リスクマップとは?作り方から活用方法まで企業のリスク管理を解説
現代の企業経営では、不確実性への備えが欠かせません。まず、自社を取り巻くリスクを体系的に整理し、その重要度を見極めることが重要です。その判断を支える代表的な手法が「リスクマップ」です。リスクを発生可能性と影響度の観点から可視化することで、複雑なリスク状況を直感的に把握でき、どの領域へ経営資源を優先的に投入すべきかを明確にする手助けとなります。
この記事では、リスクマップの基礎知識から具体的な作り方、実務での活用シーンまでを徹底解説します。
目次
リスクマップとは
リスクマップは、企業が直面する多様なリスクを「影響度(インパクト)」と「発生可能性」の2軸で評価し、マトリクス図上に可視化したものです。経営層への報告や、対策の優先順位付けにおける重要な判断材料となります。運用面では、定期的なリスク管理会議や社内ポータルによる共有を通じて最新状態を維持します。
なお、リスクマップは国際規格 ISO 31000(リスクマネジメントの原則・枠組み・プロセス)に整合する代表的手法であり、リスクアセスメント技法を扱う ISO/IEC 31010 でも広く紹介されるアプローチです。企業リスク管理(ERM)では「リスク・ポートフォリオ」の考え方に基づき、全社視点でリスクの重要性を俯瞰する枠組みとして位置づけられます。
リスクマップが企業で必要とされる背景
企業を取り巻く不確実性が高まる中、国際規格 ISO 31000 に基づく体系的なリスク管理の重要性が一段と増しています。なかでもリスクマップは、新規事業におけるリスク評価、サプライチェーンの脆弱性把握、BCP策定、内部監査での重点リスク抽出、経営層へのリスク報告など、幅広い実務で活用される基盤的なツールです。こうした背景から、リスクマップが企業のリスクマネジメントにおいて重要性を増している理由を、具体的に確認していきましょう。
企業を取り巻くリスクの多様化・複雑化
グローバル化やデジタル化に伴い、自然災害・パンデミック・サイバー攻撃など、予測困難で連鎖的なリスクが増えています。このような状況下では、リスクを網羅的に把握し、俯瞰的に整理する姿勢が求められます。
限られた経営資源の最適配分
企業の予算や人員、時間といった経営資源には限りがあります。各リスクの重要度を視覚化することで、どのリスクに優先的に資源を投入すべきかが明確になります。
リスク対策時の意思決定支援と合意形成
リスク対応の意思決定を行うには、客観的な判断材料が不可欠です。リスクマップは複雑な情報を直感的に伝え、専門知識がなくてもリスクの全体像を理解できるようになります。会議での認識統一や、「なぜ今、この対策に投資が必要か」の裏付けとしても有効です。
リスクマップの構成要素
リスクマップは、主に「影響度(インパクト)」と「発生可能性」の2つの軸で構成されます。
縦軸:影響度(インパクト)
縦軸の影響度は、リスクが顕在化した際の損害の大きさを表します。一般的には「大・中・小」や「致命的・重大・中程度・軽微」といった段階で区分します。組織規模・業種に応じて客観的な定義付けが必要です。
横軸:発生可能性(頻度と確率)
横軸は、そのリスクが起こり得る可能性の高さを表し、「発生頻度」や「発生確率」で表現します。評価のブレを防ぐため、「高(年1回以上)」「中(3~5年に1回)」「低(10年に1回以下)」のように、具体的な時間軸を設け、組織全体で評価基準を統一します。
リスクレベルの色分けと判断基準
リスクマップでは、重要度を視覚的に強調するため、マトリクスの領域を色分けします。一般的には、赤=高リスク(直ちに対策)/黄=中リスク(計画的対策・監視)/緑=低リスク(許容範囲内・監視)の3段階が用いられます。この色分けの基準は文書化し、経営層から現場まで共通認識にします。
リスクマップの活用方法
具体的なビジネスシーンにおける、リスクマップの5つの活用方法について詳しく解説します。
BCP(事業継続計画)の策定や見直し
BCP策定において重要なのは、事業継続を脅かすリスクを客観的に抽出し、優先度に応じて対策・資源配分を決定します。リスクマップを活用すれば、影響度の高いリスクを明確に把握できます。
新規事業のリスク評価
新規事業には未知のリスクが数多く潜んでおり、事前のリスク評価が成功の鍵を握ります。リスクマップを用いることで、市場変動や技術革新、競合の動向、法規制、財務など、新規事業特有のリスクを体系的に洗い出し、回避策・軽減策を事前に準備することが可能です。
サプライチェーンマネジメント(SCM)
