民泊オーナーが知っておくべきトラブルと対策

民泊オーナーが知っておくべきトラブルと対策
2020.03.17

国内での空き家問題や観光客の増加にともなう宿泊施設不足が深刻化する中、「民泊」が注目されています。
今回は、いま話題の「民泊」についてご説明しつつ、民泊運営の際にオーナーが押さえておくべきセキュリティに関する対策について、ご紹介します。

民泊とは

民泊とは「民家や集合住宅の一部または全部を他の人へ有償で貸すこと」を指します。個人所有の自宅の一部を民泊として活用するケースがよく知られていますが、不動産業者が元は民家だった空き家やマンションを活用して民泊専用施設とするケースもあります。

特区民泊とは?

本来民泊を恒常的に運営する場合、「旅館業法」に基づく「簡易宿所営業」の許可を得なければなりませんが、「特区民泊」の場合は、この旅館業法の適用対象外となります。
「特区民泊」は、「国家戦略特別区域(国家戦略特区)」において「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」を定めた区域で民泊を運営することを指します。国家戦略特区である自治体が条例を定めたうえで都道府県知事に認定を受ければ、旅館業法の許可なしで「特区民泊」として運営が可能です。
ただし、特区民泊で運営の際は「居室1室の床面積が25㎡以上」「近隣住民に報告・調整を行うこと」「滞在者名簿を常備すること」が義務となります。また、施設利用に関するルールや緊急時の外国語による情報提供、宿泊期間の下限、といった条件があります。
なお、国家戦略特区にある建物のすべてで特区民泊が実現できるわけではなく、それに関する条例を定めている自治体でのみ特区民泊が可能である点には注意が必要です。

特区民泊と簡易宿所営業の違いは?

「旅館業法」に基づいている「簡易宿所営業」と、指定された区域で運営する民泊「特区民泊」には、どのような違いがあるのでしょうか。
特区民泊は、新しくできた制度で簡易宿所営業と比較して、宿泊日数の条件など異なる部分があります。

特区民泊 旅館業法簡易宿所営業
許認可 認定 許可
営業日数の条件 なし なし
宿泊日数の条件 2泊3日以上の滞在 なし
玄関帳場の設置義務 なし なし
(条例による設置義務付けも可能)
客室面積 25㎡以上 3.3㎡/人
(宿泊者の人数が10人未満の場合)
安全確保のための非常用照明、消防設備の設置義務 必要 必要
近隣住民とのトラブル防止のため措置 必要
(近隣住民への説明、苦情対応)
なし

民泊運営にあたっては、利用者側とオーナー側、近隣住民側、それぞれの観点から安全を守るべく、トラブルを想定した事前の対策が必要となります。

民泊トラブルと対策法【利用者の安全を守る】

民泊トラブルと対策法【利用者の安全を守る】

まずは、利用者の方の安全に関する民泊トラブル対策について、見ていきましょう。

室内でのケガ・病気への対策

ちょっとした切り傷や擦り傷、打ち身や虫刺されなどには利用者自身でも対処できるよう、救急セットを備えておきましょう。また万一の健康不安に備え、建物の分かりやすい場所にAEDを常備しておくことも大切です。

火事などのトラブル

消防法で定められた消防用設備の設置義務があるため、防火対策も民泊運営には欠かせません。一戸建てか集合住宅か、宿泊室の床面積や、民泊オーナーの居住有無など、それぞれの火災危険性に応じて、必要な消防用設備が異なります。

例えば、一戸建てで民泊を運営する場合、①家主が民泊を運営する住宅に不在とならない、かつ②宿泊室の床面積の合計が50㎡以下、であれば一般住宅の消防法が適用されるため、住宅用火災警報機の設置が義務となります。
上記以外の場合、自動火災報知機や誘導灯、消火器は必ず設置しなければなりません(※)。11階以上の建物の場合は、スプリンクラー設備も必要となります。
※各自治体による条例等が定められている場合もありますので、民泊運営の際には建物の所轄消防署に確認する必要があります。

