高齢者の万引きの原因と家族の対応方法は?万引き防止対策も解説
高齢者の犯罪でもっとも多いのは万引きです。高齢者の万引きが多発する背景には、年金生活による経済的な困窮や独居生活による社会的な孤立や孤独感、認知症による判断力の低下など、さまざまな要因が考えられます。
もし高齢の親が万引きをしてしまった場合、家族は被害店舗への速やかな謝罪や示談交渉など、誠実な行動を取る必要があります。また、背景に精神疾患や認知機能の低下が疑われる場合には、専門機関への相談や治療を含め、家族が寄り添いながら適切にサポートすることが重要です。
本記事では、近年増加している高齢者の万引き問題について、その背景となる原因や防止策、万引きが発生した際の家族の適切な対応まで、わかりやすく解説します。
目次
高齢者が万引きをする主な原因
高齢化社会が進むにつれ、高齢者による犯罪率も増加しています。警察庁の調べによると、令和6年における高齢者の刑法犯検挙人員は4万1,070人(65~69歳8,993人、70歳以上3万2,077人)でした。令和2年以降ほぼ横ばいで推移していますが、依然として検挙人員は4万人を超えています。
なかでも高齢者の検挙人員がもっとも多い犯罪は、万引きです。検挙人員総数における万引きの検挙人員が約26.9%なのに対し、高齢者の検挙人員総数における万引きの検挙人員は、約49.7%とほぼ半数を占めています。
高齢者の万引きが多発する原因としては、主に次の4つが挙げられます。
生活困窮・経済的な困窮
少子化に伴う核家族化や未婚率の上昇など、家族形態の変化により、高齢者夫婦世帯や高齢単身世帯は急増しています。退職後、限られた年金だけで生活を続ける中で、経済的な不安を抱える高齢者は少なくありません。
実際、高齢者の万引き被疑者のおよそ80%は無職で、犯行動機に「お金を払いたくない(36.2%)」「生活困窮(29.3%)」といった、経済の問題を挙げています。
高齢者の生活困窮・経済的な困窮による万引きの背景には、日本の平均年齢が80歳を超えたことも関係しています。
老後の期間が長くなるということは、退職金と年金に頼って生活する時間がそれだけ長くなることを意味します。現在の生活水準が保たれていても、「この先、生活資金が足りなくなるのではないか」という不安を抱く高齢者は少なくありません。その結果、節約目的で万引きを繰り返してしまうケースも見られます。
出典:警視庁「東京万引き防止官民合同会議:万引き被疑者等に関する実態調査分析報告書」
独居生活などによる社会的な孤立
高齢者の万引き被疑者のうち、50.3%が独居世帯であり、誰とも交友関係を持っていないという回答が44.5%でした。また、生きがいについて「無し」と回答した高齢者も63.5%と、半数以上にのぼります。
子どもの独立や配偶者との死別、未婚などで独居生活を送る高齢者のなかには、周囲のサポートを得られず、社会的に孤立してしまうケースもあります。体が衰えていくなかでの孤独や不安は、寂しさや存在意義、居場所、生きがい、役割の喪失につながり、自暴自棄や自己破滅的な行動につながり、万引きなどの問題行動の引き金になっている可能性があります。
出典:警視庁「東京万引き防止官民合同会議:万引き被疑者等に関する実態調査分析報告書」
認知症による前頭葉機能の低下
加齢に伴う心身機能の低下は避けられない問題です。特に、75歳以上の後期高齢者は、軽度の認知障害によって前頭葉や側頭葉の機能が低下し、倫理的思考や振る舞いができなくなる場合があります。前頭葉は意欲や想像力などをつかさどり、人格形成や社会性に関与している部分で、側頭葉は視覚や聴覚、言語、記憶力などに関わっています。
倫理的思考ができなくなると、「支払いを済ませてから食べる」といった理屈や、商品の購入手順が分からなくなり、結果的に万引きをしてしまうのです。
前頭側頭型認知症の可能性
「前頭側頭型認知症」とは、認知症の一つで、脳の前頭葉や側頭葉などに機能障害が見られるのが特徴です。
認知症の原因として最も多いアルツハイマー型認知症では、物忘れが主な症状です。一方、前頭側頭型認知症は、性格や行動の変化が目立つ点が特徴で、記憶障害があまり見られません。そのため、前頭側頭型認知症であることに気づきにくく、診断が遅れるケースもあります。記憶障害よりも、感情や行動の判断力・自制力の低下が目立つ場合は、前頭側頭型認知症の可能性があります。
クレプトマニア(窃盗症)などの精神疾患やストレス発散
クレプトマニア(窃盗症)は、万引き行為そのものに依存してしまう精神疾患です。利益目的ではなく、買い物をするつもりで店に入っても、商品を目の前にすると衝動的に盗んでしまう点が特徴です。この衝動を自分の意思だけで抑えることは難しく、治療には専門医の診察と継続的な支援が必要になります。
また、うつ病が背景となって万引きに及ぶケースや、ストレス発散を目的とした万引きが繰り返されるケースも存在します。
高齢者が万引きをしたときの家族の対応
高齢者の家族が万引きをしてしまったとき、家族がするべき対応は次の2つです。
被害者への謝罪と示談交渉
