ヒートショックとは?防ぐための対策や起きたときの対処法を解説
本記事では、ヒートショックの特徴と効果的な予防策、もしもの場合の対処法を解説します。
「入浴中に一人で倒れてしまったら、誰か気づいてくれるのか」と不安に感じたことはありませんか。
ヒートショックは、特に冬場の入浴時に起こりやすく、一人暮らしや高齢者のみの世帯では発見が遅れるリスクがあります。地方独立行政法人「東京都健康長寿医療センター」の研究によると、ヒートショックに関連した入浴中急死は年間約1万7,000人と推計されており、交通事故による死亡者数を大きく上回っています[注1]。また、厚生労働省人口動態統計(令和6年)によると「不慮の溺死及び溺水」の死亡者数は9,905人となっており、交通事故死亡者数3,511人の約2.8倍になっています[注2]。
ヒートショックは、日頃の工夫や入浴方法の見直しによってリスクを軽減できます。
本記事は一般的な予防・対処の考え方を紹介するものです。胸の痛み、強い息苦しさ、意識障害、片側の手足のしびれ・麻痺、ろれつが回らないなどの症状がある場合は、ためらわず119番通報してください。
[注1]地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター「冬場の住居内の温度管理と健康について」
[注2]厚生労働省人口動態統計(令和6年)「死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
【この記事で分かること】
- ヒートショックが起こりやすい場面と起こりやすい人
- 入浴時にできる予防対策
- 異変が起きたときの対処の考え方
- 一人暮らしや高齢者世帯で備えておきたいこと
目次
ヒートショックが起こりやすい状況
ヒートショックは、冬場の浴室や脱衣所、トイレなど温度差が大きい場所で発生しやすく、注意が必要です。ここでは、ヒートショックが起こる仕組みや起こりやすい場所・状況について解説します。
ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管などに負担がかかることで起こる健康被害のことです。ヒートショックは医学用語ではないため、死亡診断書には「溺死」や「病死」と記載されます。正確な統計データはありませんが、家庭で発生した「不慮の溺死及び溺水」事故の多くは、ヒートショックが原因であると考えられています。
どのような状況でヒートショックが起こりやすいか
暖かいリビングから、寒い脱衣所や浴室へ移動する冬場の入浴時に起こりやすいといわれています。
人の体は、室温・気温が高い場所から低い場所に移動する際、体温の低下を防ぐために体を震わせて熱を生み出します。
例えば、冬場は暖房の効いた部屋から寒い浴室やトイレに移動すると、体が寒さに対応しようとして血管を収縮させ、血圧が上昇します。その後浴室に入り浴槽に浸かると、熱いお湯に体が対応しようとして血管が広がり、血圧が下がります。このように寒い場所に移動したり、熱いお湯で急に体を温めたりすることで、血圧が急激に変化すると、ヒートショックが起こりやすくなります。
ヒートショックが起きるとどうなる?
短時間で血圧が乱高下すると、心臓や血管に大きな負担がかかり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞、脳出血といった心血管疾患を引き起こす原因となります。また、血圧が急激に低下すると、めまいやふらつき、意識消失などの健康障害が発生し、その場で転倒してしまうこともあり、転倒によるけがや、打ち所によっては命にかかわるおそれもあります。
ヒートショックが発生しやすい場所
ヒートショックは急激な温度変化によって引き起こされるため、温度差が大きい場所ほど発生のリスクが高まります。
中でも、もっともヒートショックが起こりやすいのは冬場の浴室です。
- 暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動(血管が縮んで血圧上昇)
- 寒い脱衣所で衣服を脱ぎ、裸になって冷えた浴室に入る(さらに血圧が上昇)
- 浴槽でお湯に浸かる(血管が広がり血圧低下)
- お風呂から上がり、再び寒い脱衣所へ入る(血管が縮んで血圧上昇)
このように血圧が乱高下すると、ヒートショックを招きやすくなります。
また、暖かいリビングから移動して寒いトイレに入り、冷たい便座に座るときも注意が必要です。
ヒートショックになりやすい人
特に以下の条件にあてはまる人は、ヒートショックになるリスクが高いといわれています。
- 65歳以上の高齢者
- 狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などの疾患にかかった既往がある人
- 不整脈や高血圧、糖尿病などの持病がある人
