女性にAEDを使うときの注意事項について
総務庁消防庁が発表している統計によると、一般の方がAEDを使用して応急処置を行った傷病者の1ヵ月後生存率は53.5%と半数以上に上っており、心肺蘇生を実施しなかった場合の1ヵ月後生存率9.4%を大幅に上回っています。[注1]
AEDの使用率も年々増加しており、一般の方が行える最善の応急手当のひとつとして認知されつつありますが、女性の傷病者にAEDを使用する際は、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
そこで今回は、AEDを女性に使用する場合の注意点をわかりやすくまとめました。
女性にAEDを使用する際の注意点


心肺機能停止を引き起こした傷病者が女性だった場合、AEDを使った応急手当を行ううえで、特に注意しておきたいポイントを4つご紹介します。
1金属製のアクセサリーを外す
AEDは、心臓が細かく震える「心室細動」を起こしている人に対し、電気ショックを流すことで心臓のリズムを正常に戻すことができます。
傷病者の体に電気ショックを流す時は、胸部に電極パッドを貼り付けますが、胸元に電気を通す金属製のアクセサリーがかかっている状態で電極パッドに電気を流すと、電気ショックの効果が低下するだけでなく、スパークを引き起こし、やけどするおそれがあります。
特に女性はネックレスやペンダントなどの金属製アクセサリーを身につけていることが多いので、女性にAEDを使用する場合は、アクセサリーの有無を事前に確かめましょう。
アクセサリーを外すのが難しい場合は、素手またはAEDに付属しているレスキューセットなどに付属しているハサミで切断するか、できるだけ電極パッドからアクセサリーを遠ざけるようにしましょう。
2ブラジャーは必ずしも外す必要はない
女性が着用しているブラジャーの多くには、金属のホックなどが使用されています。そのため、かつてはブラジャーも金属製アクセサリー同様、AED使用前に取り外すべきという考えが主流でした。
しかし、最近ではAEDの電極パッドを直接素肌に貼り付けることができれば、必ずしもブラジャーを外す必要はないという考えに変わってきています。特にブラジャーの場合、一部を除き、金属製ホックは背中側についていますので、胸側に電極パッドを貼り付けるぶんには、さほど危険性はないとされています。
むしろ、ブラジャーの取り外しに手間取る方が救助面のリスクが高いので、迷った時はそのままAEDを使用してもかまいません。ただ、電極パッドを取り付ける際は、ブラジャーを挟まず、直接地肌に貼り付けるよう注意しましょう。
3女性でもためらわずにAEDを使用する
AED使用の際、ブラジャーを取り外す必要はないと説明しましたが、電極パッドを地肌に直接取り付けるには、やはり衣類を脱がす必要があります。
ヘルステック分野のリーディングカンパニーとして知られる「フィリップス」が、メールマガジンの読者を対象に実施したアンケート調査によると、自分が屋外で倒れ、至急の救命行為が必要になった場合、AEDを使うために異性に衣服を脱がされることに「不快感を感じる」と答えた女性は16%、「不快感までは感じないが、抵抗がある」と回答した女性は70%にも上ったそうです。[注2]
不快感・抵抗感を感じないと回答した割合が77%に上った男性と比べると、まさに対照的な数字であり、男性が女性傷病者に対してAEDを使用することをためらう大きな理由の一つに数えられています。
しかし、心原性心肺機能停止からの蘇生率は、発作が起こってから心肺蘇生を開始するまでの時間によって大きな差が生まれます。何らかの理由によって心室細動が発生すると、心臓は細かく震えるだけで血液を送り出すことができず、数秒で意識を失った後、数分で脳をはじめとする全身の細胞が死滅していきます。
