90歳で一人暮らしは可能?一人暮らしできる限界年齢や活用したいサービスを解説

近年、高齢化の加速に伴い、高齢者の一人暮らしが増加傾向にあります。なかには80代、90代になっても住み慣れた自宅で生活を続けたいと望む方も少なくありません。しかし、年齢を重ねるにつれて身体機能や認知機能の低下などにより、一人暮らしを継続することが難しくなる場合があります。
本記事では、高齢者の一人暮らしの現状や90歳での一人暮らしの課題、そして一人暮らしを安全に続けるために活用できるサポートやサービスについて解説します。
目次
高齢者の一人暮らしの現状
令和6年版高齢社会白書によると、65歳以上の者のいる世帯数は2,747万4千世帯と、全世帯(5,431万世帯)の50.6%を占めています。

65歳以上で一人暮らしをしている人も男女ともに増加傾向にあり、令和2年(2020年)では男性15.0%、女性22.1%だった割合が、令和32年には男性26.1%、女性29.3%となると見込まれています。高齢化の加速に伴い、高齢者の一人暮らしは珍しいものではなくなってきていますが、年齢が上がるにつれてさまざまな課題が生じることも事実です。
参考:内閣府 「令和6年高齢社会白書」
高齢者が一人暮らしできる限界年齢は?
高齢者が一人暮らしできる限界年齢を考えるときは、暦年齢よりも「健康寿命」が重要な指標となります。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活を制限されずに過ごせる期間を指します。
厚生労働省の発表によると、令和4年の健康寿命は男性72.57年、女性75.45年となっています。一般的に、健康寿命を過ぎると自力で日常生活を送ることに支障が出てきて介助が必要になり、心身の状態の変化に応じて介護等が必要になってくると考えられます。ただし、健康寿命はあくまで平均値であり個人差があります。90歳を超えても元気に一人暮らしを続けている方もいれば、70代でも支援や介護が必要になる方もいます。一人暮らしが可能かどうかは、年齢だけでなく本人の心身の状態や生活環境、家族のサポート体制などを総合的に判断する必要があります。
参考:厚生労働省 「健康寿命の令和4年値について」
90歳の一人暮らしで想定される問題
90歳の高齢者が一人暮らしを続ける場合、以下のような問題が生じるおそれがあります。
病気や怪我への対応
90歳前後になると、体調の変化が起こりやすく、予期せぬ病気や怪我のリスクが高まります。一人暮らしの場合、具合が悪くなったときに自分で助けを求められず、対応が遅れる可能性があります。また、自分が医療処置を必要とする状態であると認識できない場合や、病院への受診を渋るケースもあります。
認知機能の低下

加齢に伴い認知機能が低下し、日常生活に支障をきたすおそれがあります。特に認知症を発症すると、金銭管理や服薬管理、食生活の維持が難しくなる場合があります。例えば、光熱費や家賃の支払いを忘れる、同じ薬を重複して飲んでしまう、食事の準備や栄養バランスの管理ができなくなるなどの問題が生じるのです。
また、自身で認知機能の低下に気づかず、一人暮らしのために周囲も変化に気づきにくく、適切な支援を求めることができない場合もあります。
日常生活の水準低下
高齢になると、食事の準備や洗濯、掃除などの家事を一人で行うことが難しくなり、日常生活の水準が低下することがあります。特に、力のいる仕事や細かな作業が必要な家事は負担が大きくなります。また、自分で考えることが減ると、認知機能の低下につながるおそれもあります。活動的な生活習慣を維持することは、身体機能だけでなく脳の健康維持にも重要です。
災害時の対応
地震・台風などの自然災害や火事が発生した場合、適切な判断をして避難を行うことが難しくなります。情報収集や避難経路の確認、必要な物資の準備など、災害時の対応には迅速な判断と行動が求められます。特に、避難所への移動が身体的に困難であったり、慣れない環境での生活に適応できなかったりする場合があり、災害弱者となりやすい立場にあります。
コミュニケーションの減少
一人暮らしの高齢者は、体力的な問題などで家にこもるようになると、コミュニケーションが少なくなる傾向があります。コミュニケーションが少なくなると、認知機能の低下につながるだけでなく、社会的な孤立によって生きがいを感じにくくなるなど精神的な健康にも影響を及ぼすおそれがあります。人との交流は脳を活性化させ、認知症予防にも効果があると言われているため、コミュニケーションの機会を意識的に持つことが重要です。
詐欺や犯罪のリスク
高齢者を狙う詐欺や犯罪は年々増加しており、被害に遭わないための対策が必要です。特に一人暮らしの高齢者は標的にされやすく、対策が十分にできない場合があります。また、詐欺の手口は巧妙化しており、実際に被害に遭った場合に気づけないことも考えられます。家族の見守りや地域とのつながりがない場合は、被害が長期化・大きくなるリスクも高いでしょう。
90歳の一人暮らしを継続するには
加齢によるさまざまな課題があるものの、「住み慣れた自宅で暮らしたい」という本人の思いから、施設入所や家族との同居を望まない場合があります。また、施設への入所が希望通りに決まらないというケースも少なくありません。90歳の一人暮らしを可能な限り安全に継続するために、本人や家族ができることを考えてみましょう。
健康的な食事や運動をする

