引き戸に鍵を後付けするには?鍵の種類や費用、玄関・室内ドアへの後付け方法

近年、強盗事件などの増加により、住宅の防犯性能向上への関心が高まっています。特に引き戸を使用している住宅では、従来の鍵だけでは防犯性に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
引き戸は日本の住宅に古くから用いられている扉形式の一つであり、玄関から室内ドアまで幅広く使用されています。しかし、開き戸と比較して鍵の種類が限られることや、二重ロック化が困難な場合があるなど、防犯面での課題を抱えているケースも少なくありません。
そこで本記事では、引き戸に後付けできる鍵の種類や費用、取り付け方法、注意点などを解説します。
目次
引き戸とは
引き戸とは、レールや溝の上を滑らせて横方向に開閉する扉のことを指します。日本の伝統的な住宅建築に多く見られる扉形式であり、古くから日本人の生活に密着した建具として親しまれてきました。
近年では、従来の和風デザインだけでなく、洋室にも調和する現代的なデザインの引き戸も増えています。ガラス製・木目調の引き戸など、住宅のインテリアに合わせて選択できます。
また、高齢化社会の進展に伴い、バリアフリー化のために従来の開き戸から引き戸にリフォームする方も多くいます。引き戸は車椅子での通行が容易で、手首や肩に負担をかけずに開閉できるため、身体的な制約がある方にとって非常に使いやすい扉です。
ただし、引き戸は開き戸と同じ種類の鍵を取り付けることができない場合があります。引き戸特有の構造や開閉方向により、鍵の選択肢が制限されるため、後付けを検討する際は引き戸に適した鍵を選ぶ必要があります。
引き戸の種類
引き戸にはいくつかの種類があり、それぞれ構造や開閉方法が異なります。
片引き戸
1枚の扉を一方向にスライドさせて開閉するタイプです。もっともシンプルな構造で、狭いスペースでも設置しやすいという特徴があります。玄関や室内の間仕切りとして広く使用されています。
引き違い戸
2枚の扉を左右にスライドさせて開閉するタイプです。和室のふすまや玄関の引き戸として多く採用されており、戸を取り外せば開口部を大きく確保できるメリットがあります。
引き分け戸
中央から左右に分かれて開く2枚の扉です。中央から両サイドに開くため、より広い開口を確保できます。玄関や大きな開口部に使用されることが多いタイプです。
引き戸に後付けが可能な鍵の種類
引き戸に後付けできる鍵には、工事の必要性や防犯性能に応じて複数の種類があります。住宅の用途や予算、取り付けの難易度を考慮して適切な鍵を選択することが重要です。
簡易的なストッパーや補助錠

もっとも手軽に設置できるのが、簡易的なストッパーや補助錠です。工事が不要で、DIYで簡単に取り付けられます。粘着テープやビスで固定するタイプが一般的であり、強度は限定的ですが、基本的な防犯効果や室内のプライバシー保護には十分対応できます。
外側から施錠できるタイプと内側から施錠できるタイプがあり、使用目的に応じて選択できます。玄関など外部からの侵入を防ぎたい場合は外側施錠タイプ、室内のプライバシー確保・子どもの無断外出や高齢者の徘徊防止などが目的の場合は内側施錠タイプが適しています。
両側から施錠できるようにしたい場合は、簡易錠は扉の両側にそれぞれ鍵を取り付ける必要があります。設置は簡単ですが、防犯性能は限定的であることを理解して使用することが重要です。
戸先錠

戸先錠は、引き戸の取っ手がある部分に取り付ける本格的な鍵です。引き戸や枠に穴を開ける必要がありますが、高い防犯性能を実現できます。
面付錠は、引き戸の表面に取り付けるタイプで、後付けしやすいという特徴があります。防犯性能の高いディンプルキーを取り付けられるため、ピッキング対策としても有効です。DIYでも取り付け可能ですが、正確な位置決めと穴開け作業が必要です。
彫込錠(堀込錠)は、引き戸の内部に取り付けるタイプで、外観がすっきりと仕上がります。ただし、引き戸内部への精密な加工が必要となるため、DIYでの取り付けは困難で、専門業者への依頼がおすすめです。
召し合わせ錠