電気ショックが1分遅れるごとに、救命率は10%ずつ低下すると言われていますが、平成29年における救急車の現場到着所要時間は平均8.6分、10分以上かかっているケースは全体の約3割に上っています。[注3]心肺停止機能が目撃された時点から、救急隊が心肺蘇生を開始するまでの時間が10分以内の場合の生存率は12.3~15.2%ですが、10分を超えると10.9%、15分以上が経過すると5.6%と大幅に減少します。心肺機能停止への応急手当は一分一秒を争いますので、傷病者が女性であってもためらわず、すぐさまAEDを使った処置を行うことが大切です。
4妊娠中の女性でもAEDを使った応急手当を行う
心肺機能停止した女性が妊娠中だった場合、電気ショックが胎児に悪影響を及ぼすのでは…と不安になります。
しかし、母体が助からなければお腹の赤ちゃんの命も危険にさらされますので、心停止が疑われる場合は、たとえ女性が妊娠中でもAEDを積極的に使用しましょう。
女性に対して行う心肺蘇生法とAEDの使用方法


女性傷病者に対し、心肺蘇生法とAEDによる応急手当を行う方法を5つのステップに分けてご紹介します 。
ステップ1.反応の有無を確認する
倒れている傷病者に対し、耳元で「大丈夫ですか?」などの声かけを行ったり、鎖骨あたりを叩いたりして反応の有無を確認します。
反応がなかったら意識なしと判断し、心肺蘇生法の実行に移ります。
ステップ2.助けを呼ぶ
119番通報し、救急車を呼んでもらいましょう。傷病者の意識がない場合、すぐに心肺蘇生を行わなければならないので、周囲に人がいる場合は、119番通報およびAEDの運搬を特定の人にお願いしましょう。
その際、助けを借りる人を指さしなどで指定し、「119番通報してください」「AEDを持ってきてください」など、具体的な指示を出すと、声かけされた人もすばやく反応してくれます。
ステップ3.呼吸の有無を確認
傷病者の顔に自分の頬を近付けつつ、目線は傷病者の胸元に向け、正常に呼吸をしているかどうか確認します。
呼吸が確認できない場合や、判断に迷った時は、胸骨圧迫を開始します。
ステップ4.胸骨圧迫を行う
傷病者の胸の真ん中に両手を重ねて当て、上になった手の指を、下になった手の指の間にかませたら、強く・速く・絶え間なく圧迫します。
1分間に少なくとも100回、連続30回のテンポで、傷病者の胸が5cm以上沈むくらい力強く圧迫するのがポイントです。
ひじは真っ直ぐに伸ばし、傷病者の体に対して垂直に、体重をかけるように押すことを意識しましょう。
ステップ5.AEDを使用する
緊急時とはいえ、異性に衣類を脱がされることに抵抗を感じる女性が多いことも事実ですので、ブラジャーをはずさずに電極パッドを貼る、余裕があれば上からタオルや衣類をかけるなど、女性に対する配慮も忘れないのが理想です。
AEDが到着したら、電源を入れ、音声ガイダンスに従って操作します。AEDには電極パッドを貼る位置を示すイラストが描かれていますので、それを見ながら右胸丈夫と左脇腹にそれぞれパッドを貼り付けます。
パッドは地肌にしっかり密着するように貼り、水や汗で濡れている場合は事前にタオルなどで拭き取りましょう。電極パッドを装着すると、AEDが自動的に心電図を解析し、電気ショックが必要かどうか診断してくれます。
電気ショックが必要と診断されたら、ショックボタンを押し、自分を含め、周囲にいる人を傷病者から遠ざけます。
AEDは2分ごとに心電図解析を行い、電気ショックの必要性を診断しますので、救急隊に引き継ぐまでは電源を付けたままにしておきましょう。
ステップ6.救急隊が到着するまで繰り返す
救助はこれで終わりではありません。電気ショックが行われても容体に変化がない場合は、救急隊が到着するまで電極パッドを貼ったままふたたび「胸骨圧迫」を行ってください。
2分経つと、AEDが自動的に心電図の解析をスタートします。心臓の拍動が戻って「必要ありません」というガイダンスか、「ショックが必要です」というガイダンスが流れるまで胸骨圧迫からの一連の流れを繰り返します。
女性への配慮を大切にしつつ、適切にAEDを使用しよう
心肺停止からの蘇生は1分1秒を争いますので、傷病者が女性でもためらわず、適切にAEDを使用することが大切です。
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