防災訓練の必要性と種類について
防災・減災を実現するためには、災害時を想定したシミュレーションを行い、いざという時に迅速な初動対応ができるよう、1人ひとりが必要な手順を学ぶ必要があります。
そこで役に立つのが、自治体や企業が実施する「防火防災訓練」です。大規模自然災害による被害を減らし、大切な命を守るためには、消防・警察・自衛隊による「公助」だけでなく、家族による「自助」、近隣住民による「共助」が欠かせません。本記事では、防災訓練の重要性や、広く実施されている防災訓練の種類についてわかりやすく解説します。
防災訓練はなぜ必要?日頃から防災意識を高める3つの重要性


防災訓練はなぜ必要なのでしょうか。内閣府の「平成29年度 防災に関する世論調査」によると、防災訓練に「参加したことがある」と回答した人の割合は、全体の半数を下回る40.4%でした。「訓練が行われていることは知っていたが、参加・見学したことはない」人は30.7%、訓練が行われていることを知らなかった」人は24.0%で、併せて54.7%の方が防災訓練に参加・見学したことがない状況です。[注1]
[注1]内閣府:平成29年度 防災に関する世論調査
防災訓練は自然災害への備えとなるだけでなく、地域防災力を高め、企業・法人にとってはBCP対策ともなる欠かせない取り組みです。ここでは、防災訓練を定期的に行うことの重要性を解説します。
自然災害が多い日本では平時の備えが欠かせない
日本は自然災害の発生件数が多い国です。たとえば、日本列島は台風を始めとした熱帯低気圧の通り道になっており、2010年から2019年までの10年間での台風の発生数は平均25.2個、全国への接近数は12.3個、そのうち1年あたり3.7個の台風が日本に上陸しています。[注2]
[注2]気象庁:台風の統計資料
また、日本は地震大国でもあります。2009年から2018年にかけての10年間で、全世界で発生したマグニチュード6以上の地震のうち、17.4%にあたる263件が日本で起きています。[注3]
[注3]国土交通省:河川データブック 2019
今後も、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震のリスクが指摘されており、地震・津波といった自然災害への備えは欠かせません。
こうした自然災害を想定して、保存食や衣類、携帯トイレを始めとした防災用品・セットの確保や、ハザードマップを活用した避難経路のチェックだけでなく、平時より防災訓練を行い、迅速な行動がとれるよう防災意識を養う必要があります。総務省消防庁の調査によると、平成29年度(2017年)に全国の市町村で8,814件(うち実働訓練は5,713件)、都道府県単位では856件(うち実働訓練は428件)の防災訓練が実施されています。[注4]
[注4]総務省:平成30年版 消防白書
市民1人ひとりが防災訓練へ定期的に参加することが、自然災害時の迅速な初動対応につながります。
防災・減災は地域単位での協力が必要
防災・減災対策をするうえで、地域単位での協力は不可欠です。自助・共助の意識を地域コミュニティに根付かせ、地域防災力を向上させることが、自然災害から多くの命を守ることにつながります。
実際に、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)では、人命救助の主体は消防・警察・自衛隊による「公助」よりも、家族や近隣住民を中心とした「自助・共助」が中心でした。
災害時の救出者数のうち、およそ77.1%にあたる約27,000人が近隣住民等によるもので、地域単位での迅速な初動対応が、人的被害を減らすために必要なことがわかっています。[注5]
[注5]総務省:令和2年版 防災白書
防災訓練の目的の1つは、「自分たちのまちは自分たちで守る」というスローガンに基づき、自助・共助の意識を醸成することです。多くの方が防災訓練に参加することで、安心・安全な生活を守ることにつながります。
企業・法人にとってはBCP対策になる
令和2年2月(2020年)時点で、なんらかのBCP(事業継続体制)を策定している企業の割合は、大企業で68.4%、中小企業で34.4%です。[注5]
[注5]総務省:令和2年版 防災白書