召し合わせ錠は、引き違い戸専用の鍵で、2枚の戸が重なっている中央部分に設置します。主に玄関の引き違い戸に使用されます。
防犯性能の高いディンプルキーを取り付けられ、ピッキングなどの不正開錠に対して優れた抵抗力を持ちます。ただし、正確な位置決めと精密な加工が必要なため、DIYでの取り付けは難しく、専門業者への依頼がおすすめです。
電子錠、スマートロック

電子錠やスマートロックも引き戸に取り付け可能です。従来は開き戸向けの製品が大半でしたが、最近では引き戸に対応した製品も増加しています。
物理的な鍵が不要なため、鍵の紛失や複製による不正侵入のリスクを軽減できます。また、鍵穴がないためピッキングによる侵入も防止できます。暗証番号、指紋認証、カードキー、スマートフォンアプリなど、多様な認証方式がありますが、カードキーの場合は紛失に注意が必要です。
オートロック機能を備えた製品では、鍵の閉め忘れを防ぐことができ、特に玄関の防犯強化に効果的です。既存のサムターンが付いている引き戸であれば、DIYでスマートロックを設置できる場合もありますが、新規に取り付ける場合は専門工事がおすすめです。
引き戸に鍵を後付けする費用
引き戸への鍵の後付け費用は、選択する鍵の種類や取り付け方法によって大きく異なります。以下に示す費用は参考値であり、製品のグレードや業者によって変動する可能性があります。
鍵の種類 | 費用目安 |
---|---|
簡易的なストッパーや補助錠 | 1,500円~10,000円 |
戸先錠 | 5,000円~40,000円 |
召し合わせ錠 | 5,000円~20,000円 |
電子錠 | 10,000円~100,000円 |
玄関ドア・業者への依頼 | 20,000円~40,000円+製品代 |
簡易的なストッパーや補助錠はもっとも安価です。戸先錠は中程度の費用で本格的な防犯性能を実現できますが、シリンダーの有無などによって費用に幅があるようです。
電子錠は、初期費用は高額ですが、利便性と高い防犯性能を両立できます。長期的な使用を考慮すると、鍵の交換や複製費用が不要になるため、総合的なコストメリットがある場合もあります。
業者への依頼は、施工費用に製品代金が加算されます。玄関ドアなど重要な箇所の場合は、確実な取り付けと保証を得るために専門業者への依頼を検討することが重要です。
引き戸に鍵を後付けする方法
引き戸への鍵の後付け方法は、選択する鍵の種類によって異なります。DIYで対応できるものから専門業者への依頼が必要なものまで、難易度と必要な工具が大きく異なります。
ビスやネジで固定する【DIY可能】
ビスやネジを使用した固定方法は、DIYで対応可能な取り付け方法です。引き戸に穴を開けてしっかりと固定するため、粘着テープよりも確実に固定されます。
必要な工具は電動ドリル、ドライバー、メジャーなどの基本的なものです。取り付け位置を正確に測定し、水平を確認してから穴を開けることが重要です。引き戸の材質に応じて適切なビスを選択し、下穴を開けてから本固定を行うことで、材料の割れや変形を防ぐことができます。
ビスやネジでの固定は、簡易錠や戸先錠など幅広い鍵に対応できます。引き戸の構造や材質によっては、補強が必要な場合もあります。
粘着テープで固定する【簡易取り付け】
粘着テープによる固定は、もっとも手軽な取り付け方法です。ドライバーなどの工具が不要で、誰でも簡単に設置できます。賃貸住宅など、穴を開けることができない場合にも対応できる方法です。
ただし、長期間の使用により粘着力が徐々に弱まるため、定期的な点検と交換が必要です。また、粘着テープは剥がす際に跡が残る可能性があるため、目立たない場所への設置や、跡が残りにくいテープの選択を検討することが重要です。
粘着テープでの固定は、軽量な簡易錠に限定されます。重量のある鍵や高い防犯性能を求める場合は適さないため、用途に応じて適切な固定方法を選択する必要があります。
穴を開けて固定する【業者依頼がおすすめ】
本格的な戸先錠や召し合わせ錠の取り付けには、引き戸や枠への精密な穴開け加工が必要なため、業者への依頼をおすすめします。電動工具による正確な加工技術が求められ、失敗すると修繕費用が高額になる可能性もあります。
特に玄関ドアの場合は、防犯性能と美観の両方が重要であり、確実な取り付けが必要です。専門業者であれば、引き戸の材質や構造に応じて適切な加工が行われ、長期間にわたって安定した性能を確保できます。
また、取り付け後の保証やメンテナンスサービスも受けられる点も業者への依頼のメリットです。初期費用は高くなりますが、確実性と安全性を重視する場合には推奨される方法です。
引き戸に鍵を後付けするときの注意点

