高齢者が転倒したらどうなる?転倒リスクを減らす予防策も解説

高齢の親と一緒に歩いていて、ヒヤッとしたことはありませんか。「こんな小さな段差で?」と驚くような場所で転倒する高齢者も少なくありません。なかには、何もないところで転んでしまう方もいます。若い頃なら笑い話で済むことも、高齢者の場合は転倒が思わぬ事態につながることもあります。この記事では、高齢者を転倒から守る方法について解説します。
目次
多くの高齢者は自宅内で転倒している
東京消防庁の調査によると、令和5年に転倒事故で救急搬送された高齢者の人数は67,054人で、過去8年間でもっとも多い数値になっていることが分かります。

出典:東京消防庁「救急搬送データからみる日常生活の事故(令和5年)」
また、高齢者の転倒事故の発生場所は「住宅等居住場所」がもっとも多く、全体の60.4%を占めています。さらに、転倒場所の詳細を見てみると、1位が「居室・寝室」、2位が「玄関・勝手口」、3位が「廊下・縁側」といずれも屋内であることが分かります。
このことからも、たとえ外出せずに家にいる場合でも、高齢者は転倒するリスクが高いといえます。


1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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事故発生場所 | 居室・寝室 | 玄関・勝手口等 | 廊下・縁側・通路 | トイレ・洗面所 | 台所・調理場・ ダイニング・食堂 |
救急搬送人員 | 22,333人 | 2,988人 | 2,059人 | 955人 | 889人 |
出典:東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」
高齢者が転倒すると起こるリスク
高齢者の転倒には、若い人と比べてさまざまなリスクが伴います。ここでは、高齢者が転倒した際に考えられる主なリスクを解説します。
けがをする
高齢者の転倒は、大きなけがにつながるおそれがあります。若い頃は軽傷で済んでいたけがも、高齢者の場合は重傷化したり、治るまでに時間がかかったりする可能性があります。特に骨粗しょう症で骨密度が低下している場合、転倒しただけで骨折をすることも珍しくありません。
入院が必要になる場合がある
転倒が高齢者に与える危険性は、足を捻ったり腕を骨折したりなどの外傷だけではありません。転倒しけがすると入院が必要になる場合があり、症状によっては、入院中はベッドでほぼ寝たきりの生活を送る可能性もあります。その結果、足腰の筋力が低下し、車椅子生活を余儀なくされる方も珍しくありません。また、頭を激しく打っている場合などは、より重篤な症状を招くリスクもあります。
認知症を発症するおそれがある
高齢者は若い人に比べてけがが治りにくいため、同じけがでも入院期間が長引く傾向にあります。慣れない入院生活のストレスや環境の変化は、高齢者の認知機能に悪影響を及ぼすことがあり、認知症を発症・進行させるきっかけになる場合があります。
転倒による恐怖心でそのまま寝たきりになる可能性がある
厚生労働省の調査によると、介護が必要になった原因として第3位が「骨折・転倒」となっており、認知症や脳血管疾患(脳卒中)に次いで多いことが分かっています。これまで介護がなくても元気だった高齢者が、転倒がきっかけで介護が必要になるケースもあるのです。
また、転倒に対する恐怖心がトラウマになり、自宅にこもりがちになる方も多いです。外出する機会が減ることで、友人や近隣住民とのコミュニケーションが減り、社会的に孤立してしまう可能性があります。その結果、寝たきりになってしまう高齢者もいます。
出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
再転倒のリスクがある
高齢者が転倒する場合、筋力やバランス力の低下が見られたり、自宅の中が転倒しやすい環境になっていたりする可能性が高いため、再転倒のリスクも高くなります。一度は軽傷で済んだ転倒も、2回目は大きなけがにつながる可能性があるため、早期の対策が求められます。
なぜ高齢者は転倒しやすいのか
高齢者が転倒しやすくなる背景には、加齢に伴う身体機能の低下や生活環境、病気の影響など、さまざまな要因が関係しています。ここでは、転倒の主な原因を詳しく解説します。
加齢による身体機能の低下
年齢を重ねると筋力や柔軟性、バランス感覚が徐々に低下するため、とっさのタイミングで俊敏に動いたり、体を守る動きができなくなったりして転倒する方が増えます。若い頃のように足を高く上げられない方もいるため、すり足状態で歩く高齢者も多く、少しの段差でもつまずき転倒しやすくなります。
運動不足
高齢になると外出機会が減り、運動する機会も減ります。運動の習慣がなくなることで筋力や関節の可動域がさらに低下し、歩行時のふらつきや不安定さにつながります。
住まいの環境
住まいが高齢者にとって転倒しやすい環境になっている場合もあります。たとえば、立つ・座るなどの動作をする場所に手すりがなかったり、階段が多かったりすると高齢者がつまずく原因になります。筋力が低下しており、足を高く上げることが難しい高齢者にとっては、わずかな段差も障害となります。
病気や薬の影響
高齢者の転倒には、持病が関係していることも少なくありません。たとえば、白内障などにより視力が低下すると、足元が見えにくくなり、カーペットや敷居のようなわずかな段差にもつまずいて転倒してしまうのです。また、持病の薬の影響でめまいやふらつきが起こり、転倒してしまうケースもあります。
