AEDの選び方とは?6つの比較ポイントと設置場所別の注意点

AEDの選び方とは?6つの比較ポイントと設置場所別の注意点
2025.07.30更新(2023.10.27公開)

AED(自動体外式除細動器)とは、急な心疾患によって起こる心室細動と呼ばれる突然の不整脈に電気ショックを与え、心臓の動きを正常に戻すための機器です。駅や空港などを中心に多くの場所で設置されています。AEDは誰でも使えるよう設計されており、医療従事者でなくても処置が可能です。万が一に備えて、事業所や施設にAEDの設置を検討している企業や自治体も多いのではないでしょうか。

この記事では、AEDの選び方と選ぶ際にチェックしておきたい6つのポイントや注意点をご紹介します。

目次

AED検討前に自社の導入ニーズを明確にしよう

AEDには、電極パッドが一体型のものや2枚に分かれているもの、電源ボタンで起動するタイプ、ふたを開けると電源が入るタイプ、屋外設置が可能なタイプなど、さまざまな種類があります。その他に、外国語のアナウンス機能が搭載されたAEDもあります。

こうした多様な製品の中から自社に適したAEDを導入するには、まず利用者の傾向や施設の特性、設置場所の環境などを整理し、ニーズを明確化することが重要です。以下では、AED導入にあたって重要な3つの視点を解説します。

利用者特性の把握

AEDの導入にあたっては、施設を利用する人々の特性を正しく把握することが大切です。例えば、日常的な利用者の人数や利用者に占める高齢者や子どもの割合、外国人利用者の有無といった情報をもとに、どのような機種が適しているかを検討しましょう。特に、高齢者や既往症を持つ方など、心停止リスクが高い利用者が多い施設では、AEDの設置が強く推奨されます。

施設特性の把握

AEDの設置場所や台数を決定するためには、施設そのものの特性も考慮する必要があります。例えば、スポーツ施設では運動中の突発的な心停止リスクがあるため、AEDの設置が重要です。子どもの利用者が多い場合は小児対応機能を搭載したAEDが必要です。また、施設の規模が大きい場合、1台のみでは迅速な対応が難しくなります。傷病者が発生した際、1分1秒でも早くAEDを使用できるよう、複数台の設置を検討しましょう。

さらに、医療機関からの距離や救急搬送までの所要時間も考慮すべき要素です。周辺に医療機関が少ない、あるいは救急隊の到着に時間がかかると予想される施設では、AEDの設置による初期対応の体制整備が特に重要となります。

その他にも、24時間営業の施設や店舗なども、緊急時に誰もが迅速に人命救助を行うことができることから、AED設置のニーズが高いと考えられます。

運用体制の整備

AEDを設置しただけでは、十分な備えとはいえません。常に使用可能な状態を維持し、緊急時に適切な対応が取れるよう、社内の運用体制をあらかじめ整備することも重要です。具体的には、AEDの管理責任者を選任し、定期的な点検や消耗品の管理を徹底しましょう。

また、使用方法に関する社員向けの研修や実地訓練を定期的に実施することで、従業員がいつでもAEDを適切に使用できるようにしておくことも大切です。加えて、緊急時の連絡手段や体制も整備しておけば、初動対応の遅れを防止できます。

AEDを選ぶ際に重要な6つのポイント

ハートを持つ手

AEDを選ぶ際は、使用環境や目的に合わせて適切な機種を選定することが重要です。ここでは、AEDを比較・検討する際に押さえておくべきポイントを解説します。

操作性

AEDは誰もが使える仕様になっていますが、実際に使用する人のほとんどは初めての場合が多いです。そのため、どのような場面でも迷わず操作できるよう、「使いやすい」AEDを選ぶことがとても重要です。

例えば、音声ガイドが搭載されている製品であれば、初めてでも指示に従うだけで適切な処置が可能です。この他にも、液晶画面やLED表示などにより画面が見やすいか、電極パッドが装着しやすいか、外国人が使うことを想定し多言語対応があるかなどをチェックしましょう。

