ハインリッヒの法則とは?日常におけるヒヤリハット事例

職場の安全を重視する業務に携わる方なら「ヒヤリハット」「ハインリッヒの法則」などの用語を耳にしたことがあるでしょう。しかし職場に限らず、家庭内や外出時などの日常生活においても、身近に起きる事故のリスクは潜んでいます。
この記事では、職場の安全に関する大原則「ハインリッヒの法則」について知るとともに、日常生活でのヒヤリハット事例や、つねにヒヤリハットに気を配る必要性などをご紹介します。
身近に起きる事故
東京消防庁の令和元年「救急搬送データからみる日常生活事故の実態」によると、自宅や近所移動など日常生活における事故で一年間に約145,000人もの人が救急搬送されています。
救急搬送につながる日常生活の事故の例として、特に多いものに「ころぶ(転倒)」「ぶつかる」「ものがつまる(誤飲や窒息)など」が挙げられています。年齢層別では「ころぶ」事故は高齢者に多く、「ぶつかる」は10代の児童・生徒、また「ものがつまる」は乳幼児に多いという特徴があります。
その他の事故には、「おぼれる」「やけど」「はさむ・はさまれる」などが挙げられています。改めてそれらの危険に注意を払い、日常生活のなかでも安全管理に努めることの重要性が分かります。
労災における経験則「ハインリッヒの法則」とは
職場で安全衛生に関わったことのある方や、労災について学んだことのある方は、ハインリッヒの法則についてすでにご存じかもしれません。労働災害上の安全管理における経験則として知られるハインリッヒの法則について、詳しくご紹介します。
ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)とは
ハインリッヒの法則は「1:29:300の法則」とも呼ばれ、米国の損害保険会社の安全技師ハインリッヒが提案したためこの名前が付けられています。
ハインリッヒの法則の基本的な考え方は、「同じ人が災害を330件起こしたとすると、うち1件は重い災害(死亡などの重大事故以外も含む)である。また29回は軽傷事故(その場の応急手当で済むもの)で、残り300回は傷害や物損の可能性があっても結果的に傷害がなかった事故である」というものです。
上記の考え方で見た場合、330回の事故のうち9割強にあたる300回の事故では、傷害は発生していません。しかし、この300回の背景には数千以上の不安全な行動・不安全な状態が確実にあったことに着目する必要があります。
ハインリッヒは、この比率がすべての職種に該当するものではなく、行う業務によって差が現れることも同時に指摘しています。ただし割合にとらわれず、事故とそれによる災害の関連性を考える際には十分に有用な法則といえます。
ハインリッヒの法則は、災害発生の背景には必ず危険や有害要因が多数あることを意識することが必要だと示しています。もちろん職場のみならず、家庭や外出時などの日常においても、この法則に基づいてヒヤリハットへ対応することが大切です。

ヒヤリハットをなくすことが重要
先にご紹介したハインリッヒの法則のように、私たちの労働・日常生活などあらゆる事柄において、事故発生の背景には必ず小さな「ヒヤリハット」が存在すると考えられます。
ヒヤリハットとは?
改めて「ヒヤリハット」という言葉の意味について確認しましょう。ヒヤリハットとは、大きな事故やケガには至らなかったものの、事故になっていた可能性のある、一歩手前の出来事のことです。
ちなみに、ヒヤリハットは語感から想像できるとおり、「(たまたま何事もなかったけれど)ヒヤリとした・ハッとした」という言葉から生まれた言葉です。
事故防止への第一歩はヒヤリハットをなくすこと
事故を防止するためには、「(たまたま何事もなかったけれど)ヒヤリとした・ハッとした」ことをそのままにせず、教訓として改善策を立てて実行することが大事です。職場の安全衛生活動において、業務上のヒヤリハットを見つけたときには必ず「ヒヤリハット報告書」を作成し、対策を検討して事故を未然に防ぐ取り組みを実施します。職場を離れた日常生活でもこの考え方を取り入れ、家庭内や外出時「危なかったな」と感じたことがあればご家族などと情報共有しましょう。その上で、どのような対策をとり事故を回避するかを話し合い、実行することを繰り返し、ヒヤリハットをなくしていくことが大切です。
どこにでも存在するヒヤリハット事例
職場に限らず、生活のなかのどこにでもヒヤリハットにあたる状況が存在します。ここでは、暮らしのなかのヒヤリハット事例についてご紹介します。
仕事で起きるヒヤリハット
業務におけるヒヤリハットの代表的な事例には、以下のようなものがあります。
- オフィス内の通路を通ろうとして、床に置かれた段ボール箱につまずき転びそうになった
- 脚立などを使わず棚の上の資材を背伸びして取ろうとし、手を滑らせて資材を落下させぶつかりそうになった
- 金属の切削作業を行っているとき切りくずが勢いよく飛び、目に入りそうになった など
日常生活でのヒヤリハット
家庭内や近所など、日常生活でのヒヤリハット事例です。
- リビングの電源コードに足が引っ掛かり、転びそうになった
- 高齢者がお風呂に入った際、浴室の床が濡れていてすべりそうになった
- 幼児がベランダのカギを開けて一人で出てしまい、柵に頭を打ちそうになった
- ベビーベッドの柵が外れていて乳児が転落しそうになった など
車の運転中に起きるヒヤリハット

自動車を運転しているときにも、さまざまなヒヤリハットが想定できます。
- 凍結した道でスリップして赤信号の交差点に突っ込みそうになった
- 青信号での左折時、子どもが横断歩道へ突然走って進入し、急ブレーキを踏んだ
- 前方の路肩を走っていた自転車が急に蛇行し、慌てて避けた など
ヒヤリハット対策
ご紹介した事例のように、あらゆる場所にヒヤリハットは存在します。これらを「何事もなかったから」と安心して忘れるのではなく、危険を先回りできるよう対策を講じることが大切です。
例えば、先に挙げた「オフィス内の通路を通ろうとして、床に置かれた段ボール箱につまずき転びそうになった」の事例では次のような対策を講じるべきでしょう。
- 床に置かれた段ボール箱を取り除く
- 以後通路に物を置かない
- やむを得ず通路に物を置かなければならない場合は短時間とし、その間は人を配置し通行する人に注意喚起を行う
また、仕事上の安全を守るため、職場には安全衛生委員会があります。同様にご家庭でも、自宅やその周辺に潜む危険を回避するため、安全への具体的な取り組みを以下のようなサイクルで検討してみましょう。
- 危険を感じた場所や状況があったらメモを取るなどして意識し、家族に話す
- 何をすればその危険を回避できるかを相談し、実行することを決める
- 相談して決めた対策を実行し、問題がないか確かめる
- 問題なければ対策を継続し、新たな別の危険にも備える
また、ヒヤリハット事例は乳幼児や高齢者特有のものもあります。自分だけの視点にならず、家族一人ひとりの視点になって危険を感じた場所や対策について話し合うことも大切でしょう。
ALSOKのサービスで万が一の事故を防ぐ
ALSOKでは、家庭や外出時のヒヤリハット対策や、万が一の事態に対処できるサービスを多数ご提供しています。
例えば、ALSOKのホームセキュリティには鍵のかけ忘れを防げる施錠確認センサーなどがあります。万が一の際には、ガードマンが駆けつけますので安心です。
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まとめ
自宅は家族にとってもっとも安心な場所ですが、そうであっても数々のヒヤリハットの発見があるものです。ハインリッヒの法則は職場だけでなく、家庭や外出時の事故防止にも役立つものと意識しながら、日常の安全強化に努めましょう。