Always Essay 思いがけず・・・ 3.サプライズ

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3 サプライズ

ベルリンから帰国する直前、近くに住んでいたAちゃんが、「Bちゃんとお茶しよう」と誘ってくれた。Aちゃんと近所の駅で会い、Bちゃんとは中心部のカフェで待ち合わせ。当日Aちゃんが少し遅れ、予定の電車を逃した。次は10分後だけど遅刻はしても5分。なのにAちゃんは焦っている。「大丈夫でしょ」と私が言っても「そうだよね」と言いつつ、線路の方に首を伸ばしている。そうして着いたのはベルリンのシンボル、テレビ塔。私は観光名所に行かない派で、ここも入った事がない。下にあるカフェに向かうと、Aちゃんが「こっちこっち」と展望台の入口に歩いていく。え?と付いていくと、知っている顔が5人、笑顔で「左多里さーん」と手を振っている。「わーっサプライズ!?」と手を振り返すと、「サプライズ!!」とさらに盛り上がった。Aちゃんは「よかったー、間に合って」と胸を押さえている。Bちゃんが早く来て、待たずにすむ近い時刻の展望台行きエレベーターチケットを買ってくれていたのだ。感謝しつつ展望台に上がり、街を360度眺める。フロアにはカフェというかバーがあり、カウンターに7人ずらっと並んだ。

その後は4人で「ろう人形館」へ。有名人の人形だけではなく絵画の中に入れたり、カツラやコスプレで写真も撮れる。ベルリンの壁崩壊のセットに、その時代っぽいジャンパーも用意してあった。全部楽しくて、その日はずっと笑っていた。でも最初にみんなを見た時、本当は泣きそうだったのだ。なんて嬉しいんだ、と驚いた。
そして思い出したのは姉の結婚式。式直前、花嫁衣装で親族控室へ挨拶にきた姉は、扉を開けた途端、涙ぐんだ。みんな「早い早い」と笑ったけど、自分のために集まってくれた大勢が、こっち見て笑顔なんだもの、グッとくるよね。わかってても感激するはずだ。一説には、死ぬ時には亡くなった親族が迎えに来るという。本当であってほしい。父や、会ったことのない祖父母、できたら友達と「わー、サプライズ!?」って盛り上がりたい。

おぐり・さおり

岐阜県出身の漫画家。
著書に「ダーリンは外国人」「フランスで大の字」など。
近著「ダーリンの東京散歩 歩く世界」「手に持って、行こう ダーリンの手仕事にっぽん」。
2012~2019年までドイツ・ベルリンに居住。

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