貴重品の盗難

民泊には、他の宿泊者との交流を楽しめるというメリットがある反面、貴重品の盗難について注意する必要があります。
民泊で、宿泊者の盗難被害はオーナーの信用問題にかかわってくることも。宿泊者が他の宿泊者の貴重品を盗むことはもちろん、オーナーが居住している場合、オーナーの貴重品が盗まれることも考えられます。現金や貴重品の盗難を防止するため、金庫などの設置を実施しましょう。宿泊者が入浴や外出時でも安心して利用できるように、貴重品の盗難防止対策はとても大切です。

民泊トラブルと対策法【オーナーの財産を守る】

次に、オーナーの財産を守るための民泊対策をご紹介します。

備品の損傷

民泊運営には、備品の損傷や破損についても想定する必要があります。部屋に置いていた壺が損傷し、オーナーと宿泊者でトラブルになったという事例もあります。
ルールを宿泊者の方へ周知することはもちろんですが、オーナー側でも損害保険に加入したり大切なものは部屋に置かないなど、適切な対策を行っておきましょう。

備品の盗難

部屋の備品が盗難されるケースも想定できます。実際に、民泊運営のために買い置きしていたティッシュなどの日用品が全てなくなっていたという民泊でのトラブルがありました。他にも、Wi-Fiやドライヤーなどの備品も盗難に遭うことが多いといわれています。
そのため、日本語だけでなく外国語でも利用ルールを明記するなどの対策に加え、民泊専用の保険に加入することも大切です。

利用者の安全管理

防犯カメラやスマートロックを設置し、宿泊者以外の不審な人物が出入りすることがないかチェックすることも重要です。オーナーの備品や所有物だけではなく、利用する宿泊者の身の安全管理、盗難被害防止にもつながります。

民泊トラブルと対策法【近隣トラブルを回避する】

民泊トラブルと対策法【近隣トラブルを回避する】

民泊運営に際して、オーナーがもっとも不安に思うトラブルが「近隣トラブル」と言われています。最後は、近隣トラブルへの民泊対策について紹介していきます。

騒音トラブル

文化圏の異なる外国などのお客様が利用されることも想定し、ある程度の騒音が発生する可能性を事前に近隣の方へ伝えておくことも対策の一環です。近隣の方には民泊開業前に必ず説明し、一定のご理解を得ることは大切でしょう。
また、規模が大きい民泊の場合は、近隣の方の声をすぐに聞けるようコールセンター受付などの窓口を開設することも一案です。

ごみの不法投棄

ごみを近隣に不法投棄されるリスクも、民泊運営には付き物です。宿泊者へのルールを必ず提示し、発生を予防しましょう。もちろん日本語だけでなく、外国語での表記も必要です。また防犯カメラを設置しておくことで状況を確認できるほか、抑止効果にもなり得ます。

民泊トラブル防止のためにも必ず届け出を

2018年に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行され、民泊事業者は都道府県知事への「住宅宿泊事業届出書」の提出によって届け出をすることで民泊の運営が可能となりました。ただし、届け出のみで民泊を運営する場合は1年間に180日までしか営業することができません。
旅館業法の許可を得ておらず、また特区民泊でもない場所において届け出なしで民泊を運営することは「ヤミ民泊」と呼ばれる違法な民泊とみなされてしまいます。
また、届け出のタイミングで必ず近隣住民への説明や調整を行い、民泊に関するトラブルを防ぐようにしましょう。
他にも、家主がいない建物で運営する不在型の民泊を運営する場合、「住宅宿泊管理業者への管理委託」も同時に行い、適切な管理が常にできる状態にしておきましょう。

ALSOKの民泊運営サポートソリューション

ALSOKでは、民泊運営にともなう各種ご支援や安全安心もサポートしています。AEDや防犯カメラ、防火設備の設置や火災予防・防犯のためのセキュリティサービスなど、常駐スタッフが不在の民泊施設でも安全に営業するための備えを各種ご提供。これから民泊を始めたい方も、すでに民泊運営を行っている方も、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

今回は、民泊を運営するにあたって民泊オーナーが把握すべきさまざまな対策をご紹介しました。入居者のいない建物や部屋の有効活用手段として注目されている民泊ですが、法的手続きなどのほか、防犯・防災関連、トラブル対策のための備えが多数必要です。ALSOKでは民泊運営における防犯・防火・トラブル対策もトータルでサポートしていますので、安全で円滑な民泊運営のためにぜひご利用ください。