ALSOK TRIP vol.3

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日差しが強さを増す中、さわやかな風を求めて北の大地へ向かいたくなる季節。
広大なだけにエリアによって旅の楽しみが変わるため迷うところですが、この夏は、北海道の歴史を築いた余市・小樽、そして自然の恵みとアートを満喫する空知に注目です。
Photos :Naoto Shoji

※本記事に記載している情報は2019年6月時点のものです。ご利用の際は最新の情報をご確認ください。

余市

札幌から車を走らせ約1時間。
海岸に大きく張り出した岬が目に入ってくると余市の市街はもうすぐです。北海道内では温暖で、夏は30℃になることもありますが、冬は積雪が多く厳しい環境です。四季に彩られる地域であり山海の幸に恵まれますが、特にリンゴやサクランボといった果物の生産が盛んです。
この自然にいちはやく目をつけた人物がいました。竹鶴政孝氏。NHKの朝ドラの主人公としても、広く知られることとなりました。単身、スコットランドへ渡りウイスキーづくりを習得。彼が日本で夢を実現するために選んだ場所が余市です。1934年に「大日本果汁」を設立、現在の「ニッカウヰスキー余市蒸溜所」へその歴史は受け継がれました。
雪深い山々を抱き、潮の香りが吹き抜ける気候。本場のスコッチに負けないシングルモルトの誕生は、竹鶴氏の意思と大地の恵みによって実現します。
余市蒸溜所は当時の建物が多く残り、国の登録有形文化財となっていて、ウイスキーづくりの工程を目にすることができます。また、当時の事務所やスコットランドで書き綴った竹鶴ノートを展示するウイスキー博物館も併設。建築、歴史、製造工程、すべてが満喫で きるスポット。最後は試飲の楽しみも待っています。

ニッカウヰスキー 余市蒸溜所

札幌軟石を使った建築群は設立当時を偲ばせる。ウイスキーづくりの工程は、作業内容ごとに設けられた棟を巡るようになっている。また、旧竹鶴邸や最初の商品を貯蔵した一号貯蔵庫など、見所に溢れる。ウイスキー博物館は、世界の蒸溜所の歴史や竹鶴氏の妻の生家も再現。試飲ができるディスティラリーショップ ノースランドもぜひ立ち寄って。

0135-23-3131

余市郡余市町黒川町7-6

営業時間/9:00~17:00

年末年始(臨時休業あり)

無料
蒸溜所ガイドツアー(無料)/約90分(製造工程のご見学、試飲等)9:00~12:00、13:00~15:30(約30分毎、予約制、10名様までは蒸溜所ホームページからご予約が可能、11名様以上はお電話で)

国内ではほとんど見られない、石炭直火蒸溜が行われている。

ウイスキーの製造工程が見られる建築群は、ほとんどが国の登録有形文化財。

JR余市駅から歩いてすぐ、古いヨーロッパ建築を思わせる入り口が目に入る。

旧事務所の建物内には、竹鶴氏が使用していた調度品などが展示してある。

ウイスキー博物館には、ウイスキーの歴史や竹鶴夫妻の貴重な資料などが展示されている。

小樽

江戸時代後期には北前船の寄港地として、明治時代から大正時代にはヨーロッパへの物資の積出港として発展した小樽。大正末期には横浜や神戸と並ぶ貿易港となり銀行や商社が進出、一大都市へと変貌しました。
運河や多くの建築物などは現在も残され、歴史的景観を今に受け継いでいます。
「北一硝子 三号館」は、明治24(1891)年に建てられた漁業用倉庫を利用した店舗。身欠きニシンを運河へ積み出していたトロッコの線路が、今も残っています。石油ランプの製造から始まり、現在はテーブルウェアなど多くのオリジナル商品が人気です。
「函太郎 小樽店」も小樽運河沿いの倉庫を改装した店舗で、北海道産の魚介類を提供する寿司店として地元民にも愛されています。回転寿司といって侮れないのが小樽。旬の魚介や、地元でしか味わえないネタは多彩。今の時季はウニなど目移りします。
小樽の目抜き通り、堺町通り。海産物の販売店やスイーツ店など、見逃せない店が軒を連ねる中、「小樽オルゴール堂」はその南端の「メルヘン交差点」に面して観光客の目を引きます。建築の美しさと同時に、15分毎にメロディーを奏でる蒸気時計。汽笛のような音階が、明治末期に建てられた建築とあいまって、和やかな気持ちにさせてくれます。
本館1階は、お土産用や人気の商品が並び、2階は高級オルゴールなどの販売をしています。交差点を挟んだ2号館 アンティークミュージアムにはパイプオルガンがあり、演奏も行っています。
市場巡りも小樽の魅力ですが、JR小樽駅前の「小樽三角市場」は必見。販売店と飲食店が立ち並び、お昼前から常に人混みで賑わいます。毛ガニ、タラバガニ、ウニ、ボタン海老…豊富な魚介類と新鮮さに圧倒されます。待ちきれない場合は、お店に入ってすぐ食べましょう。

北一硝子

明治34(1901)年に浅原硝子として創業、小樽の風土や文化に根ざしたガラス製品を提案。堺町通り周辺で16店舗を展開。中でも三号館は代表的な施設で、北一ホールの他に、和洋の食器なども豊富に揃っている。

0134-33-1993(代)