- 食事や飲酒後に入浴する習慣がある人
- 熱いお湯に浸かったり一番風呂に入ったりする習慣がある人
- 浴室や脱衣所、トイレに暖房がない家に住んでいる人
- 浴室の床がタイル貼りなどで冬に冷たくなる家に住んでいる人
- リビングと浴室・トイレの距離が離れていて、暖房が行き届いていない家に住んでいる人
65歳以上の高齢者や、心疾患系・脳血管系の既往のある人、不整脈・高血圧・糖尿病などの持病のある人は、血圧変動の影響を受けやすく、ヒートショックのリスクが高い傾向にあります。また、食事や飲酒の後は、血圧が上昇・低下しやすいため、夕飯や晩酌の後に入浴する習慣がある人は要注意です。
食後は、消化のために血流が胃腸に集まり、脳への血流が一時的に低下して、めまいや失神を起こすことがあります(食後低血圧)。この食後低血圧を起こしたことのある人は、食事の前に入浴を済ませるか、または、食後1時間以上経ってから入浴するようにしましょう。
なお、ヒートショックは一般的に、年齢が高くなるほどリスクが高くなるといわれていますが、若年層がヒートショックを起こすこともあります。さまざまな条件が重なれば、若年層でもヒートショックになるリスクが高まってしまうため、注意が必要です。
ヒートショックを防ぐための5つの対策
ヒートショックは、住宅内の温度差を減らし、入浴方法を工夫することでリスクを軽減できます。ここでは、すぐに実践できるヒートショック対策を5つご紹介します。
脱衣所やトイレを事前に暖め温度差を減らす
ヒートショックを防ぐための対策として、入浴前に脱衣所を暖めておくことが挙げられます。
脱衣所やトイレなど寒くなりやすい場所には、小型の温風ヒーターなどを設置すると良いでしょう。お風呂に入る前に、あらかじめヒーターのスイッチを入れておけば、リビングや浴槽との温度差を緩和することができます。
冬場においてトイレが寒くなる場合は、暖房便座を活用するとともに、ハロゲンヒーターなどの小型のヒーターでトイレ内を暖めるようにすると、ヒートショック対策に役立ちます。
浴室が暖まっていない場合は、入浴する前に、シャワーでお湯をかける、浴槽のふたを開けるなどの方法で浴室全体を暖めておくようにしましょう。浴室の床が冷たい場合は、マットやスノコを活用しましょう。
入浴前後には水分をしっかりとる
血栓ができるリスクを減らすため、入浴前後には水分をしっかりとりましょう。
入浴中に汗をかくことで、体内の水分が減少し血管が詰まりやすくなり、血栓のリスクが高まります。入浴の前後に、コップ1杯の水を飲み、血栓のリスクを下げましょう。
食事の前に入浴する、または、食事の後1時間経ってから入浴する
食後すぐは、血圧が不安定になることから入浴は避けましょう。食事をすると、消化器官に血液が集中する分、体全体の血圧が低下しやすい状態になります。食事の前に入浴するか、食事の後1時間以上経ってから入浴することをおすすめします。
また、飲酒後はアルコールの作用によって血圧が変動しやすくなるため、急激な温度変化による身体への負担が大きくなる可能性があります。ヒートショックのリスクを減らすためにも、飲酒後の入浴は控えましょう。
お風呂の温度は38~40℃とし、長湯は控える
41℃以上・10分超の入浴は心臓への負担が増すため避けましょう。お風呂の温度が42℃以上になると、心臓に負担をかけることが知られています。消費者庁のパンフレット「無理せず対策 高齢者の不慮の事故」では、入浴の温度・時間の目安を「41℃以下10分まで」としています。なお、41℃以上になると浴室での事故が増えるとの報告もあることから、できるだけ「ぬるめの温度」(38℃~40℃)とすることをおすすめします。
冷え込む深夜の入浴を避け、お湯に浸かる際は心臓から遠い足元にかけ湯を行い、ゆっくりお湯に浸かると良いでしょう。心臓への負担を減らすため、心臓病や高血圧のある方は半身浴にし、肩が寒いときはお湯で温めたタオルをかけるなど対策を行いましょう。
お湯に浸かっている状態から急に立ち上がると、お湯による水圧がなくなって血管が拡張し、めまいや立ちくらみ、ふらつきが起こって転倒する可能性があります。立ち上がるときは、ゆっくりとした動作で徐々に立ち上がるようにしましょう。
入浴前に家族に一声かける
入浴中の異変に早く気づけるよう、入浴前には家族へ一声かけておきましょう。入浴中にヒートショックが起こって気を失うと、溺死してしまう可能性があります。ご家族などと同居している場合は、入浴前に一声かけてから入浴するようにしましょう。
また、高齢者と同居している家族は、高齢者が入浴する前に、浴室や脱衣所が十分に温まっているかどうか確認することをおすすめします。
一人暮らしの場合は、緊急時に救助を呼べるようにスマートフォンを脱衣所の手が届く場所に持ち込む方法も有効です。
ヒートショックが起きたらどうする?