自然災害が発生した際や、テロ行為などに遭った際、事業や企業資産、従業員への損害を最小限化するためには、平時より防災訓練を行い、緊急時の初動対応をマニュアル化しておく必要があります。社内訓練を行うことが困難でも、地方自治体の防災訓練に参加し、防災能力の維持向上に努めることも可能です。企業や法人にとっても、BCPを策定するために防災訓練の実施が必要です。
4種類の防災訓練の違いを解説


防災訓練は大きく分けて4種類あります。ここでは、それぞれの目的の違いや、訓練内容の詳細について解説します。
避難誘導訓練:災害時の避難や安全確保の流れを学ぶ
避難誘導訓練とは、地震・火事などの災害時を想定し、周囲の安全確認や、建物内からの避難行動をシミュレーションする訓練です。
災害の種類に合わせて、的確に避難ルートを選べるよう訓練する必要があります。たとえば、火事であれば出火元を避けるように避難経路を選び、地震であれば倒壊の危険のある構築物や、ガラス片で怪我をする恐れがある窓際を避けて避難しなければなりません。
また、店舗や施設の場合は、利用者の安全確認・避難誘導も必要です。具体的な災害シナリオを策定したうえで、マニュアル通りの初動対応ができるよう繰り返し訓練を行いましょう。
初期消火訓練:火災発生時の初動対応を学ぶ
火災発生時の初期消火の手順を学ぶのが、初期消火訓練です。初期消火が可能な時間は短く、火が天井に燃え移った段階で消火器の使用が困難となるため、迅速な初動対応が欠かせません。
実動訓練の場合は、水と空気だけで使える訓練用消火器を使用し、初期消火のリハーサルを行うのが一般的です。訓練用消火器の価格は1個あたり1万円~2万円程度であり、地方自治体による初期消火訓練だけでなく、訓練用消火器を用いた社内訓練を実施するのも効果的です。
応急救護訓練:AEDの使い方や心肺蘇生法を学ぶ
応急救護訓練では、AED(自動体外式除細動器)の使い方や、胸骨圧迫や人工呼吸といった心肺蘇生法の手順を学びます。心停止から5分経過すると、およそ半数の傷病者が亡くなってしまいます。応急救護訓練を受けることで、災害時の傷病者を始めとして、いざという時に迅速な救護対応が可能になります。応急救護訓練を実施する際は、正しいやり方を学ぶため、地域の消防署の協力を得て行うのが一般的です。
救助訓練:災害時の自助・共助を学ぶ
救助訓練では、負傷者の救出や搬送の手順をシミュレーションします。大規模な地震や、地すべり・土砂崩れ、大雨や台風による家屋の倒壊では、瓦礫の下に埋もれた負傷者や、担架による搬送が必要な重傷者が発生します。
いざという時のため、てこの原理を用いた瓦礫の除去、ブルーシートを担架のように使う方法などを習得することで、より多くの人命を救うことが可能です。自然災害の被害を抑えるには、近隣住民による自助・共助が欠かせません。大規模な救助訓練を企業・法人が独力で行うのは難しいですが、実施している地方自治体や公共団体があれば、なるべく参加しましょう。
そのほか、防災頭巾やヘルメットなどの防護グッズをすぐに使用できるよう訓練する「防護訓練」や、災害伝言ダイヤルを使った連絡確認の手順を確認する「安否確認訓練」などがあります。
防災訓練に参加して平時より防災意識を養おう
防災訓練の役割は、具体的な災害シナリオに基づき、災害発生直後の的確な初動対応を学ぶ点にあります。避難誘導訓練・初期消火訓練・応急救護訓練・救助訓練のほか、防護訓練や安否確認訓練についても繰り返し実施することが理想的です。自然災害の被害を減らすためには、消防・警察・自衛隊による「公助」だけでなく、家族・近隣住民による「自助・共助」が必要不可欠です。なるべく防災訓練に参加し、日頃から防災意識の醸成に努めましょう。
ALSOKでは企業や自治体だけでなく、マンションの管理組合様等でもご利用できる災害図上訓練をご提供しています。この訓練では、災害に備えるための知識を実践的に身につけられるよう、ALSOK専門員が現地調査を行い、周辺自治体が発表している災害の想定や地域環境を踏まえた実践的なプログラムをご提供します。訓練中に行われるグループワークでは、参加者一人ひとりが自ら考え判断力を養うことが出来るよう、実際の周辺地図を用いて、起こり得る災害を想定したシミュレーションを訓練することが可能です。
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