ヒートショックの予防対策ともしもの時の対処法
冬になり、気温が下がってくると、ヒートショックを起こすリスクが高くなります。地方独立行政法人「東京都健康長寿医療センター」の研究によると、ヒートショックに関連した入浴中急死は年間約1万7,000人と推計されており、交通事故による死亡者数を大きく上回っています。[注1]
ヒートショックは日頃の対策でリスクを低減することができますので、正しい対策方法や対処法を覚えておきましょう。
今回は、ヒートショックの特徴と効果的な対策、もしもの場合の対処方法をまとめました。
ヒートショックの特徴を押さえよう
ヒートショックの対策や対処法をチェックする前に、まずはヒートショックの特徴やメカニズムについて学んでおきましょう。
ヒートショックが起こるメカニズム
ヒートショックとは、急激な温度変化による血圧変動が引き起こす健康障害のことです。人の身体は、暖かいところから寒いところに移動する際、体温の低下を防ぐために体を震わせて熱を生み出します。
それと同時に、血管を収縮させて血液の流れを減らすことで、生み出した熱を体内に留まらせようとします。血液の流れが滞ると血圧が一時的に上昇しますが、再び暖かいところに行くと収縮した血管が一気に拡張し、血圧が急降下します。
このように、短時間で血圧が乱高下すると、心臓や血管に大きな負担がかかり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞、脳出血といった心・血管疾患を引き起こす原因となります。
また、血圧が急激に低下すると、めまいやふらつき、意識消失などの健康障害が発生し、その場で転倒してしまうこともあります。心・血管疾患はそれ自体が命に関わる危険性がありますし、転倒も打ち所や倒れた場所が悪ければ、致命傷につながるおそれがあります。
ヒートショックが発生しやすい場所


ヒートショックは急激な温度変化によって引き起こされるため、温度差が大きい場所ほど発生のリスクが高まります。
中でも、最もヒートショックが起こりやすいのは冬場の浴室です。
- 暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動(血管収縮、血圧上昇)
- 寒い脱衣所で衣服を脱ぎ、裸になって冷えた浴室に入る(さらに血圧が上昇)
- 浴槽でお湯に浸かる(血管拡張、血圧低下)
- お風呂から上がり、再び寒い脱衣所へ入る(血管収縮、血圧上昇)
このように、短時間で血管が収縮・拡張を繰り返し、血圧が乱高下すると、心・血管に負担がかかってヒートショックを招きやすくなります。
また、暖かいリビングから寒いトイレに入り、冷たい便座に座る時も注意が必要です。
特に排便時にいきむと、血圧が一時的に上昇→排便後に血圧低下となり、ヒートショックのリスクが高まる傾向にあります。
ヒートショックを発症しやすい人
ヒートショックは誰にでも起こりうる健康障害ですが、特に以下の条件にあてはまる人は、発症リスクが高いといわれています。
- 65歳以上の高齢者(特に75歳以上はリスク大)
- 狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などの脳疾患にかかった経歴がある人
- 不整脈や高血圧、糖尿病などの持病がある人
- 食事や飲酒後に入浴する習慣がある人
- 1番風呂や42℃以上の熱いお湯に浸かる習慣がある人
- 浴室や脱衣所、トイレに暖房がない家に住んでいる人
- 浴室がタイル張りで、床が冷えやすい家に住んでいる人
- リビングと浴室・トイレの距離が離れていて、暖房が行き届いていない家に住んでいる人
心・血管系が弱ってきた高齢者や、もともと病歴・持病のある人は、血圧変動の影響を受けやすく、ヒートショックのリスクが高い傾向にあります。
また、食事や飲酒の後は、血圧が上昇・低下しやすい状態に陥るため、夕飯や晩酌の後に入浴する習慣がある人は要注意です。ヒートショックは一般的に、年齢がかさむほどリスクが高くなるといわれていますが、若いから発症しないというわけではありません。
さまざまな条件が重なれば、若年層でもヒートショックを発症する危険性がありますので、油断は禁物です。
ヒートショックを防ぐための6つの対策
ヒートショックの発症リスクを低減するために、ぜひ実践したい対策方法を6つご紹介します。