引き戸への鍵の後付けを行う際は、いくつかの重要な注意点があります。事前に確認しておくことで、トラブルを回避し、適切な鍵の設置を実現できます。
マンションなどの賃貸物件は穴開けに許可が必要
賃貸物件において、ドアに穴を開ける必要がある鍵の取り付けを行う場合は、必ず事前に大家さんや管理会社から許可を得る必要があります。無許可での加工は契約違反となる可能性があり、退去時に高額な修繕費用を請求される場合があります。
賃貸物件では原状回復義務があるため、退去時には元の状態に戻す必要があります。穴を開けた場合の修復方法や費用負担についても、事前に確認しておくことが重要です。
穴開けが許可されない場合は、粘着テープで固定する簡易錠や、既存の構造を活用できる鍵を選択しましょう。
ふすまの引き戸には取り付けられない場合がある
和室のふすまなど、薄い材料で作られた引き戸には、鍵を取り付けられない場合があります。ふすまは紙と木の骨組みで構成されているため、厚みが不足しており、ビスやネジでの固定に必要な強度が確保できません。
ふすまに鍵を取り付けたい場合は、専用の軽量な鍵を選択するか、ふすま自体を厚みのある引き戸に交換することを検討する必要があります。無理に取り付けようとすると、ふすまを破損させる可能性があります。
窓用の補助錠は代替できない
窓用の補助錠を引き戸に取り付けられるのでは、と考える方もいるかもしれませんが、窓用の補助錠は素材や重量、使用環境が異なるため、互換性がありません。窓用の補助錠を引き戸に使用すると、粘着テープが外れやすくなるなど、適切な固定ができない場合があります。
引き戸には引き戸専用の鍵を使用し、窓の防犯対策には窓専用の補助錠を使用することをおすすめします。
引き戸のズレが生じないようにする
鍵の取り付けが原因で引き戸が正常に開閉できなくなるケースがあります。取り付け位置や鍵の厚みにより、引き戸がレールに引っかかったり、スムーズに滑らなくなったりする場合などです。
作業は必ず引き戸を閉めた状態で行い、取り付け後は開閉動作を十分に確認することが重要です。問題が発生した場合は、取り付け位置の調整や鍵の選択を見直す必要があります。
ほかの防犯対策と併用する
自宅の防犯強化を検討している場合、鍵だけでなくほかの防犯対策も併用することで、より高い防犯効果を実現できます。
例えば、センサーライトの設置は夜間の不審者の侵入抑止効果があります。また、防犯カメラを設置することで、侵入抑止・証拠保全両方の効果を得られます。
ALSOKでは、ワイヤレスタイプの屋外対応無線式カメラ「HOME ALSOK Connect Eye」をご提供しています。配線工事が不要で、簡単に設置が可能です。スマートフォンからリアルタイムで映像を確認でき、緊急時にご依頼があればALSOKが駆けつけるオプションも利用できます。
ご自宅の安全を守るにはALSOKのホームセキュリティ

引き戸への鍵の後付けに加えて、より強固な防犯対策をお求めの場合は、ホームセキュリティの導入をおすすめします。
ALSOKのホームセキュリティ「HOME ALSOK Connect」では、「オンラインセキュリティ」と「セルフセキュリティ」をご用意しており、ご希望にあわせてお選びいただけます。
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また、ALSOKのホームセキュリティは在宅中も警備をセットできるので、強盗対策にも有効です。就寝中や一人での在宅時の安心につながります。ホームセキュリティの導入を検討している方は、ぜひALSOKにご相談ください。
まとめ
引き戸へ鍵を後付けする場合は、簡易的なストッパーから本格的な電子錠まで、用途と予算に応じて適切な鍵・方法を選択しましょう。また、鍵の後付けとあわせて、センサーライトや防犯カメラ、ホームセキュリティの導入なども検討することで、住宅全体の防犯対策を強化することをおすすめします。