インバウンド対策

2019.06.03

近年、さまざまな業界において注目されるようになったインバウンド。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を目前に控え、現在は官民一体となってインバウンドへの対策が急ピッチで進められています。今回は、インバウンドはそもそも何かという点から、インバウンド市場の動向や取り組み、各業界で導入を検討したいインバウンド対策まで解説していきます。

インバウンドとは

「インバウンド」とは、海外から日本を訪れる訪日外国人旅行、またはその訪日旅行者のことを指します。そもそも英語の「inbound」は“外から中へ・本国行きの”といった意味を持ち、「インバウンドツーリズム(inbound tourism)」が略されて観光分野においては一般的に「インバウンド」が訪日外国人旅行を示すようになりました。

かつて日本は独自の文化によって欧米などから憧れを持たれながらも、2000年頃まで日本へのインバウンドは大きく伸びることはありませんでした。しかし、その後の官民による振興策や世界情勢の変化などによって、2013年以降はインバウンドが大幅に増加するようになりました。

政府による以前の訪日旅行者数目標は「2020年までに2,000万人」とされていましたが、インバウンドの急増によって2016年には「2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人」と上方修正され、近年はさらにインバウンドへの対策が求められる状況となっています。

また、インバウンド需要は日本経済にも大きな影響を与え、観光業界をはじめとする多くの業界においてインバウンドというキーワードが注目されるようになりました。2015年には中国人観光客による大量購入を指す「爆買い」が流行語にノミネートされるなどの出来事もあり、世間全体のインバウンドに対する意識が非常に高まっています。

インバウンド市場の動向

インバウンド市場が現在どういった状況にあるのか、いくつかデータを見ながら確認してみましょう。

まずは外国人旅行者数の推移についてです。国土交通省を中心にインバウンド拡大に取り組むキャンペーン「ビジット・ジャパン」が開始した2003年時点での訪日外国人旅行者数は約521万人でしたが、2013年には約1,036万人となりました。その後、インバウンドは大幅に拡大し、2018年には約3,119万人にまで及んでいます。2018年における前年比は8.7%となっており、東京オリンピック・パラリンピックを控えた今後もさらなるインバウンドの拡大が期待されています。(*1)

2017年時点ではアジアからの旅行者が8割以上を占め、最も多いのは中国の25.6%で、次いで韓国24.9%、台湾15.9%となっています。一方、欧米からの旅行者も増加しており、2017年には欧州主要5カ国(英・仏・独・伊・西)で初めて100万人を突破しました。また、インバウンドの増加にともなって外国人旅行者による消費も拡大しており、2013年には1兆4,167億円であったのに対して、2017年には4兆4,162億円と推移しています。費目別で見ると、買い物代が全体の37.1%を占め、宿泊費28.2%、飲食費20.2%と続きます。 (*2)

観光等を目的に日本を訪れた外国人旅行者の行動実施率を見てみると、「日本食を食べること」「ショッピング」「繁華街の街歩き」「自然・景勝地観光」を行なっている旅行者が50%を超える結果となっています。そのほか、「旅館に宿泊」「温泉入浴」「美術館・博物館」「日本の歴史・伝統文化体験」「日本の日常生活体験」といった活動をしている旅行者も多く、これらは外国人旅行者が多い北海道・東京・京都・大阪・沖縄はもちろん、その他の地域においても全般的に好まれているようです。(2017年)(*3)

インバウンドが拡大する中で、外国人旅行者に対する環境整備の課題も明らかになってきています。観光庁の「訪日外国人旅行者が滞在中に困ったこと」というアンケート結果によると、「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない」と感じている旅行者が26.1%に上ります。さらに「両替」「クレジット/デビットカードの利用」が約14%と、キャッシュレス事情の違いに戸惑う旅行者も少なくないようです。その他にも、交通機関やインターネット環境に関して困った方も一定数いることがわかります。

現在、さまざまな業界においてインバウンド対策が急速に進められています。インバウンド対策は外国人旅行者が訪れやすい環境を整備するとともに、その需要を取り込む大きなチャンスとなるでしょう。

インバウンドにまつわる取り組み

インバウンドが注目されている今、観光立国実現に向けて官民一体で行われている取り組みがあります。

外国人旅行者向け消費税免税制度

以前から行われているインバウンド対策のひとつとして、外国人旅行者向けの消費税免税制度が挙げられます。近年では街中で「免税」「Tax Free」という表示を見かける機会もかなり多くなっているのではないでしょうか。

上記で解説した通り、外国人旅行者の消費における買い物は大きな割合を占めます。免税店として認められれば、外国人旅行者に対して消費税を免除して商品を販売することが可能です。つまり、免税店は外国人旅行者にとってお得に買い物ができる場所となり、免税店となることでインバウンドの集客や売上の向上が期待できます。

免税の対象となるには品物や金額などについての要件がありますが、2018年7月からは要件が拡充されました。また、2020年4月からは免税を受けるための手続きを電子化するこが決まっており、より制度が利用しやすくなります。