取引企業が増加したり、調達先を海外へ広げたりするタイミングは、サプライチェーンの脆弱性が高まる時期でもあります。リスクマップを用いることで、原材料の供給停止や物流網の寸断といったリスクが、どの拠点・取引先に集中しているかを可視化できます。
経営層への報告
リスクマップを用いることで、組織全体のリスク状況を視覚的に分かりやすく提示でき、優先して対応すべき重要リスクをひと目で共有できます。主観ではなく、発生可能性×影響度という客観的な指標で説明できるため、経営判断に必要な情報の透明性が高まります。「なぜ今、この対策に予算が必要なのか」を説明する際の強力な裏付けとなり、迅速な承認獲得に寄与します。
監査対応(内部・外部)
リスクマップは、組織が適切にリスク管理を実施していることを客観的に示す重要なエビデンスとなります。そのため、内部監査や外部監査の対応時には、洗い出しの網羅性、評価プロセスの妥当性、優先順位付けの合理性を示す根拠として役立ちます。
リスクマップの作り方
ISO31000に準拠した、実効性のあるリスクマップを作成するには、正しいステップを踏むことが不可欠です。リスクマップを構築する手順を解説します。
1.想定されるリスクの洗い出し
まずは、組織が直面する可能性のあるリスクを網羅的に洗い出します。過去のインシデントや業界の動向、法規制の変更、地政学リスクなどを参考にしつつ、現場担当者にもヒアリングを行います。現場の声を聞くことで、実務レベルのリスクの見落としを防ぎます。
2.リスクの発生可能性と事業影響度の評価
洗い出した各リスクに対し、2つの軸で評価を行います。発生可能性は「高(年1回以上)」「中(3年に1回程度)」「低(5年に1回以下)」のように、過去の社内データや外部事例を踏まえ、客観的な数値を設定します。事業影響度についても「大(売上10%以上の減少、経営への重大な支障)」「中(特定部門での影響)」「小(限定的な影響)」など、損失金額や事業継続へのインパクトで定義を明確にします。
3.リスクマップへのプロット
3×3や5×5の枠組みを作成し、評価結果を基に各リスクをマトリクス上に配置します。横軸に発生可能性、縦軸に事業影響度を記載するのが一般的です。各リスクは「主要サプライヤーA社の倒産」など具体名で配置し、重要度に応じて色分けします。
4.リスク対応策の策定とアサイン
マップ上に配置されたリスクの位置と重要度に応じて、回避・低減・移転・受容の4種類で具体的な対応策を策定します。優先度の高いリスクから順に対策を立案し、必要な予算と人員を配分します。各施策には必ず担当者を割り当て、実施期限・目標・予算を明確にし、定例会などで進捗を確認しましょう。
リスクマップを活用する際の注意点
リスクマップを形骸化させず、実際に機能するツールとして活用するためには、次の点に注意する必要があります。
組織全体での共有と教育
リスクマップは、組織全体で共有され、リスクに対する認識が統一されて初めて真価を発揮します。経営層から現場まで、全階層がリスクマップを活用できるように、さまざまな方法で共有することが重要です。具体的な方法には、以下が挙げられます。
- 経営会議での定期報告
- 部門長向けの説明会
- 社内ポータルサイトでの公開
- 研修・eラーニングへの組み込み など
「自分の業務はどのリスクと結び付くか」を全従業員が理解できる状態をつくりましょう。
定期的な見直しと更新
事業を取り巻く環境は常に変化しており、新たなリスクが出現します。そのため、定期的な見直しと更新が必要です。
- 定期的な見直しと更新:最低でも年1回
- 重大なインシデント、事業環境の大きな変化が発生した場合:時期を待たず即時に更新
常に最新の状態を保つことで、形骸化を防ぎ、経営の意思決定に役立つツールとして機能し続けます。
企業のリスク管理に役立つALSOKのサービス
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災害対策
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まとめ
リスクマップは、リスクの洗い出し→「発生可能性×影響度」による評価→プロット→対応策の実施という手順で作成・運用することで、組織の危機を可視化する強力なツールになります。BCP策定・新規事業・経営報告・監査対応といった実務シーンで活用すれば、客観的な根拠に基づく迅速な意思決定と、限られた経営資源の最適配分が可能になります。
作成して終わりにはせず、全社共有と定期的な更新を徹底することで、変化に強いリスク管理体制を構築しましょう。
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