ALSOK TRIP vol.13

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野沢温泉の麻釜(おがま)。村の天然記念物に指定されている。5つの湯だまりがあり、地元の人々が野沢菜や卵を茹でている。 温泉から日本酒、スイーツまで冬の長野で心も体もあったまろう

山に囲まれた長野の冬は、気温が低く、寒さが厳しい。
しかし、その寒さが独特の文化とおいしい食を育んでいます。
寒さを求めに3か所の温泉地と長野、軽井沢を訪れました。

Photos:Naoto Shoji

※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、開業日や営業時間は変更の可能性があります。訪れる際は、事前にお電話にてお問い合わせください。

野沢温泉

頭の先から足先まで寒さを感じながら狭い路地をのぼっていると、硫黄の香りがしてきます。辿り着いたのは、野沢温泉の源泉のひとつである麻釜。湯がぶくぶくと沸騰し、湯気がもくもくと上がっていく様子を見ていると、温泉に浸かりたくなってきます。
「朧月夜」「春がきた」「故郷」などの名曲を作詞した作詞家・高野辰之は、この麻釜の近くに別荘を構えていました。温泉が大好きで、別荘に温泉を引き、晩年は住まいとして暮らしていました。麻釜から10分ほど歩いたところにある「おぼろ月夜の館 斑山(はんざん)文庫」に行くと、高野の業績を知ることができます。展示を見ていると、各地に伝わる童話をまとめたり、『日本歌謡史』『江戸文学史』を書くなど、文学者としての姿も見えてきました。
野沢温泉といえば日本のスキー史とともに歩んできた地です。そこでゲレンデ下の「日本スキー博物館」へ。日本や海外のスキーに関する貴重な資料が膨大に展示されています。とくに目を引くのが、木製のスキー板。明治44年に日本にスキーが伝来した当時、スキー板はケヤキなどの一枚板で作られていました。また、面白いのがモンゴルのトゥワー族が使っていたスキー板。狩りの際に音を出さずに獲物に近づけるように滑走面に毛皮が付いています。スキーはもともと生活の手段だったという歴史を感じました。
温泉街に戻り「野沢温泉 外湯 大湯」へ。熱い湯に浸かっていると、体が芯からあたたまってきました。

おぼろ月夜の館 斑山文庫

高野の代表的な著書や手書き原稿などを展示。高野が東京の代々木に建てた書庫「斑山文庫」も再現している。高野は自身を斑山と名乗り、その名にちなんで「斑山文庫」と称した。

0269-85-3839

下高井郡野沢温泉村豊郷9549-6

9:00~17:00(16:30受付終了)

月曜(祝日の場合はその翌日)。GWと年末年始は連続営業

大人300円、小・中学生150円


踊り場のステンドグラスは「朧月夜」の歌詞にある「菜の花畠」をイメージして作られた。


「斑山文庫」。高野は書画などを数多く収集していた。

日本スキー博物館

日本や海外のスキー史、冬季オリンピック・パラリンピックの記念品などを展示。

0269-85-3418

下高井郡野沢温泉村(野沢温泉スキー場内)

9:00~16:00(入館は15:30まで)

木曜(祝日の場合はその翌日)

大人300円、小・中学生150円


温泉街の中心に建つ「野沢温泉 外湯 大湯」。野沢温泉には13の外湯が点在しており、外湯巡りを楽しめる。


日本にスキーが伝来した当初は一本杖がストックだった。


モンゴルのスキー板。

戸狩温泉

戸狩野沢温泉駅に戻り、反対側にある戸狩温泉へ。駅から15分ほど歩くと、「北光(ほっこう)正宗」で知られる「角口(かどぐち)酒造店」が見えてきます。代表の村松茂樹さんに酒蔵を案内してもらいました。長年にわたって気温や水分量、温度などのデータを細かくとって分析するなど丁寧な酒造りをしていることを知りました。「人が介在できることはすべてやる。手をかけただけ良いものができます」と話します。

角口酒造店

1869年創業。県内最北端の蔵元。「北光正宗」は北の夜空に輝く柄杓型をした北斗七星から命名した。

0269-65-2006

飯山市大字常郷1147

※酒蔵見学は現在、休止中。再開や詳細についてはHPをご確認ください。
https://www.kadoguchi.jp/

左の「純米吟醸 雪明かり」は香りがフルーティで女性ファンも多い。右の「金紋錦 大吟醸」は長野県木島平村だけで栽培されている希少米「金紋錦」を100%使用しており、華やかな味わい。

