AEDの導入・設置する際のポイント

2019.05.23
いつ誰に起きるかわからない心停止に素早く対応する救命処置として、企業のオフィスビル、工場、公共施設など、あらゆる場所で導入されつつあるAED。AEDがその役割を果たすためには、設置する場所や導入後の管理などが非常に重要です。今回は、AEDを導入・設置する際に知っておくべきポイントについて確認していきましょう。
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AEDを設置すべき場所
心室細動などの心停止は、命に関わる重大な事態です。心停止は国内における主な死亡原因のひとつであり、1日に約200人もの方が心原性心肺停止(心臓に原因がある心肺停止)によって救急搬送されています。そして、そのなかには普段健康に過ごしていた方も多く含まれています。事前の症状や徴候なしに突然発生するケースは決して少数ではなく、老若男女を問わず、いつ誰に起きるかわからないのが心停止の恐ろしいところです。
そういった心停止に効果的な治療法が、AED等を用いた電気ショックによる除細動です。心室細動とは心臓が不規則に痙攣しているような状態であり、AEDで電気ショックを与えることで心臓本来のリズムを取り戻させることが期待できます。そのほか、心室頻拍と呼ばれる不整脈の一種にもAEDは有効とされます。
しかし、AEDによる除細動の成功率は1分経過するごとに約10%低下すると言われており、心停止からほんの10分程度で命が助かる確率は限りなく低くなってしまいます。また、一命を取り留めたとしても、対応が遅くなるほど後遺症が残る可能性が高くなります。つまり、心停止の傷病者が発生した場合は、1分1秒でも早くAEDを使用することが非常に重要です。そしてそのためには、できるだけ身近な場所にAEDが設置されていなければなりません。
近年ではAEDが普及し、多くの場所でAEDを見かけるようになりました。また、人々の認知度や理解度も深まり、一般市民によるAEDを用いた救命活動が行われるケースも増えつつあります。しかしながら、まだまだAEDを使用できていない場合や、到着まで時間がかかってしまう場合も多く、いつでも直ちにAEDを使用できる状況には至っていません。
日本救急医療財団による「AEDの適正配置に関するガイドライン」によれば、多くの人が集まる駅・空港や商業施設、集客施設、市役所や交番などの公共施設、会社・工場などはAEDの設置が推奨される施設の例として挙げられています。また、心停止傷病者が発生しやすいスポーツ関連施設や高齢者の多い介護・福祉施設、学校なども、AEDの設置が望ましい施設です。どんな場所でもAEDが設置されるに越したことはありませんが、より心停止の発生頻度が高い場所やリスクのある場所、また救助の手があり、心停止を目撃されやすい場所が特にAEDを設置すべき場所となっています。
一方で、自宅における心停止もかなり多くの割合を占め、集合住宅などの人口が密集した環境では、AED設置による効果が期待されています。実際に個人でAEDを所有している方もおり、家族や周囲の人の万が一への備えとなっているようです。
AEDの配置
AEDは救急の場面で使用されるものです。わかりにくい場所に置かれていたり、持ち出しに手間取るような形で保管されていたりすると、早急な対応が困難になってしまいます。また、敷地の広さに対してAEDの設置数が少ない場合も、対応が遅れる原因となるでしょう。
配置の目安は、どこにいてもAEDを1分以内に用意できるような場所に設置されていることです。大規模な工場を持つ企業において、実際にそういった基準でAEDを設置しているケースもあります。例えば企業のオフィスビルの場合、奇数階または偶数階ごとにAEDが設置されていれば、どの場所からでも比較的短時間でAEDを用意することができるでしょう。
しかし現状では、エントランスに1台のみ設置されているというような場合も多いのではないでしょうか。もちろん1台でも設置されているに越したことはありませんが、広さ・規模に対してAED設置数が少ないということは、いざというときの対応スピード、ひいては救命率にも影響するということも忘れてはいけません。

