
古くから商業都市として栄え、現在も西日本の経済・文化・交通の中心を担う街、大阪。自由闊達な商人文化が育んだエンターテイメントの数々を、じっくり味わってみませんか?

吹田
大阪の中心地から北へ約15キロの吹田市・千里の丘。ひときわ異彩を放つ巨大な構造物が広い空を突き抜けるようにそびえ立っています。それが「太陽の塔」。1970年の万国博覧会(以下万博)以来、この地を見守り続けています。万博の閉幕後、ほぼすべてのパビリオンが撤去されるなか、保存を願う声を受けて、太陽の塔は残されました。万博会場の跡地に整備された「万博記念公園」のシンボルとして、今でも人々から親しまれています。
万博記念公園の中央ゲートを抜けると、高さ約70メートル、基底部の直径約20メートル、腕の長さ約25メートルの圧倒的な存在感で迎えてくれました。ちょうど頂部の〈黄金の顔〉に太陽の光が差し込み、輝きを放っています。胴体中央から生える約25メートルもの巨大な腕では、公園に生息するたくさんの鳥たちが羽を休めています。お腹の〈太陽の顔〉、背面の〈黒い太陽〉と合わせて3つの顔を下から見上げていると、手を広げて大らかに包み込む女神のように思えてきました。
太陽の塔の作者は、戦後日本を代表する芸術家・岡本太郎。万博ではテーマプロデューサーを任され、テーマ館のパビリオンとして太陽の塔を手がけたのです。そのテーマの真髄にさらに迫りたいと、塔の内部へ足を踏み入れました。塔の内部は約半世紀にわたって放置されていましたが、2018年に再生を果たし、常設の展示施設として一般公開されています。
塔の内部は鮮やかな赤いひだに埋め尽くされ、地下から上へと伸びるオブジェ「生命の樹」がそびえています。高さ41メートルの樹体に、下から上に向かって原生類から哺乳類までの進化を辿る33種の生物模型が取りつけられています。時間と生命の交わる不思議な空間でした。同時に、根源から未来に向かってふきあげる「生命のエネルギー」を強烈なメッセージとして受け取った気がしました。
興奮冷めやらぬうちに、万博の熱気を伝えるもうひとつのスポット、万博の記念館「EXPO'70 パビリオン」へ。映像や写真、ユニフォームの展示などから、当時の熱狂を肌で感じることができます。
興味深かったのは「空前絶後の記録づくし」。期間中の入場者数や参加国数から、ゴミの量、迷子の数、会場内で結婚した挙式数まで、さまざまな数字をテーマカラーの赤い壁に紹介しています。
2023年に増設された別館では、実際に設置されていた初代「黄金の顔」が展示されています。間近で見ると、鼻先部分の擦れ具合や鋼板のつなぎ目の様子などが分かり、作り手たちの息づかいが聞こえてくるようでした。
約260ヘクタールもの広大な公園には、他にも子どもが遊べるアスレチックタワーや巨大迷路、サイクルボートなどの遊具、本格的なバーベキューが体験できる施設なども揃っています。四季折々の花が楽しめる日本庭園は、万博当時、日本政府の出展施設として整備されたもの。
日本庭園としては、全国でも有数の規模を誇り、2024年には国登録記念物(名勝地関係)として文化財登録されました。
森のトレインやパークタクシーなど、園内の移動手段を活用しながらまわるのがおすすめです。
2025年は、大阪が再び万博で沸き立ちます。万博会場となる人工島「夢洲」には世界中から多くの人たちが集まり、熱気で包まれるでしょう。どんな未来につながるのか、今から楽しみです。
万博記念公園
1970年に開催した日本万国博覧会の跡地に整備された文化公園。約260haの敷地には四季折々の花が咲き誇る。岡本太郎作の太陽の塔、2010年に公開された同万博の記念館「EXPO’70パビリオン」が、23年に増設された別館ともに、当時の活気を彷彿とさせる。

06-6877-7387
- 住所
- 吹田市千里万博公園1-1
- 開園時間
- 9:30~17:00(入園時間は閉園の30分前まで)
- 休
- 毎週水曜日(祝日の場合は直後の平日)/年末年始
※4月1日~5月2日まで、10月・11月は無休 - 入場料
- 大人260円、小中学生80円
※団体料金あり
https://www.expo70-park.jp/






