防火構造とは?耐火構造との違いや防火地域・準防火地域について

火災は自分で予防に努め、出火させないことがもっとも有効な対策です。しかし、他の建造物からの延焼や放火など、個々の対策だけでは防ぎきれない出火原因もあることが実情です。
このため住宅などの建物には、万一の出火時にも被害を抑える工夫がなされています。この記事では、建物の性能として設けられている防火構造・耐火構造についてご説明し、各地で指定されている防火地域・準防火地域についてもご紹介します。
防火構造とは

建物の防火性能を表す基準として設けられているものの1つに「防火構造」があります。防火構造は建築基準法施行令第108条で定められており、具体的な技術的基準は以下のとおりです。
一 耐力壁である外壁にあっては、これに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
二 外壁及び軒裏にあっては、これらに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。
つまり、防火構造とは、建物の周辺で火災が発生した場合に該当建物が延焼しない(燃え移らない)ようにするため、外壁や軒裏に一定(30分間)の防火性能を備えることと考えると良いでしょう。
外壁・軒裏を防火構造にするには
どのような構造条件を満たせば、建物を防火構造とすることができるのでしょうか。防火構造の詳細については、平成12年の建設省による告示1359号で定められ、その後何度か改正されています。
木造住宅を例に挙げた場合、屋外側は鉄網モルタル塗り(モルタルを鋼製の金網で補強したもの)で、厚さが15㎜以上、屋内側は石膏ボード9.5mm以上、合板等は4mm以上が構造条件です。そのほか、不燃材料であるグラスウール(ガラスを繊維状にした素材)またはロックウール(鉱石に石灰を混ぜ、繊維状にした素材)を充てんした上に合板等4mm以上を張る複合使用も、防火構造として認められています。
これから家を建てる場合は、各ハウスメーカーや建築会社が取得している工法のなかで、防火構造として国土交通大臣の認定を受けたものを選定の上施工するという手順になるでしょう。
防火構造と耐火構造はどう違う?
防火構造と似た名称の基準に「耐火構造」があります。防火構造と耐火構造は、根本的に意味合いが異なります。
耐火構造
防火構造と同様に延焼火災を防ぐことに加えて、建物内部から万一出火した場合に他の部屋への燃え広がりを防ぎ、火災による建物の倒壊時間を延ばすことで被害の拡大を抑えるための構造が耐火構造です。利用者が安全に避難できること、および消火活動の助けになることも目的に含まれています。
具体的には、建物の主要構造部分(柱、壁、2階以上の床、屋内階段、梁、屋根)に鉄板やコンクリート、れんが、鉄鋼モルタル、ロックウールなどの不燃材料を用いることで、鎮火するまでの間に建物の損傷を防ぐための構造です。火災が1時間~3時間続いても、倒壊や延焼を防げる性能を備えています。
耐火構造を備えた建物のおもな構造方法には、以下が挙げられます。
- 鉄筋コンクリート造(RC造)
- 鉄骨造(S造)(※)
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
- コンクリートブロック造
※鉄骨造(S造)については、外側・内側両面が耐火被覆(鉄骨を火災の熱から守るため耐火性・断熱性の高い材料で覆うこと)がされているもの
耐火構造において建物の主要構造部分に求められている時間(耐火時間)は建物の階数によって異なります。
最上階及び最上階から数えた階数が2以上で4以内の階 | 最上階から数えた階数が5以上で14以内の階 | 最上階から数えた階数が15以上の階 | |
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間仕切り壁 (耐力壁に限る) |
1時間 | 2時間 | 2時間 |
外壁 (耐力壁に限る) |
1時間 | 2時間 | 2時間 |
柱 | 1時間 | 2時間 | 3時間 |
床 | 1時間 | 2時間 | 2時間 |
梁 | 1時間 | 2時間 | 3時間 |
屋根 | 0.5時間 | 0.5時間 | 0.5時間 |
階段 | 0.5時間 | 0.5時間 | 0.5時間 |
間仕切り壁とは、建物内部の部屋と部屋とを区切るための壁です。耐力壁は、建物を支える役割をもつ壁のことを指します。
一般住宅をコンクリート造などの耐火構造にするには、木造住宅に比べて施工費がかかるためコストが高くなる点がデメリットです。しかし近年は、木造住宅でも耐火構造の仕様が可能になっています。構造部材を石こうボードなどで覆った「メンブレン型耐火構造」や、鉄骨を木材の厚板で覆う「木質ハイブリッド部材」などが工法の一例です。
耐火建築物・準耐火建築物とは
上記でご紹介した、耐火構造の建物が「耐火建築物」にあたります。
耐火構造より若干基準の緩い構造規定に、「準耐火構造」があります。こちらも通常火災による延焼を防ぐ構造とされており、比較的低階層で延床面積(すべての階の床面積の合計)が小さい建物に適用されます。
建物の倒壊や延焼を抑制できる時間は45分~1時間とされており、耐火構造と同じく主要構造部分には国土交通大臣が認定した仕様・工法が求められます。
この準耐火構造で建てられた建物が「準耐火建築物」です。
耐火建築物・準耐火建築物は、一定の面積を超える場合避難時の安全確保のために防火区画(火災発生時の延焼を防ぐために、建物内部を区分けして設計すること)を設けなければなりません。しかし、面積区画が必要なのは500㎡ごとのため、一般的な戸建て住宅では必要とならないケースが多いでしょう。
防火地域・準防火地域に当てはまるかを確認しよう

