会社や施設内にAEDを設置する必要性とは?

2024.02.28更新(2017.03.30公開)

公共交通機関や公共施設、スポーツ施設など、さまざまな場所で見かけるAED(自動体外式除細動器)。最近では一般企業や施設でも導入するところが増えています。AEDはなぜ必要なのか、一般企業や施設が導入することにはどんな意味があるのかについて解説します。

AED(自動体外式除細動器)とは

「AED(自動体外式除細動器)」とは、心停止を起こしている人を救命する医療機器です。心室細動・心室頻拍を起こしている心臓に対して電気ショックを与え、正常な状態に戻すことが期待できます。AEDは一般の人が使用できる医療機器として設計されており、AEDの電源を入れると音声が使い方を順に指示してくれるので、誰でもAEDを使って救命活動を行うことができます。

心室細動とは?

突然の心停止の多くは、不整脈の一種である心室細動が原因とされています。心室細動は、心臓の部位のうち血液を全身に送り出す「心室」がブルブルと不規則に痙攣します。その結果、心臓が収縮できなくなって全身に血液を送り出せない(=酸素を運ぶことができない)状態に陥り、死に至る可能性があります。そのため、一刻も早く正常な心拍リズムに戻す処置(電気ショックによる除細動)が求められます。

AEDの必要性・重要性とは?早急な対応が命を救う

心停止を起こした人の救命率は1分ごとに10%低下

日本国内において、令和4年中に救急搬送された心肺機能停止傷病者数は142,728人(*1)に上ります。男女別の割合をみると男性は81,881人(57.4%)、女性は60,847人(42.6%)です(*1)。1日に391人ほどの方が突然の心肺停止によって救急搬送されているということになります。また、通報から救急車が現場に到着するまでの時間は全国平均で約10.3分(*2)要しています。

突然心停止を起こした人の救命率は1分ごとに10%低下するとされており、3〜4分程度で脳の回復が困難になるといわれています。

しかし、傷病者の近くに居合わせた一般市民(バイスタンダー)がAEDによる除細動や心肺蘇生の救命処置を行うことで、救命の可能性は上がります。傷病者の命を救うためには1分1秒でも早くAEDを使用することが求められるのです。

AEDが使用された場合の生存率・社会復帰

誰しもがいつAEDを必要とする場面に遭遇するか分かりませんが、実際にどれくらいの人がAEDを使用しているのでしょうか。

令和4年中に一般市民が目撃した心原性心肺機能停止傷病者数が28,834人であるのに対して、一般市民が心肺蘇生を実施したのは17,068人(59.2%)となっています。そのうち、一般市民が除細動を実施したのは1,229人となっており、およそ4.3%の心肺機能停止傷病者に対してAEDが使用されています(*2)。

まだ当たり前に使用されているとはいえないものの、一般市民が心肺蘇生を実施した場合の生存率は圧倒的に高くなっています。心肺蘇生が実施されなかった傷病者の1ヶ月後生存者数の割合が6.6%であるのに対して、一般市民が心肺蘇生を実施した場合は12.8%です。一般市民がAEDを使用し除細動を実施した場合の1か月後生存者数の割合は50.3%にまで高まり、処置が行われなかったときと比べて生存率は7.6倍に上がっています(*2)。
また、AEDが使用された場合の社会復帰率も圧倒的に高くなっています。心肺蘇生が実施されなかった場合の1ヶ月後社会復帰率が3.3%であるのに対して、一般市民が心肺蘇生を実施した場合は8.8%、一般市民がAEDを使用し除細動を実施した場合は42.6%にまで高まっています(*2)。

(*1):「令和5年版 救急救助の現況」(P82)
(*2):総務省消防庁「令和5年版 救急救助の現況」(報道資料)

AEDを設置するメリット

AEDを設置することにより、以下のことが期待できます。

安全管理の向上

AEDは誰でも使用することができます。音声ガイドに従って操作し、電気ショックが必要かどうかはAEDが自動で心電図を解析し判断、心臓に痙攣が起きているときのみ実施します。一般市民がAEDを使用して人命救助した事例は年々増えており、施設内外における安全管理の向上につながります。近年では近隣住民に使用する場面も想定してAEDを設置する施設が増えています。

施設価値の向上

AEDが設置してあることで、利用者に万一のときの安心感を持ってもらうこともできるため、施設の利用価値、存在価値も向上します。

CSR効果の向上

CSRとは企業などの社会的責任のことです。コンプライアンスや情報開示、環境問題への取り組みなどとともに、従業員や顧客、近隣住民の安全に配慮することで、相対的な社会的価値が向上します。

AEDの設置が推奨されている場所とは?

