押し買いとは?高齢者を狙う訪問購入トラブルの実態と家族でできる対策
「自宅の荷物整理を進めたい」「不要になった着物やアクセサリー、貴金属を手放したい」――終活や生前整理をきっかけに、自宅に買取業者を呼ぶ方が増えています。しかし、その訪問買取が思わぬトラブルに発展するケースも少なくありません。中でも注意したいのが、「押し買い」と呼ばれる被害です。
本記事では、押し買いについて、最新の相談件数や実際の事例を交えながら解説します。また、ご本人やご家族が被害に遭わないための対策についてもご紹介します。
【この記事で分かること】
- 「押し買い」とはどのようなトラブルなのか
- 高齢者が狙われやすい理由と、実際に起きている被害事例
- 押し買い被害を防ぐために知っておきたい制度と相談先
- 離れて暮らす親を守るために家族ができる備え
目次
「押し買い」とは?
「押し買い」とは、買取業者が依頼者の自宅を訪問し、強引に貴金属やブランド品などを買い取ろうとしたり、不当に安い価格で買い取ったりする行為のことです。
自宅を訪問して物品を買い取る取引自体は「訪問購入」と呼ばれ、訪問販売と同様に特定商取引法(特商法)の規制対象となっています。押し買いは、この訪問購入の仕組みを悪用したトラブルの一つです。
利用者が不用品や着物などの査定・買取を依頼し、自宅へ業者を招き入れたことをきっかけに、当初売却を予定していなかった貴金属やブランド品などの売却を強く求められるケースがあります。訪問購入自体は法律に基づく適法な取引ですが、一部にはその仕組みを悪用した悪質な事業者も存在します。2013年の特商法改正により訪問購入は規制対象となりましたが、現在でも関連する相談は後を絶ちません。
高水準で推移する相談件数
全国の消費生活センター等に寄せられる訪問購入に関する相談は、高い水準で推移しています。国民生活センターによると、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に登録された相談件数は、2022年度7,733件、2023年度8,622件、2024年度7,889件と、いずれの年も7,000件を大きく超えています。
さらに注目すべきは、契約当事者の年齢層です。契約当事者が60歳以上である割合は、全体の約8割に達しており、押し買いは高齢者に集中して発生していることが分かります。「終活で不用品を整理したい」という気持ちに業者が付け込むケースも報告されており、本人や家族が「自分には関係ない」と思っていても、決して油断できない状況です。
出典:国民生活センター「不用なお皿の買い取りのはずが、大切な貴金属も強引に買い取られた!訪問購入のトラブルが増えています」
実際に起きている事例
実際にどのような被害が起きているのでしょうか。国民生活センターには、次のような相談が寄せられています。
「不用品」だけのはずが貴金属へ
古着や食器の買い取りを了承して業者を自宅に呼んだところ、「貴金属はないか」「宝石はないか」としつこく聞かれ、強引に買い取られてしまったという事例です。
目を離した隙に持ち去られる
「査定中に目を離した隙にアクセサリーが見当たらなくなっていたという相談や、高齢者が記念硬貨の価値を十分に確認しないまま売却してしまったという事例も報告されています。
出典:国民生活センター「きっかけは訪問購入?犯罪まがいの深刻なトラブルにご注意を!大切な貴金属が持ち去られたなどの事例が寄せられています」
新たな手口「押し買いリースバック」
近年は、貴金属などの訪問購入だけでなく、自宅そのものを対象にしたリースバック契約をめぐるトラブルも報告されています。
自宅を不当に安い価格で買い取った上で、契約後に法外な賃料や違約金を請求するという手口です。リースバック契約に関する相談件数は、2019年度の24件から2024年度には239件まで増加しており、契約当事者の約7割が70歳以上を占めています。
出典::国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!本当に『そのまま“ずっと”住み続けられる』契約ですか?」
なぜ高齢者が狙われやすいのか
押し買いに関する相談が高齢者に多くみられる背景には、社会的な要因もあると考えられます。内閣府の調査によると、65歳以上の一人暮らし高齢者は2030年に約887万人へ増加すると見込まれています。一人で過ごす時間が長く、訪問してきた事業者への対応を自身で行わなければならない場面も少なくありません。そのため、十分な検討や相談ができないまま契約や売却に至ってしまうケースもあると考えられます。