日本庭園エリアでは、平安時代から江戸時代まで、さまざまな時代の庭園様式を眺められる。

写真は人気の塩こんぶマヨたこ焼き(500円)。
264ヘクタールの広大な公園 万博記念公園

20年ぶりに日本で開催される国際博覧会。参加国・地域は150か国以上にのぼる。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。民間企業や世界各国のパビリオンが出展し、会場の各エリアではさまざまなイベントが実施される。
06-6625-8651
- 住所
- 大阪市此花区夢洲
- 開場時間
- 9:00~22:00
- 入場料
- 大人4,000円~7,500円、中人2,200円~4,200円、小人1,000円~1,800円
※3歳以下無料、団体料金あり
https://www.expo2025.or.jp/
大阪
西のベイエリアには、世界最大級の水族館「海遊館」があります。トンネル型の水槽「アクアゲート」を通り抜けたら、エスカレーターで一気に8階へ。そこから4階までらせん状のスロープを降りながら水槽展示を鑑賞します。ちょうど巨大なジンベエザメが口を開けながら水面近くにやってきました。餌を欲しがっているサインなのだそう。飼育員はジンベエザメの大きな口に吸い込まれないように、泳ぎながら餌をあげていきます。絶妙なチームワークでした。
芸術文化施設が集約される中之島でひときわスタイリッシュな建物が「こども本の森 中之島」。大阪出身の安藤忠雄氏が自ら提案・設計した文化施設です。「次世代を担う子どもたちに多様な本との出会いによって豊かな感性や想像力を養って欲しい」との思いでつくられました。
3フロア吹き抜けの壁はすべて本棚で、ブリッジや秘密基地のような階段下のスペースなど、遊び心がいっぱい。図書館というより公園のようなワクワク感がありました。
大阪市天王寺区には聖徳太子が建立した日本最古の官寺「四天王寺」があります。足を運んだ日はちょうど聖徳太子の命日の22日。縁日が開かれ、多くの人たちでにぎわっていました。
「ここは宗派にとらわれず誰にでも開かれたお寺です。皆さまの供養の拠り所でありたい」と、職員の河邊さん。毎日11時に行われる舎利出し(*1)や彼岸の中日に行われる日想観(*2)など、参詣者も共に仏教信仰に触れられる機会が数多くあります。
*1 金堂で行われるお舎利を頭に頂き、御仏のお導きを祈る厳かな法会。
*2 石鳥居の向こうに沈む夕陽を拝し、極楽浄土を観想する法会。
海遊館
天保山ハーバービレッジにある世界最大級の水族館。展示テーマは「環太平洋火山帯(リングオブファイア)」。「太平洋」を模した水槽を中心に、環太平洋の各地域の620種、3万点の生きものを展示する。1990年の開館以来、生育環境をできるだけ忠実に再現する手法“生態展示”を大切にする。水槽の配置は実際の地理関係を再現している。

06-6576-5501
- 住所
- 大阪市港区海岸通1-1-10
- 営業時間
- 10:00~20:00(最終入館は閉館の1時間前まで)
※季節により変更あり - 休
- 2026年1月14日~15日
- 入館料
- 大人2,700円、子ども1,400円、幼児700円
※時期により異なる
https://www.kaiyukan.com/



旅するように 海遊館
こども本の森 中之島
絵本や物語の文化を引き継ぐ「物語の聖地」として、2020年に誕生した文化施設。さまざまなジャンルの本が、こどもたちの日常生活や好奇心に寄り添う12のテーマ別に並べられている。読み聞かせや音楽会などさまざまなイベントも開催する。

06-6204-0808
- 住所
- 大阪市北区中之島1-1-28
- 開館時間
- 9:30~17:00
- 休
- 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、蔵書整理期間、年末年始
- 入館料
- 無料
https://kodomohonnomori.osaka/


四天王寺
大阪市天王寺区に位置する日本最古の官寺。593年に聖徳太子によって建立された。南から北へと中門・五重塔・金堂・講堂が一直線に並び、周りを回廊が取り囲む「四天王寺伽藍配置」として知られる。毎月21日の弘法大師の命日と22日の聖徳太子の命日は縁日で、境内に露店が立ち並ぶ。

06-6771-0066
- 住所
- 大阪市天王寺区四天王寺1-11-18
- 拝観時間
- 8:30~16:30(4~9月)、8:30~16:00(10~3月)
- 休
- 無休
- 拝観料
(中心伽藍) - 大人500円、高校生300円、中学生以下無料
※団体料金有
https://www.shitennoji.or.jp/

*3 聖徳太子命日の大法要。法要舞楽は国の重要無形民俗文化財に登録されている。