ALSOK TRIP vol.14

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「梅花の渡し」体験。川の水は透明で美しいが、水位が減り、川底の石が見える。奥に見えるのは人吉城址の石垣。復興!熊本!球磨川から阿蘇、熊本城を訪ねて

今年で、熊本地震から6年、九州豪雨から2年が経ちます。
復旧作業が進められている球磨川と熊本城を中心に、生まれ変わる街をご紹介します。

Photos:Ken Hidaka

※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、開業日や営業時間は変更の可能性があります。訪れる際は、事前にお電話にてお問い合わせください。

人吉

熊本県南部の人吉には、日本三大急流のひとつ、球磨川が流れています。球磨川は2020年7月の九州豪雨で氾濫し、人吉市内は大規模な洪水被害にあいました。木船に乗って球磨川をくだる「球磨川くだり」発船場の事務所は、ガラスが割れて高さ2mほど水が入り込み、1階はほぼ浸水してしまいました。16隻あった木船はすべて流されてしまい、その後、回収して修理をし、使用できるようになったのは4隻のみでし た。それから1年後の2021年7月、事務所をリノベーションし、新たな複合施設「HASSENBA HITOYOSHI/KUMAGAWA」をオープンしました。復興に向けて、新しいランドマークとなる存在をめざしています。
球磨川は豪雨後に水位が浅くなり安全が確保できないため、現在「球磨川くだり」は運航していません。しかし、発船場から人吉城址の区間を遊覧する「梅花の渡し」やラフティングは体験できます。「梅花の渡し」は、船頭が水位や水の流れ、岩の位置を確認しながら木船を巧みに漕いでいきます。船上から聴こえるのは、船頭が艪を漕ぐ音と鳥たちの鳴き声だけ。春は桜、初夏は新緑、秋は紅葉も楽しめます。
施設内には、九州産の素材を使用したパンケーキを提供する「九州パンケーキCafe」や人吉を含む球磨地方を中心に県南からセレクトした地域産品を揃える「HITO×KUMA STORE」などが入ります。復興への気概が人吉に新しい風を吹かせています。

HASSENBA HITOYOSHI/KUMAGAWA
「九州パンケーキCafe」。店内席やテラス席、デッキ席があり、どの席からも球磨川を眺められる。

0966-22-5555

人吉市下新町333-1

梅花の渡し

平日10:00、11:00、13:00、14:00、15:00
土日祝(8月末まで)9:00、10:00、11:00、13:00、14:00、15:00、16:00
(所要時間:30分、定員/1隻14人[各便最大56名])

大人(中学生以上)2,000円、小学生1,000円、幼児(3歳以上)500円


九州パンケーキCafe

10:00~17:00(L.O.16:00)

水曜(12~3月は火曜・水曜)

2階には展望テラスもある。
「九州パンケーキ食べくらべよりどり3種セット」(1,200円)はプレーン、バターミルク、全粒粉のパンケーキを食べられる。なんと8種のシロップとジャム付き。

球磨川に面した老舗旅館「清流山水花 あゆの里」も、九州豪雨の際に地下1階と1階が浸水してしまいました。全館にわたり改装し、2021年にリニューアルオープン。和モダンな落ち着いた空間で、ラウンジ、客室、温泉と、どこにいても球磨川を眺められます。
人吉といえば球磨焼酎。本格米焼酎の酒蔵「繊月酒造」も1階が浸水し、機械が故障したほか、出荷予定だった商品を破棄することに。幸い蒸留機や麹室は2階にあり無事でした。その後、蔵見学も再開。球磨川の伏流水で仕込む球磨焼酎は、香り豊かな米の旨みを楽しめます。

清流山水花 あゆの里

1941年創業。全74室で、露天風呂付客室が21室、半露天風呂付客室が2室ある。温泉はすべて自家源泉の「鮎里源泉」の湯を利用。鮎など地元食材を使用した料理を楽しめる。

