守る人 vol.5

  • バックナンバー
  • 前号
ALSOK Special Interview 守る人 vol.5

「空港」を守る人

Text:Reiko Furuya
Photo:Kentaro Oshio

仙台国際空港株式会社 空港運用部
飛行場運用グループ 保安防災チーム長
兼 運用企画グループ シニアマネージャー

齊藤 博規さん

2016年に日本で初めて民営化された仙台空港。「東北の空の玄関口」として一日約6000人の搭乗者数を誇ります。保安防災に関わる業務の責任者として活躍する齊藤博規さんに、今、守りたいことを伺いました。

日頃からの訓練と教育の積み重ねがさまざまな状況への対応力を高める

「周りからは『雨男だ』って言われています。前回は強風で中止、昨日の総合訓練も雨中での開催になってしまったのですから仕方ないですね」と、苦笑いしながら話す齊藤さん。2022年10月から、仙台空港の保安防災に関わる業務(ハイジャックやテロ等の防止対策業務、空港制限区域等の警備業務、航空機事故等における消火救難業務など)の責任者として関係各機関との調整や体制作りに奔走する。前述の〝総合訓練〟とは、2年に一度行なわれる「航空機事故対処総合訓練」のこと。自衛隊や海上保安庁など約80機関の約350人が参加する大がかりな実践的訓練だ。
「昨年、羽田空港で発生した航空機同士の衝突事故を受けて、今年初めて航空機同士の衝突事故を想定した内容で実施しました。あの事故は、保安防災の責任者としても衝撃的な出来事でしたね……」と、当時を振り返る。
「空港の安全を守るためには『万が一に備える』ことが大切です。訓練でできないことは本番でもできないですから」と、断言する。
総合訓練のほか、年一回の不法侵入対応訓練、ハイジャックを想定した訓練、消火救難隊や空港消防隊の訓練など、実践的な訓練を重ねる。また空港で働く各事業者に対する保安教育にも力を入れている。
「保安検査員、空港消防隊、警察官、警備員、清掃員など、さまざまな立場の方々が働いています。教育を繰り返し行なうことで危機意識のレベルを維持向上することが大切です」

何事もないことが何よりの喜び

ひとりでも多くの命を救うために新たなスキームづくりに邁進

羽田空港の事故を契機にさまざまな対応策を見直した。そのひとつがヘリコプター(以下、ヘリ)での医療スタッフの輸送だ。空港での事故発生時は多数の傷病者が予想されるが、空港から近い病院の数と救急車の数は限られている。地方空港が抱えている課題のひとつだ。そこで考えたのが、遠方の病院からヘリで空港へ医療スタッフを輸送し、現場で対応にあたる方法。戻りのヘリは空港から遠方の病院へ傷病者を輸送する。現場をよく知るDMAT(災害派遣医療チーム)の助言によるものだけに心強い。輸液などの医療用品についても医療品の卸業者と協力関係を築き、民間の物流センターからヘリ輸送して空港へ運び入れることを進めているという。また空港に医師が居合わせたときに使用する医療資器材を最新式にアップデートした。
「ひとりでも多くの命を救うために、さまざまな機関と連携しながら新たなスキーム作りに邁進しています。日頃から顔の見える関係を構築することが大切です。結局は〝人の力〟で守られているのですから」と実感がこもる。

空港が賑わい、お客様が楽しんでいる姿を見るとうれしい

「めまぐるしく変わる空港保安の規定についていくのに必死です」と、照れ笑いする齊藤さん。仙台空港に入社前は鉄道会社に25年以上従事していた。車掌、運転士、運輸司令、駅の監督などの経験が今に生きる。特に運輸司令での5年間は鉄道の安全に直結する現場に身を置いていた。とはいえ、〝平面〟と〝立体〟の安全に対する違いを埋めるのには相当の努力を要したことは想像に難くない。
「私自身、鉄道に加えて航空業界にも携わったことで、交通インフラにおける保安と防災のスペシャリストへの道を目指していけたら」と、更なる高みを目指す。
2022年1月に入社した当時はコロナ禍の影響で静かな印象だった空港も今では1日の搭乗者数が6000人を超えることもある。
「空港が賑わい、お客様が楽しんでいる姿を見ると素直にうれしいですね」と、最後は優しい笑顔で締めくくった。

新規就航や就航路線開設の際は、齊藤さん率いる部門の指揮のもと、空港消防の消防車で放水アーチを行なって歓迎することも。
乗客や航空会社からも喜びの声があがった。

守る人 vol.5

  • バックナンバー
  • 前号