尊厳死とは?安楽死との違いや日本の現状、メリット・デメリットを詳しく解説

高齢者・介護 2025.08.08
車椅子に乗るシニアと家族

高齢化社会が進む日本において、終末期医療に関する関心が高まっています。特に、自身や家族の最期のあり方について考える際に「尊厳死」という言葉を耳にする機会が増えたという方は多いのではないでしょうか。
本記事では、尊厳死の基本的な概念から尊厳死に対する日本の現状、メリット・デメリット、そして実際に選択する際の対策方法まで詳しく解説します。

目次

尊厳死とは

尊厳死とは、末期状態にある患者が人工的な延命治療を行わず、自然な経過に委ねて迎える死のことを指します。延命治療を中止・差し控えることにより、人間としての尊厳を保ちながら自然な死を迎えることを目的としています。医療技術の進歩により可能となった過度な延命治療を避け、患者本人の意思を尊重した形で最期を迎える考え方です。

尊厳死と安楽死の違い

尊厳死と混同されやすい安楽死ですが、安楽死は患者の苦痛を除去して積極的に死期を早める行為です。安楽死には、薬物投与などで患者の死期を早める「積極的安楽死」と、延命治療を中止することで患者の死期を早める「消極的安楽死」があります。
一方で尊厳死は、安楽死のように医療行為を控えることにより死期を早めるのではなく、自然な死を妨げないという考え方に基づいています。日本では、消極的安楽死と尊厳死は同義と見なされることが多いですが、尊厳死は患者の苦痛軽減よりも、むしろ人間の尊厳を重視した概念といえます。

尊厳死に対する日本の現状と動向

国際的には、尊厳死はアメリカ50州と1特別区、オランダ、ドイツ、イタリアなどの欧州諸国、タイ、韓国、シンガポールなどで容認されています。これらの国々では、法的な枠組みが整備され、患者の自己決定権を尊重する制度が確立されています。
日本においても、医療技術の進歩により延命治療の可能性が広がる中で、患者の意思を尊重することや医師の責任問題が問われるようになり、終末期医療における患者の自己決定権や、家族の意向、医療従事者の判断など、さまざまな観点から議論が活発化しています。

2025年時点での尊厳死に関する日本の現状

現在の日本において、尊厳死に関して明確に定義した法律は存在しません。尊厳死に関する議論は国会でも継続的に進められており、法制化に向けた取り組みや検討が行われている状況です。
他方で、公益財団法人「日本尊厳死協会」では、尊厳死の宣言書(リビング・ウィル)の作成を推進しており、患者の意思表示や自己決定権を支援する活動を行っています。また、厚生労働省が発表した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」では、延命治療の中止を一定条件のもとで認める姿勢が示されています。医療従事者、患者、家族が十分な話し合いを行い、合意に達した場合には、延命治療の差し控えや中止が可能であるとしています。
上記の通り、法的な議論のほか、倫理的配慮によるさまざまな問題が残っている状態が続いています。

参考:公益財団法人 日本尊厳死協会
厚生労働省「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン

尊厳死を進めるうえでの重大な課題

尊厳死には、解決すべき重要な課題が複数存在します。

本人の意思確認

病室のベッド

尊厳死を実現するためにもっとも重要な前提条件は、患者本人の明確な意思表示です。尊厳死は患者の自己決定権に基づく選択となるため、本人の意思確認が欠かせません。しかし、末期患者の多くは病状の進行により意思表示が困難な状態にあります。認知症や意識障害、薬物による意識レベルの低下などにより、患者本人が十分な判断能力を持たない場合が少なくありません。事前に意思表示していない場合、家族や医療従事者が患者の意向を推測する必要があり、真の意思との乖離が生じるおそれがあります。

医療現場における葛藤

医療現場でも尊厳死に対して一定の理解が進んでいますが、治療法において患者本人と家族の意向が一致しないケースが少なくありません。家族が延命治療を強く望む一方で、患者本人に尊厳死の意思がある場合、医療従事者は判断が困難となります。また、法律上明確に認められてはいないため、患者の希望通りに延命治療を中止した場合、医師への責任問題を問われるおそれがあります。現在の日本においては尊厳死に関する法的根拠が不十分であるため、医療現場ではさまざまな葛藤が生じています。