0966-22-2171

人吉市九日町30

※宿泊の詳細はHPをご確認ください。
https://www.ayunosato.jp/

球磨川沿いに位置する。
ラウンジ「天の川」。柱には水害時の最高水位が刻まれている。
繊月酒造

1903年創業。「繊月」は三日月のことで、人吉城の別名「繊月城」から名付けられた。創業時から蔵専属の杜氏を抱え、現在は六代目。敷地内には天然温泉の足湯もある。

0966-22-3207

人吉市新町1

蔵見学

9:00~17:00(最終入場16:30)

無休(臨時休業あり)

無料

見学の最後に城見蔵(試飲場)で約30銘柄を味わえる。
代表銘柄「繊月」は、まろやかで旨みがある。「川辺」は、球磨川の支流、川辺川の水と、その水で育てた米を用いている。
一次もろみのタンクを攪拌する様子。

阿蘇

県北の見どころはなんといっても阿蘇。火口跡である草千里ヶ浜前の「阿蘇火山博物館」では、阿蘇の自然や火山の特性を学べます。「火口ライブ中継コーナー」では中岳につけられたカメラの映像が映し出され、火口を覗いている気分に。阿蘇の雄大さと大自然への畏怖を身近に感じられる施設です。

阿蘇火山博物館

1982年開館。2016年の熊本地震で被災。周辺道路も閉鎖していたが、約半年後に営業を再開。周辺フィールドを使ったガイドツアーも実施中。1階には環境省阿蘇山上ビジターセンターを併設している。

阿蘇火山の成り立ちを再現した、本格的なジオラマ。

0967-34-2111

阿蘇市赤水1930-1

9:00~17:00(最終入館16:30)

中学生以上880円、小学生440円、シニア割引(65歳以上)700円、幼児は無料
http://www.asomuse.jp/

火口ライブ中継コーナー。
3階の展望所から中岳火口を望む。

荒尾

北西部に位置する荒尾市には世界文化遺産「三池炭鉱 万田坑」があります。作業員が地下と地上を行き来した坑口や巨大な機械を見学できます。トロッコや配線などは外に無造作に置かれたまま。戦前まで国のエネルギーを支えた石炭産業時代のおもかげが残っています。

三池炭鉱 万田坑

1902年に出炭を開始。1951年に採炭を終え、1997年に閉山。2015年に世界文化遺産に登録された。近くにある「万田坑ステーション」では三池炭鉱の資料や写真を展示している。

第二竪坑櫓(たてこうやぐら)。赤レンガの建物は第二竪坑巻揚機室。

0968-57-9155

荒尾市原万田200-2

9:30~17:00(有料区域の最終入場16:30)

月曜(祝日の場合は翌平日)、12月29日~1月3日

大人410円、高校生310円、小・中学生210円、乳幼児は無料

第二竪坑口。かつて深さ地下264mの穴が開いており、作業員がケージに乗って坑底まで下がっていた。
第二竪坑巻上機室にある巨大な歯車付きのウインチ。機材の搬入・搬出を行なっていた。

熊本

「熊本城」は、2016年4月の熊本地震で瓦の落下や石垣の崩落などの甚大な被害に見舞われました。その後、少しずつ復旧し、2021年からは天守閣を見学できるように。天守閣内部では、築城から西南戦争での焼失、熊本地震での被災・復旧などの歴史を展示。6階の展望フロアからは熊本市内を一望できます。宇土櫓(うとやぐら)も見どころです。震災で南側の続櫓(つづきやぐら)は倒壊してしまいましたが、西南戦争の戦火と地震をかいくぐった当時のままの姿を見せてくれます。
「熊本城」の近くに、バスターミナルを兼ねた商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto」が2019年にオープンしました。飲食、アパレル、映画館など149店舗が入っており、一日中楽しめます。バスや観光案内をしてくれるALSOKが警備するくまモン型ロボットもいます。人気なのが「いきなり団子」。小麦粉の生地で輪切りのさつま芋とあんこを包んで蒸した熊本の郷土菓子です。「はなまる堂」では熊本県産の唐芋(からいも)を使用。一つひとつ手包みしており、モッチリしっとりの食感です。
熊本の郷土食といったら「太平燕(タイビーエン)」。もともと中国福建省の郷土料理で、長崎に伝わり、熊本でアレンジされ定着しました。春雨をメインに、炒めた野菜や肉などを入れた中華風スープで、上に揚げ卵がのっています。下通(しもとおり)アーケードにある「紅蘭亭(こうらんてい)  下通本店」の「太平燕」は、鶏ガラと豚骨のスープであっさりした優しい味わい。九州産の新鮮な食材を使用し、キャベツは甘みたっぷり。創業当時から変わらない味を守り続けています。
災害から立ち上がり、さらに進化する熊本に元気をもらいました。

