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雪やつららを食べるのはあり?なし?酸性雪の危険性について

2018.11.29

冬の風物詩ともいえる雪や、建物の軒下などにできるつらら。子どもの頃、雪が降ると雪を口に入れたり、つららをなめたりした経験をお持ちかもしれません。真っ白な雪や透明なつららは、一見きれいに見えますが、食べても問題ないのでしょうか?そんな中、近年、降雪地域で調査が進められているのが「酸性雪」の影響です。今回は、雪やつららの成分や、「酸性雪」が及ぼす影響などをご紹介します。

雪やつららは食べても大丈夫?

雪の結晶は、雲の中で微粒子を核としてできた氷の粒が、水蒸気と結合してできたものです。この微粒子には、大気中の塵やホコリが含まれており、雪の結晶が地上に降ってくる過程で溶けたものが雨になり、溶けずに残ったものが雪になります。
つららは、雪や雨が地上で再度凍ることによってできたものです。

つまり、無色透明に見える雪やつららの主成分は、水蒸気と塵、ホコリでできているのです。
大気中にも存在している塵やホコリは、衛生面を考えると、故意にそれらを口に入れるのは避けたいものですね。

さらに、雪が大気汚染の影響を受けている場合は、「酸性雪」の可能性もあります。

酸性雪とは

大気中の水蒸気が含まれる雪は、大気が汚染されていると雪もその影響を受けることがあります。

大気が汚染される原因は、火山活動や石炭、石油などの化石燃料を燃やした際に発生する、硫黄酸化物(いおうさんかぶつ)や窒素酸化物(ちっそさんかぶつ)などのガスによるもの。これらのガスは、大気中で起こる化学反応によって硫酸や硝酸に変化し、硫酸や硝酸が含まれる酸性度が高い雪のことを酸性雪、雨のことを酸性雨と呼びます。

硫酸や硝酸は、日本では昭和30年代から40年代の高度成長期に、大気汚染や公害の原因として特定されました。その後行われたさまざまな対策により、大気中の硫酸、硝酸はともに減少しましたが、いまだ大気中に存在しています。

酸性雪が自然に及ぼす影響

酸性雪の要因の一つである大気汚染は、工業地域に多いイメージがあるかもしれませんが、日本では山岳地帯においても酸性雪の影響が懸念されていることをご存知でしょうか。

北アルプスなどの山岳地では、冬の間、北西から強い季節風が吹き、酸性雪の原因となる硫酸や硝酸が海を越えて大陸から運ばれてきます。同様に、日本国内で発生した汚染物質も、山の斜面に沿って発生する上昇気流にのり、山岳地に流れ込みます。
化学物質を排出する工場が存在しない山岳地で酸性雪の存在が認められるのは、季節風が原因といえるようです。

雪は雨と異なり、一度降り積もると長い間その場にとどまるため、酸性雪が環境に与える影響は少なくありません。

例えば、北欧では川に酸性雪が降り積った影響からか、サケの一部が姿を消してしまったケースも報告されています。日本でも、北アルプスなどの雄大な自然が多く残る地域で酸性雪の被害が出ないよう、現在調査が進められています。

酸性雪が人の健康に及ぼす影響

酸性雪の健康被害は、これまでのところ明確な報告はありません。しかし、同じ成分である酸性雨は、喘息や目、皮膚への刺激などの原因となることが分かっています。
実際に、1970年代に降った酸性雨の影響により、目や皮膚の痛みなどの健康被害が報告されました。
酸性雪も、同じように酸性度が高い場合は健康面に影響を及ぼす可能性がゼロではないため、世界各国で研究・調査が進められています。

雪やつららは見て楽しもう

冬の季節風にのって大気中の化学物質が遠くまで運ばれるため、降雪地域では酸性物質を含む雪が降ることがあります。好奇心旺盛な子ども達、雪やつららを口に入れてみたくなる子もいると思います。日本ではまだ酸性雪の心配はそれほど高くないものの、雪やつららには大気中の塵やホコリが混じっているので、食べずに見て楽しみましょう。