なぜマンションの火災感知器は誤作動するのか?
マンションの各部屋に設置している火災感知器が作動すると、ベルやブザー、音声で警報を発して火災の発生を知らせてくれますが、火災感知器が火災の発生を感知する仕組みは種類によって異なります。
また火災感知器は誤作動することもありますが、誤作動の要因はさまざまであり、誤作動した後に火災感知器をそのまま利用できるかどうかは、誤作動の原因次第です。
本記事では、火災感知器の仕組みや火災感知器が誤作動する主な原因、誤作動した場合の対処法などについて、解説します。
火災感知器は熱や煙を感知して作動する


マンションの各部屋に設置している火災感知器は、火災が起きた際に発生する熱や煙を感知して作動します。熱を感知して作動するものでも煙を感知して作動するものでも、作動すると警報を発して、火災の発生を教えてくれます。
熱を感知して作動する火災感知器では、「差動式スポット型」もしくは「定温式スポット型」のどちらかが利用されています。
差動式スポット型は、感知器の周囲の温度が上昇するにしたがって感知器内部の空気の膨張を感知するのが特徴で、室内の温度が一定時間で急激に上昇すると作動するようになっています。
定温式スポット型は、感知器の周囲の温度があらかじめ設定された温度(60~70℃)以上になったときに感知するのが特徴です。
キッチンや脱衣所のように、熱気や湯気などで急激に温度が上昇する可能性がある場所では、差動式スポット型ではなく定温式スポット型を利用する必要があります。
煙を感知して作動する火災感知器では「光電式スポット型」が利用されており、感知器の中に煙が入ると発光部で発せられた光が煙で乱反射し、それを受光部が感知することで作動する仕組みになっています。
火災感知器誤作動の主な原因6つ


マンションの各部屋に設置している火災感知器が誤作動する主な原因としては、以下のようなことが挙げられます。
- 経年劣化
- 上階からの水漏れや結露
- エアコンによる急激な温度上昇
- 感知部に何かがぶつかる
- 台風などによる気圧の変化
- 異物の侵入
それぞれの原因について、説明します。
1経年劣化
感知器の経年劣化は、誤作動を引き起こす大きな要因です。とくに差動式スポット型感知器は、温度上昇による熱膨張を感知して作動しますが、空気室には膨張した空気を逃がすためにリーク孔という穴が設けられています。このリーク孔が長年の使用によりふさがってしまうと、空気の逃げ場がなくなってしまうので、本来であれば作動することのないタイミングで作動してしまう可能性があります。
この場合は、劣化した感知器を交換することで対処可能です。
2上階からの水漏れや結露
上階から漏れてきた水が感知器の内部に入ってきた、または感知器の内部が結露したということが、誤作動の原因になることもあります。
熱を感知して作動する感知器の場合、配線や端子がショートして感知器が作動したのと同じ状態になってしまったり、水分で接点部分が錆びて誤作動を起こしたりします。
煙を感知して作動する感知器の場合でも、感知器内部に溜まった水蒸気が煙の代わりの役割を果たして光の乱反射を起こしてしまい、誤作動を引き起こす可能性があります。
浸水したり結露したりした感知器でも、内部が乾燥してしまえば再び使用できるようになりますが、何度も誤作動するようであれば交換するのが賢明です。
3エアコンによる急激な温度上昇
差動式スポット型の火災感知器は、短時間に温度が急激に上昇する可能性がある場所には設置しないのが原則ですが、エアコンの温風によって感知器が作動してしまうこともあります。
また、エアコンの送風口と感知器の距離が近すぎることで、火災感知器が誤作動しやすい環境になっているケースもあります。
このような場合は、エアコンの温度設定に気を使ったりエアコンもしくは火災感知器の場所を移動したりすることで、対処が可能です。
4熱感知部に何かがぶつかる
熱を感知して作動する火災感知器の場合、熱感知部に何かがぶつかることによって信号を送る接点が閉じて「スイッチON」の状態になってしまい、誤作動してしまうことがあります。
引っ越しで家具などを搬入・搬出する際にぶつかってしまったり、火災感知器の下でゴルフの練習をしていてスイングをした拍子にクラブがぶつかってしまったりなど、いろいろなケースが考えられます。
このような形で誤作動してしまった場合は、すぐ火災感知器を交換しましょう。
5台風などによる気圧の変化
差動式スポット型感知器では感知器内部の空気が膨張することで火事を感知しますが、空気が膨張するのは温度の上昇だけが原因ではありません。
台風のような低気圧が近づいてくると大気圧が下がりますが、その際に差動式スポット型感知器の空気室が引っ張られて、空気が膨張してしまうことがあるのです。
その結果、感知器のスイッチがONになって誤作動してしまう可能性があります。
台風の発生にはどう対処することもできませんが、気圧の変化が原因であろう誤作動が何度も起きるようであれば、感知器を交換したほうがよいでしょう。
6異物の侵入
煙を感知して作動する火災感知器の場合、感知器内部に煙と似たような性質のもの(ガスやくん煙式の殺虫剤を炊いたときなど)が入ると、誤作動を起こしやすいといえます。
また、羽虫やクモなどの虫が感知器内部に侵入した場合も、誤作動を引き起こしてしまう可能性があります。
燻煙式の殺虫剤の説明書には、利用する際に感知器の周りを覆うようにという指示がありますので、その指示にしたがって利用すれば誤作動を防ぎやすくなります。
虫などの侵入はなかなか防ぎにくいですが、家の中に虫を侵入させないように工夫することがある程度の対策になるでしょう。
誤作動した場合はすぐに警報音を止めて誤作動になった要因を取り除こう
マンションの各部屋に設置している火災感知器が作動した場合、それが誤作動かどうかすぐに判断することは難しいです。
まずは家の中の火元を確認してください。火事でないことを確認した上で、住宅用火災警報器であれば、警報停止スイッチを押すかひもを引くことで警報音を止めることができます。
その後、火災感知器が誤作動したと考えられる要因を取り除いて、必要に応じて部品や火災感知器本体を取り替えます。
また、マンションでは自分の家以外の共用部にも火災感知器が設置されていますが、そういった火災感知器を止めるためには管理人室などにある受信機を操作する必要があります。
そのため共用部の火災感知器が作動している場合は、家の中の場合と同じようにどこかに火元がないかを確認して、明らかに誤作動だと判断できるのであれば、管理人や管理組合の人に報告するようにしましょう。
火災感知器が誤作動する原因はさまざま
マンションの各部屋に設置している火災感知器は熱や煙を感知することで火災の発生を教えてくれますが、火事が起きていないのに誤作動してしまうこともあります。
その原因は、火災感知器の経年劣化だったりエアコンの温風による急激な温度上昇だったり異物の侵入だったりとさまざまです。
火災感知器が作動した場合は、まずはどこかで火事が起きていないかどうかを確認して、誤作動だと判断できる場合は速やかに警報音を止めましょう。
なお、マンションの構造や規模によって、自動火災報知設備や、住宅用火災警報器などの設備が設置されます。住宅用火災警報器は自分で点検や交換ができますので、火事から大事な住宅や人命を守るために、ぜひ以下のページをチェックしてみてください。
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