できたての日本酒の香りを確認する村松さん。

渋温泉

「北光正宗」を購入して、電車を乗り継ぎ渋温泉へ。レトロな雰囲気の温泉街を歩いて向かったのは、老舗旅館「歴史の宿 金具屋」。宿泊者向けの館内ツアーに参加し、9代目西山和樹さんの案内で館内を巡りました。建物は、主に6代目が昭和初期に全国各地から材料を集めて宮大工とともに作りあげました。廊下を屋外と見立てているため、廊下には軒や庇が出て、客室には土間や小窓があります。
ほかにも館内には遊び心が散りばめられており、テーマパークのように楽しめました。

歴史の宿 金具屋

1758年創業。「木造4階建 斉月楼」と「金具屋 大広間」は国の登録有形文化財に認定されている。全29室。3つの大浴場と5つの貸切風呂がある。すべて源泉100%かけ流しの火山性高温泉。

街並みに見立てられた1階廊下。天井は空に見立てられて青く塗装されている。宿に関する古い資料などが並んでいる。

0269-33-3131

下高井郡山ノ内町平穏2202

※宿泊の詳細はHPをご確認ください。
http://www.kanaguya.com/

昭和25年にローマ風呂をイメージして作られた「浪漫風呂」。

富士山に見立てて作られた窓。丸い照明が月を表している。

長野

長野駅へ移動し、その翌朝は善光寺の「お朝事(あさじ)」を体験。早朝6時半から本堂で全僧侶が勤める法要で、365日行なわれています。お導師による念仏、全僧侶による声明(仏教音楽)と読経が本堂に響き渡る様子は圧巻でした。高揚した心を落ち着かせて「善光寺 大勧進(ぜんこうじ だいかんじん)」の「宝物館」へ。ここには武田信玄と上杉謙信の位牌が並んで納められています。かつて善光寺を奪いあった2人。なんだか感慨深いです。

善光寺 大勧進

本堂の「萬善堂」のほか、護摩祈祷ができる「護摩堂」などがあり、座禅や写経などの仏教体験もできる。
2022年4月3日~6月29日には、秘仏の本尊を模して作られた「前立本尊」(普段は大勧進にて安置)を7年に一度、本堂で公開する「御開帳」が開催される。

大門

左が武田信玄、右が上杉謙信の位牌。2人の位牌が並んでいるのは全国でここだけ。

026-234-0001

長野市元善町492

高校生以上500円、中学生以下は無料

※仏教体験についてはHPをご確認ください。
https://daikanjin.jp/
※「お朝事」の参列は無料。内陣券を購入すると間近に参列できる。開始時間は日の出に合わせて分単位で変わるため、詳細はHPをご確認ください。
https://www.zenkoji.jp/

善光寺は無宗派だが、朝のお勤めは天台宗と浄土宗の順に2回行なわれる。

お導師が「南無阿弥陀仏」を唱えながら本堂へ向かう。

仁王門から山門へと続く仲見世通り。

長野で食べ歩きといったらおやき。野沢菜がたっぷり。

軽井沢

続いて長野駅から中軽井沢駅へ。10分ほど車を走らせて、観光スポットが集まる「軽井沢星野エリア」に向かいます。まずは森の中を歩いて「ケラ池スケートリンク」へ。森に囲まれたリンクは円形ではないので、一定方向にぐるぐる回らず自由に滑れます。屋外で自然を感じながら、真っ白な氷上を滑っていると、野鳥の鳴き声も聞こえてきました。
冷えた体をあたためるべく、日帰り入浴施設「星野温泉 トンボの湯」へ。大正4年に開湯した星野温泉の歴史を汲む源泉かけ流しの温泉です。露天風呂に入ると目の前に木々が広がり、開放感たっぷり。湯がとろりとしていて肌ざわりがなめらか。体がぽかぽかとあたたまってきました。
温泉でくつろいだあとは、川沿いの遊歩道を散歩。5分ほど歩くと「ハルニレテラス」に着きます。ウッドデッキでつながった建物にレストランや雑貨屋が入っています。ハルニレの木々をぬうようにウッドデッキがあるので、森の中を歩いているような気分で散策できます。
旅の最後は、車で10分ほどの「軽井沢チョコレートファクトリー」へ。店内に入ると、奥にガラス張りの工場があり、人気商品「チョコレートボール」などを作る工程が見られます。職人さんが回転するマシンにチョコレートを入れてかき混ぜると、あっという間に「チョコレートボール」が完成!そのほか、サクサク食感が人気の「ラスク」などお土産にピッタリな商品がたくさん並び、ワクワクが止まりません。
冬の長野でしか体験できない旅となりました。

