割れ窓理論とは?まちを清掃すると犯罪率が下がる理由
人はきれいなまちをみると、何となく生活しやすそうなイメージを抱くものです。その一方で、人の気配を感じないまちや、ゴミが空き地や路肩などに散らかっているまちには、いい知れない不安な気持ちを抱いてしまうこともあるでしょう。実はこうした人間の心理が地域の防犯にも大きな影響を与えています。ここでは、「割れ窓理論」という考え方やまちの清掃と防犯の関係について考えてみることにしましょう。
割れ窓理論とは
環境犯罪学という学問の中に「割れ窓理論」というものが存在することをご存知でしょうか。
これは、建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴となり、他の窓もまもなくすべて壊されてしまう傾向が高いという事実から、反対に「割れた窓をすぐに修理すれば、他の窓が割られる確率は低くなる」という説を唱えた理論です。
細かなところを省略してまとめると、「どんな軽微な犯罪も徹底的に取り締まることによって、凶悪犯罪を含めた犯罪全体を抑止することができる」というのが割れ窓理論の概要です。
この理論に対しては賛否両論があるのですべてを鵜呑みにすることはできませんが、ある一定の法則性のようなものは実在すると考えてもよさそうです。
たとえばゴミについても同じことをいうことができます。
路上のゴミを放置しているまちは、ゴミに関して誰も注意を払っていないという象徴となり、さらにゴミが捨てられるようになる、というわけです。
この理論を踏まえてさらに考えを進めていくと、路上のゴミを放置しているまちは、さらにゴミが捨てられるようになり、そのような環境の中では人々の心の中に「少しくらいルールを破っても誰も気にしない」という心理が芽生え、犯罪が起こりやすくなるということになります。
ゴミが散らかっているところにポイ捨てするのと、きれいに掃除されているところにポイ捨てするのでは、後者の方が多くの人にとって心理的な抵抗感が強いというのは納得できるのではないでしょうか。これを割れ窓理論に従って逆に考えれば、「ゴミがまちに散乱しないようきちんと毎日清掃すれば、まち全体の犯罪率が下がる」ということになり、まちの清掃と防犯の関係性がここに浮かび上がってきます。
割れ窓理論の具体例
「割れ窓理論」に基づいたまちづくりは、ちょっとした不正を放置していると大きな犯罪が起きやすくなるのを抑止するための取り組みです。
「割れ窓理論」を利用して様々な軽犯罪を取り締まり、犯罪の発生件数が大幅に減少したという効果がニューヨークで実証されています。1990年のニューヨークは、殺人事件の発生率が過去最高値を記録するほど、治安が極限にまで悪化していました。そこで、1994年に就任したニューヨーク市長が「割れ窓理論」に基づく政策を実行したところ、殺人事件やそのほかの犯罪が劇的に減少したのです。具体的には落書きや公共物の破壊、違法駐車、無賃乗車、万引きや暴力事件などの軽微な犯罪を積極的に取り締まりました。同時に、割れた窓の修理や落書きの消去なども行い、まちの秩序を取り戻せるように行動したのです。
公園や壁、家の塀などにいたずらされた落書きを放置するのではなくきれいに消すことで、いたずらの再発を抑止する効果が期待できます。落書きされている状態の壁だと「落書きしてもバレない」と感じますが、まっさらな壁だと落書きをすることへの抵抗感が大きくなるということです。
日本においても、実際に割れ窓理論を利用した様々な取り組みがされています。東京都足立区では、「美しいまち」を印象づけることで犯罪やいたずらを抑止する「ビューティフル・ウィンドウズ」が行われています。具体的には地域住民や警察による見回り・パトロール、花壇の整備などです。こうした取り組みをまち全体で協力して行うことは、犯罪者に「まちに対する住民の意識が高い」「協力意識がある」と感じさせることができます。
京都府でも、商店街の落書き消去や、不当な貼り紙の除去などの「割れ窓理論」実践運動を行っています。府の職員、ボランティア、小学生の児童などが率先して取り組み、まち全体をきれいにすることで犯罪の起きにくい地域づくりを目指しています。
きれいな状態を保つことが、犯罪の抑制につながるということがわかるのではないでしょうか。まち全体を明るく活性化させることでまちの治安が良くなり、安全なまちづくりが実現できるでしょう。
まちの犯罪率を下げるために一人ひとりができることは?
