小売店(コンビニ・スーパーなど)開業の流れと準備【店舗開業の基礎知識】

小売店(コンビニ・スーパーなど)開業の流れと準備【店舗開業の基礎知識】
2024.01.31更新(2020.09.03公開)

雑貨店やコンビニなどの「小売店」は、若者から高齢者まで幅広い層の来店が期待でき、取り扱う品目によっては、売上や収益が安定しやすいという特徴を持っています。独立して店舗開業を目指す方のなかには、小売店の開業を検討中という方も多いのではないでしょうか。

今回は、小売店の開業を検討している方のために、事業計画の作成から実際にお店を開くまでの流れをご紹介します。どのように計画を立て、開店に向けどのように行動すべきなのかを知り、経営に向けた意識を準備段階から作っていきましょう。

目次

事業計画の作成(計画の立て方・収支計画など)

事業計画の作成(計画の立て方・収支計画など)

事業計画は、どのような事業を始める場合でも初めに必ず行っておく必要があります。
事業計画書に記載する事項としては、創業理由・代表者の経歴・具体的なビジネスモデル・事業の見通しなどが挙げられます。つまり、どのような人物がどのような理念を持って、どのようなビジネスを成立させようとしているのかが、明確に伝わるようにすることが大事です。

事業計画を作成するおもな目的は、収支計画などを明確にし、計画に沿い戦略的に事業を進めやすくすることです。また、開業資金の一部を融資や補助金などで調達する予定があるなら、その審査で事業計画書を提出する必要があります。開業資金をスムーズに工面するためにも、事業計画書は時間をかけて作成したほうが良いでしょう。

業態別に見る開業資金

1.コンビニなどのフランチャイズ店舗

小売店のなかでも、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)はフランチャイズ制の出店形態をとっているため、個人の経営者が参入しやすい利点があります。一から店舗を作るよりも少ない資金で開業できるメリットがありますが、自身の裁量だけで経営を続けられないデメリットもあります。

コンビニを例に、フランチャイズ店の開業資金の目安を見ていきましょう。

  • フランチャイズ加盟金:100万円から300万円
  • 開店準備金:50万円ほど
  • 自身や家族の生活費としての余剰金:100万円~200万円ほど

合計で最小限400万円ほどがあれば、開業自体は可能です。しかし、コンビニは基本的に利益率が高くなく、集客の度合いがそのまま経営に大きく影響します。立地やアクセスの良さなども重要なため、顧客の視点で「立ち寄りやすさ・買い物のしやすさ」をよく考えて出店を検討することが大切です。

2.直営店舗による小売店開業

直営店舗を構えて開業するスタイルは、もっとも多くの開業資金を必要とします。参考までに、首都圏に1店舗を開店するためには、最低であっても「1,000万円」は資金が必要といわれています。その資金の内訳は、以下のとおりです。

  • 物件の取得費用
  • 物件の改装工事費用
  • 向こう2~3ヵ月分の家賃や人件費
  • 資格や許可取得などの開業費用

上記の資金を事業主だけで調達することが難しい場合、半額程度の500万円ほどを自己資金で用意し、残りは融資や補助金などで工面するのも方法の一つです。また、首都圏ではなく地方での開業や、自店舗向けの設備があらかじめ整えられた「居抜き物件」の場合は、開業資金を抑えられる場合もあります。

具体的な準備(資金調達・物件探し・各種申請)

具体的な準備(資金調達・物件探し・各種申請)

小売店を開業するには、資金調達以外にも、さまざまな申請や手続きなどの準備が必要です。また、当然のことながら実店舗を構える場合には物件を確保しなければなりません。
ここからは、小売店の開業に向けて必要な「行動面」での準備事項をご紹介します。

資金調達で押さえたいこと

開業資金を全額自己資金で賄えるなら、それに越したことはありません。しかし、実店舗の開業には1,000万円程度かかることを考えると、現実的には難しい場合もあるでしょう。
資金調達の際は、以下のような方法をうまく活用してみてください。

  • 日本政策金融公庫の融資を受ける方法
  • 国や自治体の補助金、助成金を活用する方法

融資は返済が必要ですが、補助金や助成金は基本的に返還不要です。スケジュールに余裕を設けて、まず補助金や助成金の受給を検討し、その可否や金額次第で残りの資金を融資で賄うという方法が良いでしょう。自分がどのような補助金や助成金を利用できるのか、一度リサーチしてみてください。

なお、補助金や助成金は、種類によって受給金額や審査の程度に差があるといわれています。特に審査に大きく影響するのは、「事業計画書」の内容だとされているため、事業計画書は入念に作成することが大事です。