ケラ池スケートリンク

天然の「ケラ池」が、秋~冬だけ凍結し、リンクとしてオープンする(一部は人工氷)。
「氷上の星空ウォッチング」(2022年3月6日まで)などイベントも開催。

0267-45-7777

軽井沢町星野

10:00~16:00

冬季限定
※詳しくは「軽井沢星野エリア」のHPをご確認ください。

中学生以上1,900円、小学生以下1,300円
(貸し靴料込み、靴のサイズ/15~30㎝)
※手袋、ニット帽、マスクを必ずご着用ください。
※イベントの詳細は「軽井沢星野エリア」のHPをご確認ください。
https://www.hoshino-area.jp/

隣接する「イカルカフェ」のカフェラテ(600円)。野鳥のラテアートがかわいい。

星野温泉 トンボの湯

星野温泉はかつて北原白秋や与謝野晶子も訪れた名湯。内湯と露天風呂があり、やわらかな泉質から「美肌の湯」として知られる。

露天風呂には花崗岩が連なり、自然との一体感を味わえる。冬季は冬景色を楽しめる。

0267-44-3580

軽井沢町星野

10:00~22:00(21:15最終受付)

無休(冬期休業1/11~1/20)

大人1,350円、子ども800円 (3歳~小学生)(入湯税込)
※8月、GW、年末年始は大人1,550円、 子ども1,050円

ハルニレテラス

清流に寄り添うように9棟の建物が連なり、16の店舗が入る。ところどころにベンチやお昼寝デッキがあり、くつろげる。

050-3537-3553

軽井沢町星野

8:00~22:00(時期や店舗により異なる)


北欧インテリアショップ「NATUR」。スウェーデンから買い付けた家具や地元の作家とコラボした商品を置いている。

食のセレクトショップ「ココペリ」の人気商品。左は「マヨネーズディップ」で、右2つは「信州産フルーツジャム」

軽井沢チョコレートファクトリー

「チョコレートボール」はマカダミアナッツに濃厚チョコレートをコーティング。なめらかなチョコとカリッとしたナッツがおいしい。味はりんご、ブルーベリー、レモン、いちご、ビター、キャラメルの6種類。

6種類が各2粒入った「チョコレートボールMIX Mサイズ」(1,180円)

軽井沢チョコレートファクトリー提供

工場で「チョコレートボール」を一粒ずつ丁寧に作っている。

0120-392-368

軽井沢町軽井沢1323-80

10:00~18:00

無休(季節によって変更する場合があるため、フリーダイヤルガイダンス『2』を選択しご確認を)

知らせざる絶景スポット

阿寺渓谷(あてらけいこく)

長野県木曽郡大桑村

長野県の一級河川、木曽川の支流の一つである阿寺(あでら)川沿いにある渓谷で、木曽谷の南部に位置します。清流は全長約15㎞あり、木曽五木(きそごぼく)(ヒノキ、サワラ、アスヒ、コウヤマキ、ネズコ)に囲まれています。下流の阿寺渓谷入口から上流の阿寺渓谷キャンプ場まで約6.3㎞にわたって舗装された道が続いており、滝や切り立った岩などが作り出す自然の造形美を眺めながらハイキングができます。いちばんの見どころは美しい水。エメラルドグリーンに輝き、「阿寺ブルー」といわれています。川の深さによって色の濃度が異なるので、歩くたびにその違いを楽しめます。

写真提供:大桑村観光協会

牛ヶ淵。上から見下ろすと淵の形が牛の姿に似ていることから名付けられたといわれる。川が深いため、エメラルドグリーンが他よりも濃く美しい。

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