機能性・性能

AEDは、施設利用者の特性や想定される使用場面に適した製品を選びましょう。例えば、子どもの利用が多い施設では、小児対応機能を搭載したAEDの設置がおすすめです。他にも、胸骨圧迫の深さや速さを音声や表示でサポートする機能の有無、心電図解析後に自動で電気ショックを行う機能、屋外利用を想定した防塵・防水性能(IP等級)なども確認しておくと安心です。これらの要素を総合的に考慮し、施設に適したタイプ・機種を選定しましょう。

耐用年数や保証期間の長さ

AEDには耐用年数が定められています。耐用年数とは、AEDが正常に使用できる期間を指します。メーカーや機種によって異なりますが、7~8年が目安です。また、AEDには5~8年ほどの保証が設けられており、メーカーごとに保証期間は異なります。

理由は後述しますが、AEDの耐用年数を過ぎた場合には必ず更新(買い替え・入れ替え)が必要です。添付文書や取扱説明書に記載されており、各メーカーのホームページでも確認できます。そのため、AEDを導入する際は、必ず耐用年数や保証期間を確認しておきましょう。

コスト面(初期費用・メンテナンス維持費)

AEDは、電池や電極パッドといった消耗品の交換を定期的に行う必要があります。交換を怠ると必要なときに安全にAEDを使用できなくなるため、定期的なメンテナンスや管理が重要です。

消耗品は、AEDを導入する際に交換分がセットになったものもあります。都度購入することもできますが、手間や管理が煩雑になる場合もあるため、交換分の電池や電極パッドがセットになっているものを選ぶと便利です。

契約形態(購入・リース・レンタル)

AEDの契約形態は、購入・リース・レンタルの3つの方法があります。購入の場合は、まとまった初期費用がかかりますが、ランニングコストは発生しません。定期交換品を含む契約をすることも可能です。

一方、リースやレンタルは初期費用を抑えることができますが、毎月のランニングコストがかかります。また、中途解約した場合に解約金が発生することがあります。その他、定期交換品が料金に含まれている場合が多く、実際にAEDを使用し消耗品の交換が必要になった場合も追加費用が発生しにくい特徴があります。

それぞれメリットやデメリットがあるため、把握した上で自社にあった契約方法を選ぶと良いでしょう。

管理・サポート体制

先述した通り、AEDは定期的に電池や電極パッドの交換を行い、適切に管理する必要があります。「交換時期を迎えたらお知らせしてくれる」「消耗品の使用期限が近づくと定期交換品を届けてくれる」などのサポート体制が整っていると、運用の手間を大きく軽減できます。加えて、24時間365日対応のサポート窓口が設置されているかどうかも、緊急時の安心感に影響します。

また、AEDの導入後に、使用方法に関する講習会や定期研修のサポートを受けられるかも確認しておきたいポイントです。サポート体制が充実した事業者を選ぶことで、導入後のフォローや運用体制を支援してもらいながら、緊急時に迅速に対応できる体制を整備できます。

【設置環境別】AED導入の際の注意点

厚生労働省が公表している「AEDの適正配置に関するガイドライン」には、AEDを設置する際に考慮すべき点が記載されています。新たにAEDを設置する場合は、以下の条件を満たすことが前提です。すでに設置している場合でも、これらの基準を再確認し、必要に応じて見直しましょう。

  1. 心停止から5分以内に電気ショックが可能な配置
    現場から片道1分以内の密度で配置
    高層ビルなどではエレベーターや階段等の近くへの配置
    広い工場などでは、AED配置場所への通報によって、AED管理者が現場に直行する体制、自転車やバイク等の移動手段を活用した時間短縮を考慮
  2. 分かりやすい場所(入口付近、普段から目に入る場所、多くの人が通る場所、目立つ看板)
  3. 誰もがアクセスできる(カギをかけない、あるいはガードマン等、常に使用できる人がいる)
  4. 心停止のリスクがある場所(運動場や体育館等)の近くへの配置
  5. AED配置場所の周知(施設案内図へのAED配置図の表示、エレベーター内パネルにAED配置フロアの明示等)
  6. 壊れにくく管理しやすい環境への配置

出典:厚生労働省「AEDの適正配置に関するガイドライン

AEDを導入する場合、設置や使用に適した環境であるかどうかを事前に確認することも重要です。以下では、AEDの設置環境別に注意すべき点をご紹介します。

オフィス・事業所

多くの社員を抱える企業のオフィスは、AEDの設置を検討すべき施設の1つです。AEDの適正配置に関するガイドラインでは、例として50歳以上の社員が250人以上働く場所にはAEDを設置することが望ましいとされています。また、事業所に設置する場合、使用場所を屋内に限定するか、屋外での使用も想定するかによってAEDの種類や設置方法が変わります。

