イモビライザーとは?仕組みと車両盗難への対策

防犯 2020.11.06(2023.12.12更新)

車両盗難や車上荒らしを防ぐため、自動車にはさまざまなカーセキュリティシステムが搭載されています。その1つが、電子的なID認証システムにより、第三者が車のエンジンをかけられないようにする「イモビライザー」です。本記事では、イモビライザーの仕組みや注意点、車両盗難を防ぐための対策について、わかりやすく解説します。

目次

イモビライザーとは?自動車盗難を防ぐ電子的な認証装置

イモビライザー(Immobilizer)とは、物理的なキーだけでなく、電子的なキー(ID)の照合を行うことで、車両盗難や自動車の乗り逃げを防ぐ防犯装置です。イモビライザーを導入している場合には、複製した物理的な鍵でエンジンを起動しようとしても電子的なキー(ID)が異なるとエンジンの起動ができません。注意してほしいのは、あくまでもエンジンの起動を防ぐための防犯システムであり、車上荒らしを防止する効果は見込めないということです。また、イモビカッターと呼ばれるイモビライザー解除機器が登場しているものの、自動車の盗難防止のため一定の防犯効果が見込めるカーセキュリティシステムです。

国内ではイモビライザーの装着義務化が検討されている

2015年ごろより、新車へのイモビライザー装着義務化に向けて道路運送車両法の改正をにらむなど、政府は本格的な検討段階に入っています。オーストラリアやEU諸国では、すでに1990年代からイモビライザーの装着が義務化されており、普及率はほぼ100%に達している状態です。

2013年の段階で、日本国内のイモビライザーの普及率は約80%程度であり、国内向けの自動車420万台のうち340万台に装着されています。車種で見ると、カスタムやオプションも含めて、国内向けの180車種のうち158種がすでに装着可能な状況です[注]

[注]産経新聞社:自動車の盗難防止強化へ「イモビライザー」義務化浮上 海外の事例参考に議論へ

しかしながら、イモビライザー装着義務化により車両価格が上昇してしまうなどの懸念もあり、現時点で日本において義務化はなされていません。

リモコンキー、イモビライザーキー、スマートキーとは?

自動車用の鍵には、リモコンキー、イモビライザーキー、スマートキーなどがあります。それぞれどのような鍵であるかについての説明を下表にまとめています。

リモコンキー
(ワイヤレスキー)
赤外線や電波により、遠隔で自動車のドアの施錠・解錠を行うリモコン式のキー。エンジンの始動には、物理的な鍵を使用する。もっともメジャーな鍵だが、スマートキーやイモビライザーキーの登場により、徐々に数を減らしている。
イモビライザーキー 機能としてはリモコンキーとほぼ同様だが、キーに電子的なキーIDが内蔵されており、これが車体のキーIDと一致しなければ、エンジンスタートができないようになっている。防犯性が高く、車両盗難を防ぐ効果がある。
スマートキー 自動車本体に近づくだけで、ドアの施錠・解錠が可能になる次世代型のキー。物理的な鍵を使用しなくても、ボタンを押すだけでエンジンスタートが可能となっている。

スマートキーのほとんどには、イモビライザーキーとしての機能も備わっています。
近年は、高級車だけでなく中低額車両の採用例も増えており、車両盗難の発生件数減少の一因となっています。

イモビライザーの仕組みは?電子認証が必要な理由

イモビライザーの仕組みは?電子認証が必要な理由

イモビライザーを搭載すると、なぜ車両盗難が起きにくくなるのでしょうか。従来の自動車では、キーシリンダーに差し込んだ鍵の形が物理的に一致していれば、エンジンスイッチがオンになる仕組みでした。この仕組みでは、第三者が自動車の鍵を物理的に複製することで、簡単にエンジンを始動させられます。
イモビライザーシステムを搭載した自動車は、ボンネット内部のイモビライザーコンピュータ(キーレススタートシステム)で、キーID情報を管理しています。キーID情報は暗号化されており、電子的なIDの複製はほとんど不可能と言われています。
イモビライザーシステムは、イモビライザーコンピュータで管理されているキーIDと、携帯リモコン(スマートキー)側の電子部品(トランスポンダ)に内蔵されたキーIDが一致しなければ、エンジンスタートができないようになっています。
イモビライザーの登場により、従来よりも安全に車両を駐車できるようになりました。

イモビライザーの点滅の意味は?自動車盗難の抑止効果も

イモビライザーの点滅の意味は?自動車盗難の抑止効果も

イモビライザーシステムを搭載している車は、ダッシュボードのメーター・インパネ付近に、赤いインジケーターランプが点滅しています。この点滅にはどのような意味があるのでしょうか。まず、ランプの点灯により、自分の車にイモビライザーシステムが搭載されているかどうか確認することが可能です。
さらに第三者がランプの点灯・点滅を見つけ、イモビライザーシステムが搭載されていることを知れば、自動車盗に対する大きな抑止力となりえます。イモビライザーシステムを解除し、エンジンスタートさせるには、イモビカッターのような専用の道具が必要になるためです。
車種によっては、ランプの点灯ではなく、イモビライザーステッカーを貼ることで代用しているケースもあります。ランプを点灯・点滅させたりすることや、イモビライザーステッカーを貼付したりすることにより、犯行しようとする者が「イモビライザーが搭載されているのでこの車を盗むのはやめておこう」と考える可能性が高くなると言えるでしょう。

