、近年では不安定な世界情勢や新型インフルエンザ等の感染症など、新たな脅威が生まれているのも事実。そして、最近ではインターネットの普及により、問題の種が一気に拡散する恐れがあるため、さまざまなリスクに対して適切な対応が求められるといった背景もあるようです。

企業の安全管理の必要性

近年は企業の社会的責任が大きくなっており、企業は従業員の雇用はもちろん、その家族の安全や顧客の信用を守る必要性が増しました。災害等の対策や準備が不足していて従業員が死傷した場合に家族から安全配慮義務違反で訴えられたり、取引先との契約が達成できずに契約違反で違約金を請求されたりするケースもあります。また、現在は大企業が積極的にBCPの策定等を進めているため、系列会社・子会社などもBCPを策定するようにと外部圧力が高まっているというのも理由のひとつです。

事業構造の弱体化

最近では、多くの企業においてサプライチェーンマネジメントの最適化や、自社の中心業務以外を外部委託するアウトソーシング等の活用が行われ、さまざまな企業・事業が連鎖的に結びついている事業構造が一般化しています。これは、平常時は効率的であるものの、一端にほつれが生じると関連している多くの企業や事業が停止してしまうリスクをはらんでおり、事業を継続するためには万が一に備えた対策が不可欠となっているのです。

こういった背景があってBCPが求められている一方で、BCPを策定することによるメリットも確かにあります。BCPを策定するなかでリスクの洗い出し等を行うと、自社の強み・弱みや事業の重要度・優先度を可視化することができます。また、BCPの策定は社会的な好影響を得られる場合も多く、取引先からの信頼性や企業イメージの向上といった利点があります。

BCPの実態について

現段階では、どれくらいの企業がBCPを策定しているのでしょうか。2017年度の内閣府の調べによると、BCPの策定状況は中堅企業と比較して大企業のほうが進んでいます。年々BCPを策定する企業は増えており、現在策定中の企業も含めると、大企業においては8割以上、中堅企業においては5割以上の企業がBCPを取り入れているようです。

BCP策定に至ったきっかけは、やはり「近年多発する自然災害への備え」が44.2%で最多。「過去の被災体験から」という理由も多く17.2%となっています。想定しているリスクについても自然災害に対する意識が反映されており、「地震」をリスクとして想定している企業は92.0%。ほかには「火災・爆発」「通信(インターネット・電話)の途絶」といったリスクを想定してBCPを策定する企業が多くなっています。(*1)

BCPで策定すべき内容

BCPは扱う範囲が広く、構成するドキュメントは多岐にわたります。ここでは、多くの企業で採用されている災害対策の領域をメインに、どのような内容を盛り込んでいくべきかを見ていきましょう。

基本的にBCPを策定するには、独自に作成するか、事業継続マネジメントシステムに関する国際規格「ISO23001」を取得するという2つの方法があります。独自で策定する場合、書籍・ガイドライン等を参考に自力で作るほか、行政などが提供するテンプレートを利用したり、コンサルタントに協力してもらったりという手段があります。一方、ISO23001を取得するには手間やコストが必要ですが、外部に対してのアピールになるという利点もあるでしょう。

BCPの構成内容は、「非常時対応マニュアル」「仮復旧計画」「本復旧計画」「保守運用」といったものが一般的。非常時対応マニュアルは、災害時の人命救助や安否確認、情報収集といった初動対応の計画です。仮復旧計画は、代替設備の準備や取引先との連絡など、ある程度混乱が落ち着いた状態から業務を復興させていくもの。本復旧計画では、暫定的な対応をしていたものを平常時の状態まで戻していく計画を定めます。また、いざというときにBCPを機能させるためにはメンテナンスが必要であるため、訓練・演習を行う計画や備蓄用品の入れ替え、緊急連絡先等の更新なども保守運用としてBCPの一部に組み込んでおく必要があります。

BCP策定の手順

では具体的に上記のようなBCPを策定していくためには、どのように準備を行っていけば良いのでしょうか。マニュアル作成に至る前の下調べから、実際に防災が起きた場合に使える備蓄品の準備までご説明します。