店舗物件探しのポイント

店舗物件探しのポイント

実店舗で開業する場合は、物件探しも大切です。物件探しの際は、借りたい物件の条件を明確にしておきましょう。少なくとも、以下の3点は事前に想定し、それに沿って物件を探してみてください。

  • 立地
  • 広さ
  • 家賃

「立地」は地域だけでなく、アクセスや物件の性質(周辺の人通り・エリアの賑やかさ・駐車場の有無など)の要件も含まれます。「広さ」は、取り扱う商品の嵩(かさ)や数量などから判断します。
「家賃」は店舗の規模にもよりますが、「月商の7%~10%が目安」といわれています。家賃がこの比率を上回ると、経費において赤字になる可能性が高くなるとされているためです。しかし、「月商の10%以内に必ず収めなければ」と、とらわれすぎると選択できる物件が限られてしまうため、無理のない上限を決めて探すと良いでしょう。

また、先にもご説明しましたが、居抜き物件の活用も得策です。小売りの場合は、飲食店と異なり改装費用が安く済む傾向にあるため、居抜きを選択肢に入れない方も多いかもしれません。しかし、開業資金を抑える工夫として頭に入れておくとよいでしょう。

開業に必要な資格や届け出

小売店も、取扱品や店舗の性質によって、資格の取得や届け出が必要になります。主な資格・届け出のケースを以下にまとめました。

  • 古物商許可(管轄の警察署):中古品を扱う場合に必要
  • 食品関係営業許可(管轄の保健所):食料品を扱う場合に必要
  • 飲食店営業許可:飲食店の開業に必要
  • 一般酒類小売業:酒類を販売する場合に必要
  • 動物取扱業(自治体ごとに異なる窓口):ペットなどを扱う場合に必要
  • 食品衛生責任者:飲食店では1店舗につき1人必要
  • 防火管理者:多数の人が利用する防火対象物に必要

食品関係営業許可は、農家が生産物を直送する場合や、加工品の仕入れ販売のみの場合は不要です。また、動物取扱業も扱う生体が魚類や昆虫の場合は、除きます。
防火管理者に関しては、資格区分が甲種・乙種と分かれており、建物の条件によって取得するべき区分が異なります。詳細については、以下の消防庁のページなどでご確認ください。

東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」

自身の取り扱う店舗には、どのような資格や届け出が必要なのか、よく調べるようにしましょう。

開業準備(内外装・備品調達・従業員の確保・商品の仕入れ・オペレーションの整備)

開業準備(内外装・備品調達・従業員の確保・商品の仕入れ・オペレーションの整備)

物件を決めて開業日が近づいたら、改装や備品調達など、本格的な準備に取り組まなければなりません。ここでは開業する際の準備における注意点についてご紹介します。

内外装の改装に関する注意点

内外装のデザインや設計などは、集客したい年齢層や店のコンセプトに合わせてよく検討しましょう。
小売業の開業時における改装費用の目安は、物件の状況によって差はあるものの、おおよそ「200万円以内」で収められる場合が多いとされています。また、スケルトン物件は理想の内装にできる反面、費用は多くかかることが一般的です。一方で、居抜き物件を見つけて既存設備を活用すれば、「50万円」ほどに抑えられることもあります。
その他にも、「休憩室や倉庫などは最安の内装材を使う」など、コストを抑える工夫は数多くあるので、アイデア次第で節約も可能でしょう。

什器や制服など備品に関する注意点

備品は、こだわりを取り入れて選定したいという方も多いでしょう。しかし、特にこだわりがなければ、開業にまつわるさまざまな備品を一括で調達できる、通販サイトを利用することも選択肢の一つです。必要なものが揃っているため、選定に頭を悩ませる必要がなく、量販店にはないプロ仕様の備品が手に入るメリットもあります。
備品購入の際には、チェックリストなどを作成しておくとオープン時に必要な備品を漏れなく揃えられるでしょう。

従業員の人件費に関する注意点

従業員を雇う場合は、人件費の準備が必要です。人件費は、基本給や残業代だけではありません。通勤手当や社会保険料など、従業員を雇うのに必要な経費すべてを含みます。
人件費は毎月発生する固定費用のため、家賃や原価と並んで大きな割合を占めます。

売上に対しての人件費の割合(売上高人件費率※)は、小売店全体で12.4%、コンビニ含む飲食料品小売業で12.9%、書籍などその他小売りで12.3%となっています。

参考:e-Stat 中小企業実態基本調査 令和4年確報(令和3年度決算実績)

数字が高いと人件費にそれだけ費用を回していることになるため、経営に影響が出ることもあります。適切な数字になるよう準備しておきましょう。

※売上高人件費率は、「人件費÷売上×100」で算出されます。

商品の仕入れに関する注意点

商品の仕入れに関する注意点

商品を仕入れる際は、どうしても原価の金額に目が行きがちですが、重要なのは「原価率」で考えることです。小売店の原価率の目安は、「50%~75%」といわれています。業態別ではスーパーが最も高く75%ほどで、百貨店は50%ほどが目安とされています。