一般財団法人日本救急医療財団が発表している「AEDの適正配置に関するガイドライン」には、AEDの設置が求められる施設の種類が記載されています。

【AED設置が推奨される施設】(2024年2月時点の情報です)

  • 駅、空港、バスターミナル
  • 「道の駅」、高速道路などのサービスエリア/パーキングエリア
  • 旅客機や長距離列車、旅客船など長距離輸送機関
  • スポーツジムやスポーツ関連施設
  • デパートやスーパーマーケットなどの大型店
  • 大型集客娯楽施設、観光施設、葬祭場など人が多く集まる場所
  • 人口密集地域にある交番や消防署などの公共施設
  • 50人以上が入所する大規模高齢者施設
  • 幼稚園、小中学校、高等学校、大学や専門学校などの学校
  • 多くの従業員が在籍する企業の大規模事業所 など

【AED設置が望ましいとされる施設】(2024年2月時点の情報です)

  • 地域のランドマークになる施設
  • 保育園・認定こども園
  • 集合住宅 など

上記の施設についても、「AEDの適正配置に関するガイドライン」において「AED設置が考慮される施設(例)」として挙げられています。

AEDの種類について

AEDを製造しているメーカーは複数あり、メーカーや製品によっていくつかの種類があります。AEDは基本的に誰でも使用できる設計になっていますが、設置場所の環境や必要な機能に応じて適したものを選びましょう。
AEDの種類については以下のような製品があります。

  • 航空法対応
  • 監視端末対応(通知機能)
  • 環境に対する性能が優れた製品

飛行機に持ち込んで預けたりするには、AEDバッテリーのリチウム含有量や電力量が制限されているので、航空法の規格に対応した製品を選ぶ必要があります。
AEDは確実に動作することが重要なため、セルフメンテナンス情報や異常発生などの情報が通知される監視端末対応(通知機能)の製品は、管理者が常駐していない施設などで役立ちます。また、AEDの管理温度は一般的に0〜50度で、防塵防水性に優れたAEDもあるため、屋外環境や携帯移動時にも適しています。

AEDの導入手段について

AEDの導入手段には、レンタル、リース、購入などがあります。

レンタル
  • 長期契約可能(月額払い契約)
  • 初期費用が抑えられる
  • 消耗品の交換などのメンテナンス料金が含まれていることが多い
リース
  • 長期契約可能(月額払い契約)
  • 初期費用が抑えられる
  • 動産総合保険が付いている場合が多く、天災や盗難に関して補償あり
購入
  • 総額の費用は安くなる
  • 税金部分が減価償却に当てられるため、法人税の節税、損益の把握が可能
  • 消耗品の購入が必要になる

レンタル

AEDをレンタルする場合、各AEDメーカーや販売代理店から直接レンタルします。初期費用が抑えられる点と電極パッドなどの消耗品の定期交換、使用した消耗品の交換がレンタル料に含まれていることがメリットです。契約内容はサービスによって異なるため、機種、サービス内容、料金を確認しましょう。

リース

レンタル同様、初期費用が抑えられる点がメリットです。リースは利用者と販売店をリース会社が仲介しての三者間契約になるため、その点がレンタルとことなります。一般的に商品の購入金額を利用者が決め、その上でリース会社がリース料率を設定し、毎月のリース料金が決まります。また、動産総合保険が付いている場合が多く、天災や盗難に関して補償されています。

購入

長期間設置する場合やランニングコストを抑えたい場合に適しています。各AEDメーカーや販売代理店などから購入することができます。AED本体のみを購入した場合は定期交換品を都度購入する必要がありますが、販売店によっては購入時に定期交換品に関するプランを選択できる場合もあるため、それらの活用もおすすめです。

AED本体や消耗品には耐用期間があり、いざというときに正常に動作するよう定期的に消耗品を交換し、本体に異常がないか毎日確認する必要があります。方針や予算に応じて導入手段を検討するようにしましょう。

ALSOKならAEDの導入から管理・講習までをトータルサポート

AEDは、もしものときに役立つ救命のための医療機器です。もし隣にいる人や知り合いが急に倒れ意識がないときに、適切に救命措置が施せるよう事業所や施設などに設置しておくと安心です。AEDを設置する場合は、使いやすさや耐用年数・保証期間、サポート体制などをチェックして選ぶようにしましょう。

ALSOKではAEDの販売・レンタル・管理だけでなく、救急トレーニングの講習も実施しています。講習を受けることでAEDの正しい使い方を身につけ、万一の際にもAEDを用いて適切に救命活動を行うことができるでしょう。安全な施設環境、企業環境を作るために、AEDの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

心肺蘇生法とAEDの使い方はこちらをご確認ください。