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ゲリラ豪雨の原因のひとつ、超巨大積乱雲「スーパーセル」とは?

2018.08.09

近年、夏になるとゲリラ豪雨(局地的大雨)に見舞われることが多くなりました。ゲリラ豪雨は河川の氾濫、道路の冠水や交通機関への影響など、深刻な被害を与えます。このゲリラ豪雨の原因のひとつとして指摘されているのが、「スーパーセル」という積乱雲の一種です。

今回はスーパーセルの発生のしくみのほか、ゲリラ豪雨が発生した際の対策や避難方法についてご紹介します。

ゲリラ豪雨(局地的大雨)とは

夏は積乱雲が発生しやすいため、つい先ほどまで晴れ渡っていた空がみるみるうちに暗くなり、あっという間に大雨が降りだすことは珍しくありません。

しかし、近年ではごく狭い範囲で突発的に降る大雨が増え、時には河川の氾濫や道路の冠水を引き起こすことから、“ゲリラ豪雨”と呼ばれるようになりました。気象用語では“局地的大雨”といい、短時間で狭い地域に数10ミリ~100ミリ近い雨量をもたらす突発的な大雨のことを指します。

スーパーセルとは?

豪雨の原因は積乱雲です。中でも水平方向に巨大化した積乱雲のことを、スーパーセルと呼びます。ゲリラ豪雨発生の原因のひとつに、スーパーセルの存在が指摘されています。

スーパーセル発生の仕組み

まず積乱雲の発生についてご説明しましょう。

夏は気温が高く日差しも強いことから、晴れた日が続くと、地表近くの空気が急激に暖められます。暖かく湿った空気は上昇して冷たい空気と混じり合い、積乱雲が発生します。
1つの積乱雲はシングルセルと呼ばれ、巨大化した積乱雲はスーパーセルと呼ばれます。ちなみに、セルとは英語で細胞という意味です。

シングルセルの水平方向の広がりは10数キロメートル程度ですが、スーパーセルの場合はさらに広がり、数10キロメートルにも及びます。シングルセルが複数集まって大きな積乱雲(マルチセル)になることはありますが、スーパーセルとなるためにはいくつかの条件が必要です。

大気が不安定な状態で積乱雲が鉛直(垂直)方向に組織化される際、風が吹いて上昇気流と下降気流がうまく分離されると、雲の勢いが衰えることなく発達を続け、スーパーセルになるといわれています。

なぜ、“スーパー”なのか

スーパーセルが積乱雲の集まりと大きく異なる点は、巨大な積乱雲の中に上昇気流と下降気流が1つずつしかないということです。
そのため、スーパーセルの内部では強い上昇気流が発生することで、渦が発生しています。積乱雲自体が回転することから、竜巻を引き起こすこともあります。

また、スーパーセルは寿命が長いことも特徴。普通の積乱雲が数10分で消失するのに対し、スーパーセルは数時間もの寿命を持ちます。スーパーという名称の通り、スーパーセルは非常に強力な積乱雲なのです。

スーパーセルはなぜ発生するのか

また、空気中の水蒸気が多い夏は、もともと積乱雲が発達しやすい季節です。夕立という言葉の通り、昔から夏の夕方に突然雨が降ることは珍しくありませんでした。
しかし、スーパーセルのような巨大な積乱雲ができるためには、非常に強い上昇気流の発生が必要です。これにはヒートアイランド現象が関連しているといわれています。

気象庁によると、ヒートアイランド現象とは、都市の気温が周囲よりも高くなる現象をさします。都市部では地面がアスファルトやコンクリートで覆われることによって、熱が蓄積されやすく、さらに他にも多くの熱が排出されていることから、強力な上昇気流が発生していると考えられているのです。

ゲリラ豪雨に遭遇したら

周囲に雨宿りする場所がなくてずぶ濡れになってしまったとか、雨の勢いが強くて傘が壊れてしまった、という経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
こちらでは、ゲリラ豪雨対策をいくつかご紹介します。

天気予報をしっかりチェック

ゲリラ豪雨対策としてまず行いたいことは、天気予報のチェックです。
ゲリラ豪雨の予測は難しいといわれていますが、気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」では30分先の雨雲の動きが予測できるようになりました。
スマホでもチェックできるため、外出中に移動先の雨雲の動きや、降水量の予測情報を確認することが可能です。

高さのある場所へ移動

ゲリラ豪雨は、雨量によっては道路が冠水したり、地下へ水が流れ込む危険性があります。アンダーパスなど地形的に低い場所にいる場合や地下の出口付近にいる場合、できるだけ早く高さのある場所へ移動しましょう。

豪雨対策用の傘や丈夫なレインコート

終日外出している場合は、豪雨対策用の頑丈な傘や、アウトドア用の丈夫なレインコートを用意しておくと安心ですね。

増えているスーパーセル

今回ご紹介したスーパーセルは、年々発生する回数が増えているといわれています。スーパーセルはゲリラ豪雨だけでなく、竜巻や落雷の原因にもなるため、日頃から天気予報のチェックをしっかり行いたいものですね。