また、小売店が長期的に営業を続けるには、特定の問屋との信頼関係を作ることも大切です。ただし、開業して間もないなど資金が十分にない場合は、同じ商品を他よりかなり安く仕入れられるオンライン問屋などを活用する方法もあります。

オペレーションマニュアル作成に関する注意点

ご自身で店舗運営に関するマニュアルを作成しても良いのですが、事業の標準化・効率化に関するノウハウなどは、実際に事業を始めないとわからない部分も多くあります。

また、未経験の従業員を考慮して、マニュアルを視覚的に分かりやすくすることも大事です。一度作成したあとも、定期的に見直し、その都度最適なものに更新しましょう。

なお、マニュアル作成については、専門のコンサルタントに依頼し、相談しながら作る方法もおすすめです。

その他の店舗開業に向けて必要な準備

その他の店舗開業に向けて必要な準備

店舗の内装・外装が決まり、人件費や商品の仕入れ、オペレーションマニュアルなどの詳細を詰めたら、いよいよ開業目前です。しかし、開業自体はできても、お客様が来なければ当然経営は成り立ちません。
ここからは、店舗開業に向けてぜひ行っておきたい、その他の準備についてご説明します。

宣伝活動

新規店舗を開店するときは、オープン前から宣伝・告知をいかに行うかが集客に直結します。代表的な宣伝方法としては、チラシの配布やポスティング・目立つようなスタンド看板の設置・フリーペーパーへの広告掲載などが挙げられます。
また、近年はSNSでの告知も欠かせません。特に若い世代では、SNSの利用者も多く、目を引くような特徴的な宣伝をSNSで行えば、一気に拡散されるかもしれません。

売上管理

宣伝活動にも力を入れ、スムーズに開業できたとしても、思ったように利益が出るとは限りません。戦略的に利益を出すには、売上の管理もしっかり行う必要があります。
売上管理では、週次・月次の売上を計算するだけではなく、時間帯別(ランチ・ディナーなど)に売上を記録することも重要です。どの時間帯にどのような客層が来店しているのか、よく売れる商品は何なのかなど、さまざまな観点から売上データをとることで効果的な戦略を練れるでしょう。

セキュリティ対策

店内における、万引きや強盗などの犯罪対策をしておくことも、大事な開業準備の一つです。安心してお客様に来店してもらえるよう、防犯対策をどのように強化するのか、具体的なプランを検討しておきましょう。
また、営業時間外に侵入者が現われたり、内部不正が発生したりする可能性もあります。店舗内のセキュリティ対策は、トラブルなく店舗を経営するうえで非常に重要な要素です。

店舗開業の準備もALSOKにお任せください!

最後に、店舗経営のさまざまなシーンで役に立つ、ALSOKの各種サービスをご紹介します。安心して開業したい場合は、ぜひALSOKにお任せください。

売上管理:キャッシュマネジメントサービス

ALSOKのキャッシュマネジメントサービスでは、レジや金庫などにおける現金の動きを監視することで、店舗内現金の見える化を実現します。現金管理にかかる人件費の削減、内部不正の防止にも効果的です。

内部不正対策:防犯カメラ・監視カメラ

内部不正対策のために、防犯カメラの導入を考えている場合は、ALSOKの防犯カメラ・監視カメラをぜひご活用ください。多種多様なカメラを取り扱っているため、用途に応じたプランをご提案できます。また工事費込みのパッケージプランのため、リーズナブルな価格で導入が可能です。

防犯対策:ガードシステム

防犯対策をより強固なものにしたい場合は、ALSOKガードシステムの導入をおすすめします。建物内に設置したセンサーで侵入や火災、非常等の異常を監視し、いざというときには、訓練を受けたALSOKのガードマンが駆けつけるので安心です。
異常発生時の状況を画像で確認し、不審者に対しスピーカーで警告することも可能です。

まとめ

今回は、コンビニ・スーパーなどの小売店開業に必要な準備や、その流れについてご紹介しました。
小売店にはさまざま業態があり、実店舗を設ける場合は、物件探しや改装などの店舗準備もあります。また、店舗と商品さえ用意できれば開業できるわけではなく、業態によっては許可や届け出が必要な場合もあります。
「開業したい店舗業態」や「必要な準備」を明確にし、入念に作成した事業計画に沿って早期から準備を始めることが大切です。
なお、開業に際し、売上管理や防犯対策などの面で安心できる環境にしたい場合は、ぜひALSOKにお任せください。