屋内に設置する場合は、入口や通路、共用スペースといったすぐに見つけやすい場所に配置しましょう。屋外に設置する場合、AEDは天候や外部環境の影響を受けるため、AED本体または収納ケースが防水・防塵性能が高いものかどうかを確認しましょう。さらに、屋外では季節による温度変化も考慮する必要があります。一部のAED収納ケースには冷暖房機能がついており、適切な温度管理が可能です。

企業の事業所は医療機関と異なり、子どもにAEDを使用する機会は少ないと考えられます。しかし、オフィス内や事業所が入居するビルに子どもが訪れる施設がある、もしくは近隣に子どもが多く訪れる場所がある場合、小児用パッドも含めて検討すべきでしょう。

医療・介護関連施設

医療・介護関連施設では疾患を持つ方もいることから、一般の施設よりもAEDの使用頻度が高くなると考えられます。施設内の各所から迅速にアクセス可能な場所に設置することが重要です。また、複数階の建物の場合は各階にも配置を検討すると良いでしょう。

介護関連施設では小児用パッドの需要は少ないと考えられますが、外部からの訪問者に入居者の孫などが含まれることも想定して備えておくと安心です。

教育施設(学校・幼稚園)

学校や幼稚園などの教育施設では、大人だけでなく子どもも心停止を起こすリスクがあるため、AEDの設置は極めて重要です。小児対応機能を搭載したAEDを選択しましょう。

また、体育の授業中は心臓への負荷が高まり突発的な心停止が発生する可能性や、ボールなどが胸を強打して心停止に至る可能性もあることから、体育館や運動場の近くには必ずAEDを設置しておくことが推奨されます。昨今は、建物の外側や校庭に面した壁面など、誰でもすぐに取り出せる場所に設置する事例も多く見られます。

観光施設やレジャー施設

観光施設やレジャー施設はさまざまな年代の人が訪れるため、大人だけでなく子どもも心停止を起こすリスクがあります。そのため、設置するAEDは小児対応機能を搭載したタイプを選びましょう。1日の利用客が5,000人以上の大規模な商業施設(常時、成人が250人以上いる規模を目安とする)は、可能な限り短時間でAEDを持ってくることができるよう、複数台設置することが推奨されています。

また、屋外施設やアクティビティ施設では、天候や外部環境の影響を考慮し、AED本体または収納ケースが十分な防水・防塵性能を備えているか確認しましょう。

スポーツ関連施設

健康な人でも運動中に何らかの理由により突如心停止を起こす可能性があります。すぐにAEDによる処置が施せるよう、スポーツ関連施設でもAEDの設置が求められます。

スポーツ関連施設に設置する場合は、施設関係者だけでなく利用者や来訪者などもすぐにAEDを使用できるよう玄関や共用部に設置しましょう。合わせて、AEDの設置場所が容易に把握できるようなステッカーや案内看板等で明示しておくと良いでしょう。また、スポーツ関連施設では屋外での使用も想定されます。屋外でも使用できる防塵・防水耐性に優れたものだと安心です。

ホテル・宿泊施設

ホテルや宿泊施設では、さまざまな年代の人が訪れるとともに、滞在時間も長い傾向にあるため、AEDの設置が望まれます。場合によっては子どもにAEDを使用する可能性があるため、小児モードや小児用パッドが搭載されているものを選びましょう。

また、外国人がAEDを使用する可能性も考えられるため、英語などの多言語に対応しているものを選択すると安心です。ホテルや宿泊施設の規模にもよりますが、複数階の建物の場合は各階にも配置を検討すると良いでしょう。

公共交通施設(空港・駅)

空港や駅などの公共交通施設は、多くの人が行き交う場所であるため、AEDの設置が推奨されます。国内外から訪れる幅広い年齢層の利用者が使えるよう、多言語対応や小児用パッドを装備した製品が望ましいです。

また、緊急時に通行人や乗客がすぐにAEDを見つけられるよう、目立つ場所への設置や案内板の掲示といった配慮も必要です。

このようにAEDは設置環境別に注意すべき点がいくつかあります。
夜間や休日は建物自体が閉館するため、AEDを設置している場所に入れないということも考えられます。設置施設の営業時間や利用者の特性などを考慮し、適切な設置場所を検討しましょう。

出典:厚生労働省「AEDの適正配置に関するガイドライン

AEDの導入に関するよくある質問

AEDマーク

AEDの導入に関するよくある質問をご紹介します。

Q:AEDを購入した際の勘定科目は?