1脱衣所やトイレに暖房設備を入れる
脱衣所やトイレなど気温が下がりやすい場所には、小型のヒーターなどを設置するのがおすすめです。お風呂に入る前に、あらかじめヒーターのスイッチを入れておけば、脱衣所とリビング・浴槽との間に生じる寒暖差を緩和することができます。
トイレには、携帯しやすい小型のヒーターを持ち込むか、照明が暖房代わりになるハロゲンヒーターなどを設置すると、ヒートショック対策に役立ちます。
2入浴前後に水分をとる
入浴中に汗をかくと、体内の水分が減少するぶん、血液がドロドロになりがちです。ドロドロな血液は血管を詰まらせる原因になりますので、入浴前後にはコップ1杯の水を飲み、サラサラの状態を維持できるようにしましょう。
3入浴前後の飲酒・食事は避ける
食事をすると、消化器官に血液が集中するぶん、体全体の血圧が低下しやすい状態になります。食後に入浴するなら、最低でも30分以上の間を空けるようにしましょう。
飲酒についても、体温が上昇して血管が拡張しやすくなりますので、晩酌するなら入浴後1時間以上が経過してから飲み始めるのがポイントです。
4熱いお湯での入浴や、長湯はNG
42℃以上の熱いお湯に浸かると、血圧が一気に低下しやすくなります。お湯の温度は41℃以下に設定し、急激な血圧の低下を防ぎましょう。
なお、お湯を低温にしても、長湯すると心臓や血管に負担がかかるおそれがあります。長時間湯船に浸かって血圧が下がると、めまいやふらつきが起こって転倒し、頭を打ち付ける可能性もありますので、長湯は控えた方が無難です。
ちなみに、厚生科学指定型研究 入浴関連事故研究班では、41度以下で10分以内にお風呂から上がることを推奨しています。[注2]
5入浴前に家族に一声かける
入浴中にヒートショックが起こって気を失うと、溺死してしまう可能性があります。意識を失って水を吸い込んだ場合、5分が生死の分かれ目といわれていますので、特に高齢の方は入浴前に家族に一声かけ、定期的に浴室の様子を見てもらうようにしましょう。
6ホームセキュリティサービスを利用する
高齢者のみの世帯では、万一ヒートショックを発症した場合、発見が遅れてしまう可能性があります。そんなときは、離れて暮らす家族を見守るホームセキュリティサービスの導入がおすすめです。
ALSOKの「HOME ALSOKみまもりサポート」なら、急に体調が悪くなった際、ボタンを押すだけでガードマンが駆けつけ、適切な対処を行ってくれます。
あらかじめ持病やかかりつけの病院などを登録しておけば、救急搬送の際に必要な情報を救急隊員に引き継げるため、迅速な対応が可能です。
みまもりサポートは24時間365日体制でお客様を見守りますので、夜間の入浴・トイレ時のヒートショック対策にも役立ちます。
くわしいサービス内容はこちらのページからご確認いただけます。
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ヒートショックでめまいやふらつきを感じたら、無理に立ち上がろうとせず、体勢を低くして、気分が落ち着くまでじっと待ちましょう。
もしご家族が失神や意識障害、心筋梗塞などの症状を起こした場合は、直ちに救急車を要請します。
湯船で溺れていた場合は浴槽から出しますが、人手や力が足りない場合は、お湯を抜いて助けを待ちます。
頭を打った場合、嘔吐して異物が喉に詰まるおそれがありますので、顔は横向きにしておきましょう。
冬場はヒートショック対策をしっかり行おう
気温が下がる冬場は、居住空間と浴室・トイレなどとの温度差が激しく、血圧が乱高下してヒートショックが起こりやすくなります。
特に高齢者はヒートショックの発症率が高いので、熱いお湯に浸からない・浴室やトイレを暖める・食事や飲酒後の入浴を避けるなどして、ヒートショックのリスクを抑えることが大切です。
ただ、どんなに気を付けていてもリスクをゼロにすることはできませんので、万一の時に助けてもらえるよう、ホームセキュリティサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。ALSOKでは、高齢の方のもしもに対応する「みまもりサポート」サービスを提供しています。ヒートショック対策だけでなく、万が一の対策も講じましょう。
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