ヒートショックが疑われる症状が現れた場合は、無理に動かず、症状に応じて落ち着いて行動することが大切です。意識障害や胸の痛みなど、重い症状がある場合は、ためらわず119番通報しましょう。
ここでは、症状の程度や状況に応じた対処法について解説します。
めまいやふらつきを感じたら
ヒートショックでめまいやふらつきを感じたら、無理に立ち上がろうとしないことが大切です。
- ゆっくりその場に座るか横になり、頭の位置を低くする
- 浴槽の縁や壁にもたれ、症状が落ち着くまでその場で安静に待つ
- 症状が落ち着かない・悪化する場合はすぐに119番通報する
立ちくらみやお風呂上がりに目の前が真っ暗になるような症状は、軽度のヒートショックのおそれがあります。めまいやふらつきを感じたら姿勢を低くして、気分が落ち着くまでじっと待ちましょう。
意識がもうろうとしている、または倒れた場合は
意識がもうろうとしている場合や倒れてしまった場合は、自分で安全を確保することが難しいため、無理に動こうとせず救助を求めることが大切です。
- 浴槽内にいる場合は溺れないよう、可能であれば栓を抜く・浴槽の縁につかまる
- 動けない場合は無理に動かず、助けを呼べる手段(スマートフォン・緊急ボタン)があれば使う
- 無理に立ち上がったり移動したりせず、助けを待つ
家族が異変に気づいた場合は
家族が浴室で倒れていることに気づいたら、まずは119番通報し、できる範囲で応急処置を行います。
- 直ちに119番通報する
- 浴槽で溺れている場合は、すぐに浴槽の栓を抜き、可能であれば救出する。難しい場合は沈まないようにして救助を待つ
- 意識・呼吸がない場合は救急隊到着まで心肺蘇生を行う
- 倒れた際に頭を打っている場合、顔を横向きにして嘔吐物による窒息を防ぐため、気道を確保する
湯船で溺れていた場合は、可能であれば浴槽から救出します。人手や力が足りない場合は、お湯を抜いて助けを待ちます。倒れた際に頭を打っている場合は、嘔吐して異物が喉に詰まるおそれがあるため、顔は横向きにして気道を確保しましょう。
一人のときの備えと対処法
一人のときは、助けを呼べない状況になるリスクがあるため、事前の備えが必要です。警察庁の調査(令和7年)によると、自宅で亡くなった一人暮らしの人は76,941人で、そのうち65歳以上の高齢者が約76.6%を占めています。
- 入浴時にスマートフォンを脱衣所に置く
- 緊急通報システムを導入する
緊急時に周囲へ助けを求められる環境を整えておくことが、万が一の際の早期発見・早期対応につながります。
出典:警察庁刑事局捜査第一課「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和7年)」
高齢者のもしもに対応する「みまもりサポート」
気温が下がる冬場はヒートショックが多発します。冬場を迎える前に、適切にヒートショック対策ができているかどうか、確認しておくことが大切です。
特に高齢者はヒートショックの発症率が高いので、「熱いお湯に浸からない」「浴室やトイレはあらかじめ暖めておく」「食事や飲酒後の入浴を避ける」など、ヒートショックのリスクを抑える対策を行うことが大切です。
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※みまもりサポートのご利用には固定電話回線と電源が必要です(回線はオプションとしてALSOKで手配可能)
ヒートショックに関するよくある質問
Q:ヒートショックになったら病院に行くべきですか?
A:胸の痛みや意識消失など、症状が続いている場合は、すぐに医療機関を受診するか119番通報してください。めまいやふらつきだけで回復した場合でも、高齢者や持病のある方は念のため受診すると安心です。
Q:ヒートショックが起きやすい季節・時間帯は?
A:気温が低くなる11月頃から4月頃の冬季に多く、特に夜間の入浴時に起こりやすいとされています。暖かい部屋と寒い脱衣所・浴室との温度差をできるだけ小さくすることが大切です。
Q:ヒートショックに後遺症はありますか?
A:軽いめまいや立ちくらみだけで回復する場合は、後遺症にならないことが一般的です。
ただし、心筋梗塞や脳梗塞などを発症すると、後遺症になる可能性があります。少しでも異変を感じたら早めに受診しましょう。
まとめ
ヒートショックは、急激な温度変化による血圧の変動が原因で起こり、冬場の入浴時やトイレなどで発生しやすい事故です。脱衣所や浴室を暖める、ぬるめのお湯に入る、水分補給を行うなど、日頃の対策によってリスクを軽減できます。また、高齢者の一人暮らしでは異変の発見が遅れるおそれもあります。万が一に備え、見守りサービスや緊急通報システムの活用も検討し、大切な家族が安心して暮らせる環境づくりを心がけましょう。
一人暮らしの親御さんが抱えやすい心配事とその対策について、こちらの記事もご覧ください。





