熊本城

加藤清正が慶長12(1607)年に完成させ、隈本城から改名。1632年には細川忠利が熊本藩主となり、修理を行なった。

天守閣

096-223-5011(熊本城運営センター)

熊本市中央区本丸1-1

9:00~17:00(入園は16:30まで)

12月29日~31日(変更の場合あり)

高校生以上800円、小・中学生300円、未就学児は無料

※「熊本城ミュージアムわくわく座」や「熊本博物館」との共通入園券もあり。
詳細はHPをご確認ください。https://castle.kumamoto-guide.jp/

城を囲む石垣の角に立つ「宇土櫓」。高さは地上約19mもある。2022年秋頃から解体・復旧予定。
「二様の石垣」。右側は加藤清正時代の石垣で、左側は息子の忠広時代に築き足された石垣と考えられている。
城本丸御殿の床下にある「闇(くらが)り通路」。
城内に鎮座する、加藤清正を祀った「加藤神社」。
SAKURA MACHI Kumamoto
屋上の「SAKURA MACHI Garden」からは熊本城が見える。この屋上庭園は、かつてこの地にあった細川家の「陽春庭(ようしゅんてい)」を継承して設計されている。

096-354-1111

熊本市中央区桜町3-10


はなまる堂(1階バスターミナルコンコース内)

096-300-8116

9:00~18:00

各階に植栽やベンチが置かれたテラスがある。
写真は「はなまる堂」の「いきなり団子」。ほんのり塩味が効いた生地にさつま芋とあんこの甘みが相性抜群。奥から「紫芋あん」(160円)、サクラマチ限定「モカ」(200円)、「黒粒あん」(160円)。
紅蘭亭 下通本店

1934年創業。熊本地震の際にビルが半壊。しばらく1階のみで臨時営業していたが、建て替えをして2020年にリニューアルオープンした。他に市内に2店舗ある。

「太平燕」(920円)。塩はミネラル豊富な福建省の塩を使用している。スープが染み込んだ揚げ卵は絶品。

096-352-7177(予約専門)

熊本市中央区安政町5-26

11:00~21:00(L.O.20:00)

12月31日~1月1日

店内はシックで落ち着いた雰囲気。
知らせざる絶景スポット

長部田海床路
(ながべたかいしょうろ)

熊本県宇土(うと)市

有明海に面した宇土市には、潮が引いたときにだけ現れる「海床路(かいしょうろ)」がいくつかあります。宇土市特産の海苔の養殖と、アサリやハマグリなどの採貝漁業のために作られた道で、漁業者が水揚げした海苔や貝を軽トラックで運んでいます。「長部田海床路」は、JR宇土駅から車で15分の住吉海岸公園内にあります。全長1.2㎞の道が海へとまっすぐ続く光景は、まさに絶景。潮が満ちると道は海に沈み、海上に電柱が立ち並ぶ幻想的な風景へと変わります。海に続く道を見るなら干潮の、海に沈む道を見るなら満潮の、それぞれ2時間前後が見頃です。

写真提供:熊本県観光連盟

満潮を迎え、夕日を背景に道が海に沈んでいく。奥には雄大な雲仙・普賢岳を望む。暗くなると船が座礁しないように電柱に明かりが灯り、より神秘的な光景に。

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