高齢者が熱中症になりやすい理由とは?おもな症状や予防方法を解説
本記事では、高齢者にあらわれやすい熱中症の症状や応急処置、注意すべき理由、家庭でできる予防方法をご紹介します。
毎年、暑くなると熱中症で多くの方が緊急搬送されており、命に関わるケースもあります。
高齢のご家族がいる方のなかには、熱中症を心配されている方も多いのではないでしょうか。
特に高齢者は熱中症による死亡者に占める割合が高く、2024年は全体の85.0%にのぼっています。
また、熱中症は真夏の屋外だけでなく、室内でも起こる可能性があります。暑さやのどの渇きに気づきにくい高齢者は、気温だけでなく湿度や暑さ指数にも注意し、日頃から予防方法や応急処置を知っておくことが大切です。
出典:厚生労働省「熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)」より「年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和6年)」
【この記事で分かること】
- 高齢者が熱中症になりやすい理由
- 熱中症の症状と重症度の目安
- 熱中症が疑われる場合の応急処置
- 室内・外出・入浴・就寝時の予防方法
目次
なぜ高齢者は熱中症になりやすいのか
- 体温調節機能の低下
- 体内水分量の減少
- 暑さやのどの渇きの感知力低下
- 節約や生活習慣の影響
高齢者は、体温調節機能の低下や体内の水分量の減少などさまざまな要因によって、熱中症になりやすいといわれています。ここでは、高齢者が熱中症になりやすい理由を詳しく解説します。
体温調節機能の低下
高齢になると皮膚にある温度センサーが老化によって鈍くなり、体温調節が難しくなります。
また、老化によって脳が指令を出しても皮膚血流量や発汗が思うように増えないことも多く、若年者に比べて体内の熱を放散しにくく、熱中症のリスクが高まります。これが、高齢者が熱中症になりやすい理由です。
体内水分量の減少
体内の水分量は、年齢とともに減少します。特に高齢になると食事や水分量が減りやすいことから、脱水症状になるリスクも上がるといわれています。また、服用している薬の影響で脱水症状になりやすいケースもあります。こうした要因から、高齢者は熱中症を発症しやすく、さらには脱水症状による体調不良にもなりやすくなっています。
暑さやのどの渇きの感知力低下
高齢になると、暑さやのどの渇きを感じにくくなります。その結果、水分補給がおろそかになりやすく、熱中症や脱水症状を引き起こすリスクが高まります。
生活習慣の影響
高齢者のなかには電気代の節約やエアコンの操作がわからない、身体が冷えるなどの理由から、エアコンの使用を嫌がる方もいます。こうした生活習慣も、高齢者の熱中症リスクを高める要因の一つです。
熱中症のメカニズムと高齢者にあらわれやすい症状
気温や湿度が高い環境で体温が過度に上昇すると、体温調節機能がうまく働かなくなり、めまいや失神、けいれん、高体温などの症状があらわれます。この状態の総称を「熱中症」と呼びます(詳しくはこちら)。
熱中症は重症化すると命に関わることもある危険な状態です。熱中症の症状があらわれた場合は、適切な応急処置を行うことで、重症化を防げる可能性があります。予防や適切な応急処置をするためにも、事前に正しい知識を持っておきましょう。
ただし、熱中症は症状だけでは重症度を判断することが難しい場合もあります。暑さによる体調不良が改善しない場合や、意識障害など重い症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
熱中症には4つの段階がある
熱中症は症状の程度に応じて4段階に分類され、段階によって対処方法が異なります。
| 分類 | 症状 |
|---|---|
| Ⅰ度 |
|
| Ⅱ度 |
|
| Ⅲ度 | 深部体温が39.9℃以下で、次のいずれかの症状が見られる
|
| Ⅳ度 |
|
出典:日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」
厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
4つの段階は表の通りで、Ⅰ度からⅣ度まであります。Ⅰ度の場合、めまいや立ちくらみ、筋肉痛、こむら返りといった症状があらわれます。Ⅱ度になると頭痛や嘔吐、倦怠感、虚脱感などの症状が見られます。Ⅰ度よりも重い症状のため、医療機関の受診が必要です。