健康の基本である食事と運動に気を配ることは、高齢者の自立した生活を支える基盤となります。食事を自分で作ることが難しい場合には、民間の食事配達サービスを活用するのも選択肢の一つです。定期的に栄養バランスのとれた食事が届くことで、食生活の質を維持しやすくなります。
また、定期的に体を動かすことで体力をつけて、筋力や柔軟性を維持し、転倒リスクを減らすことが可能です。散歩やラジオ体操など、無理のない範囲で継続できる運動習慣を取り入れましょう。
地域のコミュニティやサロンに参加する
コミュニケーションを維持し、社会的に孤立することを防ぐために、地域のコミュニティや高齢者サロン、ボランティア活動などに積極的に参加することが大切です。定期的な外出の機会を持つことで、生活にメリハリがつき、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。地域の自治体や社会福祉協議会では、高齢者向けのサロンや交流会を開催していることが多いので、近隣の情報を調べてみると良いでしょう。
家族が積極的にコミュニケーションをとる
離れて暮らす家族であっても、定期的に連絡を取り合うことで高齢者の孤独感を軽減することが可能です。家族とのコミュニケーションは精神的な支えになるだけでなく、体調の変化に気づくきっかけにもなります。なるべく直接会う時間を作り、可能であれば一緒に食事をするようにしましょう。また、電話やビデオ通話などを活用して、顔を見ながら会話する機会を設けることも効果的です。
日常生活の負担を減らす
自宅に手すりを設置したり段差を解消したりするなど、住環境を整備することで日常生活の負担やリスクを減らすことができます。転倒予防のための環境整備は、一人暮らしを継続するうえで非常に重要です。介護保険を利用して住宅改修を行える場合もあるので、地域の地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみましょう。
90歳の一人暮らしをサポートするサービス
90歳前後の高齢者が一人暮らしを続けるには、さまざまなサポートやサービスを活用することが重要です。ここでは、活用できる主なサービスについて紹介します。
見守り・安否確認サービス
多くの自治体では、一人暮らしの高齢者を対象とした見守り活動や安否確認サービスを提供しています。訪問による見守り活動、サロン(高齢者が集える場所)の実施、デジタルツールによる見守り活動などが行われています。これらのサービスを利用することで、日常生活において異変があった際の早期発見・早期対応が可能になり、一人暮らしの不安を軽減できます。
介護サービス
介護保険制度を利用して、訪問介護(ホームヘルパー)や通所介護(デイサービス)、訪問看護など、さまざまなサービスを受けることができます。また、現在は一人暮らしをしていても、今後継続が難しくなる可能性は高いため、早めに入所できる施設などの情報収集をしておくことも大切です。
食事配達サービス
高齢者向けの食事配達サービスの利用によって、毎日栄養バランスのとれた食事を摂ることができます。配達スタッフが定期的に訪問することで、調理や片付け、買い物に行く負担も軽減されるだけでなく見守りの役割も果たします。体調の変化や異変に気づくきっかけにもなるため、安心感につながるでしょう。
自治体によるその他の高齢者支援サービス
自治体によって異なりますが、一人暮らしの高齢者向けにさまざまな支援サービスを提供しています。例えば、緊急通報システムの設置、食事配達サービス、買い物支援、移動支援などがあります。また地域包括支援センターでは、高齢者の生活全般に関する相談を受け付けており、必要なサービスを紹介してくれます。お住いの地域でどのようなサービスが利用できるか、地域包括支援センターに相談してみると良いでしょう。
90歳の一人暮らしをサポートするALSOKの見守りサービス

ALSOKの「HOME ALSOK みまもりサポート」は、高齢者の一人暮らしを24時間365日サポートする見守りサービスです。体調不良や急な発作時には、ボタンを押すだけでALSOKが駆けつけて対応します。また、看護師資格を持つスタッフに健康や介護の相談もできるため、日々の不安や疑問を解消することができます。オプションを利用すれば、毎日のみまもり情報を取得でき、離れて暮らす家族が安否確認をすることも可能です。緊急時の対応だけでなく、日常的な見守りや健康相談にも対応しているため、90歳の一人暮らしを支えるサービスとして活用できます。
まとめ
90歳での一人暮らしにはさまざまな課題がありますが、本人の意向や状態に合わせて適切なサポートやサービスを活用することで、可能な限り自宅での生活を継続することができます。定期的な連絡や訪問を心がけながら、介護サービスや見守りサービス、食事配達サービスなど適切な支援を上手に取り入れることで、安心して暮らせる環境を整えることが可能です。ご本人の意思を尊重しつつ、安全で安心した生活を送れるようにサポート体制を構築しましょう。