万引き被害について店舗から連絡を受けた場合は、家族が速やかに現場へ向かいましょう。その際、本人を頭ごなしに叱責するのではなく、まずは状況を冷静に把握し、落ち着いて対応することが大切です。
最初に行うべき対応は、被害者である店舗への謝罪です。家族が誠意を持って謝罪し、高齢の本人にも反省を促すことで、場合によっては店舗側が警察への通報を控えてくれることがあります。
すでに通報され、逮捕されている場合には、本人が書いた謝罪文の写しを警察や店舗側に提出しましょう。反省の意思が示されることで、不起訴処分となるケースもあります。店舗側と冷静に話し合える状況であれば、示談によって穏便に解決することも可能です。
ただし、同じ店舗で繰り返し万引きをしていた場合や、店舗側が厳格な姿勢を取っている場合は、家族だけで示談交渉を進めるのが難しいこともあります。そのようなときは、弁護士に相談し、法的に適切な対応を取ることをおすすめします。
精神疾患(クレプトマニア)の治療
万引きをした高齢者の動機が、経済的な問題や軽度認知症による判断力の低下によるものではない場合、精神的な問題を抱えている可能性があります。
家族にクレプトマニアがいる場合の対処法
クレプトマニアが疑われる場合、家族がまず必要なのは、この疾患を正しく理解し、治療に向けて寄り添う姿勢です。再発を防ぐためには、本人の強い意志と周囲の継続的な支援が不可欠です。
再発防止策としては
- 家族と一緒に買い物へ行く
- ネットスーパーを活用し、店頭での買い物機会を減らす
- 一人で買い物へ行く場合の対策を徹底する
(例:購入した商品とレシートを家族が確認する/あえて店員に声をかけ、盗みにくい状況をつくる など)
また、家族と離れて暮らしている場合には、高齢者向けの見守りサービスを活用し、日常生活を継続的に見守ることも一つの方法です。
高齢者の万引きで逮捕されることはある?
高齢者による万引きでも、状況によっては逮捕されることがあります。
犯行態様や店舗の方針によっては逮捕の可能性がある
万引きは、刑法上の「窃盗罪」に該当する、れっきとした犯罪です。特に、何度も万引きを繰り返している場合や、反省の態度が見られない場合、また店舗が厳格な対応方針を取っている場合は、警察へ引き渡され、そのまま逮捕される可能性があります。
起訴されると前科がつくことも
悪質性が高い、示談が成立しない、反省が認められないなどの事情があると、起訴されて罰金刑等が科され、前科となる場合があります。
一方で、示談が成立している、反省が認められる、初犯であるといった事情が考慮され、微罪処分にとどまるケースもあります。そのため、早期の示談や家族・支援機関によるサポートなど、初動対応が極めて重要です。
高齢者による万引き防止対策
高齢者の万引きや再犯を防ぐには、本人の意識改革だけでなく、家族や周囲の環境づくりなど、多角的な支援が必要です。
高齢者本人が取るべき対策
万引きが犯罪であることを理解する
「少額なら」「後で払えばよい」と思い込み、犯罪意識が薄れている高齢者は少なくありません。家族が繰り返し伝え、万引きが重大な犯罪であることをしっかり認識してもらうことが第一歩です。
必要な治療を受ける
万引きの原因として、認知症や精神疾患が背景にある場合、本人への説得だけでは解決しません。専門医を受診し、適切な治療を受ける必要があります。在宅生活が難しいほど症状が進んでいる場合は、医師やケアマネジャーと相談し、適切なケアが受けられる施設への入所を検討しましょう。
高齢者の家族が取るべき対策
社会とつながる「居場所」やコミュニティを作る
万引きは再犯率の高い犯罪であり、高齢者においても例外ではありません。法務省の統計では、平成20年以降、高齢者の万引き検挙人員の50%以上が再犯者とされています。
万引きを繰り返す高齢者のなかには、社会的孤立、孤独感、生きがいや居場所・役割の喪失などを抱えている場合があります。
効果的な対策としては、
- 家族や友人が少ない高齢者に、社会との関わりを持てる場をつくる
- 独居高齢者を支える地域コミュニティを形成する
など、高齢者を孤立させない環境づくりが重要です。
出典:法務省「平成30年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/4」
高齢者の生活を見守る
周囲の人がこまめに見守り、孤独にさせないことも再犯防止に有効です。
具体的には、
- 近くに住んでいる場合は、頻繁に訪問する、買い物に同行する
- 離れて暮らしている場合は、電話で定期的に連絡を取る、見守りサービスを利用する
など、高齢者の生活に気を配り、安心して暮らせる体制を整えることが大切です。
高齢者の万引きを未然に防ぐために見守りサービスの利用を検討しよう
高齢者の万引きを防ぐには、身近な人との関わりを通じて、本人が「誰かに見守られている」「気にかけてもらえている」という安心感を持てる環境をつくることが大切です。しかし、「忙しくて頻繁に会いに行く時間が取れない」という場合には、高齢者向けの見守りサービスを活用することも有効な選択肢です。
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