Ⅲ度は意識障害や全身けいれん、Ⅳ度になると意思疎通ができないなどの重い症状があらわれます。Ⅲ度以上は重症のため、速やかに救急要請を行いましょう。
高齢者の場合は、「食欲がない」「ぼんやりしている」「いつもより元気がない」といった、一見すると熱中症とは気づきにくい症状があらわれることもあります。普段と様子が違うと感じたら、早めに涼しい場所へ移動して水分補給を行い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
【症状別】熱中症の応急処置
| 分類・症状 | 応急処置 |
|---|---|
| Ⅰ度 めまい、立ちくらみ、こむら返りなど |
|
| Ⅱ度 頭痛、嘔吐、倦怠感など |
|
| Ⅲ度 意識障害、けいれんなど |
|
| Ⅳ度 意思疎通ができない、呼びかけに反応しないなど |
出典:日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」
厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
暑い日に高齢者の体調や様子に異変が見られた場合は、まずは熱中症を疑いましょう。熱中症は症状が重くなればなるほど、命に関わってきます。そのため、熱中症の疑いがある場合は、段階に応じて適切な応急処置を行いましょう。
ただし、熱中症かどうか判断に迷う場合もあります。症状が改善しない場合や判断に迷う場合は、医療機関を受診しましょう。
手足のしびれやめまい、立ちくらみ(Ⅰ度)
手足のしびれやめまいなどのⅠ度の症状があらわれている場合は、ただちに涼しい場所や日陰のある場所に移動し、衣服を緩めて、安静に寝かせましょう。室内であればエアコンをつけたり、扇風機やうちわなどで風を当てたりして、身体を冷やします。それでも回復しない場合は、医療機関を受診しましょう。
激しい頭痛や吐き気、倦怠感などの症状がある(Ⅱ度)
激しい頭痛や吐き気など、Ⅱ度に該当するような症状が見られる場合は、積極的に身体を冷やし、医療機関を受診しましょう。首回りや脇の下、太ももの付け根など、太い血管が通る部分を冷やすことで、効率よく体温を下げられます。
また、意識がはっきりしていて自力で水分をとれる場合は、水や経口補水液を少しずつ補給しましょう。嘔吐している場合は、水分が誤って気道に入るおそれがあるため、無理に水分を飲ませることは避けてください。意識がもうろうとしている場合や、吐き気や下痢などで水分補給が難しい場合は、無理に飲ませず、速やかに救急要請を行いましょう。
熱中症で脱水が疑われる場合は、水だけでは十分な電解質を補えないことがあるため、経口補水液などを日頃から用意しておくと安心です。
意識障害やけいれん発作などを起こしている(Ⅲ度・Ⅳ度)
さらに進んで、意識障害やけいれんが見られる場合はⅢ度・Ⅳ度の症状に該当するおそれがあります。この場合は、重症で一刻を争うため、救急要請を行います。救急車を待つ間も、水や氷、保冷剤などを使って身体を冷やしましょう。
【シーン別】高齢者の熱中症を予防するために
| シーン | 熱中症予防 |
|---|---|
| 室内 |
|
| 外出時 |
|
| 入浴時 |
|
| 就寝時 |
|
高齢者は、暑さやのどの渇きを感じにくく、自分では熱中症のリスクに気づきにくい傾向があります。そのため、室内・外出時・入浴時・就寝時など、それぞれの場面に応じた予防対策を行うことが大切です。離れて暮らす家族も、こまめな声かけや室温・体調の確認を心がけ、熱中症を未然に防ぎましょう。
室内での熱中症予防
室温は28℃を目安に、エアコンや扇風機を活用するよう促しましょう。また、高齢者はのどの渇きの感知力が低下しているため、のどが渇いていなくても体内の水分が不足している場合があります。そのため、こまめに水分補給をするよう声をかけましょう。
外出時の熱中症予防
外出時は直射日光や暑さの影響を受けやすいため、熱がこもらない服装を選び、日傘や帽子などの日よけ対策を行うよう促しましょう。マスクの着用も、外では控えると、熱中症を予防できます。
また、こまめに水分補給を行い、無理せず適度に休憩をとってもらうことも大切です。
入浴時の熱中症予防
入浴時にも熱中症を発症するおそれがあります。入浴前後は水分補給を行い、40℃以下のぬるめのお湯に入るように促しましょう。また、体調が悪いときは無理に入浴しないことも大切です。
就寝時の熱中症予防
