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安全配慮義務とは?職場の安全を守るために企業がすべきこと

安全配慮義務とは?職場の安全を守るために企業がすべきこと
2021.03.23

職場では、つねに従業員の安全を守ることが必要です。わが国の法律にも安全配慮義務が明記されており、業種や職種を問わずすべての職場において働く人の生命や身体の安全が確保されなければなりません。
この記事では職場の安全配慮義務に関する概要をご説明し、その必要性や違反した際のリスク、新しい生活様式における安全配慮の形についてご紹介します。

安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは、従業員が健康と安全を保ち、働きやすい環境でつねに業務に従事できるよう会社が配慮する義務を指します。当然のことですが、従業員に賃金さえ支払っていればどのような働かせ方をしてもよいということはありません。
労働契約法第5条の条文には、以下のように記載されています。

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

安全配慮義務の規定がされた背景

近年では業務中の怪我などにとどまらず、ハラスメントなどの問題が顕在化することで安全配慮義務に関する議論が多々起こっている状況です。ここでは安全配慮義務が規定された背景について見ていきましょう。

【どんなときに安全配慮義務違反になる?】

安全配慮義務違反の基準としては、違反とされやすい代表的なケースが3つ挙げられます。まず1つは、「過労死ライン」と呼ばれる月間80時間から100時間を超える超過勤務が発生しているケースです。2つ目は、大雨や大雪、台風接近時など安全が保証されにくい気象状況のなか勤務を強いるケースです。3つ目は職場の気温や室温が30度以上で、熱中症の発症が予測される状況で勤務を強いるケースです。

【予見可能性と結果回避性】

上記のように、明らかに従業員の人命や健康をおびやかす可能性がある状況での勤務は安全配慮義務違反の判断が容易です。ただし上記のケース外でも、従業員の心身の健康被害を予測できていたか(予見可能性)、その回避義務に会社がしたがったか否か(結果回避義務)が問われることになります。これらへの対処を会社が行わず、かつ従業員の健康被害との因果関係が認められる場合、安全配慮義務違反に該当します。

職場におけるメンタルヘルスの問題も、安全配慮義務に関わる重要課題です。
特に近年では、職場で精神障害を負ったことによる労災補償の請求が増加しています。以下は2015年~2019年の精神障害による労災補償の状況をグラフにしたものです。

2015年~2019年の精神障害による労災補償の状況グラフ

上記の「決定件数」と「支給決定件数」の違いは以下のとおりとなります。

  • 決定件数:前年度以前に請求があったものを含め、当年度中に「労災か、そうでないか」の決定が行われた件数
  • 支給決定件数:労災と認定され、給付金の支給が決定したもの

このデータを踏まえ、企業は従業員の心の安全を守る配慮の徹底に向け、今後さらなる取り組みが必要であると考えられます。

なぜ企業は安全配慮義務に取り組む必要があるのか

なぜ企業は安全配慮義務に取り組む必要があるのか

企業には、つねに安全配慮義務に則った労働環境を築き、それを維持することが求められています。ここでは、企業が安全配慮義務に取り組むことが必要な理由についてご紹介します。

社員の定着

環境改善によって働きやすい職場が実現できれば、社員の中途退社を防ぐこともできます。優秀な社員を流出させず長く定着させることは、企業の競争力を確保し維持することにもなり得ます。

生産性の向上

すべての従業員が心身ともに健康な状態でつねに仕事に従事できれば、業務上のパフォーマンスも向上します。その結果業務の生産性も向上し、企業のさらなる成長にもつながります。

企業のブランディング

働きやすい職場をめざすことで、その取り組みは内部の環境改善にとどまらず、企業そのものの好感度や人気にも直結します。「従業員に良心的な企業」と内外からの支持を獲得することで、効果的なブランディングにもつながります。

安全配慮義務に違反した場合

安全配慮義務に違反した場合

安全配慮義務に違反し、それが発覚した際、企業にもたらされる影響についても見ていきましょう。

損害賠償など直接的な影響

安全配慮義務違反自体には罰則はなく、労働契約法の条文にも罰則に関する記載はありません。ただし、被害を受けた従業員側が訴えを起こした場合は民法が適用され、違反が認められれば企業が責任追及の対象となります。その違反によって従業員が健康被害を負った場合は、損害賠償を支払うことになります。

企業のイメージダウン

安全配慮義務違反が認められ、企業がその責任を追及されれば報道などによってその事実が公表されることとなります。企業のイメージダウンにも直結し、業績を大きく悪化させる事態にもなりかねません。

安全配慮義務違反に関する判例

1.「陸上自衛隊事件」

陸上自衛隊の隊員が車両整備工場で車両の整備中、後退したトラックにひかれ死亡した事故を、国の安全配慮義務違反として遺族が訴えた事件です。1975年の最高裁の判決により、国の公務員に対する安全配慮義務違反が認められました。

2.「川義事件」

会社に単独で宿直勤務していた社員が、元社員の強盗に襲われて殺害された事件が発生しました。このとき高額商品が多数ある社内で防犯措置を怠っていたことを、安全配慮義務に違反すると遺族が訴えを起こしたものです。こちらも1984年の最高裁の判決により、安全配慮義務違反があるとし会社は損害賠償責任を負うことになりました。