また、終活や遺品整理、生前整理などをきっかけに「不要なものを整理したい」と考える高齢者が増えていることも背景の一つです。こうしたニーズに応える適正な事業者がいる一方で、一部にはその心理につけ込み、強引な勧誘や不適切な取引を行うケースもあるため注意が必要です。
自分と家族を守るための対策
押し買いの被害を防ぐためには、制度について正しく理解するとともに、日頃から適切な対策を心がけることが大切です。
まず知っておきたいのが、訪問購入にはクーリング・オフ制度があるという点です。契約書面を受け取った日を1日目として8日間は、書面または電磁的記録により、無条件で契約を解除できます。さらに、この期間中は売却した物品の引き渡しを拒むことができる「引渡し拒絶権」も認められています。
また、消費者から依頼や要請を受けていない訪問勧誘や、査定を依頼した品目以外の物品について買い取りを勧誘する行為は、特定商取引法で禁止されています。万一、強引な勧誘を受けた場合は、その場で契約せず、家族や消費生活センターへ相談することが大切です。
日頃から意識したいポイント
日頃の行動として、次の点を意識するようにしましょう。
- 電話や訪問を安易に承諾しない
- 貴金属やブランド品をむやみに見せない
- できるだけ一人で対応せず、家族や知人に同席してもらう
- 困ったときは消費者ホットライン「188(いやや!)」、または警察相談専用電話「#9110」へ相談する
家族間では「最近こういう被害があるらしいよ」と、日常の会話で情報を共有しておくことも、立派な備えの一つです。
離れて暮らす家族だからこそできる備え
押し買いは自宅への「訪問」をきっかけに発生するため、離れて暮らす家族にとっては気付きにくいという難しさがあります。そこで活用したいのが、ALSOKの見守りサービスです。
屋内用防犯カメラ「アルボEye」を活用すれば、離れて暮らすご家族の様子をスマートフォンから確認できます。訪問業者が来た際の状況を遠隔から確認できるため、「見慣れない業者が長時間滞在していないか」など、ご家族が実家の様子を把握しやすくなります。高齢の親だけでは判断が難しい場面でも、家族が状況を確認しながらサポートできるため、安心感につながります。
また、見守りサービス「HOME ALSOK みまもりサポート」は、離れて暮らすご家族に代わってALSOKが高齢者の方を見守るサービスです。遠方に住んでいて頻繁に様子を見に行けない場合でも、見守り体制を整えることで、ご本人だけでなくご家族の安心にもつながります。急な体調不良や緊急時には、緊急ボタンを押すだけでALSOKが駆けつけて対応します。離れて暮らすご家族に代わってALSOKが現地対応を行うため、すぐに駆けつけられない場合でも安心です。さらに、健康や生活に関する不安がある場合は、相談ボタンから24時間いつでも看護師資格を持つスタッフに相談できます。
まとめ
「押し買い」は、終活や生前整理という前向きな行動の延長線上で、誰にでも起こり得るトラブルです。被害を防ぐには、制度を正しく理解すること、家族と日頃から情報を共有すること、そして離れていても見守れる環境を整えておくことが重要です。こうした備えが、大切な財産と安心な暮らしを守ることにつながります。ぜひこの機会に、ご家族で押し買いのリスクや対策について話し合ってみてはいかがでしょうか。
押し買いに関するよくある質問
Q:押し買いとは何ですか?
A:押し買いとは、買取業者が自宅を訪問し、貴金属やブランド品などを強引に買い取ろうとするトラブルのことです。正式には「訪問購入」に関するトラブルの一つで、不当に安い価格で買い取られたり、売るつもりのない品物まで勧誘されたりするケースがあります。
Q:押し買いに遭った場合、クーリング・オフはできますか?
A:訪問購入では、契約書面を受け取った日を1日目として8日間は、クーリング・オフが可能です。期間中は売却した物品の引き渡しを拒むこともできます。困った場合は、早めに消費者ホットライン「188」や消費生活センターへ相談しましょう。
Q:押し買い被害を防ぐために、家族ができることはありますか?
A:家族ができる対策としては、訪問買取のトラブル事例を共有しておくこと、知らない業者を安易に家へ入れないよう伝えること、貴金属やブランド品を一人で見せないよう注意しておくことが挙げられます。離れて暮らしている場合は、見守りサービスや防犯カメラを活用し、日頃から実家の様子を気にかけられる環境を整えることも有効です。





