自宅内で転倒しやすい場所
高齢の親や祖父母の転倒が心配な場合は、まず自宅内のどこにリスクが潜んでいるかを把握することが重要です。以下のような場所は、特に転倒が起きやすいため、日常的に注意しておきましょう。
玄関
玄関は、靴の脱ぎ履きでバランスを崩して転倒しやすい場所です。段差がある玄関も多く、足を取られてつまずくリスクがあります。また、日光が差し込まない暗い玄関の場合は、足元が見えにくく転倒の危険性が高まります。
階段
階段は、足を高く上げる必要があることから、筋力が低下している高齢者にとっては転倒しやすい場所です。手すりがない場合や照明が暗い場合は、特につまずくリスクが高いため、なるべく早く対策する必要があります。
浴室
浴室も転倒が多い場所の1つです。床が濡れて滑りやすくなることに加え、浴槽の出入りや洗い場での移動時に体のバランスを崩しやすくなります。狭いスペースで転倒すると、壁や浴槽にぶつかって大けがを負うおそれもあります。
さらに注意したいのが「ヒートショック」と呼ばれる現象です。暖かい部屋と寒い脱衣所や洗い場、暖かい浴槽などを行き来することで血圧が急上昇・急低下し、体に大きな負荷がかかる現象を指します。高齢者や持病のある方はヒートショックになりやすいとされており、軽度でもめまいなどが生じ、転倒するリスクがあります。浴槽内で溺れる危険もあるため注意が必要です。
トイレ
トイレは、便器の高さや向きに合わせて体の方向を細かく調整する必要があり、バランスを崩しやすい場所です。特に、立ち座りの際に手をかける場所がなかったり、足元のマットが滑りやすかったりすると、転倒リスクが高まります。また、転倒時に便器やドアノブなどに頭や体をぶつけ、けがをする可能性もあります。
廊下
廊下に物が置かれていると、足を取られてつまずく原因になります。また、夜間に照明がついていない場合や明るさが十分ではない場合、足元が見えにくく、トイレなどに向かう際に転倒する危険性があります。さらに、高齢者は足腰の筋力が低下しているため、滑りやすいスリッパや靴下では踏ん張ることができず、転倒してしまう場合があります。
高齢者の転倒を防ぐには対策が欠かせない
高齢者の場合は、小さなきっかけでも転倒につながるおそれがあります。そのため、自宅内では細やかな対策が必要です。
転倒しにくい環境を作る
高齢者の転倒防止には、まず、転倒しにくい環境を作ることが必要です。たとえば、介護リフォームで廊下や玄関に手すりを付けたり、段差をなくしたりする方法があります。浴室にも手すりや滑り止めマットがあると安心です。さらに、つまずきやすいカーペットは敷かない、ケーブルなどの物を床に置かないようにするのも良い対策です。ベッドは壁側に設置することで、転倒リスクを軽減できます。
また、外出時には、滑りにくい靴を履くことも転倒予防に効果的でしょう。
一緒にストレッチやトレーニングをする
筋力アップも転倒防止に有効であるため、無理せず続けられるような簡単なストレッチやトレーニングを日課に取り入れるのもおすすめです。高齢の親や祖父母がいる場合、一緒にやることで取り組みやすくなるでしょう。また、ストレッチやトレーニング以外にも普段から散歩をして筋力や体力をつけていくのもおすすめです。
見守りサポートを自宅に導入する
親と一緒に暮らしている場合は、転倒したときもすぐに気付いて対応できます。しかし、親と離れて暮らしている場合、万が一のときにすぐに駆けつけられないこともあります。そのため、一人暮らしの高齢の親が自宅内で転倒し、起き上がれなくなったらどうしようと不安になる方も多いのではないでしょうか。
そこでおすすめなのが、「HOME ALSOK みまもりサポート」です。HOME ALSOK みまもりサポートは、緊急時にボタンを押すだけでALSOKが駆けつけ対応します。首から下げるタイプの緊急ボタンもあるため、転倒した際もすぐに助けを呼ぶことができます。また、看護資格を持つスタッフによる相談サービスもあり、健康面で気になることがあったらボタンを押すだけでいつでも相談が可能です。みまもりサポートの専用のコントローラーは、高齢の方でも見やすく操作しやすくなっています。離れて暮らす高齢の親や祖父母が心配という方は、ぜひALSOKのみまもりサポートをご利用ください。
転倒危険度チェックリスト
転倒予防の第一歩は、どの程度転倒リスクがあるのかを把握することから始まります。以下のチェックリストを活用し、転倒の危険度を確認しましょう。
質問 | はい | いいえ | |
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引用:厚生労働省老健局計画課 監修「介護予防研修テキスト」
「はい」の数が多いほど、転倒リスクが高いと考えられます。日常で気をつけたり、身の回りを整理したりしましょう。
親の転倒リスクに備えよう
高齢者は思わぬ場所で転倒し、けがをする可能性があります。転倒には寝たきりや認知症が進行するリスクもあるため、環境を整備したりトレーニングをしたりして予防することが大切です。転倒危険度チェックリストを確認し、高齢の親や祖父母がどのくらい転倒リスクがあるのかをチェックして判断しましょう。
また、親と離れて暮らしている場合は、転倒したときにすぐに対応できるよう備える必要があります。高齢者本人と家族が安心して暮らせるように「HOME ALSOK みまもりサポート」を検討してみてはいかがでしょうか。