企業が安全配慮義務を順守するための対策事例

企業が安全配慮義務を順守するための対策事例

企業において、安全配慮義務に違反しないことは必須事項です。ここでは、具体的にどのような対策をとって安全配慮義務の遵守に努めるべきかをご紹介します。

1.労災・事故防止対策を徹底する

事故が発生する可能性がある場所には、その危険を回避するための安全装置を必ず設置し、安全確保に努めなければなりません。

2.労働時間の管理を徹底する

従業員が残業をする際には上司へ申請を行い、承認を受けなければ残業を行ってはいけないとするなど、労働時間の管理を徹底しましょう。労働基準法では、「時間外労働の上限規制」が定められています。これによると、休日労働を含まない残業は原則として「月あたり45時間、年あたり360時間」を超えないこととされています。
臨時的な事情があり労使合意に基づいて残業を行う場合も、「月あたり100時間未満、2~6か月の平均80時間以内(いずれも休日労働を含む)」「年あたり720時間以内(休日労働を含まない)」を守る必要があります。
なお、この際は「管理監督者」にあたる人も安全配慮義務対象者に該当するため注意が必要です。管理監督者は、労働基準法第41条「労働時間に関する規定」上では安全配慮義務対象者適用外ですが、労働基準法10条では「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」とされ、安全配慮義務の対象を企業やその役員に限定していません。現場で従業員を管理する管理監督者にも、安全配慮義務が課されます。
管理監督者は労働時間に関する規定に基づく従業員管理を行わなければならず、また管理監督者自身も労働時間に関する規定を守って勤務することが求められます。

3.安全衛生管理体制を徹底する

各部署や現場において、衛生管理者や安全衛生推奨者を設置し、安全衛生教育を実施する必要があります。また従業員の健康状態を把握すべく、年1回の健康診断を実施しなければなりません。

4.職場のいじめやハラスメントを撲滅する

従業員の心の健康(メンタルヘルス)も、決して職場で損なわれてはいけないものです。特定の従業員に対するいじめや不当なハラスメント(嫌がらせ)を許さないという方針を明確にし、被害に関する相談・報告の体制を構築しましょう。
また、どのような行為がハラスメントに該当するかの認識を全社的に標準化する必要があります。このため、企業は定期的にハラスメント対策教育を行いましょう。

5.メンタルヘルス対策を徹底する

先にも述べた通り、近年は精神障害を負ったケースでの労災補償が増加しています。従業員のメンタルヘルス問題に適正な対処を図るためには、メンタルヘルスに関する教育や情報提供など、積極的なメンタルヘルス対策が必要です。
社内カウンセラーを設置するなど、生じた課題に速やかに対応できる現場の構築も重要です。

6.感染症対策などのためテレワーク環境を拡大する

社内における感染症対策も、安全配慮義務に直結する課題です。社内における感染症対策を徹底するとともに、テレワーク環境を拡大することも安全確保のために求められます。

コロナ禍での安全配慮義務

感染症対策としてテレワーク環境を整え拡大する必要性は前の項目で述べましたが、テレワーク環境を拡大したことにより、新たに配慮が必要な安全配慮義務上の課題が発生しています。
テレワーク環境下で起こり得る以下の身体的・精神的悪影響に対応することも必要となります。

  • 身体的影響:運動不足による肥満や生活習慣病の悪化
  • 精神的影響:コミュニケーションの欠如や単独業務の継続による精神状態の悪化

企業のテレワーク導入に関することや、新型コロナウイルス感染症対策については、以下のコラムにもくわしくご紹介しています。

ALSOKの各種サービスをご紹介

ALSOKでは、企業の安全配慮にも役立つさまざまなサービスをご提供しています。

【ストレスチェックサービス】

2015年12月より、職場でのストレスチェックが義務化されました。ALSOKでは、法令に準拠したストレスチェックサービスをご提供していますので、働きやすい職場作りにぜひお役立てください。

【AED(自動体外式除細動器)】

ALSOKでは、突然の体調不良に備えるAED(自動体外式除細動器)のリース・レンタルサービスも取り扱っています。職場の安全配慮にとても有用なAEDの設置を、ぜひご検討ください。

【情報セキュリティ】

テレワーク環境が拡大したことにより、重要な情報が盗まれたり流出したりするリスクへの対策が安全配慮の面で必要です。ALSOKでは、企業のニーズに合わせた情報セキュリティ関連サービスも取り扱っています。

【出入管理】

出入管理はオフィスの防犯対策と、従業員の在室状況確認の両方に役立ちます。カードリーダーや指紋認証のほか、新しい生活様式に対応する顔認証による出入管理システムもご用意しています。

【機械警備】

ALSOKの警備サービスは、ガードマンを常時配置する形だけではありません。監視カメラやセンサーで異常を感知し、緊急通報によりガードマンが現場へ向かう「機械警備」も取り扱っています。機械警備については、以下のコラムにもくわしくご紹介しています。

まとめ

安全配慮義務に違反した状況下で事故が発生すると、企業は責任を問われます。被害を受けた従業員への損害賠償が発生しますが、死亡や障害が残るなどの重大なケースでは労災保険で賄いきれなくなることも少なくありません。
たとえば大型機器に安全装置を設けていなかったり、吹き抜けの上部に転落防止の手すりを設けていなかったりすれば、安全配慮義務を怠っているとひと目で分かります。しかし最近では莫大な超過勤務の末の過労死や、ハラスメントによる心身の不調も大きな問題となっています。それらの健康被害も企業が安全配慮義務を怠ったとみなされることがあるため、企業は勤務状況や心の健康も踏まえた安全配慮を行うことが必要です。