イモビライザーの注意点

イモビライザーを使用する際には、いくつか覚えておきたい注意点があります。

イモビライザーを導入していても盗難に遭うリスク

自動車盗難の防止に役立つイモビライザーですが、100%安全という訳ではありません。
以下のようにイモビライザーを破る手口がいくつかあるため、注意が必要です。

  • イモビカッター
  • リレーアタック
  • レッカー移動

イモビカッターは、イモビライザーの機能を無効化する装置のことです。車両窃盗犯は、イモビカッターを用いて車両側のIDコードを初期化し、別のIDコード(窃盗犯が所持するキーのIDコード)に書き換えることでエンジンを始動させます。
イモビカッターを悪用した車両盗難の多発を受けて、地方自治体ではイモビカッターの所持などを規制する条例を定める動きが出てきました。「自動車関連業者や鍵の専門業者などがキーの紛失に対応するため」などの理由がないにもかかわらずイモビカッターを所持することは、条例違反となることがあります。
リレーアタックはスマートキーの仕組みを悪用して自動車を盗む手口です。犯行は複数人で行われ、専用の機器を使用してスマートキーの電波を中継し、ドアロックを解除してエンジンを始動します。
リレーアタックの詳しい手口と防止対策については、こちらの記事をご確認ください。

また、レッカー移動によって堂々と盗難されてしまうケースもあります。この対策としては、車両にデジタル傾斜センサー(チルトセンサー)を設置しておき、レッカー移動による車体の傾斜を検知した場合に警報音を出すようにするという方法や、駐車する際にはスタッフが常駐している有人駐車場を利用するという方法などが考えられます。

電池切れのリスクと対応策

キーの電池が切れている場合はイモビライザーの機能も使用できません。

キーの電池は、一定期間経過したら交換するようにしましょう。多くの車種においては、キーの電池残量が少なくなると運転席のパネルの警告灯が点灯します。そのような警告灯が表示されたら、早めに電池交換を行うようにしましょう。

鍵紛失のリスクと対応策

キーを紛失した場合は、自動者関連業者、鍵の専門業者、ロードサービスなどに連絡します。最初の電話連絡で「イモビライザー搭載車でキーを紛失した」ことをはっきりと伝え、対応が可能かどうかを確認しておきましょう。
紛失を防ぐためには自宅でキーの置き場所を決めておく、スマートタグを取り付けておくなどの方法が有効です。スマートタグは音の出るものやGPS機能がついているものがあります。紛失時にGPS機能が使える場合には、スマートタグの位置検索を試みてみましょう。

自宅での車両盗難を防ぐために

最近では、自宅の駐車場で車両盗難の被害に遭うことも少なくありません。「車から外に出たらキーロック」を習慣化するようにして、防犯カメラやセンサーライトを設置することを検討しましょう。

防犯カメラを設置する

自宅の玄関前や駐車場に防犯カメラを設置することは、車両盗難の抑止につながります。万が一盗まれてしまった場合でも、犯人の特徴などをカメラが捉えているため早期解決に役立ちます。
しかし、防犯カメラの設置には工事が必要になる場合があり、大変なのではと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
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センサーライトを設置する

自宅の駐車場にセンサーライトを設置することで、犯人を光で牽制する効果や、周囲の人に犯行を知らせる効果があります。
センサーライトを設置する際には、次に事項に注意してください。

  • 揺れる場所(振動する場所)には設置しない。
  • 侵入者が容易に取り外せるような場所には設置しない。
  • エアコン室外機、換気扇など、温度変化が大きい場所を避ける。
  • 木々の揺れや小動物でも誤動作が起こるので必要に応じて対策する。
  • 外からわかりづらい場所に設置することが望ましい。

車上荒らし対策についても検討を

車両盗難や車上荒らしの発生件数は減少傾向に

警察庁の犯罪統計資料によると、令和4年(2022年)の自動車盗の認知件数(発生件数)は5,734件でした。平成27年度(2015年)の1万3,821件から半数以下となっており、イモビライザーの普及を始めとした防犯対策が一定の効果を挙げています。

自動車盗の認知件数

また、車上荒らしの発生件数についても、車両盗難と同様に減少傾向にあります。令和4年度(2022年)の車上ねらいの認知件数は2万3,289件でした。8万7,976件の車上荒らしが発生した平成25年度(2015年)以降、発生件数は大幅に減少しています。

一方、2万3,289件の車上ねらいのうち、約3割にあたる8,097件が「施錠あり」の状態で発生しています。

車上ねらいの認知件数
施錠状態別 車上ねらい認知件数

出典:警察庁:令和4年の 刑法犯に関する統計資料

車両盗難については高い防犯効果を発揮するイモビライザーですが、自動車のガラス窓を割るなどして、車内の物品を窃盗する車上荒らしの対策としては有効ではありません。
車上荒らしに対抗するためには、別のセキュリティ対策が必要となります。

車両盗難や車上荒らしに対抗するため、「防犯カメラ」「監視カメラ」の導入をおすすめします。盗難発生の抑止力になる上、何か起きた時の原因追及にも役立てることができます。

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