訪日旅行促進事業(訪日プロモーション)

外国人旅行者を考慮した環境づくりを行うとともに、在外公館や民間企業、地方などが連携して日本の魅力の発信や誘客事業を行い、インバウンドの拡大を促進する取り組みも積極的に行われています。海外で日本文化を紹介するブース出展やイベント開催、海外メディアへの取材支援、地方への招請など、その取り組みは多岐に渡ります。

インバウンド対策の例

さまざまな面からインバウンドが注目されている今、インバウンドへの備えを行うことはその需要の取り込みにつながります。最後に、インバウンド対策として導入を検討したいものをいくつか紹介しましょう。

翻訳機

先にデータを示しましたが、外国人旅行者の多くが「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない」という悩みを抱えています。外国人が利用する宿泊施設やデパート等の小売店、飲食店などの多くでは、各国の外国語はもちろんのこと、共通語とされる英語についても対応可能な環境が整っているとは言えません。また、寺院や博物館等、景勝地などの観光スポットのほか、タクシー、駅、交番、役所窓口なども、外国人旅行者とのコミュニケーションを求められる機会が多いでしょう。

そのような場面で役立つのが翻訳機です。翻訳機を使うことで、英語をはじめとする多くの言語への対応が可能になります。近年ではスマートフォンなどを用いて翻訳を行うことも可能ですが、サービス提供などの場面では専用機器を用意しておくのが望ましいところ。シェア95%の翻訳機「POCKETALK(ポケトーク)」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

「POCKETALK(ポケトーク)」は、互いに相手の言葉を話せなくても、まるで通訳がいるように対話ができる音声翻訳機です。74言語(2019年3月時点)に対応しており、簡単な操作で精度の高い翻訳ができるため、外国人旅行者とのスムーズなコミュニケーションを実現します。
※POCKETALKはソースネクストの登録商標です。

QRコード決済

外国人旅行者が日本の決済事情に戸惑うことも多く、日本国内では現在、急速にキャッシュレス化が進められています。そうしたキャッシュレス決済のひとつとして注目されているのがQRコード決済です。QRコード決済はスマートフォンひとつで決済ができ、ポイント還元や導入ハードルの低さなど、利用者・店舗の双方にメリットの多い決済方法です。

QRコード決済は主に中華圏で広く普及している決済方法であり、中国からの旅行者がインバウンドの多くを占める現状においては、QRコード決済への対応を進めることはインバウンド対策の有効な一手と言えるでしょう。具体的には、小売店や飲食店はもちろんのこと、テーマパークや複合商業施設、温浴施設、博物館、土産物屋、道の駅に至るまで、多くの場所で集客・消費喚起の効果が期待されます。

QRコード決済にはいくつかの決済ブランドがありますが、中国ブランドを含む複数のブランドに対応できるマルチQRコード決済端末をひとつ準備しておけば、お客様がスマートフォンで提示するQRコードを読み取るだけで決済が完了します。日本円による現金のやり取りが不要になるため、正確かつスピーディーに決済ができ、店舗側のオペレーション負担軽減にもつながります。

民泊

インバウンドの増加とさらなる目標達成のため、近年では宿泊施設の拡充が進められています。その方策のひとつが、自宅やマンションなどの空き部屋を外国人旅行者に貸し出す「民泊」の規制緩和です。この規制緩和にともない、最近は民泊ビジネスを行うオーナー・事業者が増えています。

しかし、民泊は常駐スタッフのいない家主不在型での運営を行なっているケースが多く、火災等のリスクに備えた対策が非常に重要となります。例えば、消防法では自動火災報知設備の設置が定められていますが、これはあくまでも施設内で警報音がなる仕組みであり、消防への通報などは宿泊者や近隣の方が行わなければなりません。外国人旅行者しかその場に居合わせない民泊では、そういった場面での対応が遅れたり困難にになったりする可能性も十分にあるでしょう。

外国人旅行者が安心して利用できる民泊の環境づくりをするとともに、建物・部屋の安全を確保することは必須の要件。そこでご利用いただきたいのが、ALSOKの「民泊運営サポートソリューション」です。ALSOKの提供する機械警備を導入いただければ、24時間365日体制で火災警報を受信し、隊員が駆けつけて通報や初期対応を行うことができます。

こういった火災対策のほか、ALSOKではAEDなどの応急救護、防犯カメラ・金庫などのセキュリティ対策、清掃業務など、民泊の運営に役立つ幅広いサービスを全国でご提供しています。

インバウンドのさらなる拡大が期待されている現状において、その対策を行うことは、大きな影響力を持つインバウンドの需要を取り込むことにつながります。翻訳機やQRコード決済、民泊運営サポートを利用して、外国人旅行者を受け入れるための環境整備を進めていきましょう。

(*1)出典:日本政府観光局(JNTO)「国籍/月別 訪日外客数
(*2)出典:観光庁「平成30年版観光白書について(概要版)
(*3)出典:内閣府「地域の経済2018(第2章)