まちの犯罪率を下げるためには、一人ひとりが犯罪を起こさせないまちづくりを意識する必要があります。「割れ窓理論」でまちづくりと防犯の関係性を説明したとおり、いたずらや犯罪をすることに抵抗感を与える環境をつくることが重要です。
まちのゴミ拾い、見回りなどのボランティア
まずは道端などに落ちているゴミを積極的に拾うなど、できることから心掛けましょう。まちには至る所にポイ捨てされたゴミが落ちていることがあります。ルールやマナーを守らない人がいると、他の人も軽い気持ちで同じことをする傾向があるため、まちがどんどん汚れていってしまいます。ゴミ拾いをして常にきれいなまちの状態を保つことで、一人ひとりにまちを汚さないようにするという責任感が生まれ、ルール・マナー向上に繋がります。
地域によっては自主的にゴミ拾いやパトロールなどのボランティア活動が行われています。犯罪者にとって犯罪を起こしにくい環境をつくることで、自分たちのまちを守ることに繋がるのです。
自宅の外観の整備
また、ご家庭の庭や家のまわりを日頃からきれいな状態にしておくことも大切です。空き巣は「家」単位だけでなく「周辺環境」も含めてまち侵入しやすいかどうかを判断します。つまり、家の防犯強化はまち全体の防犯強化に影響するということです。
対策としては、庭のお手入れや修繕、そして一番見落としがちな郵便受け。郵便物やチラシが郵便受けからあふれていると、個人情報が記載された封筒を盗まれたり、留守が続いていると判断した空き巣に狙われやすくなったりします。日頃から庭の掃除や郵便受けのチェックをしておきましょう。
自宅のセキュリティを高める
外出の際の戸締り確認や合鍵の管理など、基本的な空き巣対策も重要です。さらに、自宅のセキュリティを高めるためにはホームセキュリティや防犯カメラを設置することもおすすめです。ALSOKのホームセキュリティは長時間の外出からちょっとしたお出かけ、そして在宅中まで、最新のセキュリティシステムでお客様のお住まいを24時間365日体制で見守り、万一の時は、ガードマンが迅速に駆けつけます。さらに防犯カメラがあれば泥棒や不審者は安易に近付いてきませんし、万一何かあっても証拠映像を残すことができます。ご自宅や家族を守るために、できる範囲でセキュリティ対策を万全にしておきましょう。
住民の連帯感がまちの防犯を強くする
警察庁のサイトによると、空き巣や強盗などをはたらく犯罪者は近所付き合いがよく、連帯感のある住宅街を嫌うといいます。犯行をあきらめた理由には「近所の人に声をかけられたり、ジロジロみられたりした」いうものが多いそうです。
また、犯罪者が下見時にまちの連帯感の強さを推測する有力な材料のひとつとして「ゴミの日が守られているかどうか」があるそうです。ゴミの日が守られていないまちは犯罪者に安心感を与えるというのです。これは先の割れ窓理論にも当てはまる考え方といえます。
ゴミの日の遵守をはじめ、まちを美しく保つには住民の団結力と参画意識が必要です。防犯を強化するためにも地域のルールや役割は積極的に守り、果たすようにしましょう。こうした意識を持つことが、最終的には子どもを含む家族全員を犯罪被害から守るということにつながります。
町内会などでは季節ごとのイベントや清掃などを企画しているところが多いと思いますが、こうしたイベントなどにも、できれば家族総出で積極的に参加しましょう。イベントには住民同士の交流を促すだけではなく、まちぐるみで防犯を強化するという効果もあるということを心にとめておくと、参加する意義も十分にあると感じることができると思います。
ご近所でまとめてホームセキュリティに加入すると防犯効果がさらにアップ
割れ窓理論にも関係しますが、たとえば1ブロック全体で一斉にホームセキュリティに加入すると下見にきた犯罪者に「ここは防犯意識が高い場所だ」と強く認識させることができ、防犯効果が大幅にアップします。ALSOKではご近所の皆さんで同時にあわせてホームセキュリティを導入いただいたお客さま向けに工事費を半額に割引する「ご近所割」をご提供していますので、ぜひこの機会にご検討ください。