市街地において、防火の観点から建築可能な建物の構造規制を行う目的で、都市計画法により「防火地域」と「準防火地域」が定められています。
防火地域および準防火地域に指定される地域は、駅前や建物が密集している場所、そして幹線道路に面した場所などが一般的です。それらの地域を指定するおもな理由として、火災が発生した際の延焼防止や、消防車など緊急車両の通行に支障を来さないことが挙げられます。
一般的なケースでは、市街地のなかでも特に建物が密集した繁華街や主要道路沿いが防火地域となっており、その周辺が準防火地域とされている例があります。
防火地域の特徴
延床面積が100㎡以上あるか地上3階建て以上の建物は、耐火建築物である必要があります。それ以外の建物も、耐火建築物か準耐火建築物である必要があります。
準防火地域の特徴
延床面積500㎡以上か地上3階建て以上の建物は、耐火建築物か準耐火建築物であることが必要です。また木造建築物は、防火構造であることが条件となります。
建物が防火地域と準防火地域をまたぐ場合は、建築基準が厳しいほうの地域における規定に則って建築する必要があります。
防火地域・準防火地域の調べ方
住む予定の地域や住みたい地域が、防火地域や準防火地域に指定されているかどうか、事前に調べておくと住まいづくりの参考になります。
防火地域・準防火地域の指定に関して調べたい場合には、以下の方法を試してみてください。
- 該当する自治体のホームページで「都市計画図」または「用途地域」に関して調べる
- 該当する自治体の役所に出向いて確認する
- ハウスメーカー・建築会社に尋ねる
火災対策もできるホームセキュリティ
火災に強い家をつくることや、日ごろから防火に配慮することなど、火災を未然に防ぐための取り組みは日常生活において欠かせません。万一火の手が上がった際にも被害の拡大を防止できる対策があれば、より安心して暮らせるでしょう。警備会社のALSOKでは、ご自宅で万一出火があった場合もいち早く対処できるよう、ご家庭向けのホームセキュリティサービスを提供しています。
また不審者の侵入を感知したときや、不審な来客で危険を感じたときはボタン1つで緊急通報し、万が一の際にはガードマンが駆けつけます。
センサーにより火災や侵入者を自動検知し、最寄りのALSOKガードセンターに緊急通報する機能を備えた「ホームセキュリティ」。住まいに安心感をプラスするために、ぜひご活用ください。
まとめ
住宅にとって、火災はもっとも恐れるべき災害の1つです。しかし現代の建築技術の進歩で、一般住宅の火災対策もより強固になっています。特に耐火建築物や準耐火建築物の場合、建築コストが相応にかかる反面、火災保険料割引などのメリットもあります。
火災に強い構造の住宅と、充実したセキュリティの合わせ技で、防災・防犯の両面でより安心感の高い住まいづくりを考えてみてはいかがでしょうか。
監修者プロフィール

一級建築士
宇山 達彦
東京理科大学理工学研究科建築学修了、2014年〜2019年 大和ハウス工業株式会社建築事業部にて設計士として勤務、現職は城北冶金工業株式会社 役員として勤務。令和3年 一級建築士資格取得。
現在はクラウドソーシングにて建築関連業務を行う傍ら、地域に根ざしたデザインを大切にした建築デザイン集団を企画、活動している。