社会的な影響と制度設計

尊厳死の推進は、延命治療による身体的、精神的、金銭的な負担の軽減につながる一方で、社会全体に大きな影響を与えます。生命の価値観や医療制度、社会保障制度など、広範囲にわたる影響が予想されるため、慎重な制度設計が必要です。特に、経済的な理由から尊厳死が選択されることがないよう、真に本人の意思であると担保すること、適切な社会保障制度の維持や患者・家族への経済的支援の充実が重要になります。

尊厳死を選択するメリット・デメリット

尊厳死の選択には、明確なメリットとデメリットが存在します。

【メリット】患者本人の意思を尊重できる

患者本人の意思を最大限尊重できることが、尊厳死のもっとも大きな利点です。医療技術の進歩により、本人が望まない延命治療が継続される可能性がある中で、本人の自己決定権を保障できます。人生の最終段階において、自分らしく死にたい、自分が望むようにしたいという願いを実現できることは、患者の尊厳を守ることにつながります。

【メリット】患者本人の苦痛を軽減させられる

患者の手を握る人

人工呼吸器や胃ろう、点滴の継続による治療は、患者本人に身体的・精神的な苦痛をもたらす場合があります。尊厳死を選択することで、苦痛を伴う治療を終了し、患者本人の身体的・精神的負担を軽減させることが可能です。自然な状態で最期を迎えることにより、患者本人が穏やかな時間を過ごせる場合もあります。

【メリット】家族の心理的・経済的負担の軽減

長期間の治療や入院により、家族の心理的・経済的負担を軽減できることも大きな利点です。延命治療は高額になる場合が多く、医療費の負担によって患者や家族が経済的に困窮するなど、深刻な問題となることがあります。さらに、延命治療中の患者の苦しみを見守り続けるという心理的負担も軽減されます。患者本人が尊厳死を選択することで、家族が延命治療の継続や中止について重大な選択を迫られることもありません。

【デメリット】患者本人の意思が不明確な場合がある

認知症や意識障害などで患者本人が意思表示できない状態にある場合、真の意向を確認することは困難です。十分な話し合いが事前に行われていないと、本人が実際には延命治療を望んでいた可能性があるにも関わらず、家族の推測により尊厳死が選択されるケースがあります。

【デメリット】親族間でトラブルに発展することがある

患者本人や家族が尊厳死に納得していたとしても、親族に受け入れてもらえない場合があります。価値観や生命に対する考え方の違いにより、親族間でトラブルに発展し、患者の意思を実現できない場合や、家族関係に影響を及ぼす可能性もあります。

尊厳死を望む場合に行うこと

尊厳死を検討する場合には、適切な準備と対策が重要です。

事前に家族で話し合う

尊厳死を検討する場合、患者本人が明確に意思表示できているうちに、終末期医療に関する選択の意思を家族が理解することが大切です。尊厳死に対する考え方、延命治療への希望、最期を迎えたい場所など、具体的な内容について話し合いをしておきましょう。家族全員が患者本人の価値観や意向を理解し、共有することで、実際の場面での判断がスムーズになります。また、家族間の意見の相違がある場合には、時間をかけて話し合いを継続することが大切です。

リビング・ウィル(尊厳死宣言書)を作成する

リビング・ウィルとは、将来に備えて本人に判断能力があるうちに、延命治療の実施や中止に関する本人の意思を書面で示すものです。法的拘束力は限定的ですが、患者本人の意思を明確に示すための有効な文書として、医療現場で尊重される傾向があります。ただし、リビング・ウィルは患者本人の独断で作成するのではなく、家族や医師と十分に話し合いながら作成することが重要です。また、リビング・ウィルに記載した内容は絶対的なものではありません。後に何らかの理由で希望が変わった場合は、撤回や書き改めることが可能です。

リビング・ウィル(尊厳死宣言書)の作成方法

リビング・ウィルを作成する際は、自分の希望や意思を明確に記載する必要があります。延命治療に対する考え方、実施を希望しない治療内容、緩和ケアに関する希望など、具体的に記載しましょう。日本尊厳死協会や多くの病院では、リビング・ウィルのテンプレートを提供しており、作成が不安な方でも家族や医師と共有しながら適切に作成できます。作成後は、定期的に内容を見直し、考え方の変化に応じて更新することも大切です。

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まとめ

尊厳死は、患者本人の意思を尊重し、人としての尊厳を保ちながら自然な死を迎える考え方です。尊厳死は患者本人の意思や家族の理解が重要になるため、早いうちから終末期医療についても話し合う機会を設けることをおすすめします。患者本人の意思を尊重した最期を迎えるためにも、日常生活での安全を確保しつつ、しっかりと共通理解を形成することが大切です。

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