1. 重要な業務や資源を洗い出す

企業によっては、取り扱う事業が多岐にわたる場合もあるでしょう。しかし、緊急事態が発生した際に、すべての事業を平常通りに行うことは困難です。そのため「どの事業を優先して継続させるのか」「どの商品を最初に製造するべきなのか」など、社内事業における優先順位を取り決めなければなりません。会社の存続に関わる、最も重要性の高い中核事業を確定した上で、その事業を遂行するために必要な資源の目処まで立てておきましょう。

2. BCPを作成する

緊急事態といっても、想定されるシーンはさまざま。具体的に「どのような事態」において「誰が主導に動き、誰に対して指揮をするのか」まで落とし込んでおきましょう。また、災害対応は発生直後の初動対応が重要となります。つまり、初動対応がスムーズに行われなければ、その後の二次災害防止や事業復旧もままなりません。安否確認・災害対策本部の設置・帰宅困難者対応など、緊急事態時に早急に対応すべきことに対して具体的な対処法を決めておきましょう。

3. 備蓄品の準備

東京都の帰宅困難者対策条例では、地震等の災害発生時に施設内待機を余儀なくされる場合を想定して、全従業員の3日分の水・食料・その他必要物資の備蓄が努力義務となっています。

3日間で必要となる1人当たりの備蓄量の目安は以下の通りです。

・水……1人・1日あたり3リットル × 3日 = 9リットル
・主食(乾パン・アルファ化米等)……1人・1日あたり3食 × 3日 = 9食
・毛布……1人につき1枚
・そのほかの品目は物資ごとに必要量を算出
参照:東京都防災ホームページ

これら以外にも、簡易トイレや衛生用品(トイレットペーパー等)、敷物、懐中電灯、携帯ラジオなど必要性の高い備品を事前に備蓄しておくと非常時に役立つでしょう。

平常時から取組むことの重要性「BCM(事業継続マネジメント)」とは

もしBCPを策定し、社内へ展開できたとしても、作っただけで放置されていては意味がありません。BCPは円滑に運用できて初めて策定する意味を持つもの。緊急事態で混乱している状況のなか、いきなり本番では冷静な判断はなかなか出来ません。だからこそ、先にも触れたように平常時に訓練等を行うことで、いざというときに適切な対応をするための判断力・対応力を身につけることが重要となります。

このように、BCPを継続的に改善するために策定・運用・見直しなどを行うサイクルを「BCM(Business Continuity Management=事業継続マネジメント)」と言います。BCPを策定することを最終目標とせず、教育や訓練、内容のメンテナンス等といったBCMのプロセスを適切に運用することで、緊急事態と際により効果が発揮されるでしょう。

BCM(BCPサイクル)は、一般的に以下のような5つのステップを循環させます。

1. 事業理解

事業理解を深め、中核となる事業や優先順位などを設定することで、事業継続にまつわる基本方針を策定します。

2. BCPの準備・事前対策の検討

想定される被害や復旧の目標時間などを決定するとともに、自社におけるリスクの洗い出し等を行い、BCPの準備や対策の検討を行います。

3. BCP策定

検討した内容をもとに、さまざまな観点から非常時の対応を定め、BCPを策定します。

4. BCP文化の定着

BCPのマニュアル等を周知するとともに、教育・訓練などを行い、非常時の対応についてそれぞれが自分の役割を果たせるように確認をしておきます。

5. BCPのテストや維持・更新

期待した効果が得られるのかをチェックし、問題や改善点があれば次のサイクルに生かします。また、定期的な点検等が必要な項目の是正などを行い、BCPを維持します。

手軽にBCPの教育や訓練を行うには?

企業として事業活動を行う以上、従業員の安全を守るためにも、顧客からの信頼を守るためにも、今やBCPの策定は必須条件となりつつあります。しかし、実際に策定を進めようにもどこから始めればよいのかわからなかったり、作成したものの適切に運用できなかったりと、BCPを非常時に活躍するものにしていくことには難しさが付きまといます。

そこでおすすめなのが、ALSOKのBCPソリューションサービスです。「BCPマニュアル策定支援」や「防災講習会」「防災訓練実施支援」など、マニュアル策定から教育・訓練までトータルサポートを行っています。また、災害だけでなく犯罪リスクや情報セキュリティなど、BCPの対象となるあらゆるリスクにワンストップで対応可能な点も特徴です。

BCPの策定は、企業の信頼に関わる重要な任務。徹底した対策を行えるALSOKのBCPソリューションで、いつ起こるかわからない緊急事態にもしっかり対応できる強い企業を目指していきましょう。