一般的な中小企業の場合、取得価額30万円未満の減価償却資産については、年換算で合計300万円までは取得価額全額を費用計上することができます。一方、リースの場合は資産に計上して減価償却を行う必要があります。

ただし、リースにかかる総額が300万円以下などいくつかの条件を満たすことで、経費として処理できるケースもあります。会計基準などによって異なるため、経理担当者や販売代理店などに確認するのがおすすめです。

Q:AEDの購入に補助金は使用できますか?

AEDの普及を目的として、地方自治体や特定の団体が補助金・助成金を用意しているため、購入時に一定の条件を満たすことで利用が可能です。詳しくは各自治体や団体にお問い合わせください。

Q:保証期間と耐用期間の違いは何ですか?

保証期間は、修理や交換などをメーカーが無償で行ってくれる期間を指します。保証期間が超過しているAEDをそのまま使用し続けたとしても、何かAEDに不具合が発生しない限り困ることはありません。ただし、保証期間が過ぎているAEDが故障した場合、修理費は使用者の負担になります。

一方で、耐用期間はAEDを安全に使用できる期間のことを指します。AEDは「高度管理医療機器」および「特定保守管理医療機器」と定義されており、耐用期間の過ぎた装置は製造時の信頼性と安全性を維持できなくなる可能性があります。そのため、耐用期間を超過したAEDは速やかに更新する必要があります。

Q:メンテナンスは自分たちでできますか?

AEDの基本的な点検や一部消耗品の交換は、セルフメンテナンスで対応が可能です。例えば、本体の外観確認やインジケータのチェック、使用期限を迎えた電極パッドやバッテリーの交換などを日常点検の項目として実施しましょう。一部の機種には自己チェック機能が備わっていますが、トラブルの早期発見や確実な管理のためには、管理責任者を選任し、目視による確認も行うことが推奨されます。

なお、日常点検でインジケータなどに異常が確認された場合は、速やかにメーカーや販売代理店に問い合わせましょう。また、AEDを取り扱う事業者によっては、本体や消耗品、AEDボックスなどを含む保守点検契約を提供している場合もあります。

導入から運用までをサポートするALSOKのAEDサービス

公共施設や人が多く集まる場所でも設置が普及してきたAEDは、企業の事業所や介護老人福祉施設などの一般施設にも設置が必要です。ALSOKでは豊富なラインナップを揃え、AEDの販売・レンタルサービスから講習まで、総合的に支援いたします。

ALSOK AEDサービスの特長

ALSOKのAEDサービスは、警備会社のノウハウを活かし、独自の管理体制を構築。AEDの消耗品の交換時期をお客様にお知らせし、定期交換品をお届けいたします。導入後も24時間365日の体制でサポートいたします。

また、AEDの設置後は、緊急時に正しく使用できるよう、操作方法や救命措置に関する知識を身につけることも大切です。ALSOKでは、実技時間に重点をおいたトレーニング「救急トレーニングサービス(BLS)」も実施しています。地域や職場、学校での講習も行い、受講者の修練度に合わせたきめ細やかな指導をご提供いたします。

まとめ

AEDは、もしものときに役立つ救命のための医療機器です。隣にいる人や従業員が急に倒れ意識がないときに、適切に救命措置が施せるよう事業所や施設などに設置しておくと安心です。特に人が多く集まる場所や、体を動かすスポーツ施設、教育施設などでは、AEDの設置が推奨されています。

AEDを設置する場合は、使いやすさや利用者特性に合わせた機能、耐用年数・保証期間、サポート体制などをチェックして選ぶようにしましょう。また、AEDの設置は補助金・助成金の対象になる可能性もあります。AEDの導入から運用、研修まで一貫してサポートが受けられるサービスをお探しの場合は、ALSOKにぜひご相談ください。