小樽市堺町7-26

8:45~18:00

無休

100年以上前の木骨石張倉庫を改装した北一ホールは、石油ランプのみの照明。

167個の石油ランプは毎日、点灯・消灯。8:45 から始まる点灯式は、見学者が行列に。

函太郎 小樽店

ネタもシャリも北海道にこだわった味を提供。函館で創業、小樽店は7年目を迎える。旬の素材が店頭に並ぶため、日替わりメニューをまず確認したい。運河散歩の後に、ぜひ立ち寄ってみて。

0134-26-6771

小樽市港町5-4

11:00~22:00〈11月~3月〉11:00~21:00(L.O.20:45)
※2020年2月7日~16日は22:00まで営業。

無休

手前の海宝こぼれ巻605円(税込)など、いろいろな味が楽しめるセットも。

小樽オルゴール堂 本館
2号館 アンティークミュージアム

堺町通りに心和むメロディーで彩りを添える。
本館は木骨レンガ造りと石造りの建物からなり、2階は回廊に。小樽らしいガラス製オリジナルオルゴールなどを販売。2号館 アンティークミュージアムでは、イギリス製パイプオルガンの実演が聴ける。

本館

0134-22-1108

小樽市住吉町4-1

9:00~18:00、祝前日・金・土9:00~19:00(夏期のみ)

無休


2号館 アンティークミュージアム

0134-34-3915

小樽市堺町6-13

9:00~18:00

無休

2号館のパイプオルガンは690本のパイプを備え、ロールペーパーでの自動演奏も可能。

本館の入り口前には蒸気時計が置かれ、ボイラーで蒸気を発生させ時刻を知らせる。

本館の内部は総ケヤキ造りで、吹き抜けの眺めも壮観。

小樽三角市場

戦後、JR小樽駅前の露天商が次第に大きくなり、近郊や上川地方からも買い出しに訪れる人で賑わいをみせたのが始まり。
現在は、海産物店や青果店、そして飲食店をあわせて15店舗が軒を連ねている。

0134-23-2446

小樽市稲穂3-10-16

開市6:00~17:00、お食事処7:00~17:00

無休

終日、人混みが絶えないので、早めの時間を狙うのがおすすめ。

新鮮なタラバガニや毛ガニが生簀に。ウニやホタテなどもお土産に送っても喜ばれる。

空知

JR札幌駅や三菱商事本社ビル、イタリア・ローマのトラヤヌス帝の市場、アメリカ・セントルイスのシティーガーデンなど、国内外の主要な場所に作品が設置されている彫刻家・安田侃。世界的アーティストの作品が並ぶ「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」は、作品に直接触れ鑑賞することができる施設です。
1985年、イタリアで活動していた彼は日本でのアトリエを探している時、生まれ故郷で閉校になっていた小学校に出合います。どこか懐かしさを感じさせる建物と、一部が幼稚園であったことから作品の設置を決意。子供達が心を広げられる広場であることも、重要なコンセプトになりました。
徐々に作品を増やし、現在は校舎の内外に40点あまりを展示、夏には水辺で子供達が歓声をあげる姿が見られます。
施設への賛同者が多く、ジャズマンの山下洋輔の演奏や詩人の大岡信の講演会が行われました。
2014年に、映画の撮影地となった「宝水ワイナリー」。ピノ・ノワールというぶどう品種の育成にかけた男の姿が、実際のワイナリーの夢とも重なって見えてきます。
岩見沢という豪雪地帯でのワインづくりは、2002年にスタートしました。現在の倉内武美代表取締役が畑の連作障害対策として育てていたブドウ畑を当時の岩見沢市長が見て、その美しさに一目惚れ。市の補助事業として推進することになります。
冬場はマイナス20℃以下、夏は30℃にも達するこのエリアの寒暖差は、ぶどうの品質を高めます。2008年には、100%自社農園収穫ワイン「リッカ」で国産ワインコンクール銅賞に輝きます。その後も受賞は続き、早くも認知度を確かなものにしています。
数量はけっして多くはありませんが、1本1本、大切に手づくりされるワインを、ぜひ五感で確かめてみてください。

安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄

かつて炭鉱で栄えた美唄で、閉校となっていた小学校の体育館をアートスペースにし屋外に5作品を展示、92年、アルテピアッツァ美唄が誕生。イタリア産の大理石を彫るワークショップもあり、作品は工房でキープできるので旅行者も参加可能。

0126-63-3137

美唄市落合町栄町

9:00~17:00(水曜~月曜)

毎週火曜日、祝日の翌日(日曜日は除く)、12月31日~1月3日

無料(任意の寄附をお願いします)

イタリア・カラーラ産の大理石が白く輝く水路。夏には子供達の遊び場となる。

緩やかな丘陵の芝の庭に、作品が点在している。

カフェもあるので、ひと休みしてまた探検に出かけられる。

森の奥までも作品が置かれているのでお見逃しなく。

宝水ワイナリー

ケルナーやシャルドネ、そしてピノ・ノワールやレンベルガーといったぶどうが、日高山脈と石狩平野に広がる丘陵で育ち芳醇なワインに。特有の気候と土壌の研究を続け、数年後には国内外で賞を獲得するまでに。農園で採れたぶどうを使ったソフトクリームも絶品。

0126-20-1810

岩見沢市宝水町364-3

【直売所】10:00~17:00
【ソフトクリームVieagrest】10:00~17:00(4月下旬~11月上旬)

左からRICCA 雪の系譜 シャルドネ3,500円。RICCA スパークリング 4,320円。 宝水ワイン オレンジピンクロゼ 2,050円。いずれも2017年もの、税込。

丘陵に広がるぶどう畑の景観は、映画のロケ地になるのもうなずける。

ショップのみで販売しているワインもあるので要チェック。

直売所1階はワインの他に雑貨なども販売している。

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