また、AEDの設置場所については、普段から多くの人の目に触れる場所が望ましいとされます。オフィスビルであれば、エントランスや受付、エレベーター・階段の付近、社員食堂などが設置場所の候補として挙げられます。そして、誰でもすぐに持ち出せる状態になっている必要があります。担当者しか知らない管理体制や、鍵をかけたロッカーなどでの保管は避けましょう。
なお、看板や案内表示などを使用して、設置場所をわかりやすく示すことも重要です。屋内はもちろん、建物の外で心停止傷病者が発生する可能性もあるため、出入り口のドアなどにAEDの設置を示すステッカーなどを掲示しておくと、AEDを探す時間の短縮につながります。
休日に閉館している公共施設や学校などの場合は、できれば閉館時のことについても考えておきたいところです。例えば、休日に屋外でAEDが必要な事態になっても、設置されている建物の鍵が閉まっていればAEDは使用できません。そのため、学校のAEDを玄関前などの屋外に設置するようにしている地域も実際にあります。
このように、AEDは導入の有無だけでなく、その効果を最大限に活用するためには設置する場所や保管方法、台数も非常に重要であることを覚えておきましょう。
AED導入にあたって
導入する際は、まずAEDの存在を周知することが大切です。実際に、AEDを導入しているにも関わらず、従業員が所在を認識していないという企業も少なくありません。目立つ場所に設置することはもちろんですが、導入したことを告知したり、防災訓練などの際に確認を行ったりと、AEDを設置していることをしっかり意識させるようにしましょう。そうすることで、いざという場面での素早い対応が可能になります。
また、AEDの管理では日常点検が欠かせません。AEDには自動的にセルフチェックを行う機能が備わっており、異常があればランプなどで知らせる仕組みになっています。AEDが使用可能であることを日々確認しておきましょう。
さらに、パッドやバッテリーなどの消耗品については定期的に交換する必要があります。一般的に、パッドは2年程度、バッテリーは3〜5年程度で交換しなければなりません。レンタルの場合は業者がサポートしてくれることもありますが、基本的には管理者にてしっかり使用期限を把握・管理することが求められます。

AEDが必要な場面で使用できないという事態にならないためにも、あらかじめしっかりとした管理体制を組んでおきましょう。
AEDの訓練について
AEDの導入後は、周知や適切な管理をするとともに、より多くの人たちがAEDを使用できる状態にしておくことも重要です。いつ誰が心停止傷病者のそばに居合せるかわからないため、企業内での心停止による最悪の事態のリスクを減らすためには、積極的に訓練を行うことが望ましいと言えます。
AEDは専門知識のない非医療従事者でも扱える仕組みになっているものの、訓練を受けたことがなければ、いざという場面で正しく使用するのは容易とは言えません。管理者はもちろんのこと、できるだけ多くの従業員たちにAEDの使い方を把握させるようにしましょう。
企業では、防災訓練などの際にAEDを用いた心肺蘇生法の訓練を行うのが一般的です。AEDを取り扱っている業者や消防署などが出張講習を行っている場合が多いので、プロのアドバイスを受けながら訓練を行うとよいでしょう。こういった訓練は、どうしても防災担当者などの限られた従業員だけが訓練を受ける形式になりがちですが、なるべく多くの従業員が参加できる仕組み作りを心がけてください。最近では動画サイトでAEDの使用方法を解説した動画が視聴できるので、そういったものを活用するのもおすすめです。

AEDは導入すればそれで終わりということはなく、設置や管理、訓練など、万が一の際に人命を救えるよう考慮すべき点が多くあります。心室細動などの心停止に対するAEDの効果はすでに世界で認められており、今後はそのAEDをできるだけ早く、確実に使用できる環境を作っていくことが求められているのです。
ALSOKではAEDを安心してご利用いただくためのトータルサポートを行っています。導入・設置はもちろん、管理上でのご相談やAEDの講習なども承っています。AEDの導入をご検討中の方はぜひALSOKへご相談ください。
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