寝ている間は自分で暑さに気づきにくいため、熱中症になるおそれがあります。就寝前に水分をとる、エアコンや扇風機を活用する、寝具や服装を工夫するなどして予防することが大切です。
ALSOKの見守りカメラ「アルボeye」は、離れて暮らしていても親の様子を見守ることができます。
室内でも熱中症は起こる
熱中症は、真夏の炎天下だけで起こるものではありません。室内で過ごしている場合でも、気温や湿度が高い環境では身体に熱がこもり、熱中症になることがあります。
特に高齢者は、暑さやのどの渇きを感じにくく、体温調節機能も低下しやすいため注意が必要です。総務省消防庁の調査では、令和7年5月から9月までの熱中症による救急搬送人員100,510人のうち、高齢者は57,433人で全体の57.1%を占めています。また、発生場所別では住居が38,292人、38.1%と最も多くなっています。
屋外に出ていない日でも、「室内だから大丈夫」と油断せず、室温や湿度を確認しながら早めに対策することが大切です。
出典:総務省消防庁「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」
湿度が高い日は身体に熱がこもりやすい
熱中症対策では、気温だけでなく湿度にも注意しましょう。人は汗が蒸発するときに身体の熱を逃がしますが、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、身体に熱がこもりやすくなります。
そのため、気温がそれほど高くない日でも、湿度が高い日や風通しの悪い室内では熱中症のリスクがあります。エアコンの冷房・除湿機能や扇風機を活用し、室内に熱や湿気がこもらないようにしましょう。
また、体感だけでは暑さに気づきにくい場合もあるため、温湿度計を使って室内環境を客観的に把握することも有効です。
「梅雨型熱中症」にも注意
梅雨時期など、気温がそれほど高くなくても湿度が高い環境で起こりやすい熱中症は、「梅雨型熱中症」と呼ばれることがあります。
曇りや雨の日は真夏ほど暑さを感じにくい一方で、湿度が高い状態が続くと汗が蒸発しにくく、身体の熱を逃がしにくくなります。また、暑さに身体が慣れていない時期は、体温調節がうまく働きにくい場合もあります。
「まだ本格的な夏ではないから大丈夫」と考えず、湿度が高い時期から対策を始めることが重要です。室温だけでなく湿度にも気を配り、こまめな水分補給やエアコン・除湿機能の活用を心がけましょう。
「暑さ指数(WBGT)」を確認する
熱中症の危険度を確認する際は、気温だけでなく「暑さ指数(WBGT)」も参考になります。暑さ指数(WBGT)とは、人体と外気との熱のやりとりに着目した指標で、気温に加えて湿度や日射・輻射などの影響を取り入れて算出されます。
環境省の熱中症予防情報サイトでは、全国の暑さ指数(WBGT)を公表しています。エリアごとに実測値と3時間ごとの予測値を確認できます。
暑さ指数(WBGT)が高い日は、不要不急の外出を控える、室内を涼しく保つ、こまめに水分・塩分を補給するなど、早めの対策を行いましょう。
特に高齢者は体調の変化に気づきにくいことがあるため、ご家族が暑さ指数(WBGT)を確認し、室内環境や体調をこまめに気にかけることも有効です。
熱中症を防ぐ室温・湿度の目安
室内で過ごしていても、熱中症になる可能性があります。熱中症になった高齢者の半数は、住宅内で発症しています。これは、外気の影響を受けて室温と湿度が高くなることが原因です。室内で過ごすときは、適切な室温にすることが大切です。
適切な室温の目安は「28℃」、湿度は「50~60%」だといわれています。ただし、この「28℃」はエアコンの設定温度ではなく、室内の温度です。高齢者の世帯では、温度と湿度が分かる温湿度計を部屋に置き、室温が28℃を超えないように調整しましょう。
なお、「28℃」はあくまで目安です。日射しの入り方など住宅の立地や、ご本人の体調も考慮しながら調整できると良いでしょう。
「みまもり」でご家族を熱中症から守ろう
高齢のご両親と離れて暮らす世帯だけでなく、同居していても、日中は高齢者だけが家にいる場合は注意が必要です。先にも触れた通り、高齢者は身体のセンサーが衰えていて、「暑い」と感じたときにはもう遅いというケースも少なくありません。こまめに温度や湿度などをチェックし、エアコンをつけるなどの対策を講じる必要があります。
しかし、家族がいないときに体調が悪化してしまうこともあるでしょう。
そこでおすすめなのが、高齢者を見守ってくれるサービスの導入です。ALSOKの「みまもりサポート」は、ALSOKが高齢者を24時間365日見守るサービスです。
緊急時に、「緊急ボタン」を押すとALSOKが駆けつけ、適切に対応します。看護師資格を持つスタッフに、健康についていつでも相談できます。高齢者でも使いやすいシンプルで見やすいデザインなので、安心してご利用いただけます。
また、熱中症の危険がある場合は、音声で本人に注意喚起を行います。他にも、火災やガス漏れを検知するセンサーを設置するオプションもご用意しています。
さらに、一人暮らしの高齢の親を見守りたいという場合は、ALSOKの見守りカメラ「HOME ALSOKアルボeye」がおすすめです。スマートフォンから室内の映像を確認でき、ご家族の様子をいつでも遠隔から見守ることができます。また、音声でのやりとりも可能なため、室内にいる家族に話しかけることができます。異常を感じた際にはALSOKの出動を要請でき、ご家族がすぐに駆けつけられない場合にも安心です。
ご両親には、いつまでも健康でいてもらいたいですよね。熱中症対策に、ぜひご検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
高齢者の熱中症は、屋外だけでなく室内でも起こる可能性があります。特に、高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくいため、体調の変化に気づくのが遅れることもあります。
もし、暑さによる体調不良があらわれた場合は、自己判断をせず医療機関を受診して適切な処置を受けましょう。
また、熱中症を防ぐには、室温や湿度を確認し、エアコンや扇風機を適切に使うこと、のどが渇く前に水分補給をすることが大切です。気温が高い日だけでなく、湿度が高い日や暑さに身体が慣れていない時期も注意しましょう。
熱中症のリスクを正しく理解し、日頃から見守りや声かけを心がけながら、ご家族が安心して過ごせる環境を整えておきましょう。
高齢者の熱中症に関するよくある質問
Q:高齢者の熱中症で重症化のサインはありますか?
A:呼びかけへの反応が鈍い、意思疎通が難しい、けいれんが見られる、高体温などの症状は、重症(Ⅲ度・Ⅳ度)の熱中症が疑われます。これらの症状が見られた場合は自己判断をせず、速やかに救急要請を行いましょう。
Q:高齢者の熱中症のおもな原因は何ですか?
A:高齢者は、暑さやのどの渇きを感じにくくなることや、発汗機能・体温調節機能の低下によって体内に熱がこもりやすくなるなどの理由で、熱中症のリスクが高まります。また、体内水分量の減少やエアコンの使用を控える生活習慣も要因の一つです。
(参考情報)
熱中症のメカニズム
人間の体温は通常36~37℃という非常に狭い範囲に保たれるように調節機能が働いています。体温が高くなると通常は自律神経を介して末梢血管が拡張し、皮膚により多くの血液が集まるようになり、熱伝導により体温が下がります。また、汗をたくさんかけば、汗の蒸発に伴って熱が奪われるので体温を低下させる効果があります。これらの調節機能がうまく働かなくなって、めまい、失神、けいれん、高体温などの症状を起こした状態の総称を熱中症と呼んでいます。
たとえば、気温が高く体温が上昇すると、人は汗をかいたり、血液を皮膚近くに集めたりして放熱しようとします。このときに気温や湿度が高すぎてうまく体温が下げられないと、血液が体表面にたまり続けるため循環が悪くなります。その状態が続くと脳の血液が不足して失神したり、血液が足りなくなってけいれんを起こしたりします。
また、放熱のために汗をかき続けると身体の水分や塩分が足りなくなって脱水状態になります。脱水も血液の循環に悪い影響を与えますから、症状が悪化していくという負のスパイラルに陥ります。
これが熱中症の状態です。
こうしてうまく体温が下げられない状態が続くと最終的には脳の機能が働かなくなり体温のコントロールができなくなります。
この状態になると熱射病と呼ばれる非常に危険な状態です。40℃以上の熱があるような場合にはすぐに救急車を呼ぶ必要があります。
自律性体温調節と行動性体温調節
気温が高くなると皮膚に存在する温度センサーが暑さを感知し、その情報が脳の体温調節中枢に伝えられます。その情報と深部からの体温情報も加えて脳が暑いと判断すると、皮膚近くの血管や汗腺に命令を出し、皮膚血流量や発汗量を増やします。これを自律性体温調節といいます。さらに暑ければ人間は冷房を利用したり、涼しい服に着替えたりして暑さを和らげようとします。これを行動性体温調節といいます。





















